『灼焔纏う神殺しの槍』
『灼焔纏う神殺しの槍』、当て字読みでレーヴァティン。
厨二病 心をくすぐられる良い名前だ。俺は大好きである。
「おっ!出てくるぞ!」
目の前に光が集まっていき、それがどんどん人型を形成していき、最終的に160センチないくらいの女の子が出来上がった。
「ん…?」
「初めまして、レティア」
「え?お前が主か?なんか弱っちそうだな」
「えぇ!?」
出てきた瞬間に罵倒されたよ!?こんなことゲームじゃ言わなかったのに…
俺の目の前に現れたのは炎のように真っ赤な色をした髪を胸の辺りまで伸ばし、後ろ髪を大きな赤いリボンが付いたバレッタでまとめているのが印象的な可愛い女の子だ。
喋り方はこんな感じだが、可愛いといった感じが強く、胸もまあまあの大きさを誇っている。
ジャンヌが西洋美人なら、こっちは派手なフランス人形と言ったところか。どちらにしろ、規格外なほどに可愛い。流石はゲームのキャラクターである。
「いえ、レティアさん。この弱そうなところが守りたくなってしまうマスターの良いところです」
「ジャンヌ?嬉しくないよ?それ」
「ジャンヌ…あ、『栄光を放つ騎士の剣』か、よろしくな」
「そうですね、マスターに仕える者同士、よろしくお願いしますね」
俺よりも先にジャンヌと宜しくするレティア。
おれってそんな弱そう?存在感薄い?ぐすん。
「ふん!別に私の加護でどうせ強くなるからそのどんくさいのもすぐ治る」
「ど、どんくさい…」
ま、まあレティアに関してはもういいや。
俺はレティアは持っていなかったが情報だけ持っている。だからそんな気にしちゃいないんだ。
「マスターが泣いちゃいます」
「いやこれくらいじゃ泣かないよ!」
なんかジャンヌにはいつもカッコ悪いところばかり見せてるからあれだけど、普通は泣かないから!そんなにメンタル弱くないよ!多分!
「あ…えっと……」
「ん?」
レティアが口をモゴモゴとさせて何か言おうとしている。
「その、もしかして傷付けたのか?…だったら、ごめんなさい」
「そう!こういうところですよっ!」
ビクッとレティアが肩を震わせる。
「この自覚のないツンからの悪いと思ったら直ぐに謝る素直さ!!ツンデレに慣れた俺としてはこの若干甘い感じのギャップが可愛いっ!!」
ほんと最高!!
そしてレティアの可愛さはここだけに収まらない!!真骨頂はここからである!!
「か…かわ、可愛いとか言うなっ!照れるだろっ!もうっ!!」
「はいきたー!来ました!デレッデレチョロイン!!」
褒められ慣れてないからか、ちょっと何か言ったらすぐにデレちゃうチョロインな感じがたまらん!!
「マスター」
「ん、なに?」
「マスターなんて、好きじゃないんだからね、ふん」
んーーーー?
この子は何をしたいのかな?すっごい棒読みだけど…あ、もしかしてレティアに対抗してんのか?
「ジャンヌはジャンヌで可愛いんだから、張り合うなんてことしなくていいんだよ」
「……マスター」
ジャンヌの頭を撫でて諭す。
正直作ったツンデレも、それはそれで需要があるのだが、まあジャンヌは普通で良いんだよ、それが最高。
「仲が良いんだな」
「ん?レティアもすぐこうなるさ」
「ふぇっ!?そ、そんな頭を撫でさせてなんかやらないからなっ!」
「よしよし」
「させないって言ってるだろ!?」
あ、なんだ、俺はてっきりフリかと思って撫でにいっちゃったよ。いやぁびっくりびっくり。
「あ、レーヴァティンを装備してみてもいいか?」
「うん?私は構わんぞ。ただ振り回すのは止めたほうがいい。この辺りが壊滅するから」
「分かってるって」
レーヴァティンはエクスカリバーと違って火力特化だ。速さと攻撃力だけがグンと伸びるのだ。
その火力はまさに『神殺し』。瞬間火力だけで言えば、G2Wの中で一位かもしれない。
それと比べるとエクスカリバーは万能型。全ステータスが上がる代わりに何かに特化するほどにはならない。オールラウンダーというやつだな。
スマホを取り出して、レーヴァティンを装備する。
「お、おぉ…すげぇ」
「ふふん!当たり前だ、なんたって私の武器だからな」
レーヴァティンは常に焔をまとっていて、槍の持ち手から切っ先までが燃えている。
ちなみに、持っている方としては熱いとは感じない。火をつける相手は選べるらしく、敵意があるものにしか影響を及ぼさない。
だがそもそもの威力も凄く、普通に振るだけでも壁くらい吹き飛ばしてしまうから気を付けなければならない。
「かっこいいな…」
「マスター、剣の方がかっこいいです」
「はぁ?何いってんだジャンヌ。槍の方がカッコいいに決まってるだろ!」
「いいえ、剣です。ねぇマスター」
「槍だよな!?えーっと…」
「ユウタだ」
「槍だよなユウタ!?」
ふむ…どっちかなぁ…俺としては剣の方がかっこいいイメージがあるけど、槍で戦場を燃やし尽くすのも考えてみたらカッコいいよな…
「どっちなんだ!?」
「どっちですか」
「……どっちも?」
「「は?」」
「すいませんすいません!!でもどっちもカッコよくて甲乙つけ難いんだって!」
「そうですか、なら私と剣について語り合いましょう。12時間ほど」
「半日!?」
俺の半日を剣の話だけで使われるのっ!?
「なら私とも話さなければ不公平じゃないか!?ユウタ!私と槍について二人きりで話そう!!」
「二人きり?私は二人きりとは言ってませんが、レティアさんは…マスターと二人きりになりたいんですか?」
「っ!?そ、そんなこと言ってないだろ!?ユウタと二人きりなんて…」
「では私はマスターと二人きりで、レティアさんを外して、マスターと話します」
「な、なら私も二人き」
「二人きりなんて、嫌なんですよね?」
「別に、イヤってわけ…じゃ」
「そうなんですか?じゃあマスターと二人きりで話したいんですね?」
「そ、それは………うーっ!!もうジャンヌなんて嫌いだっ!!」
こ、これが修羅場ってやつか?話を聞くだけじゃ面白そうと思ってたけど実際に目の前にすると気まずい…
「冗談ですよ、一緒にマスターと剣と槍について話し合いましょう」
「ほ、本当か…?嘘じゃないのか?信じて良いのか?」
「本当です。」
どうやらなんとか落ち着きそうだな。
ふう、良かった良かった。仕方ない、二人のために半日をくれてやるか!
「じゃあジャンヌと私で12時間ずつだな!」
「はい、24時間、1日ずっと話し合いましょう」
「徹夜っ!?丸1日武器の話で潰れちゃうの!?」
半日ならまだしもとか思ったけど1日は無理があるだろ!?
さ、流石に冗談だよな?ほら、ジャンヌがフォローしてくれるはずだよ。
「マスター、私の顔に何か付いてますか?」
「え、あ、いや別に何も…」
あ、これダメな奴だ。これ本気だわ。三人で1日語り合うやつだわ。
「そもそも槍っていうのはだな、人間が生まれる前に、神々が使っていた武器なのだ。その中でも神を殺すほどの威力をもった槍と言うのが、私のこと。つまり『灼焔纏う神殺しの槍』のことだな。そして私がフレイという神と戦って…」
あ、もうこれ始まったやつか…これから24時間丸々…俺は寝ずに居られるのかな?
レーヴァティンことレティアさんは、どっちかっていうとロリ要員ですね、はい。
大人ぶってる勝ち気な乙女です。言葉は荒々しくても心はピュアなので、乙女といって差し支えないです。




