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魔物の世界で青年はステータスをインフレさせる  作者: 上七川春木
1章『青年は冒険者を夢見る』
7/31

6 「青年は不思議な力を得る」


 昨日行った遺跡からどうやって帰ったのかは覚えていない。

 遺跡に落ちたときの穴に行く道も記憶があいまいで、もう一度あの場所には行けそうもなかった。

 それどころか、遺跡での出来事も記憶がぼやけている。

 細かいことはあまり覚えていないありさまである。


 今日の仕事は休みだ。

 昨日ボロボロで戻ったアルバートに、店の親方は恐ろしい顔で今日一日の休みを言い渡した。

 そんな体では仕事にならないとのことらしい。

 ただアルバートは知っている、親方がそれを言ったとき少し眉が寄っていた。

 親方は顔は恐ろしくなるほど怖いが優しい人だ。


 ただ、その親方には悪いが、アルバートにはやりたいことがあった。

 日中はおとなしくして夜みんなが寝静まった後。

 アルバートはベッドから抜け出してドアを開けようとする。

 取っ手に手をかけ、同じ部屋で寝ているエドワードのベッドのふくらみを確認する。

 そして、廊下に出て扉を閉めた。


「どこに行くつもりだい?」


 突然の声かけに、アルバートは驚いて振り向く。

 廊下には、エドワードが立っていた。


「なんで、……お前、寝てなかったのか」

「昼間の君はちょっと不審だったからね、もしかしてと思ってさ」


 どうやら、ベッドのふくらみは別の何かを入れて偽装していたらしい。


「まったく、さすが十年来の親友だ。お見通しらしい」


 アルバートは、そう言っておどけてながら外に出るために横を通ろうとするが、エドワードの手で行く手を阻まれる。

 どうやら通用しないようだ。


「それで、どこに行くのかな?」

「ちょっとそこまで。大丈夫、危ないところにはいかないさ、そんなのはもうこりごりだ」


 アルバートはそう言って、昨日穴に落ちたせいで傷が付いた頬を指さす。

 そうするとエドワードは笑って言う。


「それなら大丈夫だね、君が同じへまを二度としないのは子供のころからだ。それに」

「それに?」


 エドワードはアルバートの目を指さす。


「目が輝いてる。そうなった君を止めるのは至難の業だ」

「よく俺のことを分かってらっしゃる」


 アルバートはニヤリと笑った。

 エドワードは処置無しというように首を振ると、廊下の壁に背中を預けて腕を組む。


「どこに行くかは帰った後に聞くことにするよ、いってらっしゃい」

「ああ、行ってくるよ」


 どこに行くのか、その目的は今アルバートの目に克明に映し出されていた。

 


=========================


固有名:エドワード

種族名:人


Lv:1

HP:110

MP:109


物攻:33

物防:32

魔攻:35

魔防:28

速度:29


スキル:

なし


=========================



 アルバートが遺跡から戻った後、()()が見えるようになった。

 最初は驚いていたが、今はもう慣れた。

 半日あれば大抵のことは適当に順応できる。

 アルバートは自分のこの特技とも取れない性格を、今ほど感謝したことは無かった。

 これが何なのか、詳しいことは分からない。

 ただ、昔ボードゲームで似たようなものを見たことがある。

 そのボードゲームではこれのことをこう呼んでいた。


 ステータス、と。


 そのボードゲームは自分が人類の英雄となって、

 外の世界に蔓延る魔物たちを倒していくものだった。

 ステータスというのは、そのゲームに存在するキャラクター達の力の度合いを測るものだった。

 仮にだが、もしこの力が現実の、幻覚ではないホンモノだとしたら。

 どうしても、確認してみたいものがあった。


 それは魔物。

 あの人類では到底太刀打ちできない者たち。

 それらの力はいったいどれほどなのか。

 それが知りたい。

 魔物はそのすべてが凶暴で凶悪だ。

 それを証明する話は昔から枚挙にいとまがない。

 魔物を討伐するために出動した、領主様の軍三千が、

 時計の長針が一周するだけの間に、たった一匹の魔物に全滅させられたとか。

 無理を言って馬車と共に町の外に出た男が、

 城壁の上の衛兵が一瞬顔を背けたうちにミンチになっていたとか。

 全部本当のことだ。


 魔物のせいで起きた凄惨な事件はもっとたくさんある。

 それを起こしてきた魔物、本当の意味での超越者、それの実態を知りたい。

 アルバートはそう思った。



※文章を一部改変しました。12/27


お読みいただきありがとうございます。

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