20 「青年は手加減して魔物を斬り倒す」
次話に登場するヒロインの設定考えてたら、いつの間にかオールしてました。
だから、いつもより文書が拙くても許してください何でもしますから。
アルバートの剣が、ゴブリンを切り裂く。
ゴブリンはその醜い顔を歪ませて、地に倒れ伏した。
薄汚れた緑色の肌が、血だまりに沈む。
ゴブリンは大きく尖った鼻と、大きな耳をしている、人間の子供くらいの人型の魔物。
大概の冒険者よりも小さな体躯をしているが、実はその戦闘能力は高い。
全身は引き締まった筋肉に覆われ、野生の凶暴さをそのままに知能も駆使して戦う様は、全ての冒険者から嫌われている。
しかしそのゴブリンも、今は斃れ幾つもの屍をこの草原にさらしていた。
無論、その全てを切り裂いたのはアルバートだ。
ゴブリンを全て倒し終えたアルバートは、剣を仕舞わずその刃を確認する。
買った当初は鈍色に光っていたそれも、すでに輝きはくすみ、刃はところどころ欠けていた。
なかなかに良い値段のする品を買ったのだが、すでに一週間でこの有様。
これは、剣の質が悪いというような訳ではない。
悪いのは全てアルバートだ。
つまるところ、いかに良い品であっても、普通の剣ではアルバートのレベル913の剛力には耐えられなかった、ということに他ならない。
もっと質の良い剣、例えば魔法金属で造られた剣を買うべきか。
そう思案するが、アルバートは首をよこに振る。
それは止めるべきだろう。
まず、初心者がそのような剣をいきなり購入すれば、確実に目立ってしまう。
それは、なるべく目立たず、自分の実力がばれないようにするという目標に、確実に反する。
そしてもう一つ。
アルバート自身の技量が伸びない、という危険性もある。
繊細な力の加減、それに剣術や立ち回りなどの技術を早いうちにもっと鍛錬すべき。
アルバートは、そう考えていた。
現状はただの力任せで魔物を倒せるが、それもいつか限界が来る。
そもそも、今のレベルはそれよりも遥かに高いレベルの魔物を倒して手に入れたものだ。
壁は早々にやってくるだろう。
そして、その壁が今この瞬間、突然やってこないとも限らない。
魔物の生態については、分からないことの方が遥かに多いのだから。
ならば、人間にしかない強み。
高度な戦闘技術や知能を生かした戦い方を、早く身に着けた方が得策であるのは間違いない。
だから、力で魔物を蹴ちらさないように壊れやすい武器で戦う。
例え武器が壊れ、無手となっても大丈夫だ。
この辺りの魔物相手では、アルバートにとって武器の有無はあまり関係ない。
どちらにしても、よほど手加減しない限り一撃で終わってしまう。
ただ、不測の事態のために予備の剣くらいは持っておくべきかもしれない。
しかし、とアルバートは独白する。
何だか冒険してる感じがしない。
小さなため息を吐く。
冒険者をしてるという意味では、もちろん楽しいし、毎日の充実はうんと感じている。
ただ、こうじゃないだろう、という感覚がいつも付きまとう。
アルバートは、頭を振った。
まあ、これは試験のようなものだ。
そう自分に言い聞かせる。
これから徐々に魔物の強いところに進んでいって、自分の限界を見極めればいい。
今日の目標は、取り敢えず森に入って組合の資料に間違いがないか確認するだけだ。
昨日は、草原までで折り返した。
大丈夫、きちんと先に進んでいる。
アルバートは、一つ頷くと腰に刺したナイフでゴブリンの死体の胸の辺りを抉っていく。
「うーんと、確かゴブリンはこの辺りにー。おっと、あったあった」
そう言って、アルバートはゴブリンの胸から半透明の紫色をした石を取り出した。
大きさは大体、小指の先くらい。
これは魔石だ。
魔道具を作るための、材料になるらしい。
一匹の魔物からは絶対に一個の魔石しか取れないようで、これを組合に売れば魔物の討伐証明になる。
そしてそれが、冒険者の評価に繋がる。
評価を上げたい冒険者はこぞって組合に魔石を売るわけだ。
それを組合はその魔石を、魔道具の作製をしている魔術師組合に売る。
上手い商売を考えたもんだ、とアルバート感心していた。
全てのゴブリンから魔石を拝借すると、血の匂いに釣られた他の魔物が来ないうちに、さっさと退散する。
死体は放置。
他の魔物が、あっと言う間に食ってくれるだろう。
ゴブリンからは剥ぎ取れる素材もないことだし、問題はない。
ちなみに、剥ぎ取れる素材がないことも、ゴブリンが冒険者から嫌われる理由の一つだ。
そうしてゴブリンの魔石を、腰に下げた袋の一つに押し込むと、アルバートは意気揚々と森の中に入っていった。
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