行間 夢の跡地
小説で章と章の間に載っているようなあれです。
◇◇◇
「オレは今どこにいるんだろうか」
真っ暗闇の中、オレは身体を動かすが前にも後ろのも進まない。
いや、そもそも進むという概念がここにはあるのだろうか。前も後ろも上も下も存在しない。そんな無の空間に浮遊している。
「何なんだろう。ここは」
360度全方位暗闇。だけど自分の身体はハッキリと見える不思議な空間。
ここが現実世界じゃないことくらいは容易に想像がつく。
短い髪、男らしいイカした筋肉、低い声。
いつものオレだけがそこに存在している。
「ん、アレは?」
目の端で何かがチラついた。そちらに目を向けると、遠くに光りが見えた。
その光りの前に誰かいるようだが、逆光でよく見えない。
「おーい、おーい!」
呼んでみるが反応はない。聞こえていないのだろうか。何度か叫んでみる。
すると、こちらに気付いたのかその光の前にいる人間と思わしき者がこちらへ手を伸ばしているようだ。
助けを求めているのだろうか。オレはまた声を上げる。
「おーいアンタ、どうしたんだー? こっちに来れないのかー?」
だがやはり反応は示さない。
オレはこの状況をどうするべきなのか。そもそも元の世界に帰れるのだろうか。
そう考えていると、次第に遠くの光りが輝きを増し始める。
そして、
「アナタはワタシ。ワタシはアナタ。どちらを選ぶもアナタでワタシ次第だけれど、時間は有限」
空間に響き渡る声。
オレはその声をどこかで聴いたことがあるような気がするが、今は思い出せない。
「ワタシのアナタはどっちを選ぶ?」
そうしてオレは暗闇空間に落ちていく。
どこまでも、どこまでも……。
あの人はいったい誰だったのだろうか――。
◇◇◇
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