自称○○って恥ずかしくない?
意識が急浮上する、心地よく水中を漂っていたら釣り上げられた海月のような気分だ。
目が覚めると、森の中にいた。
「うーん…なんか変な気分だな…」
変な気分というのも、この世界の常識が一通り常識として認識できるくらいにわかるのだ。
今まで、インストールされてなかったソフトをインストールされたコンピュータのような気分だ。
いや、どちらかというと使っていたPCの中に入っているソフトウェアは変わらないのにOSが変更されてしまったような気分といえば良いだろうか?
今までと同じように生活は出来る出来るだろうが、違和感が半端じゃない…
とりあえず、いつの間にか脳に刻まれていた常識に従い、自分のステータスを確認するとしよう。
「ステータス」
Name 【無し】
Lv 1
HP 2700/2700
MP 2520/2520
STR 294
DEX 225
AGI 183
CON 207
INT 273
スキル
剣術 Lv5
鑑定 Lv5
常識が備わった、今だからこそわかる。
このステータスは異常だ。
普通の18才青年とは逸脱しているステータスと言っても差し支え無いだろう。
「うわぁ…俺結構な無理言ってたんだなぁ…」
それこそ18才やそこらで、このステータスに達しているのは歴史上に名を残すような人達なのだろうと思う。
ってか名前無しってどうしようかなぁ…
なんか自分で名乗ちゃっても良いのかしら?
うーん…
名前っていざ自分で名乗ろうと思うと、難しいよねぇ…
なんか無駄にかっこいい名前とか付けちゃうと、名乗るときに恥ずかしいし。
よーっし!
俺の名前は、祐二だ!
武田 祐二、ユージ タケダ、うん!語呂も良い!
日本式の名前にこだわったのは、別に女の子に舌っ足らずな感じで名前を呼んでもらいたいからでは無いのだ。
決してそんな下心のような何かは、介在していない。
していないったらしていないのだ。
祐二が、誰かに言いわけするように一人で考えていた。
時は変わり森の中、ユージは非常にご機嫌な様子で、森の中を歩いていた。
しかし、何かを引きずりながら歌を口ずさんで…
「あっるぅ~ひ!もりのなかっ!くまさんにっ!でぁ~った!うっそうなるけーもーのーみーちーくまさんにでぇーあぁーったぁ~」
ご機嫌に歌いながら引きずるは、体長3mはあろうかという|大熊(森のくまさん)。
因みにサイコベアという、なんともサイコな猛獣だ。
どれくらいサイコかというと、食事のためでは無くなんかむかついた、ってか暇だわみたいな理由で、通り道の生物を殺し尽くす程度にはサイコである。
何でもこの熊の毛皮は高く売れるらしい。
自分の権威を示したい貴族などには特に。
そして、肉もうまいらしい。
少し歩くと森から出ることが出来た。
「お、森も終わりかぁー」
少し離れたところに、道のような物が見えた。
「あの道辿れば、そのうち街に着くだろう。」
そんなのんきなことを考えながら、祐二は街道へと向かうのであった。
「うーん…流石に下草無い状態で、ひきずるのはまずいよなぁ…」
毛皮が売り物にならなくなってしまうかもしれないし…
「よし、仕方ないから背負っていくか!」
なんとか背負いながら街道に沿って歩き始めた。
少し歩いていると、街の外壁のような物が見えてきた。
祐二がのそのそと歩いていると、門から数人の兵士が出てきた。
何か騒がしくしていたので思い当たる、今自分の体より大きなサイコベアを背負って移動しているので、当然のことながら、自分の体はサイコベアに隠れて見えにくい。
そんな状態でサイコベアの影が街に向かってきたらどうだろう?
そう、義務感に駆られた兵士達は、街を守ろうと立ち上がるのだ。
祐二は、急いでサイコベアを下ろし、手を振る。
少々驚いていた様子だが、安心している様が見て取れた。
「ホントにすんません…」
祐二は、紛らわしいまねをしてしまったので騎士達から厳重注意を受けていた。
「気をつけてくださいよ?サイコベアが街に来たりしたら大騒ぎなんですから」
「いやホントすんません…」
「まぁ今回は良いですよ、次からは気をつけてくださいね?あ、それと取り調べついでにステータスも確認したから、今日はもう街に入って良いですよ。」
あぁ優しい騎士さん達で本当によかった…
「ホントありがとうございます!次からは気をつけます!」
別れ際に何度もお礼と謝罪を繰り返す祐二。
そんな、祐二の姿を見て微笑むように笑いながら騎士はいった。
「ようこそ、ニルクの街へ」