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STG/I  作者: ジュゲ(zyuge)
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第八話 フレンド

「そうだね・・・」


 彼女は悲しそうな顔をしていた。

 八年前だったろうか、二人で久しぶりに映画へ行った後、イタ飯屋で夕食。

 話題の流れとは関係なく彼女は聞いてきた。

「結婚とか・・・考えないの?」

「考えてないね」

 自分で驚くほど即答した。

 それぐらい煮つめていたようだ。

 こんな身体では土台無理。

(不幸の連鎖に巻き込みたくない)

 彼女には身体の異常は言ってなかった。

 悪そうだということは薄々察していたようだが、薄々と現実にはかけ離れたものがある。

 相手の足を引っ張るのはご免だった。


 目が覚める。


(また懐かしくも嫌な夢を見るね自分)

 

 昔はこの夢を見て涙することもあったが今やまるで他人事だ。

「クソみたいなドラマの典型だな」

 女友達から傲慢だと言われた。

(わかりきった道を避けることの何が傲慢なのか)

 格好つけるつもりはなかった。

 まさか未だに夢をみるとは自分でも意外だ。

 ただし、当時の想定よりも現実は上回っている。

 一寸先は闇。

(最近新しい出来事がないから脳みそも過去のむしっかえしが多いんだろう)

 サイトウは結論づける。

 時計を見ると十四時。

(ま~大体いつもの時間か)

 身体の反応がギスギスしている。

 毒素が肉体のあちこちを攻撃しているかのようだ。

「あつっ!・・・」

 起き上がろうとして首に痛みが走る。

 寝違えてもいないのに。

 身体をゆっくりと横に向け、両手を支えに上半身を起こそうとする。

「いたたたたたたたた・た・た・た・・・」

 首が動かない。

 どうにか半身を起せた。

(あ~なるほど。昨日だったか彼女との写真が目に入ったからかな。それで夢にね。肉体ってのは実に合理的に出来ている。原因があり結果がある)

 今しがたの夢の話をしているようだ。

 

「さてさて、やりましょうかね」


 よつん這いになってデスクトップパソコンの電源を入れる。

「どうせ皆いつかは死ぬんだ、楽しいものがあるちが華です、よっと」

 柱に両手を添え、ゆるりゆるりと立ち上がり椅子に座った。

(今日はとりわけダメージが大きい。俺が寝ている間にフルマラソンでもやったか?夢遊病の傾向は無いけどなぁ。モニタリングでも出ていない)


”STG28”


 画面にログイン画面が起動。それだけで身体が喜んでいる。餌を待つポチだ。

 手打ちでIDとパスワードを入力。

 彼はすっかりこのゲームにのめり込んでいた。

(ログインする度に興奮するゲームはいつ以来だろう)

 ヘッドセットをつけると、”爆転”で頼んだWebカメラをセットし忘れたことを思い出す。彼は顔をしかめたが、その口元は笑みが溢れている。

「後でいいや」


 昨日は色々あった。 

*

 入室と同時にメールが届いているサインが出る。

(運営からのお知らせだろう)

 メールボックスを開けると大量のメールが着信している。

 しかも全てプレイヤーからのもののよう。

「なんだこれ」

 ログインする度に知らず女性喋りになっている自分に気づかないほど動揺している。

 何せ耳から聞こえる声は自ら設定した女性の声だ。慣れとは怖いもの。

 百件近くある。

 メールをザッと目を通すのはサラリーマンのスキルのようなもので、出来るだけ短時間に表題で重要なメールを探し出し斜め読みする。これが出来ないと滑り出しに失敗することを身体が覚えた。


「STG28のことは二度と書くな・・・か」


 多くは部隊への招待と例のブログへの警告や脅し文句。

 部隊への招待は内容が同じことから固定メッセージを使っているのだろう。

 固定メッセージで送るプレイヤーには返事をしない。これもサラリーマン時代に身についたものと言える。固定メッセージを編集したものも同じ。大した興味がないけど言うだけは言っておく程度の力学と彼は捉えた。そんな程度に付き合いたくはない。

 ところが最近よく出来たもので、ビジネスでも人工知能による自動返信メールが実用化されている。今はまだ読むとわかるが、そのうち本当にわからなくなりそうだ。もうこなってくると尚のこと感が頼り。肉を研ぎ澄ますしかない。

(血の通ったやり取り以外はお断りと・・・)

 後はブログのことを書いているようだ。

 コメントの内容と同じようなもので、原因不明の誹謗中傷が多い。

 端的に言えば「書くな」と言いたいと判断した。

 彼はここまで過激になる理由がわからず、恐れや怒りよりも理由に興味が湧いた。


 その理由と思われることが少し書いているメールがあった。


”シューニャ・アサンガ様

 突然のメール失礼いたします。

 友人に聞いてブログを拝見し驚きました。

 恐らく、今かなりの脅し、脅迫の類が届いていることでしょう。

 私も経験があるのでわかります。

 差し出がましいのですが、このゲームのことを一般人に言うのは危険です。

 私の友人は見ず知らずの暴漢に襲われたことがあります。

 危ないから、辞めた方がいいと思います。

 彼らはクローラーを使っていつも監視しています。

 プレイヤーズサイト以外での投稿は危険ですよ。

 今、このゲームでは普通に叩けるプレイヤーが減って大変困っています。

 勝手な思い込みですが、貴方ならと思いフレンド申請しておきますので、もし良かったら受理して下さい。

 また、友人がやっている部隊に入りませんか?

 申請するよう言っておきます。仮入隊も可です。

 このゲームは部隊に入っていないと大変難しいですよ。

 部隊名は「モエモエ猫」です。

 共に地球を救いましょう。 By プルシアンブルー”


 彼は丁寧に読むと呟いた。

「丁寧な警告のような・・・これはこれである意味で脅しのような・・・」

(しっかしゲーム内での猫好き多いな~、俺は犬派なんだが・・・犬派はどうしている?単に猫好きは自己主張が強いだけなのかね。ま、猫も好きだけど)

 脳をというのは不思議なもので、不意に同期を思い出した。

 あっちの世界の人を僅かばかりだが知っている。その一人だ。

 メールの感じが、その手口を思い出させた。

(もう少し話したかったなぁ)

 昔の会社同期に抜けた人がいる。

 彼から色々と聞き、震え上がるわ、好奇心をソソられるわで。

 真っ先に指を見たが、全部揃っていた。

「いつの時代の話」

 彼は笑って言った。

 同期の中で彼だけは目つきが違っていたことが思い出される。

 違う世界を見てきた目。乾いていた。

(元気しているかな・・・まだ、シャバの世界にいればいいけど)

 初任給をもらったおり、自分が「まあまあ出てるな」と思った横で彼は目を丸くして驚いていたことがある。(そんなに驚くほど貰ったかな)と思っていると逆だった。

「こんな餓鬼の小遣い程度なの。嘘でしょ。まさか、これが全部ってことないよね?」

 驚いたのはこっちの番だった。

(今日はやけに昔のことを思い出す)

 その他にも幾つか短文だけど「なるほど、これは本音だな」と思えるメールが幾つかある。彼が最も驚いたのは、どう見ても過疎っているのに、どうしてこうも一生懸命なメールが多いかだ。

 こうした誘いは自ずと人口に比例する。多ければ多いほど比率で熱心な人も増え、痛い人も増えるものだ。彼はそう感じていた。

「この人に、まずはメールを返信しておくか・・・」

 ”ミネアポリスプププリン”というプレイヤー名。

(全くもって意味不明な名前だが、ネットゲームには多い)

 アバターは女性。恐らくテンプレートの中から選んだのだろう。

 彼女の、仮に彼女とすると、彼女のメールは引っかかった。


”メールには返事しない方がいいよ。私のも返事しなくていいから。

 無視するのが嫌ならプレイヤーズサイトで適当な理由を書いて無視した方がいい。

 誰が敵か、誰が味方か、最初に見極めないと、足元を救われるから。

 部隊も一杯招待来てるでしょうけど、全部ハズレと思って間違いない。

 何より、お願いだから止めないで欲しい。今、本当に戦力が足りないから。

 宇宙人が今、一生懸命リクルートしているみたいだけど迷惑極まりない。

 ちなみに彼らの言っていることは本当だから。

 STG28が無くなったら地球は終わりだよ。

 お願いだから止めないで、そして戦って欲しい。真剣に。勝手な話だけど。

 私も頑張るから。

 By ミネアポリスプププリン ”


「なんというドラマティックな」

(必至さが伝わってくる。文章のニュアンスからすると二十代かな?)

 サイトウは一息つくと眉をひそめた。

(もう疲れている・・・困った肉体だ。生ゴミめ)

 このメールの意味するところを考える。

(普通に考えると完全に痛いメールだよな)

 ゲーム世界にドッぶりと浸かってしまい自己洗脳に陥っているか、ゲーム内ゲームを演じているか、何かの遊びなのか、彼は頭を捻らせた。

「新たな遊びかな・・・だとしたら相当洗脳されているな」

 昔からゲーム内コメントだけでバーチャルセックスをやるような輩もいるぐらいだから驚きはしない。色々な人間がいるのは確かだ。ただこのメールには彼がこれまでプレイして来た中で、一定の頷ける要素があった。何より気になったのが・・・

「宇宙人がリクルート・・・(これはどういう暗喩なんだろうな)」

 宇宙人と呼ばれる地球人もいる。

 彼も経験があったが、「こりゃ宇宙人だな」と思う人はいる。

 自分の生活圏にはいない範囲外の地球人をさす場合が多いように思う。

 最近は特に増えている気がする。同じ言語を使っているのに全く意味不明だ。

(でも宇宙人といったら暗喩にしても”通じない輩”でしょ。それがリクルートなんて出来るわけないし・・・。おし、彼女にはメールしよう)

 サイトウは寧ろ好奇心を動かされた。

 驚くべきほどに緻密な描写や、無駄とも思えるAI技術のパートナー。

 そして、どっちに転んでも必死過ぎるプレイヤー達。

 そして怪文書の数々。

 これで今までに無い経験が出来そうだと彼は考えた。

「全てのことは終わってしまえば祭りの後」

 今まで様々なオンライゲームをしてきた。

 夢のような一時も、熱い情熱も、ややこしい人間関係も、終わってしまえば驚くほど簡単に消え行く。ゲームも現実も同じだ。もっともそれは彼の言葉というより、昔から言われていることである。倒産の最中にいた経験もある彼からすると、ましてやゲームなら尚更そうだろうと冷めた部分で見ていた。

「でも、わかってはいても、”秀吉の野望オンライン”は寂しかったな・・・。ま~まだサービスは終わってないけど、俺の中ではあの日が終わりだった・・・今でもあの時の虚無感を憶えている。全ては夢現。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす・・・だったっけ?・・・これだよ、まさにコレ。天才だよな、これ。人間なんて昔から何も変わってない・・・病気だけは増えたけどな・・・当時に俺のこの病はあるまい・・・」

 もう頭が酩酊状態。

 瞼は壊れたシャッターのように上げても上げても勝手に降りてくる。

 独り言を言いながら呂律が回っていない自分に気づく。

(やっぱり脳の方かな・・・でも脳MRIに軽微なもの以外問題はなかったけど)

 医者は正常の範囲内と言った。

 最も今の彼は医者の言うことは話し半分にしか聞いてはいないが。

 五件ほどメールを送る。

「起きたばかりだっちゅーのに・・・もう限界が近い」

 そして「アンドロメダに行って機械の身体が欲しい」と愚痴をこぼした。

 続けて公式サイトにゲーム上からブログに書き込む。

「沢山のメールをありがとうございます。今混乱しており、返事が出来ず申し訳ありません・・・とね」

 彼女の忠告に従ったというより、元からそうするつもりだった。

 これもサラリーマン時代に身についたものだ。

 完全に無視していい投げかけと、無視すると時限爆弾になるもの、地雷、色々ある。

 勤め人時代もテンプレートは使わないタイプだった。自分がされて嫌なものは人に対してもしたくない。

「お前は不器用すぎるんだよ!」

 上司に言われた。

「不器用な男で、す、から!っと、終わり。さーゲーム、ゲーム!もうね、ゲームする前に既に疲れているいうね、このポンコツ具合!フゥーッ!イエーイ!」

 意識的にテンションを上げていくも上がりきらない。

 それでも口が回っている間は少しだけ時間がある。

 一方でそんなことを思う。

 疲れ切ると独り言ですら出なてこない。

「あのメールもなんなんだろうな」


”お前のブログは俺が消した。他のを消さなかったのは恩赦だと思え。”


 何故こうも高圧的なのか。

 何がそんなに人生辛いのだろうか。

「多分俺の人生の方が辛いぞ」そんなことを思いながら読んだ。

「本当にそうなのか・・・それとも単に虚勢なのか・・・」

 彼のプレイヤー名はメモった。

(今日はミッションを少しこなして勉強しようか)


 ロビーに出る。


”STG28残機九十九機/千五百機”


(減りも減ったり百機を切ってる・・・こりぇ下手せんでも一週間もたんぞ)

 耳元でコール音。

 ヘッドセットを外し固定電話とスマホを確認する。

 違うようだ。

 ”ミネアポリスプププリンから着信”とゲームの方に出た。

(すげーな、ゲーム内で電話が出来るのか。ありそうで無かった)

 一瞬戸惑ったが、彼女にはメールを返信していたこともあり出ることにする。

 画面には、ビデオ通話で応答、音声通話で応答、チャットで応答の三つが表示。

 音声通話で応答をクリックする。

「こんにちわ」

 ヘッドセットの向こうから知らない声がする。

 音声と同時にチャット欄でテキスト化された。

(超技術をいかんなく使うね。喋ったことが勝手に字幕化されるとか凄いな。どこの会社の技術だろうな。今度調べてみよう)

「シューニャさんですよね」

「えーっと、聞こえますか?」

「聞こえるよ」

(おっと、いきなりナーナーかよ)

「凄いねこのゲーム、電話も出来るんだね」

「うん」

(えらく蛋白な対応だな。最近の若者は距離のとり方が意味わからん)

 ズカズカと人の土俵に踏み込んできたかと思うと、こっちが少し前へ出ただけで突然距離を必要以上にとる。やれやれと目を逸らすと目の前にいる。サイトウはこれまでもそう感じていた。何時ごろからか突然である。

「ちょっと話したいことがあるんだけど、カフェスペースの一〇一に入室してくれないかな。パスワードは”抹茶シフォン”で」

(強引だなおい。初対面だよゲームとはいえ。何を考えているのか。メールを送る人選を誤ったか・・・シャバを離れて随分たつから鈍くなっているのかな。それとも加齢。両方か・・・)

 普段なら彼はこうした相手とは一旦距離をとるのだが、好奇心もある。聞きたいことは山のようにあった。

「ん~・・・わかったよ」

「ありがとう! やっぱり彼女なら大丈夫だって・・・」

(他にも誰かいるのか?明らかに後半は俺に向けた言葉じゃない)

「えーっと、カフェってどうやって入る、の、か、な・・・あーわかったわかった」

「じゃあ、待ってる」

 わかってる。

 わかってるよ。

 ゲームだ。

(でも、ちょっと嬉しい自分がいる)

 相手は声こそは女性だけど、実際は男かもしれない。

 無精髭ワッサーとした、一週間着替えていない輩の可能性も当然ある。

(それを言っちゃあ相手が俺の年齢を知ったら驚くぞ)

 こんなことなら男のアバターにしておくんだった。

 アバターをどう捉えるかは人それぞれだ。

 なりきりたいと思う人。別な自分になりたい人。全く自分の外において遊んでいる人。色々いる。自分は敢えて選ぶなら別な自分になりたい人だろう。いいなぁと思うキャラを眺めていたい。そういう理由で女性キャラやロボット系を選んでいたようだ。

(人生の主役なんてリアル以外ない。嫌な配役でもって生まれたもんだが)

 カファチェンネルに切り替え、入出した。

「パスワード・・・”抹茶シフォン”だったな。好きなのかね?」

(やっぱ緊張するもんだな)

 こうした場面切り替えの場合、多くのゲームでは「NOW Loding...」といった画面で省略されるのだが、このゲームは移動する演出が短く入る。しかも毎度カメラアングルが変わったり、移動中もアングルを変えることが出来る等、実に念の入った手の混み具合だった。多くのプレイヤーはこうしたものを邪魔と捉える傾向があったようだがショートカットも出来る。彼はこうした演出を重視し、カットしなかった。

*

 扉を開けると、彼の予想に反し女性アバターが一人だけ立っている。

(他の声の主もいるかと思ったが・・・テンプレ的美人だな)

「こんちゃ~」

 昔から実際とゲームで人格が違い過ぎると言われる。

 ただし親しくなると「あのまんまだね」だそうな。

「こにゃにゃちわ」

(お、おう)

 彼女のアバターは言葉に合わせて動いた。

(エモーションかな?)

「シューニャです。よろ、しゅーにゃ」

 たった今、思いついた。

 声がこんなに可愛いと自然と言えるもんだな。

 鏡があったら吐きそうだ。

「ミネアポリス、ププ、プリンでーす。シューニャンでいいかな?」

(出たよこの距離感。唐突に縮めるな~。アイドル憧れ系かな?自己演出系か)

「いいよプリン」

「ミネアポリス消えたし!」

(お、おう)

 どうにもこのノリに慣れない。自分のしていることと、相手がしていることの認識が出来ているんだろうか。

(気にしたら負けか)

「話ってなんだいプリン?」

「プリン決定なんだ!」

 本題に入った方が良さそうだ。

 今日はゲームがしたい。

「シューニャンはWebカメラも使ってないんだね」

(おい~いきなりスルーかい)

「・・・なんで?」

「だってあんまり動かないから」

(そう言えばさっきからプリンは動きが多いな、エモーションじゃない?)

「買ったんだけど、まだセットアップしてないんだ」

「えー買ったの!」

(はい?・・・はい~っ?なんだかなぁ・・・)

「VR買えば良かったのに」

「え?これってVR対応なの」

「対応どころから必須と言っていいよ」

(嘘やろ・・・高すぎて買えね~ぞ。最近の子供は金だけは持っているな)

「なんで?」

「STGをバージョンアップしていくとわかるよ。それにフォニュートリアが相手ならVRないと多分無理」

「なんだそれ」

「それよりね」

(はい~っ!?話しが見えねー!)


 彼女は導入部の奇想天外さとは打って変わって静かに落ち着いた口調で話し始めた。今まで何度も誰かに話したのか、喋り慣れたセリフを右から左に発するように聞こえた。実に熟れたもの。だからまずは聞くことに徹する。途中で口を挟むと混乱するタイプに思える。聞きながら、その裏側に、今真っ先に言うべきこと、今はまだ言わない方がいいこと。そうしたものの選別があるように感じられた。

 話しの内容から今おかれた状況、しつこいほどに言われた気がする残機の意味。地球が崖っぷちであること。そして宇宙人の存在。

 サイトウはそれをどこか他人事のように聞いた。


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