第75話!自己評価低い系主人公スキル
最近のヒロインには言葉のような積極性が足りない。
まあ、積極性がありすぎると中に誰もいませんよ? とかになるんですけどね。
世界は好きになれませんでした。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
部屋を出て気がつく。ルーゼの部屋の場所を知らないと。
「カズシ様、ルクソルーゼ様のお部屋にお連れしますので、付いてきてください」
なんてことを思っていたら、見回りの騎士が連れていってくれるようだ。
「助かる。場所を知らなかったんだよね」
「アミレイア様がカズシ様が出てきたら、ルクソルーゼ様の部屋に行くだろうから、案内してあげてねとの事でしたので」
なんだかんだ言って色々考えてるんだな。ルドの方は考えているようで、考えていない人だろうからな。そこら辺うまくやってるんだろう。俺は割と考えてません。
案内の騎士に連れられ数分、キリツが部屋の前で立っているのが見えた。
「では、私はここまでですので…………失礼を承知で言いますが、私のような木っ端の騎士に頭などを下げない方がよろしいかと。Sランクはそれだけで強大な力を持っているので、道具として使おうとしている方々に付け入られてしまいます」
真剣な顔で忠告してくれた。付け入られてもなんとでもなるのだがな。
「大丈夫です。相手が相応の礼儀を持って接してくれた時のみ、私も礼儀を持つことにしていますのでね」
頭を下げて、案内してくれた騎士は下がっていった。割とズバッと物事をいうんだな。騎士ってあんななのかな? それともレイアがお願いする騎士だし、そういう柔らかい頭を持っている人だったのかな。
「おはようございます、キリツ」
「はい、おはようございます」
キリッとしていた顔を笑顔に変えて挨拶を返してくれた。うーむ、男の気は移ろいやすい。女性が花で、男はミツバチと言うけど、俺はうつろって……ないな。しっかりみんな好きだし。きっと大丈夫。
「ルーゼを起こすまでそこで待機してるのか?」
「はい、いつもはこのような事はしないのですが、他の国の方がこの城壁の中にいますので、何かがあってからでは」
さっきの顔から一転、暗い顔になり始めてしまった。
「はい、そんな顔しない」
「かずひさま、何をやっているんでふか」
両頬を手で抑えて、変顔をさせた。ほっぺたぷにぷにしてて気持ちがいいな。これで三十路手前とか頭おかしいやろ。
「ルーゼにそんな事は俺が起こさせないから、一々暗い顔なんてするな」
「……わかっているのですが、やはり」
やはり過去に薬を盛られたからか、ルーゼのことに関しては城の皆がこんな感じだな。レイアはなんかわからん。
時間があるみたいだし、ほかの糞共に取られる前に。
「あ、それはそうとさ」
「はい」
「俺がお前の責任を取ってもいいんだっけ?」
頭を傾げて、
「責任ですか?」
凛々しい顔を傾けて、本当にわからないようだ。てか、その仕草って美人がやるとギャップで俺のアレがMAXでやばい。
「はい、胸を揉んでしまったので、結婚で責任を取ろうかと、まあ嫁が何人もいる俺でいいなら」
「…………はい? すみませんもう一度お願いしてもいいですか?」
(はいはーい、スラリンです。キリツの心がだいぶ面白いことになっているので、読心した一部をお楽しみください)
(責任? カズシ様が私に払う責任なんてありましたっけ?……結婚? あー、あれですね。私の同期の女騎士が皆やったあの行事ですね。結婚式に呼ばれて、お祝いのお金を払って、新婚夫婦の惚気を見て精神に多大なダメージを与えてくるあれですね……ん? 嫁が何人もいる俺でいいならって話が通じなくない?)
くっそ、これならレジェンドオークを千体抜きした方がまだ楽だぞ……よし!
「この場面ではあと数回しか言いませんので、聞き逃さないでくださいね?」
「はい」
(なんかとても真面目な顔で見つめられているんですけど!)
「責任うんぬんという言葉で濁しましたが」
「はい」
「貴方に一目惚れしました。嫁が何人もいる男ですが、どうかお嫁に来ることを前提に、お付き合いしてくれさい……」
噛んだあああああああ!!! なんで超高ステータスなのに噛むんだよ!!! でも、気持ちは伝わったはずだ。キリツが難聴系主人公属性を持っていないのは確認済みだ。
(一目惚れ? 誰に? 私に? お嫁さん? 誰が? 私が?…………あはははは。そんなわけないじゃない。いきなり現れた新人冒険者。たった十数日でSランクに上り詰め、紅蓮の狐を嫁にして、城壁のガンス様のお気に入り、三大闇組織の1つルシファーを手中に収め、王族すら魅了する洋菓子を作るカズシ様が、私のことを好きなわけないじゃないですか。こんな売れ残りが選ばれるわけがない!……危ない危ない。告白っぽい事を言われたから、舞い上がるところだったわ)
俺が告白したら、うんうんうねっていたと思ったら、それがピタッと止まり、笑顔になった! よし!
「もう、カズシ様はそういう相手に気を持たせるような発言は、慎まないと刺されてしまいますよ? 私だから勘違いしなかったですけど、他の女騎士なら確実に勘違いして返事とかをしてましたよ」
んんん?? あっれー? 待て待て待て。一目惚れした、何人とも付き合っている、一夫多妻はOKなこの世界なので、誠実さに欠けるけど問題ないはず。嫁前提で交際を申込み……うん! ちゃんと言えてる! なんで? うーん。
「えっと、キリツ?」
「はい?」
「俺は貴方が好きなんです」
「はあ」
(だから! そういう事はやめてください! その好きは同じ仕事仲間としての好きとかそんな感じのやつでしょ? 好きか嫌いかで言われたら、そりゃ大抵の人のことは好きなりますもんね。私のような歴戦のおひとりさまはそんな間違いしませんよ? これって私のことを女として好きってことなんだ!! なんてことにはならないんですよ。 誰が好き好んで、生き遅れ30手前の剣以外はまともにできない、最近肌のハリが衰えてきたなって思ってる女騎士を口説こうとするんですか! 私に擦り寄って姫様に近づこうとしているわけでもないのに、そんなことがあるはずがない!)
なんで? 好きって言葉じゃダメなの? そんなんじゃ気持ちが軽いわ! ってことなの? いやね、愛してるって言葉を出せばいいのはわかってる。でもね、あれってね、やってる時にテンションが上がっていて言うのと、こんな場面……いや、言わないと進まねえ!
俺はキリツの肩を両手で掴み、顔を近づけて、
「俺はキリツさんの事を一目惚れで好きになりました! 愛しています!」
「…………」
(一目惚れで好きになった。愛している? いやいやいや、私のような三十路手前の女を一目惚れするわけないよね? いや、でも今のはどう聞いても、私への告白だったと思うんだけど…………待って、確か女騎士の間で流行ってる、恋愛小説にあったわ! 気心知れた異性に告白の練習をするってやつね。結局相談した女性が修羅場を展開して、腹をかっさばかれていたわ。あー、危なかった。さすがの私でも自分への告白かと思ってしまったわ。危なかった。乙女の恋愛事情学園編という、女騎士の間で周し読みしている、少し過激な描写もある、あれを読んでいなければ即死だったわ)
「それはルーゼ様への練習ですか? それともリーゼ様? あ! レイア様はダメですよ? 寝取りとか絶対にダメですよ!」
ええええええええ。待てよ。流石におかしい。こういう考えは良くないけど、小説、特にラノベだったらどういう状況だ? 立場を変えて考えよう。
……あ、あれか。自分のことを妙に下に下げまくって、意味がわからない理論武装をして、告白を有耶無耶にする主人公スキルか! もしそれだとしたら、どうすればいいんだ? このままだと平行線だよな? うーん。
なんか悩んでるのが面倒くさくなってきたわ。
「キリツ?」
「はい?」
一気に顔を近づけて、チュッと一度当てて
「好きだ」
「だか」
チュッ…………何度も繰り返した。
「俺の物になれ」
「ふぁい」
蕩け顔のキリツから了承を得れた…………これって強姦じゃね? あはははは、冷静に考えるのやめよ!
お疲れ様でした。
この日の夜カズシはベッドで悶えまくります。
お、おかしい。式典が始まらない! いや、こういうのも書きたかったんだけど、カズシの察しが良すぎたり色々あったから、書けなかったのが爆発四散した。
次回、わかんね




