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女神と夫婦になるために  作者: たつ
5章 帝都にて
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第67話! 心壊者

なんか違うんだよな。前回の全てとカズシの突拍子のない危険行為の説明がつくはずだったんだけど、いまいちうまくいかなかった。


これでも2度書き直しているからもう勘弁。


では、お楽しみ頂けると幸いです。

 私の名前はルクソルーゼ・オルデスト・ブルースと言います。王族なだけあり、まだまだ名前は続きますが、この三つの名前さえ分かってもらえれば、いいと思っているので、問題ないでしょう。


 私は幼い頃に心、感情をなくす? 消す? そのような薬を飲み物に混ぜられてしまい、感情というものが抜け落ちてしまったらしいです。真犯人は今も捕まっていません。


 そのせいで継承権を無理やり破棄させられたり、無表情を怖がられ、他の兄妹よりも付き人も少なく、何より他の人との会話がありません。気味が悪いみたいですので。


 リーゼやルー兄さん(長男)やメー姉さん(長女)はよく私のところに来てくれて、いろんなお話をしてくれますが、やはり物足りない感じがします。


 ここ数年で物足りない等の感情由来の考えも少しだけ戻ってきているので、数十年もすれば治ると思うけど、その時にはおばあちゃんになってしまいますね。お父様はその時でも若々しい姿を保っていると思いますが……エルフの先祖返りって便利ですね。


 そんな私でもお父さんやお母さん達は大切なので、その人達が守ろうとしているこの国を良くするために、様々な本を読んで、役に立とうと思っています。


 本は一般的には高いですが、帝城の書庫にはありとあらゆる本が置いてあるそうです。その中でも魔法学や治療法、薬学、薬草学などのことを勉強しています。兄さんや姉さんが教えてくれていることもあり、なおかつ飽きるという感情も消えてしまっているので、苦に感じずに学び続けることが出来ています。


 その日も、私の近衛兵であるキリツを連れて書庫に籠っていました。キリツは私の一番の友達です。キリツは騎士だから私が友達とは認めてくれませんが。


 そんなところに、お兄さん達よりも少し若く見える、黒髪の男の人が私達のところに訪ねてきた。


 先程までに大事なことを言っていませんでしたね。


 私は心を無くした代わりに、別の人の心、感情を見ることができるようになりました。私が見えている心というのは、ガラスのような器とその中に満たされている水のことを指しています。


 心の器の大きさは、その人のレベルや様々な強さによって、変わることがわかっています。お父様やアーサー様、ガンス様はとても大きく、体を包むくらいの器の大きさをしていました。さらに形は種族毎にだいたい同じような形をしています。


 満たされた水というのは、感情の揺れ動き、その時の思いなどによって、色や濁り具合や鮮やかさなどがわかってきます。


 私自身を見てみると、その満たされているはずの水が枯れてしまっていた。最近は底にちょびっとだけ水があるように見えますが、それだけで濁ったり、動いて揺れ動くことは出来ません。


 ガウェイン様などのような最高位の強さを持っていると、相手がいい人か悪い人かをおーら? でわかるそうです。ちなみに私達兄妹は皆いい人だそうです。良かったと思う。


 話を戻しますけど、その黒髪の人を一目見た時にわけが分かりませんでした。心の器の大きさはこの部屋くらいまで膨らんでいて、エルフの特徴やゴブリンの特徴、獣人の特徴などが器の至るところにあったんです。


 それに驚いていたのですが、よく見てみると器にヒビが入っていました。それも至るところに。まるで一度地面に投げたガラスの器の欠片を、形だけ組み立てたように感じました。


 その時に思ったんです。感情がない程度の私なんて、問題にすらならないのではないのかと。しかも、大きさやヒビ以外のところもおかしかったんです。


 しっかり見ないとわからなかったのですが、器の中にあると思っていた水もなく、空気が色を変えたりして感情を表現...していました。


 この力を自覚してから、様々な人を見せてもらいました。いい人もたくさん見ましたけど、快楽を求めるあまり薬によって心が壊れた人、女性の尊厳を犯され心をすり減らしてしまった人、拷問などを受け廃人になってしまった人。どの人も壊れた心の器を組み立てるなんてことをしていなかったし、消えたり抜けた水を偽るなんてこともありませんでした。


 ですから、私は自己紹介をして、それが気になって言ってしまいました。指摘してしまいました。


「貴方は心が壊れている。なぜ普通の人のように過ごしているのか」


 それからはすごく痛かったです。私は人一倍人の気持ちを汲んで、言葉を選ぶことができます。感情や気持ちが見えていますからね。当然です。でもその時の私は、あえてカズシさんの心を踏み躙るように、事実を見たままの事実を告げていきました。


 カズシさんは人間であることに執着しているようでした。ですので、そこを重点的に責めました。


 口を抑えられても、首を締められても、壁に投げられて腕が折れても聞きました。私は化け物と罵られることが良くありました。彼は私以上に壊れていて、化け物の名では足りない、神という名すらも冠してしまうような存在でしたけど、彼に私のわかったことを告げて聞きました。


 彼は何故、私が彼に対してそのようなことを告げてくるのかを聞いてきました。


 私は感情が今は一欠片程度しかない。その一欠片、一滴が彼のことを羨ましいと思ってしまったんです。なぜ彼は水がないのに、笑えるのか。なぜ器が壊れているのに、Sランク冒険者として立っていられるのか。


 そのような事をぐるぐる考えているうちに、好奇心や探究心が愛おしさに変わりました。


 本当の意味で彼をわかっているのは、私とこの世界を作ってくれた神様だけ。彼ならば私のなくなっている心すらも見通して、私のことを理解してくれる……かもしれない。だって、ない心を偽れるのですもの。


 彼が人間であるのであれば、私はれっきとした人間であると言える。彼がもし化物であっても、ひとりではない。私がいるし、彼がいる。


 そのような考えがぐるぐる回った結果、好きという言葉が口から出ていました。本などのお姫様なども、好きな王子様のことを長々と考え、自分を理解してもらおうとしていた。きっとこれは好きだという感情に違いないと私は思いました。


 その言葉を告げた後の彼は、私が突拍子のないことを言った時のお父様のような顔をした後に、お母様がしてくれる優しい顔になって、私を抱きしめてくれました。


 抱きしめて、私の頭を撫でながら壁にぶつけられて、痛めてしまった体を一瞬で治してくれました。


 彼の言葉は何も考えてない、反射で出てくるような反応でしたけど、心を偽ることもなく、器の中が透明なまま、私のお願いにも前向きに答えてくれました。


 きっとその時の彼を本に書くとしたら、地の文がなくセリフだけの場面になる、お菓子な場面になっていたと思う。それでも私は嬉しく思う。きっと、いつもの彼は地の文のほとんどに、心が込められてなかったと思うから。そう思うべきという気持ちで感情を塗っていたと思うから。


 そして、私の心も治してくれました。少しずつ継ぎ足されていく心の水に、愛おしさを感じ、抱きしめられている私自身に、恥ずかしさ、誇らしさ、もっと甘えたいという思いが浮かび上がってきながら、何故か泣きながら彼に笑いかけました。


お疲れ様でした。


自分を救ってくれる、ただひとりの王子様がいたらヤンデレ気味になると思うの。


でも、いくらカズシが自分の行為が愚行だったと気がついたとしても、それでもやるのがカズシであると。


次回、式典が始まるんじゃない?

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