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女神と夫婦になるために  作者: たつ
4章 暗躍せし勇者
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第66話! 心無姫

なんか何人かにカズシが怖いと言われた。いや、わかるよ? 俺も怖いし。


なんか作者も怖いと言われた。解せぬ。


では、お楽しみ頂けると幸いです。

 俺がルクソルーゼ姫とその近衛騎士が見えたのと同じように、向こうも俺の存在に気がついたようだ。足音を普通に立てて歩いてたしね。


 俺の今の服装は適当に服を着て、その上から仕立てのいいコートを着てるだけ。武器は回収されると言われたのでボックスの中。


「貴様何者だ!?」


 剣に手を添えて誰何をしてきた金髪騎士。金髪って多いのかな。


 帝(先祖返り)が金髪、第二皇后(エルフ)は金髪なのにその子供のルクソルーゼ姫は水色の髪なんだな。メリアリーゼ姫……リーゼも青系統だったし、本来は王族は青なのかね。ルドメイはエルフの先祖返りだから違うとかそんななのだろう。


「Sランク冒険者のカズシだ。これを見てくれればわかるだろう。顔見せに来た」


 ギルドカードをポッケから取り出して、騎士に見せた。


「……なるほど、私は姫を守らないといけないのだ。無礼な態度をしたことは失礼した。すまない……私はキリツという、よろしく頼む」


 剣から手を離して頭を下げてきた。キリツは冒険者だからって差別はしないのだな。


「何変な顔をしている?」


 変な顔になっていたようだ。


「メリアリーゼ姫が城の外に抜け出したことは知っているか?」


「ああ、あの時はとても大変だった……そういうことか。保護したのはカズシというSランクと言っていたな。で、迎えに行ったのはアレストーリーだったから、また差別的行動を取られたのですね」


 しっかり俺の情報を頭に入れているのか。よかったよ。こういう時は大抵切りつけられてからじゃないと、話を聞いてくれないものだと思っていたから。


「そういうことだ。騎士は冒険者を毛嫌いしているものとばかり思っていたよ」


「そんな事言ったら皇帝様と第一皇后様も毛嫌いしないといけないからな」


 確かにそうだな。冒険者で手柄を上げたから帝になったんだし。それなのに冒険者に-な騎士もいるのか。


「姫様に改めてご挨拶しても?」


 キリツが盾になる様に話していたから、俺は見えない状態で挨拶してしまったことになる。


「よろしいですか?……はい。では頼む」


 と言ってが引くと、ルクソルーゼ姫の顔を見ることが出来た。


 まず、第一印象は目つきが悪いということだな。顔は綺麗であり可愛くもあるのだが、眉間にシワが寄っていて微妙な印象になってしまっている。


 簡易なドレスのようなものを着て、姫の前の机には沢山の本と紙が重ねられている。


「お初にお目にかかります。私はSランク冒険者のカズシと言います。式典にて護衛を務めますので、よろしくお願いします」


 しっかり頭を下げるが、騎士が王などにやるような敬い方はしない。


「……」


 キリツも冒険者とはこういうものだとわかっているようで、何も言ってこない。


「初めまして、私はルクソルーゼと言います。ブルースやオルデスト……エルフの氏族名など色々な名前もありますが、ルクソルーゼとだけ名乗らせていただきます」


 声は柔らかく澄んでいるが、心がほとんどこもっていないような声だった。これはなかなかにえぐい魔法なり薬があるようだな。心を殺すなんてよくやるよ。


「失礼を承知で1つお聞きしてもいいですか?」


 姫がただの冒険者に伺いたてしなくてもいいと思うが、


「どうぞ」


「では、何故貴方は心が完全に壊れているのに、普通の人のように過ごせているのですか?」


「は? おまえはなにをイっているんだ?」


 ははは、いとをかし。こいつは俺の何がわかったんだ? まず、俺は心があるし、壊れてなんていない。キリツは俺の言葉に怒りを示すわけではなく、またかというような表情をしながら、頭を抑えている。


「人の心はガラスの器のようなものです。その中で水が揺れ動くことによってその時の感情が現れます。水が濁れば心が荒んでいて、沸騰していれば怒っている、澄んだりしている時は迷いがない時です。でも、私は心を壊すという禁薬を使われてしまったので、感情というものが抜け落ちてしまいました」


 なんとなくわかる。俺はだいたい相手が嘘をついているかついていないかがわかると言ったことがあるだろう。マップ機能の一部に頼ることでもわかるが、俺は相手の魔力の……魂の揺れ方などを見て、嘘か本当かを見分けている。本当に嘘がうまい奴は揺れすらしないらしいけどね。


「私の場合は先程の表現を使いますと、ガラスの中の水を無理やり抜き取られてしまった様なものです。でも、貴方はその器を一度粉々に壊されて、無理やり元の形に戻したような状態です。ツギハギだらけで、ヒビがどこにでもあります」


 世界に絶望をしたことがあるが、別に壊されたことなんてねえぞ? 勇者の時もそういう魔法もあったのでマルクが対策はしていたし、その後は自分でしていた。なんかイライラしてきたわ。深呼吸をして心を落ち着かせる。


「それだけでも驚きです。貴方はそれ以上におかしいところがあります。粉々になった時になくなってしまった心の動きを表す水。それがあるかのようにビビだらけの器の中の空気に色をつけたり温度を上げたりして、心の動きがあるかのよ」


「姫そこまでにしろよ?」


 姫の前まで一瞬で移動して、姫の口を無理やり手で覆い動かなくする。それ以上は聞いてはいけないと思った。


「そこまでにはするのはお前だ!」


 キリツは表情を一気に険しくさせ、俺の首元に剣を押し当てている。少し切れているが関係ない。


「黙れ雑魚。貴様の剣では薄皮一枚しか切れぬわ」


 俺がキリツに気を取られているうちにルクソルーゼが机の上にある紙に何かを書いていた。それを見てしまった。


 〘貴方の心は全てが偽り。まるで人間以外の何かが人の形をしていて、心だけは人であることを望み続けているように見〙


「やめろ!!」


 さっきまで口を抑えていた手をルクソルーゼの胸倉を掴んで無理やり持ち上げる。これで書けないだろう。もう片方はキリツの剣を摘んで止める。


「やめない。貴方は元は人間であっただろうが、もう心は人間以外の何かになってしまっている。それ」


 胸倉を掴まれて持ち上げられているから、首が締まって苦しいだろうに、それでも自己紹介をした時と変わらない無表情で、喋り続けるルクソルーゼを脅威に思い、割と強い力で壁に投げつけた。


「黙れと、言っている!!!」


「姫!」


 女騎士は剣から手を離して、投げつけられた姫の方に走っていった。


「……ゴホゴホ、ゲホ……黙らない」


 左腕が折れたのかぷらーんとしているし、頭からは血を流してふらつきながらも、血を吐きながらも、生きている右腕を使って立ち上がってきた。なぜだ!


「何故立ち上がる! 貴様には俺なんて関係ないだろう? 俺は式典でお前を護衛するだけの冒険者だ! 何故そこまで踏み込んでくる!? 俺の何がわかるって言うんだ!」


俺は人間だ。まだ(ばけもの)なんかじゃない。ルナ達が悪いわけじゃないが、俺はまだ人間だ。


「人間以外の何かになっていても、心を偽らなければ保てない状態だろうが、私が貴方を貴方として、偽らない……偽れない貴方を私が肯定する。私が壊れた貴方を好きになる。あなたを肯定しないと、私も化物になってしまうもの」


 ……………………


「…………すまなかった。痛いだろう。今治してやる」


「貴様! 姫様に近「キリツ大丈夫」しかし!」


「カズシはもう大丈夫だから」


「回復魔法……これで治っただろう」


「ありがとう。でも、ダメですよ? 人間の心でいようとしているのに、人間の心がないからって非道なことをしてるでしょう」


「……ああ、善処するよ」


「私の為に善処してね」


「ああ」


「私のことはルーゼと呼んで?」


「わかったよ。ルーゼ……俺はお前を治したい」


「治すってこの壊れた心を?」


「ああ、俺ならきっと出来る。薬という未知ではない力によって壊されたものなら回復できる」


「……でもそれだと」


「お前は治したからって今までの自分をなくすのか? 今さっき言った言葉を治った程度で否定するのか?」


「忘れるわけがないわ。否定もしない。お願いしてもいい」


「任された。かいふ…………復元魔法【心修復】」


「ありがとう、カズシ」


「泣きながら笑顔になるなんてどちらかにしろ」


「なら、笑顔を向けた方がいいかな?」

お疲れ様でした。


最後の「」だけの文は仕様です。次回にわかると思う。


次回、第67話! 心壊者

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