第60話! 騎士
あぶねえ寝てた。妹に起こされなかったら、毎日投稿が途切れることになってたぜ。
壊滅を書きたかったのね。でもね、手がカッと動くんです。姫様をギルドに置いていくるだけどないよな?って思ったら、手が勝手に動いたんです。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
まあ、なんだ。あの後は泣いて寝た! 泣きつかれて寝たとか、恥ずかしいな。
その次の日というかその日の朝。宿で朝飯などを食べ、出かける準備をしている。
「今日は少し街を回ったら、冒険者ギルドに行ってお前の引渡しだからな」
「えー、嫌です。なんであんなところに帰らないといけないんですか! どろどろなんですよ!? 権力でどろどろなんですよ」
頬を膨らまして、抵抗してくる第三皇女。いや、俺がやばいから。
「昨日はSランク冒険者のカズシとその仲間と共にいる、とギルドが通知してくれたから、なんとか一日は確保できたけど、このままじゃ俺が捕まっちまうよ」
「……それは困りますわね」
状況を再確認して落ち込む皇女。浮き沈みが激しいけどどこまでが演技なんだ?
「そう、落ち込むな。俺は今回なぜ王都に来たかわかるか?」
「……式典の何かを依頼されたのでは?」
イジケながらもしっかり答えてくれている。
「俺は皇女様の護衛なんだってさ」
「え!? ということは私ですか?」
顔をパッ! っと明るくさせてこちらを見てくる。皇女の護衛だけど、第二の方であって君じゃないが。
「どうだろう? 俺は皇女の護衛の為に早く王都に行くぞって言われただけだからな」
「それなら、しょうがないですわね。戻りましょうか……でも、お昼まではよろしくお願いしますね!」
「はいよ、お姫さ「リーゼ!」リーゼ」
と言って準備を始めた。髪を整えたりし直しているようだ。
「ということなんで、午前中はそういうことで。リルヒはまた今度埋め合わせするから」
「ふふふ、そうね。わかったわ」
リルヒがずっとニヤニヤこちらの顔を見てきている。大方昨日の夜の俺でも思い浮かべているのだろう。他の人には言ってないみたいだから、まだいいがな。
「カズシ様、私はお屋敷に必要な物の補充をしたいので、離れてもいいでしょうか?」
「ああ、悪いな。ミアがそんなことをしなくてもいいんだがな。帝都にしかないものとかを適当に買っておいてくれ」
「あ、なら私も式典を見るために、ずっと一緒だったパーティーの人たちが来てるから」
「前に言ってた、決闘で勝たないと結婚しないということを契約するのを促した奴らか……礼を言っておいてくれ」
そういうと頭を傾けて、
「お礼?」
わかってないのね。前に自分で言ってたのに。
「その人達が促してなかったら、ホムラと一緒になることもなかっただろうからな」
「あーあ。そうね! 皆に結婚しました! って言わないといけないしね」
「時間がある時に俺もその人たちと会ってみたいな」
「うん、それも言っておくね」
俺についてくるのはフィーネとリルヒということになった。
ギルドにつくと、周りがシーンとなった。Aランク三人に大立ち回りしたからな。まあ、しょうがないか。なんて思っていたら、
「カズシさん!」
とお下げの子が来た。ケーキをあげた子だね。
「よ! どうした?」
「お菓子ありがとうございます」
「いやいや、俺が勝手にあげたものだから、気にしないでくれ」
「なら、勝手に気にしておきますね」
「……そうしておいてくれ」
こんなやりとりをしていると、周りの空気も軽くなり、ギルドらしい喧騒が戻ってきた。
「これで借りの一つは返せましたかね?」
やりおる。
「おお、カズシ! あの方はいるのだろうな?」
俺が来たことが伝わったのだろう。ガンスが奥から出てきて、後半をひそひそ声で聞いてきた。リーゼには俺のフード付きのコートを着て、顔を隠してもらっている。
「いるよ。俺がいつも着てるコートを着ている子」
「お前なぁ、あの方にお前のコート……お前特有の浄化とかで清潔だから問題ないのか? いや、まあいい。奥であの方と待っててくれ」
「リーゼ行くぞ」
お下げ集団と話していたフィーネとリルヒを置いて、リーゼをギルドの受付の奥に引っ張っていった。リルヒはついてきた。
「喋っていてもいいんだぞ?」
「目を離すとすぐに無理をするから無理」
信用がないようだ。
「こんな外で無理やりひっぱるなんて、恥ずかしいです」
リーゼもリーゼで意味がわからんことで顔を真っ赤にしてるし。外で手を繋いだりするのはダメな人か。お姫様抱っことかさせたくせに。
「なあ、なぜお前はメリアリーゼ姫様のことをリーゼと読んでいるんだ? それは確か、家族しか呼ばせていない愛称じゃなかったか?」
その声を聞いて、俺の対応をしている人が誰なのか気がついたようで、
「あら? ガンス様じゃないですか。お久し振りです」
「ああ、お久し振りです。姫様も元気なようで」
元気なようでのところに力が入っていたけど、気のせいだろうか?
「ガンス様がカズシ様をこの帝都にお連れしてくれたのですか?」
「ええ、私が管理しているギルドに所属してくれていますからね」
「そうなのですか。なら、ガンス様も恩人ですね。ありがとうございます」
『どっかの馬鹿って命を狙われる類のことなんだよな? なんでこんなに軽いんだ?』
俺に言わないでくれよ。
『ガンスの方が付き合いが長いんだろう?』
『いや、王とは仲がいいが姫とは付き合いなんてないしな』
「姫様が簡単に頭を下げてはいけないとお父様にも言われていませんでしたか?」
「ええですが、礼には礼を尽くさねば人の心は離れてしまうものですから」
これがよくあるお姫様モードというやつなのか? オーラというか、雰囲気がだいぶ違う。
「近衛騎士だ! 姫様を渡してもらおう」
ギルドのスイング扉(ウェスタンとかの酒場のアレ)をバン! と開けて入ってきたのは、銀髪のイケメンとその他数名の騎士だった。
剣だけなら、ミアともいい勝負しそうな雰囲気を醸し出している。冒険者を見下している感も強いな。
「こちらですよ」
ガンスが声をかけて、騎士をこちらに呼び寄せた。そして俺に向けてボソッと言ってきた。
「わかってるよな?」
「煽られなければ」
そういうと、頭を抑えて騎士の方に向かっていった。最低限の礼儀があれば何もしないさ。
「あの騎士は近衛騎士団長候補のひとり、アレストーリと言います。剣の腕はいいのですが、冒険者によって作られた国なのに、冒険者など野蛮な者共だ! と声高らかに話すなどあまり好印象ではないんですよね」
「解説ご苦労様。でもな、自分の国の、まして守ってくれる騎士の情報を俺に渡すとかなんなの?」
リーゼが教えてくれたけど、そんな事教えちゃダメだろ。お前は頭が回る天才じゃなかったのか?
「嫌ですねカズシ様。カズシ様がよければ、いつでも血縁になれるんですよ?」
身内になれば関係ないよね! って考えの元喋ったのか。俺の女も何故かリーゼを迎え入れていたし、外堀を埋められたか? いやまだ大丈夫だ。俺には国に仕えるなんて時間はないんだ。
「行ってやれ」
「はい」
返事をしたのに、俺の手も一緒に引っ張らないでー。
「アレストーリー! 私はここよ」
と言って、着ていたコートのフードを下ろした。
「姫様! ご無事でした……か」
アレストーリーとかいう奴の考えは簡単にわかるぞ。姫様の無事を確認した瞬間に、姫様に手を引っ張られている野郎を見つけ、そいつを敵と見定めたんだろうな。目線でわかる。睨まれてるもの。
「貴様! お前は王族誘拐罪で城まで来てもらおう」
権力争いのゴタゴタに巻き込むなよ。俺を!
『ガンス。城には連絡は言ってるんだよな?』
『王に直接、俺の世界で最も信用も信頼もできる奴の所にいるから問題ない。お前だってヤンチャしてただろう?って言っておいたから、罪なんてないはずだ』
『これは反論していいよな?』
『ケーキをデリバリーで頼む』
『おっつかれさまっデース』
俺は無実に罪を着せられた。
お疲れ様でした。
権力なんてカズシには無意味。
そんな主人公ですが、権力の泥に片足を突っ込みましたね。
次回こそは壊滅を書きたいけど、流れ的に無理だろうな




