第54話! お姫様
カズシ君は満更でもないようです。
章死の王となんたらを変えました。なんかダラダラしてたら、15話くらいこの章で使ってたので、章を変えた。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
「改めて、助けてくださりありがとうございます」
コケて支えられた状態から、しっかりした立ち振る舞い戻りお礼を言ってきた。仕草に気品があり過ぎて、貴族以上だとモロバレだな。
「ああ、別にいいが、そのお礼だと貴族以上だともろにバレてしまうし、その一般庶民の服装を真似たような服は逆に目立つぞ?」
それを指摘してあげたら、心底驚いたような顔をして、
「え!? 本当ですか? 私が王族だとバレてしまうなんて……やっぱり街に出てみないとわからないこともあるんですね!」
なんて同意を求めてきたけど……なるほど! ポンコツな姫様か。
「あとさ」
「はい!」
「俺は貴族だとバレてしまうと言っただけで、王族だと指摘はしていないのね」
「あ! もしかして私が自分でバラしてしまいました?」
「自分でバラしてしまいました」
あうーとか言って、オーバーリアクション気味に落ち込んでいる。どこの王族もこんなのばっかなのか。
ていうか、流石におかしい。なんでこんなにあるあるイベントが起きんだよ。王族のお忍びがバレて、馬鹿な奴らに追われ、それを俺が助けるとか。おかしい。
「黙っててやるからいいけどな。俺はSランク冒険者カズシだ。このまま置いていくのも忍びないから、ギルドとかになら連れていってやるよ」
冒険者カードを見せて自己紹介する。Sランクってだけで、信用される魔法のカード。
「あ、もうバレてしまったからいいですね。私はこの国の第三皇女である、メリアリーゼ・ブルースといいます。本名はもっと長いのですが、疲れてしまうのでこれだけでいいですよね?」
皇女なのになんか喋り方が柔らかいな。もっとガチガチなもんかと思ったが。性格だろうな。
「それで、君はなんでこんな所で追っかけられていたんだ?」
気になっていたことを聞くと、バツが悪そうに視線をうろちょろして、手が忙しなく動いている。ゴニョゴニョしているで伝わるだろうか?
「あー、今の時期って式典があるから色々と抜け出しやすくてですね、自分のしたい勉強ならいいんですけど、縫い物とかそこら辺はとっても嫌いで……その授業のタイミングで隙が出来たので……抜け出してきちゃいました」
テヘペロみたいな顔をしているけど、可愛いから似合っている。
「それで抜け出したはいいけど、どこに何があるかわからず、ほっつき歩いていたら追われたとかそんなんか」
「凄い! どうしてわかったんですか!?」
「こういう話は大抵そういうものなのよ」
「? そうなんですか……あのカズシ様はSランク冒険者なんですよね?」
「まて、メリアリーゼ姫。なぜ俺を様付けする? 貴女は皇女なのだろう?」
「私を助けてくれた王子様に対する礼儀です。御伽噺のお姫様みたいじゃないですか!」
あー、はいはい。オーケーオーケー。流石にこのテンプレは看過できん。後で殴り込む。
「……言っても聞かんだろうからいいけどね。無理やり城に連れていこうとしても、駄々を捏ねるんだろう?」
「はい! 王子様と少しでも一緒にいる為に駄々を捏ねさせて頂きます!」
ドヤ顔で胸を張ってきた。無い乳でやられても、オオーってならんからな。それはそうと、リルヒに降りてきてもらうか。
「俺の仲間が空中で待ってるから、呼んでもいいか?」
「王子様のお仲間ですか!……空中ですか?」
「ああ、あそこに人がいるのが見えないか?」
リルヒがいる方向を指さして、どこにいるのか教えてあげる。
「魔法で空を飛んでいるんですか!?…………」
なんかうずうずしてる。魔法で空を飛べる世界だけど、実力のある風魔法使いが飛べるだけだし、飛びたいんだろうな。
「メリアリーゼ姫、そ「王子様!」はい?」
「先程からメリアリーゼ姫と呼んでいますが、それじゃあ他人行儀過ぎて悲しいです。リーゼと呼んでください! 親しい人しか呼ぶことがない呼び名ですので」
他人行儀って他人なんだけどな。うーん。
「メリアリーゼひ「リーゼ!」……」
「メリアリー「リーゼ!」」
「メリ「リーゼ!」」
「リー「リーゼ? 今なんて言おうと?」 リーゼ」
「はい、王子様」
こういう時の女性には勝てねえと思うんだよね。武力行使出来ねえし。
「仲間に降りてきてもらおうと思ったけど、飛んでみたい?」
「是非! いいんですか!? やったー! 今日だけで何個もの夢が叶う!!」
とても喜んでくれるのはいいが、大声出すな。追っては2人だけじゃなかったみたいで、二人ほどこちらに来ている。
「【異次元トンネル】【ライトニング】【転移】」
敵ふたりの前に空間をつなげて、さっきと同じコンボ。
『追加ふたり』
『畏まりました』
「行きましょう!……あのお願いしてもいいですか?」
「なんですか? 無茶はしませんけど」
「いえ、空を飛ぶ時はお姫様抱っこして貰えますか? それも夢の一つなので」
そのくらいなら……大丈夫か? 本当に色々詰められている気がしないでもない。
「いいですよ。……しっかり腕や服に捕まっていて下さいね」
「はい!」
ゆっくり上昇していく。
「わあああああ!!! すごい! 飛んでます! 王子様! 飛んでますよー。お兄様達やお姉様達も飛んだことないのに、私飛んでます!」
すごいテンションだけど、落ちないようにぴったりくっついている。
「なんでその子を連れてきたのよ」
「この国の姫だったから、無駄に拒否できなかった」
「姫なんて言い方やめてください!」
「はぁー、リーゼは姫様だったから拒否なんて無理」
「お姫様!?」
「貴女が王子様のお仲間ですね……王子様、その方とふたりでお話したいのですが……いいでしょうか?」
「いいよ。ちなみにリルヒって名前ね」
「リルヒ様少しお話をしませんか?」
女って秘密のお話好きだよね。男も下世話なことなら好きだけど。
「いいわよ」
リルヒが立っている結界の上に乗せて、めっちゃ離れた。
『何の話をしていると思う?』
『カズシに惚れたのなら外堀を埋めるのが鉄板』
『仕草とか雰囲気はアホだけど、そういうやつに限って頭が回ったりするからな』
「はぁぁぁぁぁぁ!!??」
『リルヒが叫んでるし。縫い物とかは嫌いって言ってたけど、知識を蓄える勉強は好きとかそんなところだろうからね』
『リーゼは悪い子じゃないから、いいんだけど、国の姫だからな』
『面倒くさいよね』
「カズシ! きてー」
話が終わったのか呼ばれたので行く。
「話し合いは終わったの?」
「ええ、メリアがいい子ってのがわかったわ」
「メリアなの? リーゼじゃなくて?」
「リーゼは家族と王子様だけが呼んでます。ほかの人はメリアと呼んでもらっているんです」
「…………まあいいや」
「王子様? 街を少しでもいいので見たいのですが、よろしいでしょうか?」
「全然いいよ。行こうか」
「はい」
「私もいるからね」
「わかってるよ」
こうしてメリアリ……リーゼとリルヒと共に街に繰り出し、屋台の食べ物を食べたり、締まりそうになっていた古着屋にお願いして買わせてもらい、いろいろ見て回った。
「串焼きは味が大味ですけど、美味しいのですね」
「でも、変なお肉を使っている屋台もあるから、気をつけないといけないわよ?」
「ですね!」
「……リーゼはこれからどうする? 俺の泊まってるホテルに来るか? 変な意味合いはない。仲間もそこにいるし」
「いいんですか?」
「どうせ問題になるなら1日も2日も変わらんだろう。ガンスに言っておけば問題なかろう」
「ガンスって城壁さんですか?」
皇女ですら知られてるのか。すげえな。
「城壁だな。あの人ならなんとかうまくやってくれるだろう」
ホテルに戻りながらガンスに念話をした。
『ガンス? 今平気?』
『……ああ、大丈夫だ。またなにかしたのか?』
『なにかしたと言えばした。リーゼ……メリアリーゼ姫を保護した』
「『はああああああああ!?』」
ガンスは驚くと念話だけでいいのに、口からも叫んだりする癖があるな。多分今回も叫んでると思うし。
『……何があった?』
『リーゼが抜け出してきて、どっかの馬鹿に追われていた。姫とは知らずとりあえず助けたら、姫だった。俺といたいから帰りたくない』
『…………俺が信頼できるSランク冒険者に護られながら、街を散策していると言っておく。明日の昼にはギルドまで連れてきてくれ。あとコーヒーとチーズケーキ一式ほしい。徹夜なんだよ』
『今転移で行くけどいい?』
『もちろん』
転移で移動して、ガンスにこれ以上はやめてくれと言われ、ケーキを渡して戻ってきた。
「…………メリアとお呼びください。よろしくお願いします」
各自自己紹介をして、最後にリーゼの自己紹介が終わった。
「皆はご飯食べたんだよね?」
「旦那様が連絡なしで遅くなったので、食べに行きましたね」
「すまん。念話で一言くらい言えばよかったな」
リーゼに圧倒されてたから、忘れてた。
「皆さん。今日は色々お話したいのですが、いいですか?」
首をコテンと斜めに倒し、そんなことを言っているリーゼ。あれは計算も含まれているだろうけど、可愛いから問題ないよね。
あと! 手は出さねえからな。流石にそれをするとマジで不味いし。
「リーゼすまんな。俺は夜やることがあるから、帰ってくるのは朝になる。みんなと話していてくれ」
「…………わかりました!」
「みんなもすまんな」
みんなも何も言っていないのに理解してくれているようで、よかった。
「【転移】」
転移で教会の人がいないところに忍び込んで、
「あげてくれ」
神界に来た。ルナとアルミエが出迎えるために来てくれたようだ。
「カズシお疲れれざま!?」
「ルナ、てめえふざけんなよ!」
出迎えてくれたルナの首を両手で思いっきり持ち上げ締める。
お疲れ様でした。
カズシ君は激昂しています。
てか、リーゼはこんなにする気がなかった。でも、なんかいつの間にかこんなふうになってた。
先が書きたいでござる。シンイチ編は書く気が起きないから当分先。
次回、運命




