第47話! 夫婦
本当は慈悲はないを書きたかったんだけど、ホムラが登場後から影薄いと言われて、確かにそうだなと思い、章最後に入れる気でいたこの話を入れることにした。
量が短いですが、ノリ的にこの後に慈悲はないの内容を入れたくなかったので3000くらいで投稿。
では、お楽しみいただけると幸いです。
魔力式バスは見た目は黒い箱に車輪が4つついているだけのもの。横はガラス出てきているが、外側からは中が見えないように、ガラスの外側に闇魔法の【暗黒】を付与することで見えなくして、内側には無属性魔法【透視】と【暗視】を付与したのだが、
中は3LDKの部屋になっていた……空間魔法で歪めて、バスの入口に固定したのね。
『なんか前とすごい変わってるんだが』
『お風呂つけたり、キッチンつけたりしてたら、狭くなったから空間を作ったの。屋敷の部屋を異空間にするのは、部屋が動かないから簡単だけど、バスは動き続けるから異空間化をするのが大変だった』
魔法のみの戦いだったら、多分スラリンに勝てない気がする。まあ、俺と敵対したら魔力補給速度が今までの1%以下に下がるから、長期戦に持ち込めば勝てるがな。
『そんな未来はないから問題ない』
『そうだな』
魔力式バスの運転は試乗の際に、スラリンに教えて貰って1時間で習得したミアがやってくれることになった。
「スラリンの分体が運転してくれるから大丈夫だぞ?」
「いえ、最近はカズシ様のお役に立てることが減ってきましたので、後運転が楽しいです!」
「ならいい。役に立ってないとか言うのはやめろよ? 疲れたら言ってくれ」
「はい!」
『ミアが無理しない程度で止めてくれ』
『わかってるよ』
スラリンの分体に命令を出してもらった。
「あの、旦那様……少しよろしいですか?」
ホムラが話しかけてきた。尻尾の関係上和服ばかりだけど、今日はワンピースを着ているようだ。まだ全然歳いっているように見えないのに、結婚を催促される歳いってるんだもんな。
「旦那様? 変なことを考えてませんよね」
「ホムラの今日の服装はとても似合っていて、このまま寝室に連れていきたいと思っていただけだ」
「もう、そういうのは夜にしてください」
鋭い眼光から一転、頬を染めてクネクネしだした。ふう、あぶねえ。皆から離れた席に座って一言。
「で、どんなことを聞きたいんだ? 魔法の無詠唱が上手く行かないのか?」
「まだ何も言っていないのに、よくわかりましたね……そうです。皆さんが使う無詠唱は、はっきり言って異常です。魔法そのものを根底から覆すものです」
ミアに無詠唱のことを聞いて、俺が神聖国に行っている間ずっと練習してたらしい。ということをファベログから聞いた。
「そりゃそうだな。精霊無法もそんなもんだけど、あれはエルフと精霊に好かれやすい人しか使えない。でも、無詠唱は魔法が使えるやつならみんな使える」
『うちはカズシが精霊に好かれやすい人じゃなくても、呼ばれたら来てたけどね!』
それは初耳。魔力のうまさ=精霊に好かれやすいだから、それで呼ばれたかと思った。
『そうなの?』
『そうだよ。うちはカズシがこの思想を理解して、共に歩んでくれると思ったから、召喚に応じたのだ!』
……てことは、俺は魔力的にまだまだ中二病だと思われたから、クロは来てくれたのか? いやいやいや……まあ、現代でも魔法を使おうと思えば使えたから、それ系統のを読んで、頭の中で再現とかはしてたけどさ、別にいいし、厨二病でも。
『うん、ありがとう』
『我は月神に反逆せし勇者である!』
『スラリンは本気で俺を怒らせたいのか?』
『ごめんなさい』
「そうなの。しかも、旦那様のパーティーで役に立つためには最低ラインが無詠唱。しかも、火を自在に、イメージ通りに操れるようにならないと、邪魔なだけだから……」
「別に俺の嫁だからって、戦闘に出ないといけないわけじゃないぞ? ルキナだってそうじゃないか」
ルキナも今回のこれに連れていこうとしたら、ギルド長の代わりができて、しっかり指示ができるのがルキナしかいなかった。だから、やむなく置いてきた。俺達が帝都についたら、何日か休みをもらって、俺の転移で行き来して遊ぶと言ってたからなんとかガンスを殴らずに済んだ。
「ルキナはルキナで旦那様の為にギルドで出来ることをやっているではないですか」
「なら、今俺が着ている着物を作ってくれたのは、ホムラじゃないか」
今俺は黒地に青の着物を着ている。ミスリルを糸状にした物を布にして、それを縫ったらしい。ちなみに手縫い。そのままだと重いので、スラリンが重力魔法【重量減少】を使ったらしい。着心地もいいし、とてもいい和服だ。
「確かに私が作りましたが、旦那様が本気で動いたら、壊れてしまいますし、旦那様はミスリルよりも硬いじゃないですか。」
「ミアは戦闘に、日々の食事などにやっています。私もできますが、ミアの仕事を奪いたくないので、やりません。リルヒは旦那様のそばにいるだけで楽しませる才能があります。それに戦闘でも役に立ちます。フィーネは屋敷の空いている場所で野菜を育てていたり、御近所付き合いをしっかりしていますし、戦闘面もばっちり。精霊の方々はライは無邪気に、クロは常に旦那様といて、フウは割と寝ていますが豊富な知識で手助けをしています。スラリンは特別なのでわかりませんが」
「そうだな」
フランは抱いてもいないし、嫁でもない。どちらかというと悪友みたいな感じのポジションにいると思う。働いているのに、俺への借金が増えているのはどうなのよ?
「それなのに私はただ針仕事しかできません。火魔法だって、旦那様にも勝てませんし、スラリンがいるのでお役目御免ですよね?」
「うーん。お前のそれを解決する方法はいくつかあるが、ホムラのためにならないからな……うん? あのなホムラ」
「なんですか?」
「ミアはどこまで行っても、嫁であるが従者であり奴隷なんだ。リルヒは騒がしい妹のような奴であり嫁だが、契約のせいで俺よりか下の地位だ。フィーネは俺を心酔していて、嫁だけどミアみたいなもんだ。精霊たちは俺自身と言っても過言じゃないから、また別の区切りな。お前はどういう立場だと思う?」
「……わかりません」
心が沈んでてまともに考えられてないな。こんなになるまでフォローしてなかったのか俺は!……神聖国でバテてたから何もできないか。
「お前だけは、俺に「私に勝ったら結婚してあげるわ」とかいう斬新な告白をしてきて、夫婦になった。ホムラとは夫婦以外の繋がりがない、奴隷でも、従者でも、契約により俺を傷つけられないわけでなく、心酔しているわけでも、俺自身でもない。ホムラだけが、俺の混じりっけのない妻としての立場だけでそばにいることが出来るんだ」
「はい」
こんなことで泣くなよ。
「逆に言うと、俺は卑怯なんだぜ? あの三人の傷ついた心に、うまく入り込んだだけ」
「え?」
「ミアは奴隷になって、死にそうだったのを助けた。リルヒは仲間を逃がすために戦い、ボロボロで死にそうになっていたところを助けた。フィーネはオークに犯されて、死にそうな心を俺が救った。全員俺が命を救ったんだ。場面が良すぎるだろ。白馬の王子様も真っ青なほど状況がよかったんだぜ?」
「でも、お前は俺の噂を聞いて、戦い、今ではしっかり愛してくれている。吊り橋効果からの愛ではなく、しっかりと見定めて俺のそばにいてくれる。いや、みんなが悪いわけじゃないんだぜ。でも、お前だけがお前だけが妻としてそばにいてくれる」
「はい……はい」
俺は立ち上がり、ホムラの後ろから抱きしめる。
「だから、自分が相応しくないとか変なことを考えるな。そういうことを考えて、内側に溜め込んでしまうのもホムラなんだろうけど、そんなに辛そうなら、全てを俺にぶつけろ! 俺は割と時間がないけどお前らの、お前のためなら時間だって止めてやるよ。だから、遠慮するな。愛しているよホムラ」
「旦那様! 旦那様!」
ホムラのキツネ耳は撫で心地抜群だな。ゆっくり、しっかり、俺がホムラを必要としているとわかってもらうように、なで続けた。
お疲れ様でした。
ホムラはSランク魔法使いにも関わらず、ミアにもリルヒにもフィーネにも勝てる気がしなくて、心が折れていたので、こんなにメンタルが低くなっていました。
詠唱魔法と無詠唱魔法なら無詠唱を連発されたら、かてませんからね。
次回、慈悲はない。




