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女神と夫婦になるために  作者: たつ
4章 暗躍せし勇者
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第41話!憑依と指名依頼

この話及びこの後の数話はTSのような要素があります。注意してください。見た目だけ変わる出来事が起きます。


カズシはいろいろ目立ちすぎ。


では、お楽しみいただけたら幸いです

 神聖国の宿から馬を受け取り、街を出たところで【転移】を使って屋敷の敷地まで戻ってきた。ちゃんと国境を超えてないけど、まあいいや。


「二人とも落ち着け。驚いていると思うけど、特殊な魔法で俺の屋敷に戻ってきただけだから。何も怖いことは無い」


 先に先手を売って混乱を抑える。


「あ、マスター。おかえりなさい」


「きゃああああゴブリン! ゴブリン!」


 ダメだったわ。えっと、ラカ(ツンデレぽい方)がディルを見て叫び出した。闘えない人が武器持ちゴブリンと出会ったら最悪らしいからね。姉的雰囲気を醸し出しているラカが怖がるのか。ラナはラカの前に立って両手を広げて守ろうとしている。本当はこうなのかな?


「お嬢様方。怖がらせてしまい申し訳ありません。私はマスター……カズシ様の従属魔物をしているディルと申します。以後お見知りおきを」


 説明しようとしたらディルが自己紹介しながら、武器を地面において、頭を下げていた。ファベログがこういう教育をするとか言ってたけど、こいつらはしっかり出来るんだな。


『ディルはほかのやつと比べて勉強熱心。だから、このくらい余裕。多分カズシよりも頭がいい』


『マジで?』


『この世界のことについてね』


『なるほど』


「二人とも。ディルが自己紹介したように、この屋敷にはゴブリンが3人いる。どいつも君たちを守ってくれる存在だから、ちょっとずつ慣れようとしてみてね」


「……ディルさん、私はラナ、ラカの妹です。よろしくお願いします」


 ラナがディルに近づいて握手を求め始めた。この子はなかなか根性あるね。震えながらも手を差し出すなんて。


「ちょっと!……その……」


「よろしくお願いします。握手をして下さり、ありがとうございます」


「ファベログも来てくれ」


 呼んで数秒。俺の影から出てきた。


「きゃああああああああ」


「あれ? すみません。今屋敷の中にいなかったもので、状況を把握できていませんでした。私はノーライフキングでカズシ様に仕えているファベログと申します」


「私はラナ。あっちはラカで私の姉です。よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします」


 ラカは口をぱくぱくしている。ノーライフキングって言えば、この辺りでは悪の大魔王みたいな感じでお伽噺で語られている。


「なあなあ、カズシ。なんでお前の屋敷には歴代の魔王よりも力が強い魔物が二匹もいるんだ?」


「知らね。てか、歴代の魔王の実力なんてなんで知ってんだ?」


「剣が教えてくれるんだ。魔物の大体の実力とそれがどのくらいなのかを何となく感じ取れるようになる」


 聖剣はそういう便利機能が沢山あるらしい。悪者が聖剣を持つと手が燃えるというのもその機能の一つ。


「便利だな」


 ちなみに俺はサーチ能力を失いました。一時的に使用不可にして、その代わり別の能力を借りた。もしまたマールが尖兵を送ってきたら、サーチで能力を測れないだろうからね。マップ機能の性能をその代わりに上げた。


「この屋敷はリッチハウスですよね?……リッチからノーライフキングになったとか……ないですよね?」


「あります」


「マジかよ! リッチを重要討伐指定に掛けてもらわないと」


 お前らは慌てすぎだ。もっと情報を聞いてから慌てればいいのに。


「そんな事しなくてもいいぞ。何千年とリッチが力を貯め続けたら、進化できるけど数年じゃならないから」


「だったらなんで数年前までリッチだった奴がノーライフキングになってるんですか!」


「俺がそうさせたから」


「「…………」」


 英雄二人はアホみたいな顔しているし、兎二人は???みたいな顔をしている。


「ファベログ。この二人を屋敷のメイドにでも仕上げてくれ。給金は最初は少なめで『普通くらいはあげて』熟練度が上がり次第どんどん上げていいから」


 途中に念話を入れてしまったと思うけど、まあいいよね? 甘やかしても。


「かしこまりました。部屋はどうしますか?」


「お前らはひとり部屋がいい? ふたり部屋がいい?」


「2人でお願いします。おねえちゃんは一人で寝るのが得意ではないので」


 ラナが近づいてきて小声で教えてくれた。ラカはなんかキョロキョロしてる。状況に追いついてないんだな。


「わかった。必要なものは……ディルを連れて買ってきてくれ。遠慮しなくていいし、この街ならディルを連れていれば絶対安全だから」


「わかりました! おねえちゃんいこう」


「……え、ええ」


「ディル頼むね」


「了解しました」


 ラナがラカを引っ張って、その後にディルが付いていった。


「2人はどうするの?」


 英雄二人に聞いてみた。


「今回の解決で結構な量の金を貰ったんで、ゆっくりしようと思います。アーサーもそれでいいんだよね?」


「ガウェインと結婚してからゆっくり出来てなかったからね。でも、ゆっくりするにしても円卓の建物だとうるさいから家を買うしかないかしら」


 アーサーは露骨にそれを言っているのか、無意識にこの場で言っているのかわからん。多分後者だと思うけど。あと俺には報酬なんてねえよ? 妻のミスを夫が尻拭いするのに対価はいらん。


「この屋敷で泊まっていけばいいよ」


「なんかうちのがすいません。混じりっけのなく何も考えないで発したことだと思うので」


「別に怒ってないし、気にしてない。ファベログ」


「もうご用意しております。カズシ様達からは反対の部屋で、スラリン様作成のスイッチ式消音結界発動装置を設置してあるので、中でどんなに事をしても音が漏れないようになっています」


 ガウェインは頬を赤らめ、アーサーはハテナ顔。戦闘以外はやっぱり察せない子なのかね。


『なんでこんな長い名前なの? 消音装置でいいじゃん』


『無駄に長い名前の装置はロマン』


 ロマンらしい。2人を連れてファベログは屋敷に入っていった。屋敷の横にいる木で吊っているハンモックにいるフウに声をかける。


「フウきてくれ」


 フワフワ飛びながら、こちらにきた。


「なにー? もしかして憑依でもする!」


『憑依はうちがするの!』


「クロはずっとしてたでしょ? 独り占め良くないよ?」

 

『うー』


「後でしてやるから。憑依してどんな感じの力を操れるのか確認したい。あと今日は割と元気なんだな」


 クロが凄くいじけてる。教祖の時に後でやるって言ったからな。後で埋め合わせをしないと。


「ちょい待ち。あと私は度重なる連勤のせいで常に眠かっただけ。ライは雷攻撃方面に力を強める憑依だったじゃん。クロは?」


『うちとはな、テクニック型って言えばいいのかな? 他属性の魔法に闇を絡めれば、発動速度やその他ものものに補正が付くようにした!』


 機嫌が一気に良くなった。なら問題ないかな?


「うーん……なら私はアレにしようかね。カズシは何があっても怒らない?」


 なんだろう気になる。


「? 傷つけたりはしないだろう? なら怒らんよ」


「わかったいくよ」


「「憑依」」


 風属性の精霊姫であるフウとの憑依は、髪が伸び色が翠になった。瞳は分からないけど、緑系なんだろうな。足が細くなり、胴が細くなり、腕もスラリとして? 耳がエルフみたいになった。服装もエルフが着るような、草を編んだ様な靴に緑のショートパンツに? ベルトからパレオみたいなのを垂らしていて…………胸がある? 胸がある! リルヒとミアよりもある! 緑のブラみたいな服と言えないものを着ていた…………ない! あれがない! 我が息子が。


「おい、なんで女になってんだよ?」


『カズシってこれから有名になるし、色々知られていない顔も持ってた方がいいでしょ? しかも、昔色々あったって言ってたから、女性化の一度や二度あったでしょ?』


 勇者時代に実際ありましたよ? 女性しか入れない場所の調査をする時になった事もある。まあ、いいか。


『カズシはさ。その精神は異常だということを理解してる?』


「いきなりなんだし。スラリンが言いたいことは分かるが、いろいろなことに慣れてるんだろう」


 頭を捻って言っている意味がちげえよ。的な意思が伝わってくるけど、意味がわからんからスルー。


「マスクかなんかを作るつもりだったし丁度いいわ。ありがとうフウ」


『えへへ、別にいいよ。連勤地獄から救ってくれたんだし』


 そんなに辛かったんだな。神になるのに億劫になるんだが。


「この姿のメリットとデメリットを教えてくれ」


『この姿は完全に実体になれます。見た目を変えるのが目的なので触れられなかったりすると使いづらいですからね』


「俺のもう一つの姿ってわけだな」


『そうですね。魔法みたいなのは念じれば何の消費もなく風達が動いてくれます。風に関することなら大抵できます』


「あまり恩恵がないと思うけど、魔法じゃないのか? その現象は」


『ええ、これは魔法じゃないですね。その代わり他属性がカズシでも使いづらいと感じるくらいにはマイナスになります』


「まあ、そのくらいなら全然いいだろう。魔法じゃないのに魔法的現象を引き起こせるなら」


『それだけです』


「うーん。まあ、風に関する現象操作は強いな。それと実体と非実体を選べるなら悪くない。この姿に慣れるために少しだけこのままだな」


『カズシ』


「なに?」


『ブロンズが嫁を連れてくる。その人は足を怪我していて、ブロンズじゃ回復できないから、回復してあげて欲しい。それをやるまでは街を離れないで』


「ええ、わかったわ」


『なぜ口調を変えたの?』


『姿に合わせた演技をしてみてる』


 この姿のままギルドまで来た。荒くれ者共がこちらを見て、鼻の下を伸ばしている。気持ちが悪い……


『意識まで体に引っ張られてるんだけど』


『私もスラリンも女なんだよ? 逆にいつもはなんで引っ張られなかったの?』


『カズシは荒々しい方がカッコイイから、私が意識して混同しないようにした』


 照れるじゃねえか。クロは後で可愛がってやろう。


『女なカズシもいいけど、女でいることに目覚められても困る』


『目覚めねえよ?』


 近づいてこようとした男どもを睨んで引かせ、ルキナのところに来た。


「どのような御用ですか?」


「ギルド長を呼んで欲しいの」


「どのような御用でギルド長を呼ばれるのですか?」


「カズシについてです」


 ルキナの顔が一気に険しくなった。ナニコレ怖い。


「カズシさんが何かあったんですか?」


 やばいってめっちゃ怖いんだけど。


『ルキナは身内が傷つけられるのが怖いからこんなに威嚇をしている』


 なるほどね。怖いしもういいか、遊ぶのわ。


「女体化した」


「はい?」


「私がカズシ」


「いやいやいや、カズシさんは男ですよ?」


「P-ーーーーーーー」


 誰にも言えないようなルキナの秘密を耳元で囁いた。これを知っているのは俺だけだからな。


「本当にカズシさんなんですか!」


「ええ……ああ、俺だよ。声も高くなってて違うと思うけどカズシ」


「ギルド長を呼んできますね!」


 呼ばれたギルド長に連れられて、俺はギルド長室に入った。


「本当にカズシ君なのか?」


「ええ、私がカズシですよ」


「カズシさん! 面倒くさいので、そのしゃべり方はやめてください!」


 ルキナはキレると怖いんだな。すげえ怖い。


「あ、はい」


「なんでそんな姿になったんだ? 呪いかなんかか?」


「別にそういうのじゃないよ。精霊の奇跡」


「あーあ」


「うむ。わからん。それでルキナ君が分かるということは身内以外には教える気がないということだな」


「そういう事だな。俺になんか依頼とかある? 具体的にいうと皇子の成人式典の警護とか」


 一瞬驚いた顔をしたけど、なにかに納得したのか顔を戻した。


「アーサー辺りから聞いたのだな。カズシ君、君には王族の警護をして欲しい」



お疲れ様でした。


俺が、俺こそが、エルフになることだ!


この姿をゲットしたことで、本当に自重をやめると思います。


次回、まだ決まってないけど、内部事情と種族変更

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