番外編第4話!ゴブリンの苦悩その3
今回でブロンズの番外編が終わらなかった。
今日の夜はシンイチの話だと思います。
ではお楽しみいただけると幸いです。
まずは、サンダーウルフが前方から2匹と右から1匹。前方の1匹が先行している様だ。私は先行しているそいつに走って近づきながら
「【サングラス】【ハイフラッシュ】」
サングラスと言うのは、マスターの育った世界の道具だ。闇魔法【サングラス】は強い光をカットする闇を目のあたりに覆わせる。【ハイフラッシュ】は相手の今後の視力を考慮しないほどの光を放ち、辺りの魔力を吹き飛ばす効果もある。これで微弱な電気で見ているもう一つの目も少しだけ潰せる。
「「キャイン!」」
先行していた奴と右から来たやつは食らったみたいだけど、前方のもう1匹は、先行していた奴の影でうまく隠れたみたいだな。
「付加魔法【闇】……ウォォォォ!」
強烈な光に視界を奪われ2匹を無視し、前方で雷を発射しようとしている、サンダーウルフに一気に近づき額の角に一突き。サンダーウルフも放電が間に合わないと悟ったようで、避けようとするも角が持っていかれてしまう。闇魔法が付加された剣の一撃を食らってしまい、
「キャイン! キャインキャイン!」
角が折られただけなのに凄まじい痛みが走っているのだろう。付加魔法【闇】は切った場所に激痛を感じさせる性質がある。無力化させた三匹の止めを刺し、戦闘音のする場所へ。
三匹から五匹の群れを危なげなく狩っていって、その場所についた。
大きな木を囲むように展開されているサンダーウルフの群れ。先程までのサンダーウルフ、1mと少しくらいの奴が5匹に、3mくらいの巨大なサンダーウルフが一匹いた。しかもそのサンダーウルフには大きな角が二本あり、とても強そうですね。
囲まれているのは青毛の犬獣人の女性だった。垂れた犬耳に翠の瞳、胸は軽鎧の湾曲具合からして大きく、守ってあげたい雰囲気がある。身長は私の10cmは上でしょう。左腕がダラリとしていて、右脚も噛まれたのか痛々しく見える。
親玉であろうサンダーウルフがうざったそうにこちらを見て、ひと鳴きして子分ども4匹をこちらに寄越した。この群れを倒せば終わりなので、全力で行きたいと思う。両刃剣の片方の刃だけ闇の付加をやめる。
「助太刀に来ました! はあぁぁぁ! 付加魔法【光】【光撃斬波】【暗黒飛斬】」
片方の刃が光が漏れだし、もう片方の刃からは闇が溢れる。マスター曰く、光と闇が合わさると最強らしい。残り二つの魔法は斬撃とともに光の放流を放つのと、闇の飛ぶ斬撃を放つ。
「グゥォォォォオ!」
瞬く間に子分が殺されたので、こっちに意識が向いたようだ。
「ぐはぁ」
こちらを向いたと思ったら、目の前まで来ていて吹っ飛ばされた。なんとか間に盾を入れたから、牙で怪我をすることは防げたけど…………縮地ですかね? 最近これを使う方を多く見ますね。私も訓練はしているのですが、まだ習得できない。ハサもディルも覚えたのですがね。
「まだまだ死んでねぇぞ! こいよ!」
親玉を挑発してこちらに来させる。女性は身体を引きづりながらも、子分のラストを片付けたようだ。縮地は常に近づいていれば、問題ないはず。雷も溜めの動作をさせなければ問題ない。
こちらを切り裂こうと振ってく前足や噛み殺そうとしてくる牙を盾で流しながら、少しずつ女性と離れる。
「10秒後に強烈な光を放ちますので、こちらを見ないでください!」
この魔物は人の言葉を理解していないようなので、女性に叫んで指示。防御する度にちょこちょこ切りつけているんですが、精神力が強いようで激痛に耐えているようです。電気を放とうと離れた時に私も行動を起こす。
「【ハイフラッシュ】」
お馴染みのハイフラッシュを発動して目くらまし、腰にかけている、すぐに霧散する煙玉を地面に投げて
「【ミラージュ】」
光魔法【ミラージュ】は魔力で実体のある幻影を作り出す魔法。魔力のみで実体を作っているので、魔力消費量が多いけどここぞって時は重宝している。攻撃を受ければ消えてしまうけど。
「いけ! 我が幻影たちよ」
煙玉で視界を奪われているので、サンダーウルフは微弱な雷でこれらを視認するだろう。こいつらなら微弱な雷の索敵にも引っかかるから、時間を稼いでくれるだろう。
「全てを照らす光は我が元に。全てを侵食する闇は我が元に【侵蝕閃光】」
光属性の魔法に闇を付加させるこの魔法は、相反する属性の魔法を組み合わせているので、難易度が高い。私はまだ少し詠唱しないと使えない。剣に渦巻いてる黒い光を敵の方向に突きを放つことで発射させる。黒い光の柱が私のまだ消えていない幻影ごと敵を打ち抜く。
この光に触れたところから、痛みや寒気、気持ち悪さなどがどんどん広がっていく。呪いの光のようなものなので、浄化すればすぐに治る。けれど、魔物で【浄化】を使えるやつはほとんどいないから、絶大な威力を発するけれど、制御を誤ると大変なことになるので、乱用はできない。
「グウオオオオオオオオオ!!」
光で抉られ、痛みな様々な不快感を押しのけて、グラグラ揺れている体で最後の悪あがきをしようとしている。サンダーウルフの額の角二本に沢山の魔力が集まっているけれど、
「させませんよ? 闇属性【ドレインマジック】」
ダッシュでサンダーウルフに近づき、近場から黒い闇、魔力を吸収する闇を発動して、角に集まっている魔力を吸収しながら、相手の首を切る。
「ハァ!…………雷属性相手はやったことがなかったので、疲れましたね。マスターに稽古をお願いしたいな。女性は……どこが痛みますか?」
サンダーウルフの親玉を倒して、一息ついたら鎧の倒れる音がしたのでそちらを見ると、女性が倒れていた。近づいて見ると意識があるようなので、まずは治療ですね。
「助けてくれてありがとうございます。私はツェリムと言います。左腕が折れていて、右足は噛み付かれて傷が出来ています。私は女なので死なれたら困ると思ったのか、雷はあまり使われなかったので、どうにかなりました」
「私はブロンズです。痛むと思いますが、鎧を脱いで左腕と右足を見せてもらってもいいですか?……あとすみません。これを見てもらってもいいですか」
特別性のギルドカードを見せる。治療する前に私がゴブリンだという事を伝えなくてはならない。これで治療を拒否されてもしょうがない。一度ゴブリンだという事を黙って治療して、その後明かしたら泣かれてしまって怯えられたことがあるので、先にいうようにしている。
「はい……ゴブリンさんだったのですね」
「えっ? 怖がらないのですか? ゴブリンは女性の敵なのでしょう?」
「そうですが……なんと言いますか、貴方なら大丈夫だと思ったんですよね」
なんて言葉を私の目をまっすぐ見ながら言ってくれた……あれ? ツェリムさんの目をまっすぐ見ることが出来ない。なぜか動悸が激しくなってきているし、なんだこれは。まてまて、なんでこんなにも緊張しているんだ? わからない。
『スラリン様、私はなにかの異常状態なのでしょう? 目の前の女性をしっかり見ることが出来ず、動悸が激しくなり、治療するだけなのに緊張してしまっているのですが』
『……あー、なんだね。えっとね。ブロンズもその素晴らしさを理解できるようになって欲しい。街についたら教えてあげるよ。不快感ではないんだね?』
『はい、逆の気持ちなのですが、マスターとも仲間達とも違う想いといいますか、なんと言いますか』
『とりあえず治療したまえ』
「すみません。腕が痛くて、鎧が脱げないので手伝ってもらっていいですか?」
「いいい、いいんですか? 私ゴブリンですよ?」
「あまり自分を卑下しない方がいいですよ? それに、私が助けられた側なのですし、あなたを卑下するということは、助けられた人は卑下される貴方未満ということになりますよ?」
「……そうですね。気をつけたいと思います」
元々おっとりしている性格なのか、そんな雰囲気を醸し出しながら、右手の指を立てて、そんなことを言ってくれた。とても美しく可愛い! 胸がすごく辛いです。本当に何なのだろう?
「………………………………ふぅ。これで脱げましたね。回復魔法も使えるので、骨折と脚の裂傷を治しますね」
「光魔法に闇魔法、それに回復魔法まで使えるのですね! 凄いですね! よろしくおねがいします」
少し褒められただけなのに凄い嬉しく感じる。神聖魔法は使えないけど、【浄化】魔法だけ使える。清潔にするための魔法としてマスターに教えてもらった。アンデットの浄化はできない。
「【浄化】で汚れを取り、回復魔法【損傷回復】……顔にも少し傷ができていますすね。女性が顔に傷を残すのは良くないですね。回復魔法【損傷回復】【傷跡回復】」
「え、えっとそんな気遣いまでありがとうございます。よいしょ……あれ? うーん、あれ? なんで!? 足が動かない! なんで?!」
「え? すみません。触診させてもらいますね」
太ももを触りながらマスターオリジナル魔法【診断】。マスターが悪人の身体を捌いて、体の構造を見せてくれたので、魔法でそれと相違があるかないかを確認する魔法。
「損傷は回復しています。という事は神経を切ってしまっていたのか? 神経って回復するものとしないものがあると教えられたはず。どうするばいい。どうすればいい」
「なんで……これじゃあもう冒険者を続けられない。孤児院にお金を入れることが出来なくなっちゃう。どうしよう……ああ……」
まず、ツェリムさんを落ち着かせることが先決だ。
「ツェリムさん! ツェリムさん!」
一度の呼び掛けで反応がなかったので、肩を抑えて気が付かせる。
「……すみません。取り乱してしまいました。」
「足が動かなくて取り乱さない人などいません。マスターは死んでいなければ、どんな状態でも治せる回復魔法が使える御方です」
「貴方のマスターって、先日紅蓮の狐のホムラさんに勝ったカズシさんですよね?」
「はい、そうです」
「あの方ならきっと治せるのでしょう。でも、私は動かない足を治すだけのお金がありません」
「大丈夫です! 私が絶対に治してもらえるようにお願いしますから! もしそれでもお金が必要なら私も出します」
マスターならタダで治してくれると思いますが、会えるかどうか。あ!
『スラリン様なら今治せますか?』
『分体だと知り合い以外不可』
「ありがとうございます。あって間もないのにそんなに親切にして下さって」
先ほどの絶望していた顔から一転、すごくいい笑顔をしてお礼を言ってくれた。私の顔が暑い。何故だ? ここまで来ると私だって物語の一つや二つ読むので分かってきた。一度冷静になって、今までの特徴を鑑みればわかる。でも、私では無理だ。
私は人間ではなくているゴブリンだから。
「いえ、当然の事をした迄です。少し待っててください。素材の剥ぎ取りをしますので……」
『サンダーウルフの素材は欲しいから私が回収する』
スラリン様がそういうと、あたりに散らばっていた死体の全てが一気に手元に来て、ボスの大きな二本の角と魔核、普通サイズの角と魔核1セット以外消えた。
「今のは?」
「マスターの魔法ですね。スーマまで素材を飛ばしたので、スーマについたら渡します。これは討伐の証拠ですね」
「村に戻ろうと思いますが、歩けますか?」
「立つこともままならないので、無理そうですね」
「わかりました。荷物になるので鎧を着せますね…………背負いますので……私の背に乗ってもらってもいいですか?」
「またゴブリンだからとか思ってますね! ダメですよ! 」
ほっぺを膨らまして怒ってくれた。顔がにやけてしまう。嬉しい気持ち反面、心が沈む。
「そうでしたね。では行きますよ、ツェリムお嬢様」
「ふふふ、よろしくおねがいします。ブロンズさん」
お姫様抱っこではなく、おんぶだけどね。
お疲れ様でした。
神のみが行ってもいいことの一つは思い浮かびますかね? ちなみにゴブリンが人間の雌を孕ましても、ゴブリンしか生まれません。逆もしかりで、ハーフは有り得ない。
そして、この作品が親バレした。うちの親とつながりがあるのは友人Y君くらいなので許さない。
次回、シンイチの話かこの話の続き。




