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女神と夫婦になるために  作者: たつ
3.5章 番外編 ゴブリンの苦悩
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番外編第3話!ゴブリンの苦悩その2

次回でブロンズの話が終わります。


カズシは神にならないとやってはいけない事も普通にやったりします。


では、お楽しみいただけたら幸いです。

 次の日、ファベログ殿に新しく貰った赤き鎧を身につけ、私は早速冒険者ギルドに来た。まだ賢盾は借り受けていないので、鋼の盾を持ってきた。


 私が入ると一瞬ギルドが静かになるが、すぐに喧騒をを取り戻す。独りでにゴブリンが入ってきたのだからこうもなる。このギルドの方々はもう慣れているので挨拶もしてくれる。でも、今日は違った。


「おい! なんでゴブリンが入ってきてんだよ。しかも、その鎧の色……ミスリルじゃねえか!」


 金髪を後向きに立たせた、青色の鎧を着た戦士が私を見て声を上げた。ミスリルは金属の精製の仕方によって色が変わる。青、真っ黒や黄色などの色は大抵がミスリルだと分かる。赤もミスリル。


「お初にお目にかかります。私はSランク冒険者のカズシ様の従属魔物である、ブロンズと申します。以後お見知りおきを」


 マスター自身はまだSランクになっていることを知らない。ホムラ様を決闘で圧倒したのが試験扱いになり、Sランクに上がったそうだ。でも、マスターはギルドに来ないで神聖国に行ってしまったので知らない。ガンス様も念話で言うほどのことでもないだろうと言っていた。冒険者最高ランクがそのような扱いでいいのだろうか?


「は? 誰だそれ? しかもゴブリンの変異種じゃねえか。死ねや」


 魔物はすべて殺すべしという理念の方のようです。


「【フラッシュ】」


 切りかかってきた相手に、手を向けて小声で発動キーを唱えて、光魔法を発動した。ただの目くらましだけど、使い捨ての光玉と言い訳がつくので、この魔法を選択した。しっかり使用済みの光玉も右手に握っている。


「ぐわぁ! 糞が!」


 金髪の冒険者の目が見えていないうちに受付に走った。もちろん忍び足で走る。隠密は様々な隠密行動を取れないと取得できないので、私は取れていないけど、忍び足くらいならできる。


 いきなり光ったので何事かと皆が見てきたが、これもいつもの事なのですぐに視線が戻る。このギルドでは卑怯な騎士という二つ名が既にある。騎士のような格好なのに大抵この手で相手を無力化するからだ。


「ルキナ様おはようございます」


「おはようございますブロンズ。またカズシさんを知らない人が襲ってきたんですね」


「はい、ですからギルド長をお願いします」


「既に呼んでいるのでもう来ますよ。赤い鎧似合ってますね」


「ありがとうございます」


 ルキナ様はマスターと交際している女性で、一番私と接点がありよく話す女性。ギルドの様々な手続き、今回の私の特別性ギルドカードの手続きもルキナ様がやってくれたのでしょう。有難いです。


「……なるほどな。ブロンズはまた襲われたのか。今回も相手は無傷だな。はー、いくらブロンズだからってBランクが軽くあしらわれるのはいかんだろう」


 相手はBランクのようです。ゴブリンだからと舐めて掛かってきたBランクならば、このくらいはできる。というか、不意打ちで強い光を浴びせられてそれを避けれるのは、人外の方々やAランクの素早い方々くらいだと思う。それくらい不意打ちは強くて素晴らしい。


「そんなことは私の知ったことではありませんよ。あの方々への説明をお願いします」


「なんか最近はカズシ関係の仕事ばっかりしている気がするな」


「マスターは様々なことを成しますからね。私が今回出向いた方がいい仕事はありますか?」


「あるけどいつも通り待っててくれ。あいつらに説明してやらねばならん」


 私はCランクくらいの冒険者で危ないかもしれない方々の場所に支援に行くことが多い。Cランクならば私でもなんとでもなるし、DからCに上がったばかりの方が一番危ない。ガンスさんはギルドで私が襲われる度に、あしらった相手に説明してくれています。


 魔物を調教して仲間にする方々も割といるらしいです。ですけど、最弱のFランクから一つ上のEランクの魔物であり、女性の敵、不潔、年中発情、最弱人型魔物などの異名のあるゴブリンを仲間にする方はほとんどいないそうです。


 しかも、主と離れて単独行動させる人はいないらしいです。当然ですね。その魔物が問題を起こしたら、その主の罪になりますから、普通ならそんなことをしません。だから、ゴブリンが鎧をきて、ギルドをひとりで徘徊していると事情を知らない方々は大抵攻撃してきます。


「説明は済んだぞ」


「あの、すみませんでした! Sランクの夫婦の従魔だとは知らず、攻撃をしてしまいました」


「いえいえ、ゴブリンがこんな所で単独、しかも変異種でミスリル鎧ならその行動の方が正しいですよ。頭も下げなくて大丈夫です。マスター達には言いませんから大丈夫ですよ?」


 半分の方々は頭を下げて私に謝ってくる。Sランクの報復が怖いのだろう。もう半分の半分は特に何も言わず去る。残りの25%は決闘を申してんで来る。


 私の実力は単独ではBランクあり、ハサとディルの二人と組めば、Aランク3人となら戦えるくらいの実力はある。それでもリルヒには3人がかりでも勝てない。


 ん? なんでリルヒはほかの方々と違って様付しないのか? あの方は私達が強くなったのを知ると、訓練の相手として無理やり戦わせます。ボコボコにされているうちに敬うということを忘れました。血液装甲を使われると一方的な戦いになって辛いです。


「こいつはよくお前と同じように襲ってくるやつがいるから、いちいち目くじらを立てることはないから安心しろ」


「はい……その失礼します」


 髪はあんなにイケイケでしたっけ? ああいうのは。イケイケなのに礼儀の正しい方でしたね……髪の毛……羨ましいです。


「で、お前への依頼だったな。女性でソロでCランクの依頼を受けた奴がいる。なぜ女性と言ったかというと、サンダーウルフの親玉が出たらしくてな、その依頼を無理やり受けていってしまったんだ。今の時期のウルフ系は発情期で女性が受けるのは危なくてな、下手したら苗床にされてしまって、その後殺されるというひどい事になるかもしれない」


「それは良くありませんね。いつ出たのですか?」


「半日くらい前で夜に出ていった。馬で行ったからお前も馬でいけ。ギルドの奴を貸してやる」


 詳細を聞いてすぐにギルドで馬を借りて、一度屋敷に戻り出た。


 屋敷に戻ったのは、ディルにサンダーウルフの特性や能力を教えてもらうためだ。名前からして分かるが、他にどんなことをしているかわからない。


 発情期の魔物はなぜか自分と違う異性の生物に対して強くなる。子を残すことに必死になり、強くなるのだと思う。これは魔物として何となく知っている出来事だ。


 私はほかのゴブリンと違って、常に発情している訳では無いが、人間のように興奮もするし人間に興奮する。屋敷の方々には興奮はしない。したらきっと、マスターから手痛いお仕置きを食らってしまうだろうから、その恐怖で立つことはない。このギルドにはビキニアーマーの方々もいるから、いろいろ困る。フランさんはマスターの女じゃ無いけど、反応しない。


 依頼の場所はこの街から3日くらいの場所だ。だから、私は馬が疲れない程度で走らせる。私はゴブリンなのでスーマ以外の街では買い物ができません。でも、私にはスラリン様の分体がいます。


 私は鎧と武器以外はリュックしか持っていない。私の行動は速度が命なので、スラリン様が必要な物資を分体に送ってくれる。


 光魔法【ライトボール】で先を照らしながら、夜も進む。馬が疲れて休憩する時に私も少し寝る。ゴブリンは大抵どこにでもいるので、そのゴブリン達に私は命じる。


「ごぶごふごぶごごぶ……(私はこの先に行かないといけないが、馬が疲れてしまったので、休憩がしたい。その間お前達は私を守ることを許す!)」


 私は月のゴブリンという種族らしいが、ゴブリンの指揮個体のように、ただのゴブリン達に命令することが出来る。魔力を放出して、威厳のある喋り方で命令すれば大抵は聞いてくれる。たいていと言ったのは、街の周りのゴブリンに人を襲うのをやめろと命じても、それは本能なので拒否された。


 昼過ぎくらいにその現場の近くの村まで来た。木と石で覆われた村のようだ。門番がこちらに声をかけてきた。


「どのような御用ですか?」


 ……あっ! 接し方に違和感があったが、頭鎧もつけているゴブリンだとわからないのか。


「私はゴブリンです。ですが、Sランク冒険者の従属魔物であり、スーマの街のガンスギルド長の要請により、サンダーウルフの討伐の手助けに来ました」


 ゴブリンといった瞬間に顔が強ばるが、ガンス様の名前を出して、ギルドに渡された書類を頭の上で振る。


「そこに止まって、武器を置いてギルドの書類とやらを見せてくれ」


 言われた通りに武器を置き、書類を地面において少し下がる。門番が書類を確認したようで、


「ブロンズというのだな、貴方の特別性のカードを渡してくれ。確認してくるから


 こちらに武器に手をかけながら、近づいてきた。カードを渡してたら、下がっていった。ギルドカードなどは偽物と本物を見分けるために、見分けるための魔法がかかっている。それを確認に行ってくれたのでしょう。少しして帰ってきた。


「確認は取れた。確かに君はSランクの従魔らしいな。済まないのだが」


「村には入れないですね。分かっています」


「ああ、すまない。君からは野生のゴブリン特有の嫌らしさが全く感じないのだが、何度も戦ったことのない一般人はゴブリンはゴブリンとしてしか見ない」


 私には魔核はあるがない。ゴブリンの魔核は簡単に言うと血の色だが、私の魔核の色は透明らしい。マスターが私を作った時に流した魔力が、何の属性にも寄らせなかったので透明であり、魔物の良くない瘴気にて生まれたわけではないので、黒色によることも無い。嫌な感じというのがその色の違いだと思う。


「分かっています……この馬を預かってもらってもいいですか?あと、先に来ている冒険者はいつくらいに討伐に行きました?」


「もちろん預からせてもらう。2時間くらい前だな。向こうの方にサンダーウルフが現れたからそっちに行けばいるだろう」


「わかりました」


 馬を預けて、無属性魔法【身体強化】を発動して、本気で走る。少々疲れているが、問題は無い。


 走ること30分。戦闘音が聞こえてきた。私が近づいたのを見なくても察したサンダーウルフ達は、私にも牙を向けてきた。


 サンダーウルフは名前の通り、雷を扱う。雷を扱う魔物はあまりいない。一節には魔物が雷を受けて生きていたら、雷が扱えるようになると言われている。サンダーウルフは額に角があり、その角から雷を前方へ放出する。黄色い毛を持ち、黒の縞模がある。肉は割と美味しいらしい。そして大事な点が、周囲に微弱な雷……電気を放出して、その範囲内を把握している可能性があるらしい。


「確かに見えていないのに、こちらに寄ってきましたね。スラリン様すみませんが、雷の耐性を上げる魔法をお願いできませんか?」


 いつもはスラリン様に頼ることはないのだが、金属を身にまとっている今の状態では、雷なんてよけれない。元々マスター製のこの体はスキルに現れない魔法への耐性は高い。だけど、雷をモロに受けたら麻痺してしまうだろうから妥協する。


『次に雷系統の敵と戦う時は、自分でなんとかしなさい。今回はやります。雷魔法【雷耐性上昇】』


 カズシ様とその女性以外には割ときつい言い方をする。まあ、仕事の時はそういう口調なだけなのですがね。


「ありがとうございます。では、戦闘を開始させていただきます」



お疲れ様でした!


ブロンズは字だって書けますし、教養もあります。ファベログに仕込まれました。


次回、番外編第4話!ゴブリンの苦悩その3

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