第26話!紅月の夜
まず初めに、今まで毎日投稿してきましたが、2月20.21.22は旅行なので、投稿できないかも知れません。出来たとしても短く、番外編(シンイチの話ではないです)になるかもしれません。それまでにストックが出来ればいいのですが……
あと前回の話の修正で、最後に数日がたった。的なことを書いてありましたが、数日の内容を描写してから話を進めようと思い直したので、数日がたったとこらへんを消してました。ご了承ください。
では、お楽しみいただけると幸いです。
屋敷に戻ってきたので、皆にもギルド長と話したことを話しておいた。口止めされてないしね。
「……という事だから、ダンジョンの調査は俺がすぐに終わらせる。皆は数日は自由行動になるだろうけど、いきなり戦うことになるかもしれないから、特訓とかするなよ? 特にミア」
「ソンナコトシマセンヨ」
「片言になってるよ」
「そんな訳ないですよねリルヒ? フィーネ?」
誰も目を合わせてくれない可哀想なミア。
「フランも数日は楽しいことがないと思うけど、それでもいいか? この状況下でフランみたいな攻撃職がどっか行くとか勘弁なんだが」
ゴブリンの大反乱を楽しいこと扱いしてるけど、大丈夫だよね? 怒られないよね? 上位ゴブリンが沢山くれば経験値うはうはだから、俺からしたら祭りなんだよな。被害は抑えるようにするけど。
「当分はここで厄介になるから大丈夫だよ。それにダンジョン調査の依頼は失敗したから金がない」
財布を振ってるのに音が一切しないとか、ギリギリまで使ってから依頼を受けたのかよ。冒険者ってのはこんな奴や昼間から酒飲んでる奴が大半なのかな?
「全くないのも大変だろうから、少し貸しとくよ。金貨3枚くらいでいいか?」
「貸してくれるのはうれしいけどさ、貸しすぎじゃないか?あんたと会ったのは今日が初めてなんだぞ? 逃げちまうかもしれないぞ?」
逃げる奴はそんな事言わないんだけどな。マップのピンと転移の合わせ技があるから逃がさないどね! もし盗んでも。知らないとなんだコイツ? 裏でもあるのかと思っちまうか。金貨3枚……ミア6人分か。
「あー、そうだな。リルヒ! ちょっと実験台になってくれ」
「え? 待って! 凄い待って! ほんと待って! そのすごいニヤニヤした顔でそんな事言われると嫌な予感しかしないんだけど」
「いやいや、大丈夫大丈夫。ドラゴンに裸で挑むくらい大丈夫」
「絶対死んじゃうじゃない!」
「俺ならできる」
「カズシだけよ! そんなこと出来るのは!」
「という事で、【転移】」
フランに貸していた外套をリルヒの体の付近に転移させ、リルヒの服と下着を俺の元に転移。
「ピャァァァァァァ!」
「いつも見てんだから別にいいだろ」
「ここ寝室じゃないし良くないよ! なんで私ばっかこんなことするし!」
「風呂入れたから入ってこい【転移】」
「話のとちゅ……」
詠唱なしで血液魔法で殴ろうとしてきたから、お風呂へご招待しておいた。イメージで無詠唱で発動させられてたじゃん! 俺への殺意のおかげで。
「こんな感じに物を引き寄せたり、送ったり出来るから問題ない。人間もできるから」
「あんたのそれってすごいのか凄くないのか分からなくなったわ。なんで服を剥いだんだ?」
「リルヒの反応がいいから」
「あんたってそんな性格なのかい?」
「今まではある程度制限していた。ある程度仲良くならないとあんな事やれないし、Aランクという地位を手に入れたから、この程度ならなんとでもなるだろう。あとリルヒだからやった。反省もしていないし後悔もしていない。リルヒだからってのが8割」
こんな会話があったりなかったり。その日はリルヒの機嫌を治すことに従事して次の日。
「ダンジョン行ってくるけど、何かあったら念話しろよ?」
全員に金貨3枚渡しておいたし大丈夫。力もあるから変なやつに絡まれても問題ないはず。みんなに見送られて屋敷を出て転移した。
16階層から29階層までは皆に攻略してもらうので、魔物の詳細はその時にまた。
三十階層
正確にいうと29階層の奥にある階段。道中は大気ごと凍らせて相手を殺す魔法《EFB》でどんどん進んできた。
道中の21階層に冒険者の集団がいたけど、あいつらがMPKを起こしたヤツらだろう。こんな暑いのにみんな顔を隠してたし。ステを見てみても、フランよりも数段弱い連中だった。
三十階層に入ると
「よくぞ我ダンジョン、火の騒乱ダンジョンの最深部まで来た! 貴様がここまで来たのが初めてだぞ! 歓迎する」
ちなみに俺に付いてきたのは、スラリンとクロだけ。
ライはファベログが商都でカカオを見つけたので、チョコケーキを作ってみるとか言ってたから、それにくっついている。リッチなのにどうやって商都の市場に行って買ってこれたんだろう? 商都がザルなのか、ファベログが凄いのか。
フウは屋敷の庭にハンモックの様のものを吊るして、人間大になって寝ている。エメラルド色の髪に翠の目をしたエルフ体型の美人さんだった。目は眠たげな半目だったけど。
三十階層に入って声をかけてきた奴は、赤い燃えている髪に赤い目の全身赤の精霊のようなやつだった。ていうか、精霊じゃね?
クロが中から出てきた。
「火のうるさい方の精霊王が、なんでダンジョンでボスなんてやってるの?」
「ぬ! お前は闇の姫ではないか! なぜそいつから出てきたのだ? というか、俺をうるさい方とか言うんじゃねえ!」
こいつら知り合いなのかな? ていうか精霊王? なんでそんな存在がダンジョンのボスをやっているんだ?
「うちはこの人と真契約したんだからいて当然! 風の姫と雷の姫だって、この人と契約してるんだから。ほかの姫も仮契約までしてるよ」
俺が契約した子達は姫なんて呼ばれているのか。すげえな。
「なんだってええええ!」
叫びながら目の前まで近づいてきて、俺を観察し出した。暑い。風魔法の範囲内に入っくるな。冷房効果が意味無いじゃないか!
「お前暑い。近すぎ! 俺はそんな趣味ねえから」
「うるさい精霊王は男色家なのね」
「うおおおおおお、お前を殺す!」
「それを言ったら相手は死なないんだよ? ていうか、精霊王なのにダンジョンの魔物みたいに殺してもいいの? クロ」
小さい声でクロに聞いてみた。
「精霊王様! ダンジョンなんかで顕現して戦って、間違ってSランクとかに倒されたらどうするんですか?」
「ふん! 俺がSランクの人種ども程度に殺される訳がないが、色々教えてやろう。勉強嫌いな闇の姫が聞いてきたのだからな。「カズシの前でそんなことなんで言うん?」……ダンジョンがここに出来そうな気配がしたから、乗っ取って我がダンジョンにした。精霊がダンジョンのボスになると、ボスとして出現する体は仮初の魔力体なのだ。だから、今の体が壊されたところで問題は無い。魔王種が大量に現れそうだからな。それに対抗するために、鍛える場を用意してやったのだ」
精霊は魔王種、変異種の増加量なんて感知できるんだな。全然話に出てこなかったけど、ハーピー変異種のヨクちゃんは周囲のゴブリンとかを倒したり、冒険者を助けたりしてマスコットになりつつある。
「クロは仮初の体なの?」
「仮契約の時は仮初だけど、真契約すると体をこっちに持ってこれるから、ライもフウも持ってきてるよ! もちろんうちも」
「他に聞きたいことはあるか?闇の姫よ」
「闇の姫闇の姫言わないで! クロって名前をもらったんだから」
「そうだ! そんな小僧がなぜ姫達と契約できた! というかエルフでも……な……い」
俺を睨んでいた火精霊王は戦闘態勢を取り始めた。
「なぜ魔王がここにいる! なぜ精霊と契約をしている!」
は? 魔王? 俺が? 意味がわからん。
「おい、おっさん。いきなり意味がわからんことを言うな。俺は人間だし、魔王なんかじゃねえ」
「嘘をつくな! そんなにも強力な魔物の気配を漂わせておいて! 人間なわけがあるか。闇の姫よ、早くこちらに来い」
マジで意味がわからん……あっ!
『もしかしてスラリンのこと言ってるのかもしれない。スラリンは変異種だし。カズシのおかげで強くなった』
『そうかもしれない。スラリン出てきてくれるか?』
「お前が言っているのはもしかしてこの子か?」
と言いながら、スラリンに出てきてもらった。人型ではもう既に中学生くらいの大きさになっている。
「スライムだと! そんなに強大な力を持ったスライムなど聞いたことないぞ! 消し飛べ!」
話を聞かないで直径5mはあるであろう、ファイアーボールを打ってきた。まあ、大丈夫だろう。
「余裕」
スラリンは水魔法【エターナルフォースブリザード】でそのファイアーボールを凍らせた。何度見ても炎を凍らせるとか意味がわからんな。なんとなく使えるから使ってるけど。理屈すらわからない、ただのイメージなんだけどな。
「俺の炎を凍らせた……だと!?」
「精霊王なら話を聞くべき。精霊界に世界管理神ルナから、神の加護を得た人間に付き従う、変異種のスライムがいるということが伝わっているはず」
え? 初耳なんだけど。スラリンは俺の知らないことを知りすぎでしょ? 教えてくれないし。
「は? 主神様が………………すまなかった!」
一度消えてすぐにまた戻ってきて、土下座をする暑苦しい火の精霊王。暑苦しい。大切なことなので二度言った。
「このダンジョンを造ってから、事務処理が嫌で精霊界に帰ってなかったのだ。戻ってみたら、そんなことを書かれた書類が置いてあった」
ねえ、何度も言ってるけど、精霊ってそんなに仕事が大変なの? それ以上に忙しいであろう、神になろうとしている俺に対するネガキャンだろ。
「理解したならいい。もっと火の密度を増やして、温度を上げないと凍らされる。精進すべき。スライムに負ける精霊王とかお笑い草」
今のスラリンは相性のいい下級の神なら屠れると思うんだけどね。
「精進すべきは俺だったな。しっかり見てみると、カズシ君とやらも凄まじい力を持っているな。精霊神様と同等以上ではないか。君は神かなんかなのか?」
「神の力を持っているだけ。ちなみに、ここに来たのは新しいダンジョンの調査ってだけ。ギルドに報告していいよね? 出てくる魔物」
「神の力を持っているだけという言葉がおかしいのだがな。まあいい。改めてすまなかった。用件は了解した」
「また今度仲間がここに訓練に来るから、よろしく」
「挑戦者ならいくらでも待っている」
暑苦しい精霊王に別れを告げて、ギルドに飛びギルド長に報告しておいた。忙しいらしく、出てくる魔物の特徴と階層数を言ってそのまま退散。後日詳しく教えて欲しいとのこと。
それから数日。
なにもなく、魔法の実験などのことにもやる気が出なかったので、屋敷でダラダラして一日を終えようとしていた夕方。
突如いつもゴブリン共がいる東側から、ドンという大きな音が聞こえた。
『カズシ君、直接君の移動魔法でギルド長室にきてくれ』
音がなってすぐにギルド長から念話が飛んできた。屋敷に残っていたのはミアだけだったので
「ミアはフランを含めた皆とともにギルドに来てくれ。ブロンズ、ディル、ハサ、ヨクは屋敷の中で待機。ファベログも同様で、誰か来たらファベログが対応しろ!」
皆頷いてくれたので、転移でギルド長室へ。
「いきなりすまないな。カズシ君」
「いやいい。それよりも外のゴブリンだな」
「見張りによるといきなり東の草原にゴブリンの大群が出現した。見渡す限り1面すべてがゴブリンで埋め尽くされているらしい」
俺もマップで少し前に街の周りを見た時にはゴブリンなんていなかった。それなのに音がなった時に街を出たところ、ちょっと行ったところ、元盗賊のアジトのところのピンの範囲いっぱいにゴブリンやその上位種の反応が出ていた。
こんな短い時間で来るなんて転移でもなければ不可能。魔物がこんな大規模な転移を使ったとでも言うのか?……それは無理だ。俺の今の最大容量でも足りない。やろうと思えばできるけど、ゴブリンではこんなことは出来ない。人間だってSランクにも不可能な芸当。
「この街に俺よりも大規模な魔法が撃てて、連射が可能な奴はいるか?」
「は? いるわけがないだろう」
「なら、俺が初めに何百発も撃つから前に出ないでほしい。いきなりゴブリンが出てきた場所に、人がいたとしても生きていないだろうから、そういうのは考慮しないで魔法を放つけどいいか?」
「ステータスカードはこういう時は融通は聞いてくれるものだから大丈夫だ。でも、こういう時だから起こる犯罪には厳しくなるがな」
まじかよ。ステータスカードは万能だな。
「これを持って門に行け。俺はほかの冒険者に説明するから派手にやってくれ」
「おう」
仲間達が一塊になっていたので、【転移】で引き寄せて、門の近くにさらに【転移】した。門にギルド長から渡されたものを見せて、俺達だけが外に出てきた。ちょうど周りも暗くなって夜になってきた。
「皆には基本的に掃討戦で戦ってもらう。序盤は俺とスラリンが撃ちまくるから前に出ないで、魔法を打てる人は打って経験値稼ぎでもしてくれ」
「それだと私は最後しか戦えないね」
「フランは龍魔法は使わないのか? スキルとして取得しているのに」
「なんで龍魔法を持っていることを知っている!」
フランがすごい形相で詰め寄ってきた。
「特殊な力だ。持ってても使わないだけなのね。まあいいや、お前らは後ろにいてくれ」
草原を見てみればあたり1面ゴブリンゴブリンゴブリン。奥には上位種もいるみたいだけど、手前は全てただのゴブリンだ。でも、レベルが15レベル前後とちょい高い。
「よし、始めますか!」
と言いながらなんとなく月を見てみた。
紅い月だった。あれは光の加減ではなく、月自体が紅いのだと感覚でわかった。紅い月、あかいつき、アカイツキ……
お疲れ様でした。
次回は神回です。話が神的に面白いのではなく、神であるシンイチの話です。
基本的にシンイチの番外編とは時系列が同じくらいです。シンイチの方がのちのち早くなりますが、その時は言いますので、言わない限りはだいたい同じくらいの時系列です。今回はシンイチの方が今回の話よりも少しだけ早いです。
次回、神であるマールに乗っ取られる気がするので不明。




