第23話!火のダンジョン前半その1
普通にどうやって書こうか考えていたら、こんな時間になった。
風の精霊はスタメンかする気は無かったんだけど、ミアもフィーネも風使ってるし、精霊と仲良くしておいて、仲間に力を貸してもらった方がよくね?と思ったのでこうなった。
ではお楽しみいただけると幸いです。
ザ洞窟という特に変哲もない、ヒカリゴケのようなもので光が確保されている道を数分進むと一気に様子がわかった。
洞窟ように岩肌で通路ができているが、通路の端は溶岩が流れていたり、岩の間から火が漏れ出たりしている。ぶっちゃけ暑い。暑すぎる。
「カズシ〜何とかして涼しくできないの?こんなんじゃ体力が持たないわ」
リルヒが言っているように、みんなの体力が熱で奪われて戦闘回数がずっと減ってしまうだろう。
「ほかの冒険者はこういう所ではどうゆう対処をするの?」
「一番いい対処は特殊地形のダンジョンに行かないことですね」
「特殊地形って?」
「今回のように火のダンジョンで火山のような通路や通路が水で満たされていたり、極寒だったりするダンジョンのことです。そういうところ以外、例えばここの近くなら商都のダンジョンですね。あそこは地形的な面でもトラップ的な面でも普通です。しかしあそこは100層あると言われています」
「どうしても行かなければいけないとしたら?」
「主様達みたいに魔法をポンポン使っていたら、戦闘時に魔力が足りないなんてことが起きますので我慢ですね」
辛いなそれは。イケメン君があそこに残っていたのは暑いのが嫌で逃げたってことではないよな?
「なるほどね。まあ、俺は普通じゃないからそういう所でも魔法を使うけどね……せっかく契約したし呼ぶか。水と風はどっちがいいかな?」
「水で気温を下げるのはやめといた方がいいぜ。蒸気とかでお前以外が辛くなる。風の精霊に周りの気温を下げてもらえ」
盾が教えてくれた。なんか言い方がきついが、何日もアイテムボックスの中で放置したからだろうな。吸血だけじゃ許してもらえなかった。
「こい、風の精霊!」
「呼ばれたやった~お仕事しなくて済む…………眠い……?闇ちゅんと雷ちゃんはなんでかずしの中にいるの?」
まさか、風の精霊が前回眠たそうてか、寝てたのは精霊の仕事とやらが忙しくて休息を取れなかったからなのか?それなら社畜も真っ青だな。
『真契約したからだよ!ライって名前だよ』
『カズシにクロって名前をもらった』
「ライちゃんは使い手が少ないからわかるけど、クロちゃんは精霊の管理のお仕事は?」
『ほかの闇精霊に押し付けた。うちが抜けただけで運営できなくなるようじゃダメだし、ちょうど良かったの。カズシは精霊神様よりも強い人間だから問題ないしね』
「……………………うーん……カズシはまずなんで呼んだの?ていうか暑い。かずし魔力ちょうだい【クール】」
半目だった風ちゃんの目がカッ!となってこちらを見ながら何かを考えていた。暑さですぐに戻った。
用件をいう前に周囲の気温?風の温度を下げてくれた。
「用件なら今風ちゃんがやってくれた」
「周囲の気温の維持のために呼んだのか~クロちゃんちょっと来て。あとライちゃんも。精霊同士の秘密の会議」
呼ばれたクロとライは風ちゃんの方に行って、風ちゃんが消音のようなものを使って自分たちを覆ってなにか話している。聞こうと思えば聞こえるけど、精霊同士の秘密の会議って俺を見ていったからそういう事なのだろう。聞き耳はたてないよ。
「昼寝を保証してくれるなら真契約をしてもいいよ」
クロとライと帰ってきた風ちゃんがそんなことを言い出した。
「風ちゃんはしたいの?」
「精霊、特に私達みたいな高位な精霊はお仕事がとても忙しい。眠れないほどに。でも、ママくらい強い人が現れたら仕事なんて関係なく、真契約を結んでしまいなさいって言ってた。私はカズシが酷使しないなら、契約したい」
精霊ってのはやっぱり大変なんですね。勇者とかも社畜同然だからよく分かる。
「おやつに昼寝を保証するよ!風ちゃんはこれからはフウちゃんね」
ネーミングセンスを求めないでください。
「わかった、これからフウ。よろしく……気温は維持しておくから頭の上で寝させて。28日ぶりの睡眠が欲しい」
と言いながら頭に乗ってスースーと声が聞こえた。スラリンがフウの下に行ってベッドになってあげている。28日ぶりの睡眠……精霊神がブラックなのか、使役する人種がブラックなのか、後者だろうな。
「涼しくなったから行くぞ。基本的にお前達3人に戦ってもらう。手に負えない敵が来たら俺を頼れ」
三人とも頷いて進む。
マップで見てみると比較的簡単な迷路になっていて、下の階層なのかな?に降りるには階段のようだ。転移とかではなくて本当に洞窟型ダンジョンみたいだな。
この階層に出てくるのはファイアーラビットというDランクの魔物が1体。最短距離を進んでいくと、進行ルート上にいたから見てみたら燃えている白いウサギだった。大きさはバスケットボールよりも大きいかな?攻撃方法は体当たりとか噛み付きとただのラビットと同じようだけど、燃えているから強さのランクが上がっているのだろう。
ミアは風魔法の【鎌鼬】とか【武器に風を】などを使って倒していた。リルヒは魔力を篭手に纏わせて殴りブーツに魔力を纏わせて蹴る。フィーネは精霊(大精霊だけどほとんど意思がない)にお願いして、矢に追い風を吹かせて射抜いていた。
数匹来てもただの作業だったので、次の階層へ。
二階層
二階層にはラビットとファイアーウルフが出てきた。尻尾の先に炎が燃えていた……○トカゲかな?こいつは近距離で火も吐くみたい。ランクはDだったけど、どんな動きをするかわからなかったので、俺が先に見てみたらその程度だった。
動いたけど極力頭を動かさないようにしたよ?スラリンの衝撃吸収力に任せてもいいんだけどね。
マップで見ると壁に穴を開けてそこを通ったり、マグマの中に潜伏していたりして待ち伏せしている。ウサギに気を取られたら不意打ちをくらいそうだけど、気配察知持ちが3人もいるし(ミアは覚えた。こいつこそ一番のチートだろ)、そこら辺にいる精霊は生物とか魔力を持つ奴らに群がるのでフィーネはひと目でわかる。
俺は精霊視を手に入れているけど、取得時に一度使ってから一度も使っていない。契約した精霊は精霊視があるだけで見れるし、発動させるとそこらにいる精霊が群がっていて視界を覆ってしまうからうざいだけ。
リルヒがラビットを潰して(ぐちゃりと潰していた)フィーネが弓でウルフの出てきたら射抜き、漏れてきた奴らをミアが狩っていた。ミアの動きがすごい早くなっているのだが、意味がわからん。スキルを見てみると縮地があった。俺の世界の創作には、こんなものがあると教えただけなのに会得するとか意味わからん。縮地って6歩先に行くような技じゃないよな?
「ミアが今使った縮地って俺が前に言ったやつか?」
「はい!カズシ様が前に教えてくださった技を練習してみたら、出来ました!」
「カズシ」
寝ていたはずはフウは起きていたのか。
「なんであの子は英雄が使う技を使えるの?」
「あれは英雄が使っているのか?」
「アーサーは私の部下と仮契約していて、あれを使っていたらしい。あの子になら力を貸してもいい。カズシに使って欲しいけど、クロちゃんが泣きそうだから」
後半は小声で言っていた。フウはミアの何かに惹かれたのかな?
「貸してもいいけど、ここは居心地がいいから基本はここは私の場所。スラリンにここだけ譲ってもらった」
『カズシの体の居心地の良さをひと目で見抜いたから頭は譲った』
俺の体の権利はスラリンが基本的に握っているらしい。念話のチャンネルは開いてるから、個人同士で話すこともできるようになっている。ジャックすることも盗聴することもできるけど、やらない。何故か気が付かれるから。念話でスラリンと話して仲良くなったみたいだな。
「ミアは暇な時にどうやるのが正しいのか教えて。俺も覚えたい」
縮地を使って、「あいつはどこに行った!?」「後ろだ!」とかやりたい。転移でいいとか無粋なことは言わないで。
「しっかり解説できるように考えておきます!」
二階層も問題はなかった。
三階層
この階にはエクスプロージョンマウスというネズミがいるようだ。ハハッ!………………やばそうなら消す。ランクはD。
初見は危ないので今回も俺が試したのだが、驚いた。まず、魔物化している動物は例外なく日本にいるものよりも大きくなっていた。だけどこいつはほとんど変わらなくて、見つけづらい。岩と火の色のグラデーションで見つけづらい。名前からなんとなく予想はしていたが、近づいてきて爆発した。威力はファイヤーボールを地面に打ったくらい……まじかで食らうとダメージが結構食らうくらいはある。
しかも気配察知レベル2のミアは気配を察知できず、気配察知レベル3のリルヒはほかと戦っていると察知できない隠密を持っていた。爆発鼠の処理はフィーネの魔力察知で魔物に宿っている、魔力を察知して弓で射る事になったので、ラビットと戦いながら不意打ちを狙ったり、一定の距離で威嚇をしているウルフに気を使わないといけなくなり、リルヒの被弾が増えた。被弾が増えてからは血液魔法【血液装甲】を使って、全体鎧にして戦うことでダメージを防いでいた。
ランクはDでも、空気は冷やしていても足元は熱く、マグマを被っているウルフ自体は襲っくれば処理は楽だが、くっついているマグマがやっかいになっている、マグマが近づけば暑いしね。普段のDランクの敵と違う状況で苦戦はしないけど、時間がかかるようになってきた。
血液の全身鎧とマグマの暑さで油断してしまったのか、リルヒが不意打ちを喰らいそうになるが、闇雷複合魔法【黒雷槍】を地面から生やして倒した。闇魔法の状態異常耐性を下げる魔法を雷の槍に付属した魔法だ。クロとライが中にいるから、この二つの属性は特に使いやすい。
「ごめんなさい。ソロじゃないことと暑さで気が逸れてたわ」
「反省してるならいい。休憩が必要なら自分たちで決めないと。今はここで休憩」
水魔法【氷結世界】で通路の両端に氷の壁を作り、所々に氷の柱を作った。
水分補給や塩っぱい肉串などを食べさせて、少し休憩させた。もちろんマグマも凍らせたし、ウルフの通路も凍らせた。
「水がないこんな場所でこの規模の水魔法を使って、なんてない顔をしてるとかカズシは自分の異常性を理解すべき…………お腹がいっぱいになったら眠くなってきた。何百日かぶりの昼寝を敢行する。おやすみ」
異常性はわかってるつもりなのだが、顔に出さないからいけないのかね。昼寝が何百日かぶりとか涙が出てきた。
休憩を終わらせてから、俺がマウスの場所に闇魔法でモヤを出してあげてることにした。それからはサクサク進んだ。ミアがマウスを鎌鼬や【ウイングランス】や【ウイングアロー】で壁にぶつけて、殺すことになり、あとは前の階層と同じ流れだった。
4階層
この時点でいくつかのパーティーを抜かしている。こちらは最短距離だからね。
この階層はフレイムベアという赤い毛の3メートル位のクマのようだ。爪や歯から火が漏れているから、噛まれたり、引っかかれたりするとその部分が焼けて、普通よりも痛く回復魔法に魔力が無駄にかかるようになっているようだ。ちなみにラビット、ウルフ、マウス、ベア共に10レベル後半だった。素質(=潜在)が高くてもレベルが高くなければ問題ない。
この階層ではマウスは俺が転移で引き寄せて、爆発される前に切って処理することにした。
ベアは多くても2匹までしか出ないようで、リルヒが殴りあっている間にフィーネがウルフとベアへの牽制、ミアはラビットを速攻で殲滅してベアに加勢することで、戦線を保っていた。リルヒはダメージを受けるタンクを兼任することにしたようだ。回復は入念にしておいた。火傷跡とか残ったらミアがやばい。
ベアの同時出現が2体までだったのと、うざい爆発鼠は俺が処理していたので、リルヒの被弾が増えたこと以外は問題はなかった。
5階層
5階層目は大部屋で中ボス部屋?になっていた。敵はこのフロアのボスのハイフレイムベアで4メートルくらいあり、爪が長いクマさんだった。ランクはDでレベルは25。熊さんとウルフの革は熱に強い素材のようだったので、3人が戦っている隙に適当にほかの場所に転移して綺麗に殺して、皮を剥いでおいた。
ハイフレイムベア1体にベア2体、ラビット4体にウルフ4体、マウスが2体のようだ。
「今回は俺も戦うけど……俺にやって欲しいことはフィーネが指示しろ。それ以外では動かん。ピンチになったら例外だけどね」
「わかりました。私が司令塔をさせていただきます」
「今回の敵は………………マウスが2体だ。作戦を立ててくれ」
「フィーネにはすぐにマウスを倒してもらってから雑魚を狩ってもらった方がいいわね」
「そうですね。私たちではマウスの発見は時間がかかるので、私は速攻でラビットを殺します」
「…………主様にはハイベア1体とベア1体を抑えておいてください。リルヒはベア1体に対して、血液装甲を攻撃寄りにして速攻撃破を狙ってください。ミアはラビットの撃破とウルフの牽制。私はマウスを倒したらウルフの撃破を狙います」
「魔力は補充してあげるから、今回の戦いで使い果たしていいから。その配分でやりな。押さえつけておくことは了解」
「では、皆さんお願いします」
フィーネの合図とともに俺達は走り出した。俺はルナ剣を仕舞って、盾だけで相対。ベアとハイベアに威力のないけど、火属性の敵のヘイトを稼ぎやすいであろう水魔法の【アクアボール】で牽制。それを無視してもう1匹のベア狙いの、この中でも小さいリルヒを先に狙おうとしたので【アクアバインド】それに麻痺しない程度に静電気の嫌な感じ程度の【電気ショック】を発動してハイベアの前に出る。
爪を打ち付けてこちらに攻撃してきているハイベアの攻撃を盾で流しながら、ベアの攻撃を腕を魔力で強く保護しながら受け流す。ちょいちょい【アクアボール】撃ってヘイトを高めながら仲間を見てみる。
フィーネはちょうど鼠の二匹目を倒したようで、ウルフに攻撃を始めている。リルヒはあと少しでベアが倒せそうだ。ウルフが一匹邪魔していてすぐに片付かなかったようだ。
ミアは【武器に風を】を使ってミスリルの短剣2本に風の刃を纏わせて戦いながら、鋼の短剣2本にも纏わせて、魔力糸を足先に繋げながら短剣を蹴って相手に打ち込み足元に戻す、そんなことをしながら舞っていた。こいつはなんで曲芸みたいな戦い方をするんだ?リルヒが足を使っているのを見て、なるほど!とか言ってたのは二日前のはずなんだがな。
ベアとハイベアがびしょ濡れにならない程度に遊んでいたら、ほかが倒せたようなので俺はどいてほかの人に譲る。
ハイベアの前にリルヒが拳を構えて相対して、ベアはミアの変則四刀流の餌食になりながら、フィーネは弓を構えていつでも打てるようにしている。
「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
リルヒの高い声でオラオラしながら殴り続ける。相手も負けじと爪で攻撃するのだが、攻撃されるところに血液装甲を持ってきて防いでいる。殴り続けて、最後に立っていたのはリルヒ。
「カズシ勝った!」
とか倒れたハイベアに背中を向けて、こちらに声をかけてきた馬鹿を無視して、転移して射出してきたハイベアの爪を盾で弾いて、そのまま盾の吸血杭をぶっ刺して殺す。ついでに吸血もさせておく。
「オラ!」
説教代わりにリルヒの真似をして、1発リルヒに拳骨を落としておいた。
「頭がああああ」
地面は暑いだろうにリルヒはゴロゴロして蹲っている。
お疲れ様でした。
とりあえずこの章ではあと2話ほどこのダンジョンの話だと思います。
精霊魔法を一番使っている種族のエルフが、精霊の中で一番契約しているのは風属性です。その中でもトップクラスのフウは様々な仕事がありました。女型風精霊では一番忙しかったかも知れません。
裏で動いている、ボス共のうちの一体がほかのボスを倒して下僕にしてしましました。これがダイス神のお力か。
次回、第24話!火のダンジョン前半その2




