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女神と夫婦になるために  作者: たつ
1章 ひしめく肉塊と再誕の神
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第16.5話!吸血娘の独白~殲滅~

次回でこの章が終わります。

明日は変なヤツ(つきのかみ)が投稿するかもしれませんが、本編も進めます。ていうかこの章を終わらせます。

ではお楽しみいただけると幸いです。

 黒髪黒目の失礼な事を考えていそうな顔だけど、とても美味しそうな匂いの男は、隣の私よりも少し小さい子に目配せをして話しかけてきた。


 何故こんなところにいるかと聞かれたから、ありのままあったことを話した。あった事をそのまま話した方が、内容的に同情を誘えると思ったからね。


 それを聞いてすぐこちらの要求を聞いてきた。多分わかっていて聞いてきてるんだろうから、これは望み薄かな?吸血鬼が瀕死の時の吸血鬼の意味を知らない人もいるだろうから、言ってみたけど女の方は分かっているみたいで、顔を顰めている。


 私としたことが自己紹介を忘れていた。


「そうだったわね。自己紹介をしていなかったわ。私の名前はリルヒ ボルテムス ノルス メイストル ハルティア ミクルス ハーティア ザ ブラッドよ!」


 初対面の人でこの名前を覚えてくれた人は皆無。付けてくれた村の人ですら、部分的にしか覚えてない。


 それなのにこの人は2回聞いただけで、しっかり淀みなく私の名前を言ってくれた。初めてが死の間際なんて笑えないけどね……


 私は血が欲しいと言った。やはり女の方は分かっていたみたい。あーあー。でも男が変なことを言っていた気がする。血を戻す?意味がわからないけど、吸血をしないといけないから、輸血とかでは無理。


 私は喋りながらも刻一刻と死に近づいているのがわかる。私は必死だった。死ぬと思ってたのに、生きれる可能性が目の前にいるから必死だ。吸血鬼になってしまってもデメリットも多いけどメリットもそれなりに多いのでそれをいってみた。


 メリットしか言わなかったことに、女は怒りを表した。初めてオーガに敗走した時よりも怖かった気がする。どもりながらもデメリットを言ってしまった。昔に比べて太陽の元でも活動できるようになったらしいが、それでも体が微妙な重さを感じる。


 デメリット以前に吸血鬼になるということ自体が、人間の禁忌のようなもの。なのにマイナスな点まで言ってしまったからダメだろうなと内心思っていたら、なんでも言うことを聞くのか?と聞いてきた。え?きっと私を性奴隷かなにかにでもするつもりだろうけど、人間が吸血鬼になるという欠点に比べたら利点が少なすぎると思う。確かに私は綺麗な部類だ。だけどちっこいし、胸も悲しくなるくらいない。そのおかげで紙一重で攻撃をよけれたことなんて沢山あるけどね。


 吸血鬼の教会によって広められている嘘について聞いてきたので真実を話した。奴隷とほとんど同じような条件だけど生きていけるならそれでもいい。装備も見た感じ駆け出しは抜けているみたいだし、男の吊るしてる剣はわからないけど、冒険者だろう。雰囲気的に私を使い潰したりしなさそうだし、回復さえすれば私は戦力として数えられると思われれば、待遇も良くなるだろう。


 また変なことを言っている。人間に戻る?そんなことはルー教のトップでも出来ないのではないの?種族を戻すなんてことは聞いたことがない。


 そんなことを考えていたら、私の口元に首を持ってきてくれた。凄いわね。首を他人に差し出しているようなものよ。もし私が悪意を持ってこんなことを言っていたら死んでるんじゃないかしら?


 私は吸血をした。なんとも言えない芳醇な味わい。吸血しているだけでわかる。この人は相当な実力者だ。血液の中に含まれている魔力の量がおかしい。飲んでいるだけで興奮してくるし、気持ちが良くなる。こんな吸血は初めて……もう何も怖くない。



 私が吸い終わって惚けているとカズシは苦しみ出した。ああ、やっぱり吸血鬼化してしまうのね。カズシの意識が途切れたということが分かっても、私は血の美味しさにトリップしていたら、顔を拳で殴り飛ばされた。


「カズシ様がリルヒさんとやらにかけた慈悲も分からずにそんな惚けているなんて死にますか?私はミアといいます。もしカズシ様がこのまま起きてこなかったら、あなたを殺して私も死にますからね?」


 私のために吸血鬼になることも厭わず、血をくれた人のことを心配もせず、ほうけていたことに対して責められた。そうだよ!何をやっているのだろう私。


 気を取り直してカズシを揺さぶっているミアさんの後ろから、様子を見ていたら、もう起き始めている。早すぎじゃない?1時間はかかるものと聞いていたのに……


 カズシが起きた後はミアさんが泣きじゃくり、頭を撫でてもらって落ち着かされていた。このふたりは恋人同士なのかな?


 というかなんでこの男は平然としているの?教会が異端としている吸血鬼になったのに。ステータスカードを確認している。吸血鬼になってたみたい。


 今度こそ聞き間違えじゃない。吸血鬼の状態を戻すとか言っている。意味がわからない。


 その時カズシが回復魔法と一言行った時にそれが起こった。覗き込んでいたステータスカードの種族の欄が人間に戻ったの。意味がわからない。てか魔法を使ったのは分かった。でも詠唱も何もしていない。ただ魔法の名前、しかも大枠のスキル名を言っただけ。え?回復魔法で種族を戻したとでも言うの?


 いやいや、私だって冒険者をやっているんだから知っている。この世界最高の僧侶。英雄のアーサーのパーティーの僧侶は欠損を治すのに、半日魔力を集中させてから詠唱して発動するとか聞いた。これはそれ以上の行為のはず。意味がわからない。本当にわからない。


 そんなことを質問してみたら、また殴られた。しかも全く同じところ。やばい、カズシという主人はまともみたいだけど、このミアとかいう彼女はやばい。下手したらこの人に殺されるかもしれない。


 いや、違うのかな?私が助けてもらったのに、礼を欠くような事ばかりしている時に殴られている気がする。それでもオークに殴られた時以上に痛い。私よりも弱いと思うのに。


 は?この子もスキル名称だけで魔法、回復魔法を使いやがった。意味がわからない。いや、説明をしてくれたけどそれでもわからない。魔法は詠唱が本当は必要ではない?いやいや、だったら詠唱をしないで……詠唱を覚えさせることから魔法の勉強って始まったわよね……


 また訳分からないことをしだした。何も無いところから箱を出して、ワンピースを出してくれた。ミアさんのらしい。そしてもっと驚きだったのがミアさんが奴隷だということ。冒険者の中には奴隷を仲間にする人もいる。仲間のように大切にする人もいるけど、新品のワンピースやたくさんの服を買い与えたりしない。大抵は捨て駒だと思う。


 これからオークの大群を退治しに行くとか言い出した。そのおかげでここに来たらしいから私は助かったけど、あれは不味い。Bパーティーの数隊でやるような規模の災害。それなのに余裕とか言っている。意味がわからないとばかり言っている気がする。もしかしてこの人は賢者様かなにかなのかな?そんな感じはしないんだけど。


 もう驚くのに疲れ始めた。なんで盾が喋るのよ。聖剣とかは意志を持つと言われているけど、そういう類の盾なのだろうか?それにしても禍々しい見た目なのよね。かけてくれた補助魔法の量と速さも異常だし。


 私の夢がひとつ叶った。なんと空を飛び始めたの!怖いからカズシに捕まっているけど凄い!伝説の始祖吸血鬼は空を飛んでいたらしいけど、私も飛んでる!すごいすごい!


 カズシがある1点を眺めてから、生存者や遺体の数を把握していた。気配察知とか魔力察知とか、もっと凄い魔法があるのかもしれない。


 足場を作ってくれて、戦いの準備をすることになった。やっぱりミアさんも魔法を簡単に発動していた。私だって血液魔法だったらなかなか早い発動速度を誇ってたんだけど、いろいろ砕かれる。


 魔力を補充する?そんなことって出来るの?同じ魔力のパターン?形?色?そういうのは同じ人は1人もいない。もし他人が魔力を譲ってくれるということは、自分の体内かなにかの方法で魔力をその人にあうように変換しないと渡すことなんてできない。なんかすごいとしか言いようがない。魔力が回復している感覚がするし。



 カズシが魔法を発動し始めたら、私はその光景に見とれた。


 雨の日とかにたまに落ちている光をカズシは何十、何百と空中に矢の形で展開している。今日は満天の星空で雲一つないこの空に、光の矢で覆い尽くされている。圧巻だった。それを見た瞬間、私はカズシの顔を直視できなくなってしまった。


 Cランクにまでなった私は付き合ったりする人は私よりも強いひとがいいと思っていた。吸血鬼だからそんな機会なんてめったに来ない。人間と偽っているから人は来るけど、吸血鬼だとバレて拒絶され、周りに言いふらされたら終わりなので深い付き合いもしなかった。


 でも、今は違う。私はこの人の物なの。奴隷と同じまで地位を下げてしまったもの。その事にとてつもない嬉しさがこみ上げてきて、顔が真っ赤になるのも見られたくない。血で顔を隠して、フェイスヘルメットのようにする。死ぬギリギリのところで自分が異端な存在になることも厭わず血をくれて、その人の強さを目の当たりにしてしまって惚れてしまったのかもしれない。とてつもなくチョロいと自分でも思っているけど止められない。


 その後も凄かった。その無数の光の矢は地上に降り注ぎ、降りてみたらボスがいる場所の周り以外のオークは一切動いてなかった。多分一撃も外していないと思う。


 囚われている人をカズシが助けに行ったのでミアさんと2人きり。少し怖い。


「リルヒさん。さっきも言いましたが、今はもう私たちは共にカズシ様のものなのです。ですから変に気を使わないでください。カズシ様は頑張れば頑張るほど褒めてくれますし、甘えさせてくれますし、気持ちよくさせてくれます。頑張りましょうね?」


「はい!」


 奴隷なのに褒めてくれて、甘えさせてくれて、気持ちよくさせてくれる//。頑張ろう!


 カズシが戻ってきて、下ろされる時に腕にしがみついた時に、いろいろ考えてしまい(妄想)惚けていたけど、、またミアさんに殴られてしまう。気をつけないと。ミアさんは魔法は凄いけどまだ私よりも弱いと感覚的にわかるので、私が上位種を担当した。


 上位種の周りにいるただのオークは、カウンターで腹に数発入れる。拳の周りにある血を操作して拳の先から血の茨を出して、数発殴れば普通のオークなら終わり。


 上位種と戦う前に、ミアさんを見てみたら、とても綺麗な戦い方をしていた。空を舞っているかのように、オークの棍棒や体を踏み台にしたり、地面スレスレを駆けてオークの足を切っていく。短剣なのに風を纏わせてすごいリーチを出している。風という重さがないものだからできる芸当だと思う。カズシもミアさんも凄い。


 私だって負けてられない。と思いながら上位種の元にたどり着いたら、凄く時間のかかりそうな相手だった。ソードマンが2体にランサーが1体、アーチャーが1体という非常にいやらしい構成。大抵の上位種はその力に慢心して、単独行動をとるもの達だけど、ボスがしっかりしてるのか、ソードマンが前に出てその横から槍をチクチクしながら隙間から矢を打ってくる。受け流しながら相手に攻撃してるけど、うまく当たらない。


 血液魔法を使い続けているけど、魔力が全然減っている感じがしない。チラリとカズシの方を見てみると、すごい細い魔力の糸みたいなものがそちらから私の体にくっついていた。向こうも戦闘中だろうにこんなことまで出来るとか……やめよう。今考えると集中力が乱れる。


 向こうをちょっとずつ削ってはいるけど時間かかるなぁと思っていたら、オークアーチャーの後ろからミアさんが攻撃しようとしている。あれは隠密かな?ミアさんも色々できるのね。


 ソードマンの隙をランサーが、ランサーの隙をアーチャーが守っていたので、ミアさんがアーチャーを倒してくれたので周りもすぐに倒すことが出来た。


 ソードマンが攻撃してきたら、それを最小の動きで避けて突っ込み、ランサーの攻撃は血の鎧で逸らしてソードマンに本気の1発。拳の血を針のようにして、拳を体内にめり込ませて、相手の体の中で私の血の茨を一気に作って外側へ動かす。相手は内部からの複数の穴が空き絶命。


 すぐに抜いて近くのソードマンの攻撃を避けようとしたら、ソードマンの足をミアさんが切っくれたので、ランサーとタイマンになり殴り殺した。


 ボス以外の掃除が終わったから、カズシのところに行ってみたら、カズシがオークのキングかな?を甚振(いたぶ)りながら高笑いをしていた。ミアさんはカズシ自身を心配していて、気が付かなかったみたいだけど、私は見えた。カズシの目が少しだけ赤い光を帯びていたことを。私のせいだ。吸血鬼化したら性格がわかることがよくあるらしい。その影響が出ているのかもしれない。


 ミアさんが声をかけたら戻ったけど、多分またあの症状は出ると思う。どうにかしないと。


 その後はトラウマを残さないように、被害者の前でキングを殺してカズシの討伐依頼は完了した。


 今日の月がほとんど隠れている。





お疲れ様でした。

ちょっとずつブクマが増えてきて嬉しいです。

読んでくださっている方々ありがとうございます!


次回、新しい仲間と後片付け

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