第172話!兄弟◇
どんどん精神的におかしくなっていくカズシ。
でも大丈夫。これはトゥルーだから。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
マールを一撃即殺できる最高のタイミングを最高神によって防がれた。その事を念話で問い詰めたのだが、なんか凄いキョドってるし腰が低い。
本気でブチギレてたが、一気に怒りが冷めてしまった。最高神との念話からマール警戒に一度意識を傾けてみると、
「最高神にでも問い合わせるんだろう? 僕は何故加護を受けているのかなんとなくわかるけど、カズシが知りたいなら、聞いている間は何もしないよ。というか、多分今の僕がカズシに攻撃しても同じように阻まれるだろうしね」
と言って、胡座をかいて座り出した。ある程度距離を取って、マールを警戒しながら念話をする。
『なんでお前はそんなにテンパってるのよ? てか、まじで聞いてなかったの?』
『いやカ、カズシの声を聞いたら少し考え事をしてしまってな。済まない。もう一度要件を言ってくれないだろうか』
まじで態度が違いすぎるだろ。なんだこいつ?
『なんでお前がマールに加護を与えてるの? あいつを殺す最高のタイミングを逃したんだけど』
『マールを殺す!? いやいやいや。やめておけ。お前らが戦うのは良くない。それは絶対に良くないことだ』
早口で殺すなとまくし立ててくる。なんなのこいつ? 前までは殺そうが殺さなかろうがどうでもいい的な感じだったじゃん。
『なんでこの前まではどうでもいい感じだったのに、今はそんなに必死になって止めるの? 説明しろよ』
『いや、それはその。したいんだけど、しないというか。出来ないというか?』
なんてごにょごにょし出した。その時俺は数秒マールから目を離していた。
「なんでパパに狼なんて仕向けたの?」
アルカンジュがマールの目の前にいて、話しかけていた……はぁ!? 転移。
「アルカンジュ何やってるだ」
いつの間にか俺から抜け出していたアルカンジュを抱っこして、すぐにマールの前から離脱。
「うわ、傷つくなぁ。まあ、今までが今までだししょうがないと思うんだけど、やっぱり心が痛むわー」
「うるせえ死ね」
マールは本気で落ち込んだような表情をしているし。
『いやな、その説明出来ないんだけどなんというかな、そのなあれだよあれ。一身上?…………』
最高神はごちゃごちゃ内容のないことをべらべら喋ってるし。
「ねえ、なんでパパと兄弟なのに殺し合いなんてするの? 家族は仲良くしなきゃダメなの。ママ達はみんな仲良し……なの」
アルカンジュは俺とマールが兄弟とかいうし。ん? あれ? なんかすげえおかしい事を聞いた気がする。うーん。いやいや。ただの聞き間違い? 難聴? 幻聴?
「アル」
「何パパ?」
「さっき言ったことをもう一度行ってくれない?」
「何パパ?」
「それの前」
「あーその前ね。ねえ、なんでパパと兄弟なのに殺し合いなんてするの? 家族は仲良くしなきゃダメなの。ママ達は喧嘩ばっかりだけど仲良しなの」
「おお、その子は九尾の呪いにはかからなかったんだね。伊達に色んな力を持って生まれただけあるね」
「???」
んー? マールと俺が兄弟? 神であり何千年も前から生きているであろうマールと俺が兄弟? あはははは。ワロス。いくら何でも知っているような感じのアルカンジュでもそれはないわ。そんなことありえないだろ。だってまずそれを証明うんぬん言わないとしても、共通点がないじゃん。月の力は俺が奪っただけだし、今のマールは日本人だけど、そんなの今言ってる共通点にはならないし。もう、びっくりしたな。
「僕達双方が認識したからやっと言えるようになったね。でも、君に特別にかかっている九尾の呪い……封印は解けてないね。まあ、後で解いてあげるとして、カズシ、僕が君の数千歳年上である兄だよ」
「…………」
『最高神!!!! ちょっと聞きたいことがあるんだが。俺がマールの弟で、血のつながりがあるとか嘘だよな? だって、俺の両親はどちらとも血の繋がりがあったし、両親は神じゃねえし』
俺は父親とはあまり似ていなかった。似ている部分を探せばあるにはあるが、母親ほど似ている要素はなかった。
『生きている世界だって違うし』
神ならその程度関係ない。
『まず魔力波形だって全然違うし』
家族間で魔力波形の類似点は絶対にある。だが、今の俺の魔力と今のマールの魔力の波形は全く一致しない。俺は強奪をし続けた結果波形はぐじゃぐじゃ、マールは人間として生まれ直したので波形に違いが出るのは当たり前。
『それに……それに……』
『カズシ。まだギリギリワシの呪いは解けないのだが、これだけは言える。魔法や特異能力の血縁間の遺伝や継承については知っているか?』
そんな面倒なこといちいち知らん。
『マルク、魔法や特異能力の血縁間の遺伝や継承について教えてくれ』
『いきなりだね。理論なんてあまり知りたが『すぐに頼む』つれないね』
『魔法は家系である程度遺伝するということは知っているね? さらに、今の僕達ならできる技術だけど、魔法の素養や特異な能力を他人に継承することも出来る。ただ、魔法と違って特異能力と呼ばれる類の物は、その人物との遺伝子的な繋がりがある程度無いと…………神の力は最上級の特異じゃないかい? 多分聞きたいことはそれだろ?』
……いや。それだとおかしい。
『ありがとうマルク、じゃあまた』
俺はマルクとの念話を切って、最高神におかしい点を指摘しようとする。気持ちが悪い。頭がグラグラする。いや、ありえない。
『マールの神の力を強奪できた俺が血縁だというのはおかしい。だって、俺は上位神である生命を司り大樹を操るミケラフェルムスヒィルの能力を強奪している』
『それは最上位の神の力を手に入れてる状態なら、ぶっちゃけその劣化である上位の力なんて余裕だろう? あとな、これを言えばお前も納得すると思うけど』
……
『お前はあの時はただ人外レベルの人間だったんだ。それなのに何故最上位の神の力を強奪できた? ある程度の繋がりもない器に見合わない強大な力を手に入れられると思うか?』
いや、それもおかしい。
『強奪の力にそんな制限は『ある』』
『強奪はあまりにも強力だから、手に入れた世界の生物にしか効かないようにセーフがかかっている。神はもちろん含まれていない。だが、血縁的に継承可能な力なら別だ』
いや、まだ反論できる。
『マール、月の神を倒す前に、俺は力の神から力を強奪した。それはどう説明するんだ? 繋がりのないはずの神の力。多分上位の神だったと思うが、それでも出来ないはずだろ?』
『力の神の権能をお前は100%強奪できていたか? 多分月の権能はロックがかかったりしていても100%手に入れていたはずだ』
……俺はこの世界に来た時どんなステータスだった? それを思い出せば最高神の言っていることが間違いだと指摘できる。
『カズシの過去の記憶をロードしたよ。見る?』
『スラリン頼む』
初めから力の権能は持っていたはずだ。
名前:カズシ
年齢:18
種族:人間
Lv:5
職業:無職
HP:G MP:G
筋力:G 耐久:G 俊敏:G 魔力:G 幸運:G
スキル:
武術系統
片手剣術:5 大剣術:2 槍術:2 双剣術:2 棒術:2 槌術:1 弓術:2 格闘術:3 盾術:3
魔術系統
火魔法:1 水魔法:1 風魔法:1 土魔法:1 光魔法:1 闇魔法:1 雷魔法:1 回復魔法:1 神聖魔法:3 空間魔法:1 錬金魔法:1 無属性魔法:1 結界魔法:1 付加魔法:2
生産系統
技術系統
気配察知:3 魔力察知:4 熱察知:1 隠密:3 魔力操作:4
耐性系統
その他
精力強化:3 MP回復速度上昇:2 魔核浄化魔法 神(太陽と輪廻)召喚:? 神(愛と豊饒)召喚:? 月を司る 重力魔法
罰則:なし
…………月を司るはあるが、力を司るではなく、その劣化の重力魔法しかない。何かが壊れる音がした。
お疲れ様でした。
区切りが悪かったからここで切りました。
九尾もマールもリルヒもミアもマルクもカズシのメンタルは継ぎ接ぎだらけのボロボロであることはわかっています。
最高神は……わかってません。
次回、崩壊




