第167話!Lエンディング◆
1番ひどいエンディングは一話で終わる。
Lonelinessなエンドです。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
悪行を行った神の魂は二つの方法でその罪を精算することが出来る。
一つ目は生きている状態で罰を受ける方法。
これは昔の偉い神々が神でも苦痛苦行となる様な、そんな世界を贖罪させる為だけに作った。犯してしまったり、自分の行ないに気がついた神で、反省する気がある奴はそこに行って精算行為をするらしい。詳細は不明。
もう一つは神の人生、いや神生を終わらせて、その魂をリセットして再び神になる方法。
人間は人生を終えて、その魂は輪廻転生しても人間になるとは決まってないようだが、神になった魂は次の生も神になるらしい。悪神ではない神が死んだ場合は大体の記憶を引き継いで生まれ直す。これは神の業務の効率低下を避けるための処置で、悪神はいるだけで効率が下がるのでリセットするらしい。
まあ、こんな方法があると知っているがマールの魂は消す。消滅させる。強奪で力を全て奪ってから魂を砕く。
神の転生の基本ルールは善は記憶持ち越し、悪はリセットなので、ジャッジメントブックには死んだ悪神の情報は基本的には乗っていない。だが、マールは記憶を持って転生した。そして、前のマールは悪神の中でも最悪の奴だった為、この本に一度はのったことがあるだろう。そのログを巡って、その魂の所在を探った結果、見つけた。
そして今俺はその世界にスラリンの分体を借りて、マールを見つけた。隠蔽に隠蔽を重ねたのでまだ気が付かれていないはずだ。ちなみに俺は今誰も連れていないし、誰も憑依していない。スラリンも置いてきた。他の奴に甘えて勝てる相手ではない。
マールは城の敷地内に屋敷を建てて、そこに住んでいるようだ。先程から胸のない女と話している。少し待つとその女は部屋から出ていった。
本体である俺はマールの背中に転移。なんか結界が貼られているようだが、それをぶち壊して、転移した。
「結界ガフ……ゲホ、カズシか」
闇の鎌の形状をしている常闇を直刀の形に変えて、背中から心臓を一刺できた。時間を置かず、次は首を、
「カズシやめてくれないか? 僕はこれ以上切られなくても死ぬさ」
……嘘は言っていない。剣を少しだけ捻ってから抜いた。手当はする気がないようだ。
「嘘言っていないようだな。久しぶりだマール。殺しに来たぞ」
「僕が予想していたよりもだいぶ早かったね。今ちょうど君の倒し方を考えていたというのに」
今のマールはジャージ姿の様だが、それはいい。俺がマールの予想よりも襲撃が早かった、それもいい。おかしいのは、
「お前は何故こんなにも弱くなっている? お前はもっと絶望的に強かったはずだ。どんなに抗ってもたった一瞬の隙をつかないと殺せない、傷つけられない、そんな存在のはずだ! 何故! こんなにも弱体化している! 神の力は取り戻しているはずだろう!」
やばいやばい。少し興奮しているようだ。スラリンという精神ストッパーがいないから簡単に高ぶってしまう。
「あはは。コフッ……、カズシが僕をそこまで過大評価してくれているのは素直に嬉しいね。僕の方が年上なんだけどな」
「は? そんなことは当たり前だろ? で、何故お前は抵抗しない? 何故お前はその傷を治そうとしない? 心臓を貫かれて放置していては、いくらお前でも「カズシ」」
「僕は君が思っているよりも……、ゴホゴホ、いや君が強くなりすぎたんだよ」
は? いやいやいや。マールが脅威的な強さを持っているから俺はこんなにも様々な神を殺して、力を蓄えてきた。それなのに、強くなりすぎた? ははは。
「どうやって嘘をついているのについていないように見せるんだ? 真実の神の権能をどうやって偽ってる!」
「ごめん、割と辛いから座るよ」
そういうと、机に収めていた椅子に座り、俺の方を前に見た道化のようなニヤニヤした顔……ではなく、真剣な顔で話し始めた。
「カズシは一体どれだけの神の権能を強奪してきたんだい? まず、君は僕の月の権能を持っている。すーはー……さらに、自分が昇神した時の権能もあるはずだ。さらにさらに、僕を警戒して様々な魔物や神を殺して力を奪ってきた。カズシ、神は人間よりも遥かに強いけど、ただの生き物なんだよ。ゲホゲホ、……強さの上限だってある。それを君は簡単にぶち壊すけど、同じ土俵に僕と君が立ってしまったら、僕は勝てないんだよ。だって、前提の違う神と人間の時点で僕はワンパンされてしまったんだよ?」
嘘はついていない。いや、嘘をついていないとだめだ。
「変な理屈をこねるな。なんだ? お前はこう言いたいのか? 君はただの空想のマールという強敵を追い求めていただけであり、力のないマールという神を圧倒的力で殺そうとしただけだとそう言いたいのか?」
それじゃあまるで、
「昔の僕みたいだね」
チッ。死ね。
「まあいい。お前の魂は輪廻にも向かわず、天国地獄にも行かせず、魂自体を消滅させる」
ちなみに神が生きながら贖罪をする世界の名前は地獄という。
「今の君、カズシなら出来るだろうね」
「何故治療しない。力は俺の方が強くても、月の権能ならそれくらいなんとかなるだろ? 即死ではなければ死なないのが月の権能だろ? 月は落ちてないしな」
「君をまじかで見てわかったんだよ。勝つためなら、僕の嫁にも手を出すだろう? 僕を殺すことは神としては正しいことだからね。どんな非道な事をしても、僕をマールを殺せれば正当化される。なら、潔く死んだほうがいい」
こいつは最悪の悪神だから、当たり前だろう。
「で、なんでお前は俺と無駄に喋っているんだ? 俺に言いたいことがあるんだろう? 聞いてやるよ」
聞くだけかもしれないがな。
「そうだね」
マールは俺の目の前の地面に座り込み、土下座をし始めた。は? 土下座?
「頼む、僕はどうなってもいい。だが、僕の嫁、そして子供には手を出さないで欲しい」
俺が悪役みたいじゃねえかよ。家族を守る主人公と序盤に出てくる悪役みたいだな。
「……何故俺が殺そうとしているとわかった?」
「遺恨を残したら君が次は殺されるかもしれない。なら、遺恨を残さなければいい。そういう考えなんだろう?」
「そうだ」
勇者の時の俺を直接物量で殺さないで周りをじわじわ殺した。やっぱりあれは意図的か。
「過去の事を言われたら、今の僕にはどうにも出来ない。君の両親が死ぬように呪をかけたのも、君のいる世界に魔物を魔王にする因子を飛ばしたことも、今の僕には償いなんてできない。だが、お願いします。子供と嫁、そしてこの世界だけはどうか、どうか見逃してくれないだろうか」
泣きながら訴えかけてきているマール。確かに俺はこいつを殺したら、こいつに家族や親しい人がいたら殺す気でいた。だって、俺と同じようにいつか復讐してやる! なんてされたら溜まったもんじゃない。女性の恨みは恐ろしいからな。だがまあ、
「別に俺はお前を殺す為だけに来たからな。お前の女なんてどうでもいい。あ、でも殺しに来たら殺すからな?」
「ああ、それでいい。本当は君に言いたいことが沢山あるんだけど、完全に敵対してしまうと言えないみたいなんだよね。全く9日もひどい呪いをかけていくもんだ。じゃあ、おやすみ」
「早く死ね」
俺が願いを聞いたとわかると、床に大の字になって死んだ。俺が殺したのでこいつの全てを、奪えない? まあいい。魂を摘出して、
「魂をも凍らせろEFB」
これで勝手に成仏されることもないな。神の魂はの改竄は時間がかかるので一旦、
「シンイチ様、お茶を持ってき…………あ、貴方がカズシですか……?」
部屋に入ってきたのは先程までマールと話していた女だった。部屋に入ってくると、俺が目に入り、次に倒れているマールを見て、お盆を落とした。
「ああ、俺はマール……今はシンイチか。こいつを殺した。こいつとの約束でお前らが俺に危害を加えなければ殺さないことになっている。見た感じ貴様も身重なんだろう? やめておけ。お前は人間の中では強く、リルヒ並だが、俺には勝てない」
「……私の名前は奥村輝です。貴方を殺す者の名です。死ね!」
一瞬で俺の横に移動してきた。奇しくも俺が勇者の時にマールを殺した方法である、ナイフによる首への一撃を狙った様だが、
「はい、死ね」
俺は反射的にその女の首を弾け飛ばした。
「…………奥村? ヒカル?……輝!?」
奥村家の親戚には輝という俺の四歳下の男の子がいたはずだ。
「くふふ、あはははは。そうか、カズシは俺の生きている、平和に生きている時代に転生してきてたのか。ということは何か? 俺は親戚を殺しちまったのか? あははははははははは」
「よし、全員殺すか」
それから、マールの加護を受けている全ての女の腹を吹き飛ばし、顔面を粉砕して殺した。妹とか母親もいたみたいだが、マールの気配を感じたのでついでに殺した。そして、マールを殺した部屋に戻ってきた。
「マールの魂を俺の世界に持っていきたくねえし、ここで情報を全てリセットして、消滅させるか」
俺は凍らせたマールの魂に触れた。そうすると、
『やあ、これを聞いているということは僕は死んでいるだろ。そして、僕を殺せるのはアベルか九尾かカズシ、多分カズシだろうね。これは録音して、魂に刻んでおく音声だ。出来れば聞いた方がいいよ?』
魂という非物質から、何も意思のない刻むことなどできないはずの魂から声が流れ始めた。
『まず、この音声が流れる条件を説明しよう。まず僕が死んでいること、そして僕の嫁と嫁の中にいる子供の9割が死んでいる場合にのみ流れるようになっている。そして、アベルと九尾が僕を殺したのなら、もう聞かなくてもいいよ。てか、アベルは絶対に聞くな。お前だけは許さないからな?』
『さて、この音声は我が弟であるカズシに向けてのメッセージだ』
「は?」
『僕が言える真実は僕達が兄弟であるということだけなんだけど、これも多分生きている時には言えなかったことだろう。そう! 君は兄弟殺しをしてしまったことになるんだよ! そんなことはどうでもいいんだ』
『即死してなければ君に家族を殺さないでくれと懇願したはずだ。それなのに君は僕の家族を殺した。だから、ささやかながら、君にプレゼントをあげようと思う。てか、もう強制的に受け取ってもらったけどね』
俺は自分の内部を見てみる。今までなかったはずの呪いが俺の中に存在している。いつだ? ああ、マールの力を強奪しようとした時にすり替えたのか。だから、俺は強奪が成功しなかったと思ったのかな?
『簡潔にいうと、その呪いは君をこの世界から出さない様にする魔法だ。この世界を壊すこと、この世界から出ること、それらを封じる呪いをかけた』
……待て、待て待て待て待て。ということは、
『基本馬鹿な君だけどわかっただろう。そう、君は自分の世界に帰って好きな人達にもう二度と会うことが出来ない』
「空間を支配。時空の権能、太陽の権能発動。俺の座標…………あれ?」
『僕は月の神だけど、何故最悪の悪神として語り続けられていたと思う? 実際僕は結構暴れたけど、それでも最悪には程遠い存在だったんだよ。僕はね、神という存在を、その象徴である権能を封印することが出来るんだよ。てか、僕の月の権能はある神と対になっていて、僕が封印、相方が解除をになっていたんだけど、僕達のこの力は権力の強い神達から恐れられてしまい、相方は死亡、僕はその時に全力を出してしまった結果、何柱もの権力の高い神を人間にまで格を落とした』
「転移! 空間跳躍! 転移門! 空間断裂! テレポーテーション! くそがあああああああああああ」
『権能がダメなら空間魔法ならって試し終えたくらいだろう。カズシ、僕は君を決して逃がさないよ。僕は君と相対した時点でたくさんの封印をかけただろう。それでも殺されてしまい、嫁達を殺された。昔の君ならこんなことはしなかったんだろうね。きっと、僕が変えてしまったんだろう。だけど、そんなことは知ったこっちゃないね。僕は、僕達は死んでいるんだから! あ、君の仲間がもしこの世界にいたとしても安心して、しっかり別の世界に転移させて封印したはずだから 』
「くそおおおおおおおお」
俺は全力で凍結させた魂を殴るが、壊すことは出来なかった。大半の力を封印され、強奪も封印されている。さらに、身体能力の半分以上に、スキルも大半。ステータスを開いてみると、この世界のステータスが表示され、100レベルになっている。俺はこれ以上成長することもない。
俺はこのマールの屋敷から飛び出した。
◆十数年後
俺はこの封印を解くために、この世界を回った。いくら半分以上のステータスが奪われ、魔法が使えず、スキルも使えないとしても、ステータス自体の数値がバグっているレベルであるので、冒険者をしながら金を稼ぎ、封印解除の研究をしている。
結果、解除は出来そうだが当分時間がかかりそうだ。ヒントはあの屋敷にあった。マールが自分の嫁に封印術を教える為に書き留めた書類がなかったら多分ここまでたどり着けなかっただろう。
「あのー、すみません!」
俺はこの世界の一番大きな国の都市の外れに住んでいる。俺はこの世界でも冒険者としての名を馳せているが、俺のそばには誰もいない。この世界では女も抱いていないし、友人も作っていない。マールに負けたような気がするので、作らない。
そんな俺の家を訪ねてくるのは大体依頼がある人だろう。
「はーい、少し待ってくれ」
俺は客を客間に通して、紅茶を出す。その少女は中学生くらいの少女で、日本人と外国人とのハーフなのかな? と思わせるような美少女で、腰に刀を携えている。
「えっと、貴方がカズシさんですよね?」
「ああ、俺がカズシだ。どんな依頼だ? 依頼はここで聞くとしても、ちゃんとギルドは通すからな?」
「いえ、そういうのは大丈夫です」
「え?」
俺はこの世界では強敵と呼べる強敵とは戦ってなく、マールとの邂逅後から感覚がどんどん鈍っている。だが、そんな俺でもわかった。死んだわこれ。
「一閃……やっぱりパパを殺して、ママ達を殺しただけはありますね。首を切られたのにまだ意識があるんですか」
その少女の目をこの時初めて見た。何があっても復讐を成し遂げ、絶対に宿敵を許さないという目だった。
「自己紹介は大切ですよね。はじめまして、私は奥村輝と月下新一の子供、唯一お腹を吹き飛ばされていなくて、たまたまパパの力の大半を引き継いだそんな存在です。貴方の魂は絶対に地獄にも天国にも送りません。パパ達の体は保存されていますので、その復活の為の贄になってもらいます。あれ? 目が閉じてきましたよ? では、死ね糞野郎」
俺はどこでミスったのだろう。
お疲れ様でした。
このカズシはカズシのそして、アベルの血筋の悪い部分が表に出続けてしまったのがミスですね。
そして今回初めて語られるマールの悪徳。周りがあまりにも酷かったのでグレてヤンチャをしましたが、ヤンチャをする前から情報操作で最悪の悪神としての名を流されていました。
ちなみに、最高神は真実をマールが死んでから知りました。賢神は知っていて無視、男代表神はびびって何もせず、九尾はその頃は最恐だった。四神のトップ無能すぎ。
私の話は飛び飛びですので、は? これはどういうこと? ってのがありましたらメッセージや感想で聞いてください。
次回、◇ルート(こちらは何話かかかります)




