第112話!帝国血族運営で最も要らないものは英雄だ
英雄になってもばりばり絡まれます。他作品では英雄になったりすると、喧嘩を売ってくる奴が減るけど、逆に増えると思うんだよね。
俺こそが最強だ! って奴がいると思うし、この世界は決闘厨で溢れかえっているしね。
あと一言言っておきますと、この章のボスは雑魚です。オモテボスハ
では、お楽しみいただけると幸いです。
俺の登場と共に凄い歓声に包まれていたが、俺は別のことをやっていた。
『カズシおにいちゃんは帝都の舞台に上がるんだよね?』『いいなーおれもみたいー』『見たいみたい!』『行きたい!』『ねぇ〜。一度でいいから行ってみたい』『カズシ様が活躍しているところを見てみたいです』『でも今からじゃ間に合わないよ?』『カズシ』『カズシさん』『カズシ様』
いつもは孤児院の子供達から念話をしてこない。危ないと思った時や助けてと思った時に連絡してねって言っていたのだが、どこからか(モルドレッド)情報が漏れたみたいで、孤児院のみんなから一斉に念話が来た。
『ミアは一番俺の見えるであろうホテルで見てるよな?』
『当たり前です。カズシ様が国に認められたところを。観衆の目に前に現れ、その高貴なる『いいからそういうの』ホテルにて見ています』
うん、なら観光とかは出来ないけど見るだけならいけるな。
『今からお前らを、俺の泊まっているホテルに転移させて見れるようにしてやる』
『やったああああああ』ブチン
子供達が念話で叫び出したので、一度切って待つ。
あと式典は紹介をされてから、一度後ろの席に座り、俺のやった事を英雄譚のように語っている。ガンスとルドが。
なんでも、俺の非常識を一番聞いてきて、頭が悪くないからガンスも一緒に話をさせられているようだ。
ホテルのリビングは大きなガラスが填められていて、帝都を一望できるようになっている。周りは2.3階建てが普通だからね。こっちはその倍近くいるし。
『ミアは一度リビングから出てくれ。空間魔法で一時的にリビングを広げる』
『完了しました』
『空間魔法【擬似延長空間】。今から子供達が転移してくるから、面倒見てあげて』
名前の如く、実際の面積よりも何倍も広げる魔法だ。
『お前ら準備はいいか?』
『おおお』『はい』『』『』『』『』…………
『転移』
後はミアに任せればいいだろ。ミアの指示を無視する馬鹿はいないからな。ミアの教育は厳しい。ミアの俺至上主義教育はまるで宗教みたい。
「皆も見ただろう! あの真っ赤な星をも穿つのではないかという巨大なハンマーを。あれによってボーンドラゴンは一撃の元に粉砕され、ノーライフキングによって召喚された全ての魔物は葬り去られたのだ!」
話し始めたら、歓声が嘘みたいになくなり、静かになっていた。しかし今ので話が終わったのだとわかると、話を聞いて興奮が溜まっていたのか一気に爆発して、爆音となって感謝や激励、祈りや求愛などが聞こえてきた…………
「……ははは」
やべえな。涙が出てきたわ。そういえば、勇者の時の魔王討伐は元帥の不意打ちで仲間の二人が死に、嫁の一人が尊厳の為に自害、その後少しして守るべき人々によって、仲間と俺を支えてくれた王族は皆殺し、最後はもう一人の嫁は命懸けで俺を守った。
今考えると、結果的に大勢の人々の為にやったことで賞賛されたことってねえや。
「カズシ……いいんだよ」
くっそ。リルヒがめっちゃ眩しく見える。ルナ以上に女神に見える。
「……いや、だいじょうぶだ…………………………会いたいな」
何かが口からこぼれ落ちた気がする。
「……」
これが終わったら本格的に仲間の蘇生をやろう。ナズールとアーレイバーグは死んだ後は魂を使って、最強のゴーレムを作ってもいいが、俺達の意識まで復活させるなって言ってたっけ。
まあ、お前みたいな脳筋じゃあ復活なんてできねえと思うがな! とか言われた気がするが、それすらも朧気な記憶になっている。だが、あの二人の魂とあのふたりの家族の魂は、俺が神界に行ったら最高の転生術を施して、安全で平和な世界で生を受けるようにしよう。もちろん記憶の引継ぎなんてしない。
マルクは僕が完成できなかった復活魔法を引き継いで、僕を生き返らせるのが僕への恩返しだからな? とか言っていたから、蘇生させることは確定。魂は摩耗してたけど、なんとか俺の作った何かによって自害できたようで、俺の中に魂がある。
レミアとアルテシアは何があっても生き返らせる。正直マルクはおまけだ。俺達が今回培養した肉体に、魂を入れ替えることが出来たので、魂に記憶がしっかり刻まれていることはわかった。さらに培養室を作ってから、スラリンの体を10個ほど借りて、ディルとスラリン、ファベログの力を借りて二人+一人の体を作っている。
レミア、アルテシア、マルクは俺の肉を少し使い、神の眷属よりも上等な存在に仕上げる予定だ。あと少しだ。あと少し。
「カズシ……耳が出かけてる!」
歓声の中でもなんとか聞こえた声で考え事から意識を浮上した。力みすぎて狐耳が出そうになったみたい。危ない危ない。
今は流石に耳や尻尾は隠している。
「ありがとう」
「……もっと強くなるから」
「あ? おう、頑張ろうな」
なんかリルヒが新たに何かを決意したようだ。俺が止めてもやるだろうし何も言わん。
俺だってこいつらに言ってねえことがいっぱいあるしな。マールによって人類の敵にされた亜人であるエルフという種族を根絶やしにしたり、刃向かう人間をぐちゃぐちゃにして殺したり、巨人族を全滅させて食ったりなんてことは、この世界な女達には絶対に言えない闇だ。
「カズシは俺みたいにあまり長く喋れないだろうが、少しはその英雄の声を聞きたいよな!」
お前は帝王じゃなくてDJなのか? こいつが煽る度に声が衝撃になってこちらまで来るぞ。なるほど、これがカリスマってやつか。
「じゃあ、俺から変わってカズシに何か話してもらおう」
ルドに呼ばれたので、リルヒと共に舞台の真ん中の拡声器の様な何かがついている机まで来た。
「何か適当に喋ってくれねえか?」
「あのよ。あそことあそことあそことあそこにいる冒険者ってSランクの奴らなのか? なんか物騒な雰囲気があるんだが、Sランクは強さだけではなれないじゃなかったか?」
俺の場合はSランクにしないと見合う依頼がないのと、ガンスのお墨付きがあったから速攻でなれたけど、普通は色々な問題が発生するらしい。
「あんな奴らは俺は知らんが、壇上に登っているということは、王族及びその周りの警護だろう……まさか」
「ああ。だから、お前は俺から離れてろ。ガンスの後ろにでもいろよ? 今のお前は儀式剣しか持ってねえんだから」
ルドをしっかりと下げて、リルヒと手をつなぎながらマイクの前につく。
「……ゴホン。俺が我が盟友であるルドメイから紹介された、魔王ノーライフキングを討滅したカズシだ!」
1文1文で区切らないと喝采と被るのな。さっきよりもさらに大きくなりやがった。……なんかサクラみたいに至るところにルシファー構成員がいるんだが、気のせいだよね?
ミラ、ラーラ、ネイム、ニーアの幹部四人娘が手を振っている。手を振り返すと、そこの周りの人達が一斉に振り返してきて、他のところの人達が羨ましそうな顔をしているので、見えるところすべてに手を振った。
「なあリルヒ。この世界の常識がまだ掴みきれてねえんだけど、やっぱり英雄ってアイドル的な存在なの?」
「アイドルって見た目と歌や踊りで人気をとって、人々の笑顔を作る職業だっけ? カズシは新しい体になって、顔自体もイケメンになったから、セックスしようぜ! なんて未婚の道端の女性に言っても股を開いてくれるレベルで人々の信頼を勝ち取ってるわね。既婚でも夫と相談の元了承を得られるかもしれない」
生々しいな。この世界は魔王=絶望だからそんなもんなのか。
確かにあの時点では俺以外にノーライフキングに勝てるやつはいなかったかな? 俺のせいで死神にパワーアップしたとして、俺がいなかったらリルヒもミアも今の力はないから、Sランクから何人か犠牲が出て討伐できるくらいか。円卓が最高峰だしな。
「今度やってみよ」
「不能にするわよ?」
「アッハイ。失言には以後気をつけたいと思う」
「よろしい」
やっと収まってきたので、手を上げて、落ち着かせて、話し始めようとしたのだが、王族が固まっている場所から四人ほど出てきた。不意打ちはしないのね。
「偽りの英雄よ! その力が本当というならば、我々にその力をこの場で示せ!」
正直いってSランク中位程度だと足だけで勝てるんだがな。
お疲れ様でした。
カズシはアホみたいな戦果がありましたが、知らない人たちからの感謝というのは始めてもらったんですね。
感動したカズシを書くと、もう一つの√の◆想いを殺しての方がどういう反応をするのか書きたくなるよね。
次回、英雄殺し




