第79話!俺の名はジャック。とパレード終了
今回の話にはジャックが出てきます。
え? ジャックってなんだ? ロリのあの子か? いえいえ、ただの名前ありモブです。
では、お楽しみ頂けると幸いです。
よう、俺の名はジャック。Cランクくらいの力を持つDランク冒険者だ。俺は基本的には酒場に入り浸り、報酬を全てそこで使い、金がなくなったら依頼に行くという、屑のような生活をしている。
まあ、俺の本当の仕事はルシファーの情報収集員なので、噂話やゴシップネタを手に入れては、ルシファーに持ち帰るのが俺の仕事だ。だから、常に入り浸らないと行けない。
ちなみに俺は人間で、人間の女性の嫁がいる。娘もいる。その女性が俺が荒んでいた時、ルシファーの中でも過激派の奴にこちらの派閥に来ないか? と誘われたことがあるのだが、その時に本当の意味で体を張って俺のことを引き止めてくれたんだ。とっても感謝しているし、愛している。だって、鞍替えしていたら俺は死んでたしな。
そう、ある日昔から根強く残っていたスーマの裏組織が壊滅したという知らせが届き、ルシファーが進出することになったんだわ。
俺はアルベルっていう知識派の穏健派に所属している。時は金成。情報こそが黄金だ。など言っている奴だが、情報は確かに大事だな。俺は進出には参加出来なかった。ネイムという猫獣人の女幹部及びその部下が行くことになったからな。
進出してすぐの幹部定例報告会によって、ルシファーは様変わりした。
まず、過激派の幹部三人にトップの爺が死んだ。しかも、たった一人によって殺された。過激派の中でも頭がおかしい奴らも軒並み死んだ。
殺した奴はカズシという奴だ。ギルドで情報を集めている俺だからいち早くわかった。そいつがSランク冒険者だということを。
曰く、体格が全然細いのに城壁のガンスすら投げ飛ばす様な腕力を持つ(チーズケーキチーズケーキひっついてきてウザかったから、柔道的な投げをしただけ)。曰く、オークの大氾濫を事前に察知し、地形にダメージを与えずに、無傷で敵を殲滅した。曰く、攻勇者ガウェインと防勇者アーサーを赤子のように捻り、下僕にした。曰く、変異種のゴブリンを鍛え上げ、ゴブリンの軍団を作っているなどなどなど。
普通なら有り得ないような噂ばかりが一人歩きしている奴だと思っていた。だが、カズシが使ったとされている狐を象った炎の魔法。あれを見た時に思ったね。俺はカズシには逆らわないと。
そんなに危険な奴がルシファーを支配したんだ。きっと俺の嫁も犯されて殺されるのでは? と思ってなんとかしようとしていたら、ルシファーの膿を取り払った? 情報売買や護衛、諜報と後は普通の洋菓子店を作るとか言い出しやがった。
爆笑したね。ブルース帝国三大裏組織を使ってやることがお菓子を作ることとか言い出したんだぜ? マジで笑ったよ。でも、売り出すケーキはうまかった。食うのを我慢して娘に持っていって笑顔を見たいと思ったくらいだ………………
なぜ俺がこんな事を思い出しているか? それはカズシが指示した、不審者捕縛の為に街を走り回っていたら、出会っちまった。この業界では会ったら終わりと言われているあいつに。
「お前は確か、影のジャックだったかな? お前はなかなか強いらしいよな? なら、俺と殺し合いをしような」
過激派のナイフ使いのコンピューよりも、更にやばくてさらに強いと言われているこの業界の悪、ナイフキチガイと名乗っている奴だ。こいつは殺し合いを愛していて、一度でも敵意を向けられたら、その相手を無力化して、そいつの家族をそいつの前で犯してから殺すという頭が逝ってる奴だ。最善手は逃げだな。
「おいおい、逃げんなよ? お前はルシファーで割と強いことで有名なんだろ? 確かにマリアンヌだっけか?」
その声を名前を聞いた瞬間に俺は立ち止まらざるおえなかった。絶対に流出しないようにしていた嫁の名前、ということはきっと居場所も知られているだろう。
「ナイフキチガイ死ね!」
屋根の上での戦闘だが、俺はバランス感覚がいい。閃光玉を相手に使って、一気に距離を詰める。
「ぐあああ、目があああ…………なーんちゃって!」
距離を詰めたら俺の体がズタズタに引き裂かれた。
「屋根だからってさ、何も細工がないとでも思った? ここは隣の建物の方が高くて、暗いから見えなかったのかな? どうせ、女の名前を出されて、反射的に突っ込んできただけだろうけどね。あはははは。細い鉄線が張り巡らされているのに、そこに突っ込むとか頭おかしいんじゃない?」
こいつはナイフしか使わないのではなかったのか? ズタズタに引き裂かれて身動きが取れなかったので、足を切られてしまった。これである程度回復しても立ち上がることも出来ない。
「俺の殺した死体は確かにナイフ傷しかないよな? ナイフキチガイなんて名乗ってるし。でもね、何でも使うんだよねー。傷ついた上からナイフで何度も刻んで、ナイフの傷しかわからなくしてるだけなんだわ」
くっそ。いつもならなにかあるかもしれないとわかっただろうに。動揺してやってしまったのか。このままではマリアンヌが。
「さーて、お前を殺さない代わりに犯されろとでも言って、お前の女をやろうかね」
どうすればいい。どうすればマリアンヌ達を守れるんだ…………何かあったら俺を呼べと念話というので指示があったな。
「じゃあ、お前を鉄線で結んで引っ張りましょうかね」
「助けてくれカズシィィィィィ!!」
俺が叫んだ瞬間、目の前に人が立っていた。
「えっと、君はジャックだったかな? めっちゃ切られてんじゃん。やばい奴と相対して、報告に行けないなら呼んでって言ったじゃん。回復魔法! これで治ったね。で、あいつが敵だね。【亜空間】……姫様の護衛があるから行くね! 報酬は期待しててね。これは俺特性のケーキだから、家族で食べて。じゃ!」
目の前にいきなり現れたカズシ、カズシさんはズタズタだった服ごとどうやったのか、治してくれた。そして、ナイフキチガイが一瞬黒い何かに包まれたと思ったら、その場から消えていた。
そして報酬云々言って、どこからか出したバスケットにケーキを入れて、それを渡してまた消えていった。
「…………家に帰って娘と食べよ」
パレードは無事? 襲撃しようとしていた奴らを事前にルシファーに捕縛してもらい、それでも捕まえきれなかった敵は俺が【透明化】+【魔力隠蔽】+【ライトニングアロー】で軒並み無力化して城前中央広場まで戻ってきた。
今俺は壇上の端で座っているルーゼの後ろに立って、演説を聞くふりをしている。こういうお偉いさんの演説はほとんど聞く気になれないんだよね。実際ルドの話は面白かったけど、ルカスはつまらん。
『助けてくれカズシィィィィィ!!』
!! 光魔法【幻影】
『スラリンは』
『ここでカズシが帰ってくるまで待機してる』
転移!
ついたところは高い建物の間の屋根。ルシファーの構成員がズタボロでぶっ倒れていたので治して、見た目戦闘狂みたいな敵がいたから、何も無い亜空間に落として、ケーキを置いてルーゼの元に戻った。
『おかえり。もうそろ終わる』
『ただいま。あ、終わった』
まともに演説を聞くことなく、パレードが終わった。
お疲れ様でした。
もうそろボス戦が始まるので、ある程度力のある一般人から見たカズシを書いておきたかった。
Cランクの戦闘力は普通ならなかなか高いです。まあ、インフレしてる主人公勢には関係ないんですがね。




