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前世悪役令嬢。現代OLに転生して、幼馴染みの年下彼氏に溺愛されてます。  作者:


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第1話 前世の婚約者を見つけた。

 私には前世の記憶がある。

 時代的には中世の欧州っぽい感じで、なんと魔法が使える世界だ。

 前世の私は、とある国の公爵令嬢で、そりゃもう過保護に溺愛され、我儘で傲慢な、天上天下唯我独尊な性格に育った。

 一目惚れした王子様の婚約者になりたいと両親にせがんで、権力でものを言わせその地位を獲得し、王子に近づく令嬢には徹底的に嫌がらせをして排除しまくった。

 まるでゲームや漫画を題材にしたラノベの悪役令嬢。

 いや、まるで、ではなく、まんま悪役令嬢。


 当然のごとく婚約者の王子には嫌われた。


 王子からしてみれば意に沿わない婚約で、自分と親しくする相手に嫌がらせをする性格の悪い相手であるからして、そりゃまぁ忌み嫌うであろう。

 それで、何だっけ? そうそう、前世の私はその我儘と嫉妬と傲慢さによって、王子に断罪され、処刑となった。


 断罪はまぁ、わかる。

 悋気で王子の傍にいる令嬢を片っ端から虐げるなんて、それが未来の王子妃となるべき者がすることか?と、素質を疑われても仕方がない。

 王子が迂闊に異性を自分の傍に置いたのも悪かろうという意見もあるが、本人はあくまで友人といっていたのだからね。

 しかも、ラノベ展開でありがちな、一人の少女をイケメン令息で囲うなんて展開でもなかった。

 平民出身の男爵令嬢と王子には、表向き疚しいことはなかったようだ。

 ひそかに恋をはぐくんでいたとか、前世の私の嫌がらせを通して互いに意識し始めたとか、そんなことは一切なかった……らしい。

 その辺のところは、前世の私の耳に入ってこなかったので、裏事情がいろいろあったのだろう。


 そして前世の私の処遇なのだが、ただの悋気で嫌がらせした程度で処刑はやりすぎ、と思うだろう。

 でも処刑せざる得ないことを、前世の私はやらかしていた。

 前世の私は、嫉妬深く我儘で傲慢。そして短慮であったのだ。

 で、自分の婚約者に近づく女に嫌がらせした挙句、悪魔を召喚して片っ端からそいつに始末させていたのである。

 それはなぁ……? いくら恋に溺れていたとしても、それはなぁ?


 ともかく悪魔なんてとんでもねーもん呼び出して、王子と親しくしていた?と思わしきお年頃の令嬢を、片っ端から始末してたわけなので、それが問題になって処刑されたわけよ。

 ご愁傷さま、前世の私。


 振り返れば、もうちょっと要領よくやりゃ良いものを、頭が悪かったなと思うのよ。

 悪魔を呼び出し、そいつに始末させたことは、まぁ悪くなかった。

 でも、公爵令嬢だったんだからさぁ。権力も金もあったんだからさぁ。もうちょっと人を使って根回しすればよかったのにね。


 でも前世の私、悪魔を召喚して契約していたわけじゃない? 処刑されたなら、呼び出した悪魔に魂食われて、終わりになったはずなんだけど。

 なのに何故か、現代日本の一般市民に生まれ変わっていた。


 生まれ変わった私の名前は、萩原千束はぎわらちづか

 家族構成は両親と兄と私という四人家族で、父親はIT系のサラリーマン、母はフィットネスクラブのインストラクター、兄とは五歳差。

 家族内になんか問題があるわけではなく、むしろ両親はいつまで経っても新婚のように仲が良く、兄も一年前に高校時代からの恋人と結婚した新婚さんだ。

 で、私はしがない事務員でありますよ。


 いやいや、波乱万丈の人生は、もう前世でお腹いっぱい。

 前世の行いを反省して、今世では慎ましやかに生きよう。


 なーんて、誰が思うか。


 反省はしてるわよ反省は。もう二度と同じような轍を踏む気はないわ。

 だからって慎ましやかにっていうのは、なんか違うわよ。

 かといって、平凡一般家庭に生まれ育った私が、セレブ階級のお嬢さんのような生き方をしたいってわけでもない。

 そもそも、慎ましやか、謙虚ってことに囚われて、自分を抑えてつまんねー生き方はしたくないのよ。

 あと、今世の私、恋人(仮)がいるから!!

 前世の恋にしがみついて、いつまでも引きずってられっか!


 なんていうかさ、前世の私って、結局のところ王子が好きってこと以外、何も考えてなかったのよ。

 だから下手打って処刑されたわけだし。

 もっと恋愛事以外にも夢中になるものがあったなら、あそこまで王子一色にならなかったんじゃない?

 そんなわけで、ちょっとやってみたいなーっと思うことには、片っ端から体験してみたりしたのよね。


 それで、嵌ったのが小物作り。

 これがさぁ、意外と私の性に合った。

 創作系の即売会とかで売ったり、ネットのクリエーターマーケットに登録して販売したり。

 まぁ、有名売れっ子さんとは天と地の差があるけれど、ソコソコ高評価をいただいていて、お小遣い稼ぎになってる。その分材料費で飛ぶから、プラマイゼロではないけれど、プラスイチ、ニぐらいかな?


 趣味があるから、本業の事務職でのストレスも適度に解消されてるし、いまの恋人(仮)との関係も、うまくやっていけてるのよ。

 やっぱりさー、恋愛一色が駄目だったんだなーって、前世の敗因を振り返ったりもするわ。


 まぁ、もう二度とあんなことは起こるまい?

 だって、一般市民だから断罪されても、処刑とかないでしょ? 社会的私刑はあるかもしれないけど、今世の私、他人様に迷惑かけるようなことやってないしね。

 このまま何事もなく、平穏に――……って、浮かれていたのが、良くなかったのかもしれない。

 前世のやらかしの報いを受けろと、神様はそう仰っているのか?


 上司に頼まれて、企画部に書類を届けに行ったら、そいつを目にした。


 そいつとは、前世で私を断罪して処刑した王子だよ。

 あいつも転生してたんかい!

 しかも寄りにもよって、なんで私と同じ日本! そして現代! クソッたれがぁ!!


 容姿は、前世とは全くの別人なのよ? なんせ前世は欧州人っぽい白人だったし。

 かくいう私だって、前世と今世は、同一人物とは気づかれない容姿だろう。

 前世の私は、金髪碧眼の美少女ではあったけど、系統的にはきつい感じがする大人っぽい美人系。

 今世の私は黒髪黒目、容姿は美人系ではなく、童顔の可愛い系。


 そーよ、自意識過剰って言われるかもしれないけど、今世の私も美少女(成人してるのに少女はあれだけど)よ。

 学生時代は、読モとアイドルオーディション受けないかって勧誘がうざかった。

 全部、幼馴染み兼恋人(仮)が、蹴散らしてくれたけどさ。


 それはともかく、前世と顔が違うんだから、あいつが王子だなんてわからないだろう?というなかれ。

 前世の私、悪魔を召喚して契約していた女よ?

 その影響なのかどうなのかはわからないけれど、顔が違ったって、やつが前世の私を断罪して首ちょんぱを指示した王子だってわかるのよ。

 なんかうっすら見えるから。前世の姿が。


 奴と目が合って笑顔を向けられた瞬間の私の心境は?


 1、はわわわっ。め、目が合っちゃったっ。もしかして王子も前世の記憶があるの!? トゥクンッ!


 2、ヒッ! 目が合ってしまった。こ、殺されるっ! 前世の婚約者だってばれたら殺されるっ! 気づかれないようにしなきゃ!! ガクブル!


 3、よくも私の前に現れやがったな、この八方美人、モラハラ、クソ野郎っ! 


 三つのうちどれでしょう?


 決まってらぁ、三番じゃぁ! 三番!

 好きだった相手なのにとか言うなよ? 好きだった相手だからこそ、ムカつくんじゃろがい!

 全面的に悪かったのは前世の私。ごり押しで自分の好意を押し付けて、相手のことを思いやれなかった。

 好きだからって何をしてもいいわけじゃない。そんなこたぁ百も承知よ。

 断罪処刑コンボは、なるようにしてなったってわかってる。

 だけど、なのよ。

 だけど前世の私を殺したのは――、処刑になったんだから実際手をかけたわけじゃないけど、そうなるようにしたのは誰だ!?

 お前じゃ、元王子!

 可愛さ余って憎さ百倍とはこのことよ。

 好きだったからこそ、前世の私を殺した王子がムカつくのよ!


 それでも、あれは前世の話。

 いまの私は公爵令嬢でもなければ、王子の婚約者でもない。

 そして一応、恋人がいるし、昔の気持ちに火がついたーなんて、なるわけねーわ。


 なので、私も百匹の猫を背負って、根性で耐えた。

 この童顔の可愛らしい顔を有効活用して、笑顔を向けてきた前世の王子こと広瀬衛(ひろせまもる)に、同じように笑顔を向けて、上司に頼まれた書類を渡した。


「広瀬さん。これ、大河内課長に頼まれた書類です。来週までに提出してください」

「ありがとう」

「どういたしまして」


 にっこり、にっこり。お互い笑顔を会話して、私はさっさと自分の部署に戻る。

 今日は頼まれたって残業なんぞやらん!

 さっさと仕事を終わらせて、定時退勤じゃ!

 明日は土曜日! 休みだし! なんかストレス発散できることに没頭してやる!



 本日の仕事は全部終わらせ、定時きっかりに退勤した私は、一人暮らしのマンションに帰ると部屋の明かりがついていた。

 電気消し忘れかと思って玄関を開けたら、なんかめっちゃおいしそうな匂いがして、幼馴染み兼恋人(仮)がキッチンから顔を出す。

「お帰り。早かったな。今日残業なかったのか?」

「ひーくん!!」

 幼馴染み兼恋人(仮)のひーくんこと、周防兵吾すおうひょうごは私より一歳年下の24歳。

 今は洋食レストランでコックをしている。


「もうすぐできるから、手洗いとうがいしてきな」

「はーい!」


 やったー。帰ったら兵吾の料理食べれるなんて、今日の嫌なこと吹き飛ぶわ~!

 ウキウキしながら、手洗いうがいを済ませて、ダイニングキッチンに戻ると、鶏のから揚げ丼ができあがっていた。

 兵吾が作ってくれた鶏カラ丼おいしー!!


「冷蔵庫の中にあったもんで、作り置きしておいたから、それ全部食べて」

「うん。うん」

 鶏カラ丼を夢中で頬張って、兵吾の話に相槌する。

「煮卵も作ってあるから、あれは早く食べてくれ」

「わーい、ありがとー」

「それで、なんでそんなに機嫌が悪いんだ? 今日、会社で何があった?」

 鋭い。

「えー、ひーくん、わかるの?」

「わかる。で、なにがあった?」


 問い詰められて、前世の婚約者だった王子を見つけたことを報告した。



カクヨムからの転載です。

一日一話の更新になります。

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― 新着の感想 ―
 前世現代日本人では無く、前世悪役令嬢の現代物という設定は拝読したことがありませんし、ざまぁフラグ以外の作品を拝読できるのはとてもとても有り難く嬉しく〜  それ以前に、感想欄が開いてることに多謝! 
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