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一通りシルヴィアが千歳の部屋に現れてから今どうしているのかをかいつまんで話した。実体に近い状態でこっちにいるってのは俺でも理解し辛く、セシルは俺以上に難しい顔をしていた。
「まあ、理解が難しい所もあったと思うがそういう訳でこっちでは前向きに色々な経験を積もうと今日も友人の仕事の見学について行ってる」
『そちらのシルヴィアは意識が無いのもほぼこちらに来ているからだ』
「意識が戻らず心配しておりましたが、そういう事なのですか。信じられない事ですが、この鏡に映るあなた方が言うのならそうなのでしょう。シルヴィアを保護していただいてる方に対して失礼しました。ユウマ殿」
「分かってくれたなら良いよ。あと、その敬称もよしてくれ。こっちじゃ身分の差なんて無いから気安くしてもらいたい。俺もそうするし」
『我も、堅苦しいのは好かん。セシルの世界に何の影響力もない小さな世界の者。気安くしておくれ』
そういう事ならと力を抜きそこからは言葉も少し砕けたものになった。
『一つ注意して貰いたいのだがの、シルヴィアの実体がそこにあればいずれそこに帰れるはずだが、どれを失えばそうはいかん。安全を確保してやってほしい』
「そこはセシルの私室って言ったな?王太子の部屋なら安全だろうが、何でそこに?家族は心配してるんじゃないのか?」
「シルヴィアの安全のために事故から救い出してすぐに連れて来たんだ。ここ以上に安全な場所はないから。彼女の家族には悪いが極秘で保護しているため知らせられない。この事を知っているのはごく一部の者だけなんだ」
家族にも知らせてないとは、厳重すぎる。シルヴィアの安否や行方を公に出来ないほどの事態が起こってるとは何事なんだ。
「シルヴィアは何かに狙われているのか?さっき危険に晒したとか言ってたけど、事故も本当は故意にシルヴィアを巻き込んだものだったのか?」
何者かに追われていたらしいと千歳からは聞いている。その追手がシルヴィアの命を狙って事故に追い込んだとも考えられる。
「事故は事故だ。だが彼女の誘拐を阻止しようと馬で追ったため御者も無謀な走りをし、そのせいで横転した。私は彼女を危険に晒した一人であったのに、性懲りも無くユウマに食ってかかって、情けない」
「ちょっと待て。追手って、セシルだったのか?」
シルヴィアは賊に追われていたと思ったが違うのか?千歳もシルヴィアでさえもそう思っているのに。
「ああ、素性が知れぬように仮面を着けていたからシルヴィアには分からなかっただろうが。婚約破棄だなどとシルヴィアに吹き込んで、連れ出されたと知った時は頭の血管が切れるんじゃないかと思うほど強い怒りが湧いたよ。それと同時に彼女の信用が俺になかったと思ったら情けなくてそれもすぐに収まったが」
「シルヴィアは誘拐される所だったのか?それじゃあその馬車を操ってた奴の方が賊で、追手の方が味方、というかセシルだった?」
「そうだ。厳密に言えばシルヴィアに嘘を教えて学院を去る手筈を整えた奴ら全員が賊だな。馬車はあまりの速さに横転の危険があったが、間一髪で馬から馬車に飛びつき中から彼女を引っ張り出して脱出した。怖かったんだろうな、手を掴んで抱きしめた時には気を失っていた。彼女に怪我は無かったが意識が戻らず誤解されたまま、もう会えないんじゃないかと今まで不安で、、」
そのせいで傷だらけなのか。一国の王太子がそんなになってまで必死にシルヴィアを守ろうとしたのだと思うとこれまでの浮気野郎のイメージに違和感があった。話の中でも婚約破棄は嘘で誤った情報がシルヴィアに伝わったといっていたし、ボロボロの見た目もあって気の毒に思えて来た。
「シルヴィアは賊の罠に嵌められ、屋敷に帰るつもりが連れ去られる所だったんだな?それを正体を隠してセシルが助けた。なぜ正体を隠す必要があったんだ?」
「まだ敵の尻尾を掴みきれてないんだ。私も奴らの術中にハマってるふりをまだ続けなくてはいけないから正体を晒してシルヴィアの救出には向かえなかったんだ」
「それなら誰かに任せれば良かったんじゃないか?そんなになってまで。そんな怪我してたら敵にも怪しまれるだろ」
「その通りだよ、まったく。私はシルヴィアの事となると何も見えなくなって突っ走ってしまう。側近にも止められたんだけど、シルヴィアにまた逃げられると思ったら居てもたってもいられなかった」
セシルは危険を承知でそれでも自分でシルヴィアを救出したかったんだ。気持ちは分かるが立場を考えれば堪えるべき所だったろう。だが人間味があって好感が持てた。この先国王になるというのに私情で衝動的に動いていてはいけないだろうが、その事は本人が一番分かっているようなので何も言わないでおいた。
「敵を追い詰めるまでにはまだ掛かるのか?シルヴィアがそっちに戻れても危ない目に遭うのはかわいそうだ」
「あと少しだ。シルヴィアをそそのかした教師も秘密裏に捕らえ尋問をしている。それで敵に不利となる情報が手に入れられるはずだ」
「その教師ってセシルの恩師なんだろ?なんていうかその、、」
「恩師に裏切られた私を気の毒に思ってくれるんだな。だが気にする事はないよ。私にとってシルヴィアに害なす者は何者であってもその瞬間悪となるから、今はただ憎い相手と言うだけだ」
「基準がシルヴィアであるのは徹底的にぶれないんだな」
落ち込んでないみたいで良いが、人としてどうなんだろうとも思ってしまう。先程の激昂ぶりといい、セシルの世界はシルヴィアかそれ以外かって感じで狂気じみてる気がして来た。ヤンデレとかってこう言う奴の事を言うのだろうか。
「何だ?何故体を引き、そんな目で見る?」
引くわーと自然に態度に表してしまっていたらしくセシルが不思議そうにしていたが何でもないと言ってやり過ごした。




