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「珈琲屋」は店の入り口を入るとカフェスペースになっていて向かって左には焙煎ブースに続く扉がある。その反対のカフェスペースの右手奥はバックヤードになっていて、そこは簡単なキッチンがあり備品や食材のストック置き場と調理スペースに使われる。さらに雄真の休憩場も兼ねているここは昨日託児所と化していた。
「昨日は大変だったな」
「本当ね。せっかくの休みだったのに朝から叩き起こされてさ。ここに呼び出されて来てみれば、雄真のお姉さんとうちの姉に揃って頭下げられて何事かと思ったわよ」
「赤ん坊の面倒みて欲しいなら言っとけってな」
「まったくよ。お互いあの子達の上の甥っ子と姪っ子で慣れてたから良いものの」
「上の姪っ子、うちの甥っ子と同じ年だったよな」
「そう。下の子達までほぼ同じ時期の生まれなんて、相変わらずあの二人仲良すぎよね」
昨日はもうすぐ一歳を迎えるうちの甥っ子と雄真の姪っ子を急遽ここで預かったのだ。両親にお願いするつもりだったらしいのだが、揃って腰を痛めたとかで断られたんだとか。上の子達の誕生日祝いに出掛ける予定で、主役が楽しむために乳児は連れて行かない予定だったのだが、仕方なく予定を変更して下の子も連れて行こうとすると上の子達が今度はご立腹でお手上げ状態に陥っていた。小さい子にとって誕生日は重要だ。可愛い姪と甥のため、私と雄真が叔父と叔母として乳児のお守りを請け負ったというわけだった。
「これとこれだな。流石に女の子はおもちゃもませてるもんだな」
キラキラの魔法少女の絵本と可愛いお姫様の描かれたゲームソフトのケースを雄真から受け取った。ソフトの中身は空でゲーム機も無い。きっとソフトを本体に装着して帰ったから特に今も騒ぎになっていないのだろう。誕生日プレゼントに買ってもらったのかもなと想像する。
「確かに、雄真の甥っ子の持ち物じゃないでしょうね。ありがとう、今度返しておくわ」
そう言ってソフトの裏面を何気なく見る。ゲームの世界観とか書いてあるのを活字中毒者としてはつい読みたくなるものだ。さらっと読んで済ますつもりだったのだが見逃せないキャラ名に目を離せなくなった。
「それ恋愛シュミレーションゲームだろ?メインはお姫様の着せ替え遊びみたいだけど、なかなかストーリーもしっかりしてそうで、今時の女子幼稚園児ってどうなって、ってどうした?」
私があまりの形相でソフトの概要を読んでいるのに気づいて雄真が不思議そうに聞いてきた。私は一度雄真に視線を向け、その視線を逸らす事なくソフトの裏面を彼に向けた。
「何だよ?」
訝しみながら受け取ったケースに書かれているゲームの概要を読んで、雄真も私同様に目を見開いた。
「おい!これ!」
私は壊れたおもちゃの様にコクコクコクコクと首肯を繰り返した。
千歳には5才の姪っ子と10ヶ月の甥っ子がいて、
雄真には5才の甥っ子と11ヶ月の姪っ子がいます




