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最悪な一日

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 自分で言うのも何だが、俺の人生は不運に満ちている。


 何をやっても上手くいかない。


 やること全てが裏目に出る。


 努力すれば努力するほど、結果は悲惨なものになる。


 バイト先のコンビニから家賃激安のボロアパートに帰宅する最中、俺は深い深いため息を吐いた。


 というのも、不幸体質な俺だが、今日は特に不幸な一日だったからだ。


 急用で来れなくなった同僚の代わりにシフトに入れば、相方の一人が風邪で休み、もう一人は大学の補講で欠勤。


 さらに、こんな日に限って利用客が多く、レジ打ちや品出しでてんてこ舞い。


 トイレの水道管が壊れて水漏れ。


 業者の到着までに濡れた床の掃除をしようとしたら、コンビニ強盗に遭遇。


 必死の抵抗も虚しく、殴られ気絶。


 目が覚めるとレジの中身は消え、控室の金庫も空になっていた。


 その後、到着した警察から長い事情聴取を受けてコンビニに戻ると「明日から来なくていい」との言葉とともに一日のバイト代を渡される始末。


 一週間。


 これでも長く持った方だ。


 酷いときにはシフトに入って一時間でサヨナラ、なんてこともあった。


 今回のバイト先だって、不良の一件や発注のトラブルで色々と迷惑を掛けてきたから、そろそろだと覚悟はしていた。


 それでもやはり、面と向かっての“明日から来なくていい”は堪えるものがある。


 こればかりは何十回とバイトをクビになっても慣れない。


 次のバイトと今月の食費を考えながら、ポケットから取り出した数世代前の型のスマホに指を走らせた。


 いつもはデータ通信料の節約で飲食店や交通機関にある無料無線LANを利用しているけれど、バイトをクビになった今はそんなことを言ってられない。


 もやし週間を回避するためにも、一刻も早く次のバイト先を見つける必要がある。

 

 来年は就活なのに、バイトでこれだと先が思いやられる。


 仮に採用されたとしても、奨学金の問題もある。


 考えれば考えるほど頭が痛い。


 自然と口からはため息が出た。



――キキィッ


 遠くから聞こえた甲高い音に現実に引き戻される。


 音の方を見ると、明らかにスピード超過をしているスポーツカーが公道を爆走していた。


 その光景を見て、世の中の理不尽さにため息が出る。


 きっと運転手にとって、違反切符と数万円の罰金は怖くないのだろう。


 それだけの稼ぎと地位が無ければ、あんな無謀な運転はできない。


 何とも言えない気持ちになりながら視線を前へと戻す。


 そこには横断歩道を渡る女子高生の姿があった。


「危ない!」


 咄嗟に叫ぶが、彼女はスマホをいじりながらイヤホンで音楽を聴いているらしく、俺の声もエンジンの騒音も耳に入らないようだ。


 それを理解した時には、俺の体は動いていた。



 背中に感じた衝撃で意識が戻る。


 視界は真っ赤に染まり、全身の至る所が鈍痛を訴えてくる。


「うぐっ……」


 くぐもった声が口から出る。


 女子高生を押し退け、代わりに轢かれた俺は満身創痍だった。


 一連の光景を見ていた通行人が集まってくる。


 人垣の向こうで車の排気音が遠ざかっていく。


 俺が助けた子はどうなった?


 そのことが気がかりで、薄れる意識の中で彼女を探す。


「……うわ、サイアク。マジでグロイんだけど」


 彼女が俺に向ける視線は、命の恩人に対する感謝でも自分の行いを後悔するでもない。


 車に轢かれ、路面で臓物を撒き散らして潰れたネコを見る、それと同じだった。


 そして、俺の意識は暗転する――


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