君の半分の嘘にかけて
応募しようと作ってボツにした恋愛小説です。
授業の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響く。
号令と共に立ち上がり先生に礼をする。
騒がしくなった教室では放課後をどう過ごすか、その話題で持ちきりになっている。
私に話しかけて来たこの男もまた同じだ。
「桜川、今日部活ないから一緒に帰ろ?」
「え!?ほんとに!?じゃあ······ちょっと待って今日月曜だよね?」
「うん。ごめんさっきの嘘」
「ね〜え〜!!!」
「悪かったって。でも明日は一緒に帰ろうね」
「絶対だよ!」
この男、二分 廻は本当にタチが悪い。
なにせ二分の一の確率で嘘をついてくるのだ。
まるで私の気持ちを考えずに。
大人しく勉強道具を鞄に詰めて友人と帰る。
「杏奈も大変だよね。二分くんってめっちゃ嘘つきじゃん?普通に話してると何がなんだかわかんなくなっちゃう」
「そうだけどでも二分は······」
友人のポケットから陽気なメロディが流れ始める。
「ちょっと待って!······うん······うん、わかった」
「なんかあった?」
「彼氏が今日一緒に帰れるって。ねぇ杏奈······」
「いいよ行ってきな」
「マジでありがと!明日は一緒に帰ろうね!」
こちらに手を振りながら足早に去っていく。
明日は二分と帰るんだ、すまんな。
ほんの少しの申し訳なさから返す手はやや小さめになる。
······これで今日は一人で帰るのが確定したのか。
別に一人が嫌いなわけではないので構わないのだけれど。
下駄箱から靴を取り出すとき、グラウンドから野球部の声が聞こえた。
······二分も今部活やってるのかな。
覗きにいこうかと思ったけどやっぱりやめた。
邪魔になるようなことはしたくないし。
なにより······
「そんなの好きってバレちゃうじゃん······」
「杏奈〜!」
突然呼ばれた私の名前に動揺を隠せず声が零れてしまう。
しかもその声を今聞きたいと希っていたのだから尚更だ。
「待った?」
「二分······だって今日は」
「あれ嘘」
私に被せるように放った言葉はどこか茶目っ気を帯びていてそれでいて無邪気で、どうしようもなく愛おしかった。
「今日はミーティングだけだよ」
「も〜お〜!」
靴でゲシゲシと二分に攻撃する。
ふと靴を地面に置く時、二分の金髪が夏の残った夕日を反射してどこか輝かしく私の目に写った。
「帰ろっか」
「ん!」
帰り道に話してくれた二分の話は嘘かホントかわからなかったけれど、その時間が私にとって最高だったのは言うまでもない。
お風呂からあがってスマホを弄っていると1件の通知が届いた。
『ホントは明日部活あるよ』
その後にウサギが舌を出して誤っているスタンブが送られてくる。
「も〜〜〜お〜〜〜!!!!!」
絶対許さない、と一言送ってスマホを閉じた。
······そういえば明日は帰る約束してたな。