夏
「いってきまーす!」
「夏輝、気を付けてね〜」
はる姉が私を送り出してくる。
ドアを開けた瞬間、クーラーに慣れた私に熱風が襲い掛かる。
玄関でこれなのだから、外はどれだけ暑いのだろう。
元々の暑さへの愛情とちょっとした怖いもの見たさが今、私の心を満たしている。
お気に入りの靴を取り出し、そのまま身につける。
口元が緩むのを必死に堪えつつ、ガチャッ、と音を立ててドアを開ける。
暑い、というよりも息苦しい。
サウナに入った時と同じような、熱気で呼吸がしずらいあの感覚。
ただそれすらも今はひたすらに愛おしく思える。
「クゥ〜!最ッ高〜!」
私は夏が好きだ!
私がこの世で一番好きなものは夏だし、もしかしたら夏も私が好きかもしれない。
なんてったって私は、夏の名を冠する者なのだから!
凪冬にはちょっと悪いけど······いや、1年の中の4分の1、こんな短い期間を他人に気ィ遣って過ごすなんて勿体ない!
そんなこと考えてる暇があったら夏を味わい尽くさないと!
さあ!古今東西全ての夏好きの諸君、私と共に夏を楽しもうじゃないか!
この子は陽月家の夏輝ちゃんです。
他にも春と秋と冬がいます。
この子達もいつか書きます。