ドッキリをしたらフラれた
「じ、実は、俺、ヅラなんだ」
パサっと、髪の毛の束が落ちる。頭頂部は円形にハゲ散らかしている。まぁ、これもヅラで二重でヅラをかぶっているというオチなんだけど。
「別れましょう」
「えっ……」
「わたし、ハゲだけは無理だから」
俺の愛しの彼女は、そう言って、去っていった。
「だから、俺は、全国の薄毛やハゲで悩む人のために、彼女に、ざまぁをしないといけないんだ」
ハゲ差別があるせいで、どれほどの中年の懐から育毛剤代が飛んでいっていることか。発毛剤と育毛剤の違いも知らずに生きている全人類よ、篩あがれ。櫛と篩って似てるね。誤字?しかし、奮い立つことはできないんだ、毛根に、もう根性はないから。ダジャレをかまして、おじさん化していくぜ。もう俺のおじさん構文を止められるやつもいねー。ナンチャッテッ(^ν^)
「いや、お前もネタにしてるじゃん」
「正論は受け付けない」
超正論に走れば、誤解を解けば仲直りじゃないか。
それでは、俺の全中年を救うためのハゲはモテるというドッキリをしかけれないじゃないか。
「ええっと、カッパみたいな頭カッコいいドッキリをしかけて、そこでハゲを馬鹿にしたことを後悔させて、改めて仲直りするという、馬鹿な計画を立ててる?」
「さすが、俺の親友第一号。言わずともわかるとは。俺は、これからクラスにハゲをカミングアウトし、そして、クラスの女子に協力をあおぎ、ハゲカッコイイ大作戦を実行する」
「もう好きにやってろ。てか、お前の彼女、そんなにハゲがダメなやつだったのか」
「どうだろう。お義父さんは、完全にザ・ハゲいや、禿頭であらせられてましたけど」
「無理な敬語をやめろ」
「まぁ、壮年らしい脱毛症だったな」
「AGEか」
略語にすれば、カッコいいな。でも、ageって年齢だよな。嬰児も髪はないか。おっと、言葉遊び、もとい平安貴族の雅な掛詞が止まらない。おやじギャグ万歳。
「なるほど、親の頭を見て育ったせいで……おいたわしい」
「お前も無理な敬語をやめろ」
背中を見ろよ、頭が眩しくて、日の出の太陽のように拝んで育ったのか。
まぁ、いい。
よーし、やることは決まった。あとはストーリーの分かりきったストーリーが始まるだけだ。
人類、みなハゲるのじゃぞ。ソクラテスもハゲたんだ。よって、人類はハゲる。
「壇上から失礼する。今から、漫画とかでよく見る光景を見ることができる貴重な機会を与えたい。放課後残っていた特権だ」
教室には、暇をして駄弁っている女子、家に帰ってもすることがないのか読書している男子、オタクトーク真っ最中の男子、何故かいる他クラスの生徒。
「また、バカなことしてる」
「ああいうキャラだから」
教室の黒板の前で、俺は今から、お願い事をする。
ただ、お願いすることしかできない。
人に頭を下げるなんてーー俺の頭を見ろ。
「お願いだ。ハゲを馬鹿にした彼女に、ハゲは素晴らしいって思わせたい。だからっーー」
ヅラがポトリと落ちる。
なんて虚しいんだ。
頭が寂しい。
「ハゲ好きアピールをしてくれ。1日だけでいい。ハゲを、救ってくれ!!」
「はーい」
「なんで、ヅラ」
「ヅラっていくらするの。校長のより高い?」
よし、言質は取り付けた。
ノリのいいクラスメイトがいてくれてよかった。
クラスの5、6人でもハゲ好きだったら、もうそれはニッチじゃない。老け専、デブ専があるならば、ハゲ専もあるんだ。多様性というものを彼女に理解してもらいたい。
朝。わたしは登校した。
そこで、教室の机の一角に、クラスメイトが集まっていた。その席は、わたしのカレシの席で、まるでキャバクラのように、一人、わたしのカレシが女子を集めていた。
「えー、ツルツルじゃん」
「わたしも触らせてー」
「冷たくない?」
「磨かない。水晶みたいに」
なにをやっているのだろう。わたしのカレシはーー。浮気相手が複数いれば許されるの法則を使っているの。てか、なんで、まだヅラかぶってるの。一回のボケで使うにはもったいない値段だったの。
とりあえず、自分の椅子に座る。そして、聞き耳。
「ああ、今、フリーなんだ。ハゲは嫌いって言われて」
「えー、そーなんだー。じゃあ、わたし、立候補しちゃおうかなぁ」
「えー、そっこー過ぎない」
「髪がないのも愛嬌なのに」
わたし、いつの間にか、別れたことになってる。
まぁ、馬鹿なボケをしてきたから、こっちもボケ返したけど。これは、いったい何の遊びなの?
ハゲは実はモテるんだぞ、と言いたいってこと。
さて、どうしよう。このドッキリにひっかかってやった方がいいのか。それとも、無視していいか。
でも、別れようを本気でとられても困るし。
椅子から立ち上がる。
「はいはい、わたしのカレシから離れる」
ついに来たか。今日、お前はドッキリされる。
「元カノ。どうだ、ハゲはモテるんだ、悔しいだーー」
カポっ。
「…ろ……う」
カポっ。
カポっ。
「髪がもれて、落武者みたい。ふふっ」
「いったい、いつから、気づいてーー」
「最初から。バレないと思ってたの。校長もあなたも、人間の視力、なめてるの」
こうちょー、カツラだったの。俺は知りませんでしたよ。
いつも外で髪を押さえつける人だったけど、そういう厨二病もあると思ったし、大二病もあるから、六十歳病もあると。
「俺がハゲても、一緒にいてくれるか?」
「はいはい。そうだね」
ああ、俺のプロポーズが、もうはっきりと言ったのに。毛髪だけに。
「という感じで、間一髪、お父さんとお母さんは、別れずにすんだんだ」
「お父さん、その頃は、まだ髪があったんだね」
まだあるぞ。まだあるからな。あるほうだからな。アラフォーだけに。
お読みくださりありがとうございます。
ギリギリ日間載ったようで、おそらく今年最後の短編になります。
今年は短編で評価・ブクマを多く貰えて(筆者にしては)、ありがとうございます。
ではでは、よいお年を。
なんか、よいお年をもマナーなのか、ごちゃごちゃとネットで出てくるのですね。ネットって不思議。大晦日に使われても、気にもならないのに。