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幼馴染好きで百合好きな僕は恋愛なんて興味がない  作者: タバスコ
1章 百合という名の初恋
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6話 小さな幼馴染の憤りと大きな幼馴染の反省

「こうちゃん、こうちゃん、なんかすごく分からないけど、らぶはすっごくすっごく、変な気持ちだよ! 胸の中がごわごわしてるよ! どうすればいいか分からないよ!」


 愛は怒ることはあっても、相手を恨むことはない。


 だから、僕に危害を加えようとした角刈り男子に対してどうしたらいいのか分からなくて憤っている。


「……」


 純はさっきから俯いたまま。


 しばくと言ったことを反省しているのだろう。


 食欲を満たせば愛と純の気分も少し晴れると思うから早く弁当を食べたいけど、どこで食べるから迷う。


 いざこざがあって、昼休みの時間もほとんどないから近場で昼食を取りたい。


 でも、今の状況の愛と純を人の多い所に連れていくのは避けたい。


 同じ1階にある食堂ではなく屋上に行くことにした。


 僕達が通っていた中学では屋上は人気が少なかった。


 この高校の屋上は行ったことはなかったから不安だったけど、屋上には誰もいない。


 フェンスの方に行き、純から手を離して腰を下ろす。


 愛も純の手を離して僕の右隣に座って、純は僕の左隣に座った。


 喋らない2人。


 重たい空気が流れているから、いつも以上にテンションを上げる。


「よし、自分で作って言うのも変だけど、美味しい美味しい弁当を食べるよ」


 無言のまま愛と純は僕の顔を見る。


「らぶちゃんとじゅんちゃんが食べないなら2人のも僕が全部食べ」



『キーンコーンカーンコーン、キーコーンカーンコーン』



 るよ、と言い終わる前に、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。


 間が悪いチャイムが鳴り終わると。


「あははは、はははは」

「……ぷっ、ははは」

「こうちゃんの声が、ははは、キーンコーン、カーコーン、はははは、じゃまされたよ、あはははははははは」

「ははははは」


 お腹を押さえながら爆笑する愛と、対照的に唇を噛みしめて笑うことを我慢しようとするけどできずに吹き出してから笑う純。


 元気になったことに安心しつつ、2人が落ち着くまで見守る。


 しばらくして、弁当箱を開けようとした僕達に純が言う。


「いいの?」


 純は授業が始まっているけど、行かなくていいのかと聞いているのだろう。


 学生としては真面目に授業を受けることが正しい。


 でも、今の純は中学の時に荒れていた時のようにどこか冷めた目をしているから1人にできない。


「いいよ。1限ぐらい休んでも大丈夫だよ」

「……」

「どうしたの?」

「……1時間目もさぼった」


 馬鹿正直にそう呟く純が可愛すぎる。


 もし、純が猫だったら耳と尻尾が垂れ下がっているだろう。


 なんだよ、それ。


 絶対もふるじゃん。


 もふもふするじゃん。


 それから、お腹に顔を埋めて深呼吸するじゃん。


 くんくんするじゃん。


 純の頭を満足するまで撫でてから、愛の方に視線を向ける。


 何に対しても全力投球だから、さぼる行為に抵抗があるのではないかと思ったから。


「お腹空いたよ! たくさん食べるよ!」


 涎を垂らしながら、愛は弁当のふたを開けた。


 弁当に意識がいっているようで、授業のことは頭にないみたい。


 愛には悪いけど、授業を休んでもらおう。


「正直に言ってくれてありがとう。怒ってないよ。ご飯食べよう」

「……おう」


 小さく頷いた純に弁当を渡すと食べ始める。


 僕が作ったもので純が成長していくのを見るのはめちゃくちゃ嬉しい。


「じゅんちゃん、らぶのも食べて! 今日は特に自信があるよ! 今日こそはこうちゃんに勝つぞ!」


 愛は元気よく片手を上げながらそう言った。


 愛にも僕の手作り弁当を食べてほしいけど断られている。


 その理由は、僕と愛が弁当勝負をするから。


 中学の時に、『大人なら自分で料理を作れないとね!』というCMを見てから、それに影響を受けて料理を作るようになった。


 作るようになったのはいいけど、愛が掲げている目標があまりよくない。



『打倒こうちゃん』



 いや、あまりよくないと言うか本当によくない。


 愛は僕に、「こうちゃんに勝つまで、2度とこうちゃんの料理を食べないよ!」と宣言した。


 わざと負けようとしたけど、僕達の料理の審査をするのが純だから不味い料理を作ることができない。


 愛は純の前まで行き弁当を渡す。


 中身はおにぎり、唐揚げ、卵焼き、ブロッコリー、弁当の定番が並んでいた。

 純は唐揚げを箸で掴み端っこを噛む。


「……」


 咀嚼した瞬間、純の体から大量の汗が出る。


 コップに入っている麦茶を眉間に皺を寄せている純に渡すと、それを呷るように飲む。


「じゅんちゃん! 美味しい?」

「……」


 愛の問いかけに純は眉間に皺を軽く寄せてから小さく頷く。


 純は辛いのが苦手なのに愛が作ったものだから無理に食べているのが丸分かり。


 唐揚げもそうだけど、全体的に食べ物が赤いのは愛が好きなハバネロソースがかかっているから辛い。


 辛いものが苦手ではない僕が食べても咽てしまうレベル。


「今日こそらぶの勝ちだね!」


 愛は満面の笑みで勝利宣言をした。


「……こうちゃんの方が…………美味しい」


 純は言い辛そうに口にした。


「また、負けたよ! くやしいー! 次は絶対に負けないよ! 絶対だよ!」

 悔しがっているはずの愛なのに、どこか嬉しそうに微笑む。

「次に作る料理はもっと美味しくして辛くするから楽しみにしててね!」

「……おう」


 愛から視線を外した純は呟いた。


「こらー‼ 授業をさぼって何をしている‼」


 食事を続けていると、生活指導の先生が怒鳴りながら入ってきた。


 授業中で静かになっているのに、僕達はいつも通り和気藹々と話していたからさぼっているのが分かるのは当たり前。


 僕達は次の授業が始まるまで、職員室で先生に長々と説教を受けた。


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