表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

夏のホラー参加作品


「やあ、また来てくれたんだね」


「………………」


「ああ、その話しかい。


君も好きだな、こんな怖い話し。


まあ良いだろう、俺も暇だしな」


「………………」


「もう10年以上前の事だから忘れてしまった事や間違ったところもあると思うけど良いかな?」


「………………」


「ウン。


俺と竜一に竜一の双子の弟の龍二それに竜一の彼女の美和の4人はあの日、糖久野県努湖加市にあった廃墟に来ていた」


「……………」


「あったって言うのは、今はもう取り壊されているからさ。


何でそんな遠くの県の廃墟に行ったかと言うと、その前年、同じメンバーでその廃墟の近くのキャンプ場に遊びに行きその廃墟を一度訪ねていたから…………。


その時、同じように廃墟に来ていたガキとトラブルになった。


美和の後ろからガキが「ワ!」って脅かしたせいで驚いた美和が足を挫いてしまう。


それに激怒した竜一がガキに殴る蹴るの暴行を加え…………殺しちまったんだ。


殺しちまった事に気がつき俺たちはガキの死体を廃墟の中に放置して逃げ出した。


それなのに、1週間経っても1カ月経っても半年経ってもガキの死体が見つかったってニュースが報道されない。


それであれは夢だったのかと確認に行ったんだ」


「………………」


「死体は無かった。


4人全員が見た白昼夢だと思い始めた時、突然美和が何か聞こえるって言い、皆に静かにするように言う。


耳を澄ますと「もういい〜よ」って声が聞こえたんだ。


もしかしたらあのガキが生きていて、廃墟に入って行く俺たちを見つけオチョクッテいるかも知れないと何故か全員が思いこんだんだ」


「………………」


「そう、そんな偶然あり得ないのにな。


で、竜一が「探せー!」って叫び、俺たちはそれに従い1人でかくれんぼを始めたガキ探しを始める。


ガキ探しが終わったのは翌日の朝、廃墟に侵入してから24時間くらい経った頃警察に捕まった、否、保護された時だ。


後で知った事だが、新聞配達のオッサンが廃墟の近くの部落に新聞配達に行く途中、廃墟の中で揺らめく灯りに気がつきまた廃墟に不法侵入している奴等がいると警察に通報したかららしい」


「………………」


「ガキはいたのかって?


いなかった。


警察にもガキがいる筈だって言ったんで俺たちを捕まえた警察官数人が探しても見つからなかったんだ」


「………………」


「でも、本当の恐怖はそれからだった。


ガキに祟られたかと思いが俺たちの頭を過り、俺たちはつるむのを止め真っ当に働き始める。


最初は龍二…………だった。


通勤に利用していた駅のホームで、反対側のホームを指差しながら「見つけたー!」と叫び、指差したところに突撃するようにホーム下に飛び降りて電車に轢かれる。


次は竜一。


美和と結婚して暮していた高層マンションの上層階の部屋のベランダで、「見つけたぞー、ガキ!」と怒号を発し、偶々竜一の下を訪ねていた竜一や龍二の両親が止める間も無くベランダから飛び降りた。


一番悲惨なのは美和。


お産の時、帝王切開だったんだが、医者が腹を切開している時に、麻酔と筋弛緩剤が投与されているのに係わらず、突然「見つけたー!」と叫びながら身体を起こし、止めようとする医者や看護師を振り払い、赤ん坊を腹から引っ張り出して赤ん坊の首を締め赤ん坊と共に死んだ」


「………………」


「美和は出血多量でだ」




病室の閉め切られたドアの鍵が外から解錠され、ガタイの良い男の看護師が3人入って来た。


最後に入室した看護師は新人らしく他の2人に、拘束されベッドに縛り付けられている患者の注意事項を聞かされている。



「この患者の拘束を取るとき油断するなよ」


「今日は静かだが何時もは暴れまわるからな」


「どういう人なんですか?」


「10年程前に警察に連れて来られたんだが、「ガキに殺されるー!」と叫びながら暴れ、殺されるーって叫んでいるのに、医師が胸ポケットに入れていたボールペンで自分の首を刺し自殺しようとしたんだ」


「頸動脈を刺そうとしたらしいのだが、狙いが逸れて気管を刺し貫いたんで、この患者は話せない」


新人看護師に患者の事を説明しながらベテラン看護師の2人はテキパキと患者のオムツや寝ているベッドのシーツを取り替える。


それらを終えるとまた患者を拘束しベッドに縛り付けた。


「次に行くぞ」


最後に病室から出ようとした新人看護師の耳が、子供の声を拾う。


「ねえ、早く「見つけた」って言ってよ、そうしたら僕が鬼になれるんだから」



















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最初の奇妙な構成の会話文が徐々に恐怖感をあおっていき、その会話内容もだんだんと不穏な感じになっていくことで怖さが増していき、そして最後の病棟での看護師たちの話で恐怖が爆発する感じで、とって…
[良い点] 話せない、では誰と? 殺される、と思い不安定になることもあれば、……穏やかに語っている現状。誰に? ネタバレ感想はあんまり書きたくないのですが、いろいろと尋ねたくなってしまいます。最後の台…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ