爆弾発言。その後。
右手に爆弾、目の前に天敵With特効武器。これなーんだ。ヒント〈魔王〉
爆弾と言えばこれ以上ない爆弾を落として、弟は電話を切りました。私はというと……大人しく命乞いの文言を考えるしかすることがありません。殺されるくらいなら自殺した方がマシ。なんて思えない以上、下手な身動きはしたくありません。今も私は三途の川の予備軍です。こんなことなら少しは飛行魔法の授業も受けとくんでした。窓の外を見ながら切実にそう思います。飛びたいときは弟の魔法車に載せてもらえば良いか。なんて考えていたバチでしょうか。にしては重すぎませんか?神様?
勇者はまだ起きません。
寿命が少しでも伸びて何よりです。さっきの爆弾の衝撃で冷えた頭をフル回転させて命乞いのバリエーションを既に五つ編み出した私は、何だか逆に楽しくなってきたところで、ふと我に返りました。「あれ?別に私死ななくてもよくね?」と
要するにこの聖星紋とやらは、魔王城とか魔王そのものとかに被害を与える為の爆弾なわけで、私が魔王城に行くか、もしくは私が魔王(または魔族)だとバレるかしない限り爆発しないわけです。こう見えても私は高位魔族なので、角を隠したりなんかはお茶の子さいさいです。今もしまってますし。外見には魔族だと気付かれる要素はありません。問題は、私が聖剣を抜いたことで、勇者だと認定され、魔王を退治しなければならない立場にあることですが、しかし私は本物の勇者がここにいることを知っています。であれば彼に身代わりになってもらいましょう。彼が勇者にふさわしい実力を持っていることは先ほどの枕が示しています。なんせ本物ですから、勇者となる心構えだってちゃんと出来ていた筈ですし、聖人君子しか勇者になれないらしいので、ちゃんとお願いすれば引き受けてくれるに違いありません。
あれ?これいけるのでは?
彼が魔王退治に赴いてくれれば、ひとまず私の安全は保証されます。後の事は魔王城にいる弟君がなんとかしてくれるはずです。そう考えると彼が英雄のように見えてきました。勇者なので、英雄ですし、魔界にとっては、悪魔ですが。
私に剣が抜けたのは、勇者が近くにいて、その力が強大過ぎたゆえの誤作動だったことにすれば、すべてが丸く収まります。いえ、真実、誤作動だったに違いありません。私の魔力は歴代魔王のなかでも下の下の下。ゲゲゲの下ですから、歴代魔王が抜けなかったものが抜ける筈がなかったんですよ。
希望が見えてきました。
あ、勇者が起きたようです。早速話をさせてもらいましょう。
うーん
魔王さんちょい箱入りで、危機感覚がバグってるんですよね。さっき殺されかけてるのにすぐ勇者に話しかけに行っちゃうし。
魔王「わざわざ枕元で看病してくれたんですよ?悪い人じゃないんじゃないですか?」
じゃないかどうかは……まあいいや。とりあえず、まあ、……頑張れ。