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もし、魔王が聖剣を抜いたなら  作者: 鷽秋かおす
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王宮にて。目覚め。

やらかした魔王。これからどうなる。

 目が覚めました……それはもうはっきりと目覚めました。微睡みの時間は一瞬たりともありませんでしたね。寝起きの悪さに定評のある私が、です。なぜすっきりきっぱり目覚められたかというと、簡単です。目の前に聖剣を抱えた勇者が座っていたからですね。一般の人の感覚に合わせるなら、寝起きの自分の枕元に、自分を死ぬほど憎んでいる人間が、包丁を持って立っているようなものです。そうです。ここが地獄です。そうでなくてもニアリーイコールです。だいたい同じです。一秒後にはそこにいますから。神様私が何かしましたか?と、思考がそこまで加速したところで、ようやく自分が何をしたのかを思い出しました。


……は?なにやらかしてんだ私。


正直悔やんでも悔やみきれませんが、それも命があってこそですね。自助努力。自分で自分を助けるために私は辺りを見回します。


 勇者は部屋の真ん中に置かれた椅子に座っています。位置的には私を看病していたと見るのが妥当でしょうか。

 勇者が魔王の看病。ははっ。現代アートとしてなら高い評価を受けそうですね。

 竈や壁紙、ベッドなどの内装から推理するに、ここは王宮の一部屋のようです。多分あのあと応急措置を施され、王宮に。下らない洒落を言う余地があるのかと怒られそうですが、私の洒落は余裕のなさの表れです。余裕で余裕がありません。唯一の救いは勇者が寝ていることです。フード付きの外套を羽織っているので顔も体格も分かりませんが、どんな勇者であろうと聖剣を持っている以上、私にとってはドラゴンよりも脅威です。彼が寝ていなければ、どうすることもできなかったでしょう。


 王宮といえど、ドアから出て、勇者さえ撒けばなんとかなる。逃げ足には自信があります。そんなことを考えながらベッドから降りようとした瞬間、一夜を共にした枕がずり落ちて勇者の元に転がっていきました。反射的に私は手を伸ばし



ザシュン



 伸ばした手の、人差し指と中指の間を、閃光が駆け抜けたのを見ました。私はあんぐりと口を開けたまま、恐る恐る顔を上げます。驚いたことに、勇者は未だ寝ていました。寝ているにも関わらず、手元の聖剣で枕を分断していました。この瞬間から私に、ドアから逃げるという選択肢はなくなりました。あれの横を通れるのは自殺志願者か、強靭な魔王か、狂人そのものぐらいです。


 他の逃走手段、例えば窓から逃げるとかも一度は考えましたが


 無理ですね、窓から見るに、ここは五階です。弟にとっては階段の二段目くらいの高さでしょうが、私にとっては死ぬに十分です。王宮で魔王が自殺なんて笑えません。いえ、弟は笑うでしょうが。

とすると虚弱な魔王に出来るのはーー他力本願くらいです。私は慣れない手つきで魔法板を操作し、弟に助けを求めます。


 カモン!弟!魔王のピンチだよ!絶対絶命!わが命、風前の灯火!プリーズ、ヘルプ、ミー!

弟くん!助けて!


因みに魔族共通の特徴である「角」。これは位の高い魔族ほど美しくなります。また魔力を貯蓄、放出する器官でもあり、これがあることによって、魔法戦において魔族は他の追随を許さない、圧倒的な強さを持っています。また収納も可能です。なので正体がバレる訳にいかない魔王も今は角を引っ込めています。そういう場面以外でも、例えば、目上の魔族と喋るときは角をしまう。逆に威厳を示したいときは出す。など、普通は結構頻繁に出し入れするものなんですが、魔王さんも弟君も基本出しっぱなしです。魔王と王弟だから仕方ないね。

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