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火焔〜KAEN〜  作者: 猫子
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ハオという神

ーーごくり。


亜助は息を呑んだ。


(心臓の音が煩い、、、!)


ジルは静かに亜助の攻撃を待っている。

その姿は立っているだけなのに亜助にはとても恐ろしく思えた。


「どうした亜助。私が怖いか」

ジルはうすら笑いを浮かべた。


(隙がない、、でも、、、!)


「おおおおおおーーー!!!」

亜助は腕に力を集中させ真正面から挑んだ。


(左!羂索!!ジルの背後へ回れ!!)

亜助は左手から現れた羂索がジルの背後へ回るように放った。

「遅い!!」

ジルは瞬時に羂索を切り落とし、剣の切先を亜助の顔すれすれで止めた。

「っっくっ!!」


「本気で来いと言ったはずだ」


ジルの目はとても鋭かった。


(もう一度!!次は剣だ!!)

亜助は慣れない右手を振りかざした。


メリッ!!


ジルの蹴りが亜助の腹にめり込んだ。

「ぐぁああああー!!!」


亜助は地面に倒れ込んだ。


「腕だけに頼るな」


(、、くっ、、なんて力!!)


「早く立て。私じゃなければもう殺されてる」


(くそ、、あんなに、、あんなに戦って練習したのに、、)


「くそォォォォーーーーーーー!!」


ーーキィイーーーーン!!


亜助は下から飛び上がり再び剣を振るった。

「少し遅いがまあまあだ」

ジルは初めて亜助の剣を己の剣で受け止めた。


「次はどうする?」

ジルは亜助に問う。

(こんなに精いっぱいの力を込めてるのにジルは、、)

亜助はジルと剣を突き合わせたまま地面を蹴り体を捻らせ利き腕からまた羂索を放った。


(読まれてる!!)

亜助の思った通りジルは目線も表情も一切変えぬまま自身の羂索で亜助の羂索を断ち切った。


キィーンーーーー

ジルは一旦剣を振り払い、亜助はその力で宙を舞った。


ダンーーー

なんとか自分の足で着地した亜助はゼェゼェと息を切らせた。


「甘い。殺す気で仕掛けて来い」


ーーーーーーーー




何度挑んでも結果は同じだった。


ジルは亜助の攻撃方法があまりにも無知でイライラした時だけはお仕置きのように少しだけ反撃した。

・・お仕置きというかわいい言葉では済まないくらい痛いのだが。



「亜助、あんたみたいに弱い奴は頭を使って戦え」


うずくまって動けない亜助にジルは言った。



ーーーーパチパチパチパチ


ジルの後方から拍手が聞こえた。

「・・・ハオか」

ジルは少し笑を浮かべた。


亜助は顔を上げ、声のする方を見た。



「とても楽しませて貰いましたわ」

優しい声で話すのはジルと同じくらい美しい女性だった。

「こっちは問題が山積みだよ。そっちは?」

ジルが聞くとハオという女性は優しい笑顔で言った。

「凛太郎、こっちへおいで」

その声を聞き、建物の後ろからひょっこりと小学生くらいの男の子がはずかしそうに顔を出し、おどおどしながらハオの隣に来た。


「随分かわいいけど役に立つの」

ジルはハオの小さな相方を見て言った。


「この子はすごいのよ。この歳で薬の配合ができる天才よ。それにとっても良い子なの」


ハオの言葉に男の子ははにかんだ。


「ハオにぴったりだね」

ジルはそう言った後、男の子の前にしゃがんだ。

「私はジル。よろしくね凛太郎」

男の子はニコッと笑って

「ハイ」と応えた。


一部始終をうずくまったまま見ていた亜助もやっとの思いで立ち上がり、3人の元へ行った。

軽く自己紹介を済ませた後に亜助は両親の特徴を伝え、安否の確認をした。


「安心なさい、その方達は助けた記憶があるわ」

それを聞いて亜助は涙を浮かべた。

「・・・良かった」

安心した亜助はまた地面に膝を付いた。


「あんたほんと地面が好きだね」

ジルはそう言うも¨良かったな¨と付け加えた。






4人は次の目的地へ向かって歩いた。


「ジル、ハオさんって戦ったりできるの?」

「あんたハオがおしとやかだから勘違いしてるけどああ見えてハオは恐ろしいよ」

ジルはニヤリと笑った。



「凛太郎のご両親も異空間に避難してるの?」

亜助に聞かれた凛太郎はおどおどした笑顔で応える。

「僕、孤児なんだ」

「ごめん、、、」


苦労したんだろうな、と、亜助は切なくなった。


「ハオ、¨者¨が現れたらとりあえず亜助に任せてやってほしい」

「残念だけど・・強くなってもらわないと困るものね。わかったわ」


(残念、、?)

2人の会話が聞こえた亜助は少し疑問に思った。


「なぁ、ハオ、この戦争を仕掛けたのって・・・」

「えぇ、、私もそんな気がするの・・」


「こっちに落ちてきた仲間、見つけた?」

「それがまだ1人も見つからないのよ、、」

「そうか、、私も結衣蘭にしか会ってない」

ジルは¨助けられなかった¨と小さく呟いた。



「ねぇ!!あそこ!!天界の人じゃない?!」

亜助は2人に言った。

2人は一瞬で亜助の伝えた人物の方へ急いだ。

「・・早!!」

取り残された亜助と凛太郎もすぐに後を追った。


天上人であろうその人は深傷を負い、今にも息耐えてしまいそうだった。


「凛太郎」

「はい」

ハオによばれて凛太郎は荷物を取り出した。

凛太郎が指示した薬をハオがパラパラと手の中から出していく。

「すごい、、手から粉が出てる、、」

亜助は驚いた。

「人間が作る薬よりもよっぽど効くよ。それにしても凛太郎、薬のことを良くわかってる」


ジル曰く、凛太郎の知識と必要な成分、ハオの特殊な能力が合わさり、強力な薬ができるのだとか。


「・・・あぁいうのを¨引き寄せ合う¨って言うんだ」

ジルはお決まりの恐い顔で亜助を見た。



天上人を見つけて2分もしないうちに何かの薬ができたようで、ハオと凛太郎は深傷を負った天上人に薬を飲ませ、傷口にまた別の薬を塗った。


「効いてきたわ」

天上人は全快ではないが顔に生気を取り戻した。

「ハオ、、様!ジル様!」

話せるほど回復した天上人の男性は2人を見て驚いていた。


「何があった」

ジルの質問に男性は応える。

「私にもわかりません、、急に体が凄い力で引っ張られて地面に叩きつけられました、、私以外にも大勢が天界から追放されております、、我々は戦う力もなく、あの¨者¨達に襲われ、、、」


「そうか、、遅くなって済まない。今天界に戻すのは危険だ、、、ハオ」


「えぇ。私が天上人の¨異空間¨を作ったのでそちらへ連れていきますわ」

「、、ありがとうございます、、」

天上人は2人に深く頭を下げた。


おうに頼む。おう!」


ジルの肩に乗っていたおうはみるみるうちに巨大化し、天上人を乗せ、ハオの作った異空間まで連れて行った。













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