移動手段も修行のうち
(船、、、いや、、舟、、)
「どうするのこれで、、、」
「あんたが漕ぐんだよ」
!!
「絶対無理だよ!え!これ木の舟だよ!」
「桜も疲れてる。あんたは修行にもなる」
「無茶だよ!どこに向かうの?!」
ジルはいつの間に手に入れたのか地図を開いた。
「大阪、、だね」
「大阪ァーーーーー?!!!」
「神も万能じゃないんだよ。瞬間移動なんて私はできないよ」
相変わらず怖い顔をして話すジルは亜助をジロリと睨んだ後に続けて言う。
「じゃあ私は水の上を走れるから大阪にすぐ着くけどあんたもそうする?」
亜助には到底無理な事を言って鼻で笑った。
「ぐぅぅぅ」
亜助は言い返せない。
「あんたの腕は私の力が宿ってる。大丈夫だよ」
ジルは舟に乗り、どっかりと座った。
ーーー数時間前
「ジル!¨者¨が来たよ!」
「いちいちうるさい。見えてる」
ジルは溜息をついた。
「ここからは私が適当に殺っとくからあんたは進みながら回復させときな」
ーータッ
ザンッ!
バタ
(・・すご・い・・・)
ジルは進む足を一度も止める事なく始末する。
もちろん顔色一つ変えない。
そこからいくつもの¨者¨と遭遇し、亜助なら怖気付いてしまうような相手でもジルにかかればどうってことはなかった。
(・・格が違う・・)
ジルの右手の剣には龍が巻き付いているように見えた。
ーーーーーーーーーーー
「きっつっ!!」
ボロボロの木の舟を漕ぐ亜助の額からはポタポタと汗が滴り落ちている。
それでも神の力が宿る腕は別格で、普通ではあり得ない速さと力だった。
「あと半分も漕いだら着く」
(あと、、半分!!)
亜助は必死に腕を動かし続けた。
「はぁ、、はぁ、、はぁ、、はぁ、、つ、、いた」
なんとか大阪までたどり着いた。
陸に上がるなり亜助は大の字で仰向けに寝転がった。
「臭うな、、、」
ジルはあたりを散策している。
死体は時間が経って腐っている。
どんどん離れていくジルに気づいた亜助は起き上がり、
「、、ちょ、っと、、待ってよジル、、」
ヨタヨタとジルを追いかけた。
「あんたの両親は京都に行ったって?」
「・・・そう、、」
転がる死体を見て亜助は不安そうに応えた。
「京都やこの辺り一体は¨ハオ¨という仲間が管轄したはずだ。もうすぐ合流できるから聞いてみると良い」
「わかった、、その、、ハオさんも僕みたいに誰か人間といるんだよね?」
「そうだ」
亜助は久々に人間に会えるのを心待ちにした。
「約束の時間だよ」
「え?」
「私を殺す気でかかってきてみな」
「成果を見るって、、、ジルと戦うってこと?!」
「そう言ったはずだけど」
(聞いてないよ!)
「ハオがくるまで此処で待つ。その間にテストだよ」
(そんなぁ〜、、、)
項垂れる亜助だったが立ち止まって振り返るジルからは既にあの禍々しい空気が立ち込めていた。
(テストって生ぬるいもんじゃない!!ジルは本気だ!!)
この2週間何度も何度も怖い思いをした。
死にそうになった。
なのに本物の¨神¨に向けられるこの空気は別格だった。
「いつでも来な」
亜助は初めてジルを¨恐い¨と感じた。