2週間で得るもの
「え、桜って小さくなるの!」
「あぁ」
桜は先ほどの姿が嘘のようにかわいいサイズでジルの肩に乗っていた。
「ここは四国だったな。亜助は此処の生まれか?」
「僕は関東出身。去年親の転勤でこっちに来たんだ」
「そうか」
「もう誰も生きてる人は近くには、、いないのかな?」
亜助は惨状を見渡しながら歩いた。
「桜は見落とさない筈だ」
「そっか・・・四国にいる人を全員を桜が・・ありがとう」
亜助はジルの肩で休む桜にお礼を言った。
「そこに入るぞ」
ジルはスーパーを指差した。
亜助は通学リュックの中身を捨てスーパーで食料と飲み物を詰め込んだ。
「え、桜に鶏肉あげるの?」
生の鶏肉をつつく桜を見て亜助が言った。
「桜は何でも食べる。毒があっても」
「・・・すごいね。僕神様は何食べるのかなって思ってたけど、、案外普通なんだね」
「こっちの食料は気に入ってる」
「ジル、そこに本屋があったから桜が食べ終わる頃に戻って来るよ」
「あぁ」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「今から四国出るの?」
「一刻も早く仲間と合流したいが・・・」
「?」
「嘘でしょ〜〜〜!!!」
亜助は涙目で訴えた。
ジルはまた冷めた目で亜助に言った。
「今のままじゃあんたいない方がマシなくらい弱いからね」
ジルは此処、香川県内のあらゆる¨者¨を死滅させろと言う。
「ジルはもちろん付いて来てくれる、、よね?」
ジルは片方の口角を上げその場にどかっと座った。
「私は不動明王だって言っただろ。本来¨不動¨なんだよ」
ジルはあくびをしながら亜助に言った。
「そんな、、!!僕死んじゃうよ、、それに香川県内回るのにどれだけ時間がかかると思ってんの!!」
「あんた、足疲れてるか?」
(!そういえばあんなに走ってきたのに足が軽い!)
「あんたのちっぽけな能力、最大限にしといたよ。おかげで私も足が軽い。その場で思いきり飛んでみな」
亜助は言われた通りその場で思いきりジャンプした。
ブワッッーーー!!!
「わっ!!!すごい!!!」
亜助はまるで空を飛んでいると錯覚するほどの高さまで飛び上がった。
!!わわ!落ちる!!
亜助は何とか両足で着地したが、よろけて尻餅をついた。
ジルはやれやれという顔で見ていた。
「2週間」
「え?」
「2週間でとりあえず最低限の戦い方を身につけな。2週間後私が成果を見てやる」
「でもその間に国が、、、」
「仲間もそれぞれ¨無の空間¨に人間をぶち込んでるはずだ。敵がその空間と今隔離してる日本以外にも国が存在することに気付かなければ大丈夫だ」
「ほんとに大丈夫かな、、、」
「心配なら早く足手纏いにならないよう努力しな」
こうして亜助は1人で¨者¨を1匹でも多く始末することとなった。
ジルと離れて15分ほど。
「・・・すごい血の匂いだ、、、」
目の前には死体の山。
ーーガルルルルッ
「¨者¨だ!!」
ーーーーーーーー
「・・・やった、、ハァ、、ハァ」
相当苦戦して亜助はまたボロボロになったが何とか勝利したことに喜んだ。
「よし!!やるぞ!!」
(絶対に地球を元に戻すんだ!!)
亜助はやっと自分の使命を受け入れつつあった。
3日目ーーーーーー
「ふぅ〜!なかなか様になってきた!」
亜助は左腕の羂索をかなり思うように動かせるようになっていた。
相変わらず小傷の絶えない状態ではあったが。
亜助は時折死人に向かって手を合わせた。
7日目ーーーーーー
「ハァ、ハァ、、怖かった、、、」
お化けのような¨者¨と遭遇し、始末した後に亜助は安心したように言った。
「・・剣の方はうまく使いこなせないや、、」
亜助は立ち上がり、パンパンと砂を払いまた進んだ。
(これが中二病でいう¨修行¨ってやつだよね、、)
亜助は左手の焔の刻印を見てぼんやり思った。
12日目ーーーーーー
亜助が¨者¨を始末するペースはかなり上がっていた。この頃になるとさらに¨者¨の纏う気配でなんとなくレベルがわかるようにもなっていた。
「さすがのジルも僕の成長に驚くだろうな」
ーーー!!!!!
亜助は感覚で覚えた¨気配¨に体が凍りついた。
やばい!!本能で感じる。
押しつぶされそうな空気に体が動かせない。
そしてその¨気配¨がすぐ側まで来ていた。
ーーーーーーーー14日目ーーーーーーーー
「満身創痍だね」
腕組みをするジルはまた意地悪な笑いを浮かべて前から向かってくる亜助に言った。
「お待たせ、、!」
ジルの言う通り満身創痍で足を引きずりながら戻ってきた亜助は見た目とは裏腹に清々しい表情をしていた。
「なんとか連れて行けるレベルにはなったようだね」
「はは、、だといいけど」
少し休憩した後
「進むがついて来れるか」
亜助は静かに頷いた。
「怪我が治ったら私がお前の成果を確かめてやる」
2人と1羽は目的の方向へと足を進めた。