力試し
チュン、チュンーー
のどかに雀が鳴いている。
「ねぇ、もう結構歩いたけど、、全然人がいない、、」
亜助は言う。
相変わらず死体は多いがそれにしてももっと人がいても良いはずなのに。
「相棒が今生きてる人間見つけたら私の作った空間に魂ごと放り込んでるはず」
「?!?!?!え!何?!」
「そのくらい私にもできるよ」
「ジル、、、全く意味がわからないよ」
ジルは怪訝な顔をして亜助を見た。
「此処もどっかの神が作ったんだ。色々こだわって。私はそんな面倒なことは御免だから¨無¨の空間を作った」
亜助は益々訳がわからなくなった。
「えっと、、空間って、、?」
想像はしていたが亜助の質問に面倒くさそうな顔をしたジルは溜息を吐いてからぐるっと一周空を見上げてある一点を指差した。
「あそこを見ろ」
亜助はジルの指差す報告をじっと見つめた。
かなり遠いところだか
一瞬空間に穴が空いた。
「?!!」
そこへ遠くて何かまではわからないが何かがその穴に入りまたすぐに出てどこかへ飛んでいった。
「今、人が入ったの?!」
「あぁ」
ジルはもう歩き始めている。
小走りでジルの横に並んだ亜助は話を続けた。
「あの穴の先は第二の地球みたいなのがあるの?!」
「無の世界だよ」
「無、、って?」
「何もないんだよ。空間があるだけ。広めに作ってるから何人でも入る」
「食料とかは?!」
「ないけど死なない。とりあえず今は応急処置だ」
「ジルって優しいのか優しくないのか、、、」
「何」
「何でもないです、、、あ、そういえば相棒って?」
「あー、、待ってな」
ジルは立ち止まって怖い顔をした。
亜助はじっとジルを見つめて次の行動を待った。
バサっ!バサっ!!
急に影になったと思うと同時に見たこともないような大きさの鳥がジルの前に降りて来た。
「わっ!!!」(デカイよ!怖い!!)
亜助はその生き物を見て驚愕した。
「桜だ」
ジルは桜という鳥の頭をポンポンと撫で、亜助に紹介した。
「は、じめまして、、神代亜助です、、」
ビクビクしながら自己紹介する亜助にジルは言った。
「桜は鳥だ。話せない」
ジルは意地悪そうに笑った。
「見てな」
ジルは何も言葉にしなくても桜と通じているのか桜は何か指示を受けたように亜助とジルの進んで来た方向へ飛んで行った。
しばらくして
「ぎゃああああああ」
と、聞き慣れてしまった悲鳴が聞こえてきた。
ジルと亜助の頭上を桜が先程の警官を咥えて通り過ぎた。
そしてまた空間が割れてそこに入り、桜だけがまた出て何処かへ飛んで行った。
「さっきの、、、」
「ついでにな」
(ありがとう、、)亜助は心の中でジルに言った。
「亜助、、、今度の奴は厄介だぞ」
「え?」
「そこの影に隠れている」
ジルの言葉に一気に緊張感が増した。
「亜助、何度も言うけど場数踏まないとあんたはただの役立たずで最後は死ぬよ」
亜助は足が震える。
「私の援護があるんだ、死なない」
「それ、、、ほんとに信じていいの?」
亜助は本当は怖くて戦いたくない。
それでもジルを信じ、自らその厄介であろう¨者¨に近づいていった。
黒いマントを着た人型の¨者¨が物影から姿を現した。
すらっとした体型にも関わらず、その¨者¨は重苦しい嫌な空気を纏っていた。
その顔は緑色のぎょろりとした目玉が顔の中心にあった。
「こいつは少し知能があるよ。気をつけな」
(知能だって?!僕まだ¨小者¨の河童としかまともに戦ってないのに、、、!しかも12点の戦いだったのに、、)
亜助は戦う前から冷や汗が止まらなかった。