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【ドラゴンって好きですか?】chapter:3

 先日のゲイルドラゴンとの物々交換の仕事が終わった翌日の朝。

 朝日が差し込む一室に入ってくるエプロン姿の女の子が一人。

 10歳とかそこらの、まだまだ遊びたい盛りだろう少女は足早に窓の傍へ行くとカーテンを一気に開け放つ。


「……」


「アカネさーん!おーきてくださいでーす! 朝ですよー!」


「うぐぅ… あと五分…」


「もうそれで30分待ってるです! いい加減に起きるですよ!!」


「うぐぇ!」


 布団からなかなか出られない日のアカネの一日はだいたいがこんな調子で始まる。

 いつまでも布団の中から出てこない彼女に、起こしに来た可愛らしい声の主が飛びかかって上に乗った。

 後は飛び込んだ勢いそのままに布団を引っぺがすだけでアカネは布団の中から引き摺り出される。


「うぅ… ルイちゃんおはよう…」


「はい、おはようです さっさと顔洗ってくるですよ。 これ、タオルです」


「ふあぁ… ありあと…」


「やれやれです 朝食の準備は出来てるので食べたら鑑定のお手伝いをお願いするですよ」


「鑑定ー?」


「ドラゴンの素材鑑定ですー」


 ルイのその一言を聞いてアカネの目は一瞬で醒めた。

 それはもう電撃でも食らったのかってくらい一瞬でバッチリと。


「ドラゴン?!」


「そーですよーアカネさん大好きのドラゴンですよー いっぱい来てるからさっさと朝ごはん食べに行くです 食べてからじゃないと鑑定行かせないですから」


「えー、でもー…」


 ドラゴンと聞いては興味がそっちへ行って食事どころではないのだろうアカネはうじうじと行動が遅くなっていった。

 溜め息を吐いて、話さなきゃ良かったとでも言いたそうな顔をしたルイに引っ張られてアカネは寝間着のまま引っ張られていく。

 このままでは折角の食事が冷めてしまう。


「お父さんの作った料理が食べられないですか?」


「あ、ううん、そうじゃないよ? おじさんの作る料理すっごく美味しいもん」


「だったらさっさと行くです」


 勇者だろうが王様だろうが関係なく食卓へと引っ張って行ってやる。

 そう思わせるだけのスゴ味が、今のルイにはあった。


「まさかどこが食堂だったか忘れた訳じゃないですよね?」


「流石にそれはないない。 だって元は私の家だよ? 忘れる訳ないよ」


「そうですね 貴女が竜の勇者として各地を巡るよう命じられ、元は宿屋だったここも手放せと言われていたのをお父さんが預かった…それがここの始まりです」


「うん …お父さんたち、生きてたら驚いてくれてただろうなぁっていつも思うよ」


「そりゃ驚くですよ。 だって宿屋の娘があっと言う間に国の筆頭勇者ですよ?驚かない方がどうかしてるです さぁて、料理が冷める前に食堂へ行くですよ」


「はーい」


 流石にお喋りしすぎていたらしく、扉を開けて廊下を除くと他の客も下へ降りる階段へ向かって歩いていくのが見えた。

 キッチンの方で何か作っているらしき匂いも漂ってきて、その匂いを嗅いでいるだけでアカネの腹の虫が待ちきれないと声を上げる。

 階段の先からはいつもの賑やかな声が聞こえてきて今日もやかましいことこの上ない。


「それじゃ私は先に降りて依頼書の更新やってくるです」


「はーい、いってらっしゃーい」


「ちゃんと顔洗ってからくるですよー!」


 言われた通りに洗面所で顔を洗ってから部屋の外へ出たアカネは階下にある広間へと向かう。

 階段を降りるとそこに広がっていたのは、何人もの冒険者たちがそれぞれ仕事を決めていたり食事を楽しんだりしている光景だ。

 これから依頼を受ける者、依頼をこなして帰ってきた者、依頼を出しに来た者などなど様々な人々が行き来を繰り返していく。

 冒険者たちの安らげる場所、それがここ「冒険者ギルド」である。

 どうして仕事の斡旋場であるギルドで皆飯食ってるのかと言えば、このギルドが他に「アイテム屋・食堂・宿屋」を兼ねているからだ。


「はーい、みなさんお待たせですよー!」


「待ってました!」


「仕事が来たか!」


「うわっはっは! お、やっときおったか!」


「遅いよルイちゃーん!」


 大勢の冒険者が待っていた事。

 それは、ルイがこのギルドでもっとも大事な作業をするからである。

 儀式?紹介? いいや、仕事の更新だ。


「それでは今日のお仕事更新のお時間です! ケイ、手伝うですよ」


「むにゃ…っ!? は、はーいお姉ちゃん!」


「お姉…ちゃん? いや身長的にどう見てもルイちゃんの方が妹…」


「バッカお前死ぬ気か!」


「新人かしら… ご愁傷様」


 だがしかし、ルイにとってそれは許し難い言葉なのであった。

 依頼書を貼る手を止めたかと思えば、失言した新人の元へすたすたと歩いて行く。

 なんかオーラ的な物が出ていたかもしれない。


「新人さん新人さん、今あそこでせっせと紙を貼る、アイテム屋が暇だったのでうたた寝してた妹のケイの姿があるですね?」


「うぉわ!? いつの間に足元に!」


「数秒後のお前の姿です お手伝いしてくださいねです」


「は、はい…」


 しばらくして… 依頼書を全て貼り終える頃には新人くんはへばって木の床の匂いを堪能していた。


「みんなおはよー…」


「おっ! やっと降りて…っ!?」


「あらあら」


「ん? はぁぁ… アカネさん、今の自分の格好ちゃんと分かってるですか?」


「ふぇ…? 恰好…? パジャマだけど… ダメだった?」


 ドラゴン模様の散りばめられた、ドラゴン好きな子供が気に入りそうな可愛らしいデザインのパジャマ、それがアカネの寝間着姿だった。

 ちなみに同じようなのを他にも何着か持っていたりする。

 もしかすると今日もここの庭で干される可愛いパジャマがあったかもしれない。


「ほほう、あれこそ我らが勇者殿の就寝時の姿と… 眼福眼福」


「ほら! こういう変態さんが出てくるですよ!」


 ぷんぷんと怒るルイだったが、アカネはあははと小さく笑って受け流す。


「だって…」


「おーうチビっ子! 今日もやってっか?」


 唐突に入り口の扉が勢いよく開いて一人の青年が入ってくる。

 全身を覆う鎧が動く度にかちゃかちゃと鳴ってちょっとうるさい。


「ほら来た… おはよードランくん、今日もゴツい鎧着てるね」


「っ!? ありがとうございます、アカネ様!」


「ドラン… 王国騎士団の『不死身の盾』か!なんで騎士団の人間が冒険者ギルドに…」


「はぁ?! んなもん決まってんだろ!」


「うわ聞かれてた」


「アカネ様に挨拶する為に決まってんだろうが!」


「…え?」


「バッカかお前!その日のアカネ様を見るだけでも3日は戦えるくらいの力が漲るだろ普通!分かれよそんくらい!」


 アカネがさっき怒ったルイを笑って受け流したのはこれが原因であった。

 少し補足するなら「あんなの変態の内に入らないって」という意味があった訳で。


「お前らみてーな雑魚がアカネ様と同じところに居るっつーだけで腹が立つぜ全く」


「まぁまぁドランくん それで、今日は挨拶しにきただけ?」


「はいっ! アカネ様の顔を見て今日も元気を貰おうと思いここへ! もうそのパジャマ姿だけでめちゃ元気です!」


「そっか… よし、ドランくん、今日もお仕事がんばってね」


「っっっ!! はいっ! うぅおっしゃぁぁぁ!! やぁってやるぜぇ!」


「あらら、飛び出して行っちゃった…」


「大きな声がしたが、やはり彼だったか…まあいい アカネ、少しいいか?」


 ドランが飛び出して行ったのと入れ替わりで、店の奥から見知った顔が現れる。

 それは店の奥でアイテムの鑑定をしているジークだった。


「あ、ジークくん。 おはよー」


「食事が済んだら道具屋の受け取り部屋へ来て欲しい ルイから聞いているとは思うが、ドラゴン素材の鑑定を手伝ってほしいんだ」


「はやくしろよなー、姉ちゃん」


「リョウマくんもいるんだ」


「二人でおっついてないんですよ だぁからさっさと朝食済ませてお手伝いに行ってくださいです」


 そこからすぐに朝食を済ませたアカネは道具屋の裏にある受け取り部屋へと向かった。

 受け取り部屋とは、道具や素材を売りに来た人たちの持ってきた物の質を見極め、そのアイテムに適正な値段を付ける為の部屋である。

 現実に言うなら、買い取りをやってる店の査定室と言ったところか。

 その部屋に現在、ドラゴンの素材が大量に並べられている。


「来たかアカネ 早速鑑定を頼みたい」


「おせーよ姉ちゃん! ゲイルドラゴンの羽毛はもう俺の方でグレード別に分けておいたぞ」


「さすがジークくんの一番弟子。 仕事が早いね」


「どんなもんだい」


 えへんと胸を張るリョウマの背後には、グレード別に仕分けされた羽毛が山積みされていた。

 あの山にある羽毛の悉くをアカネが毛繕いついでにむしり取って来たものだとは思うまい。


「まずはこれを頼む 見た目はただの黒い石ころなんだが、売り主はこれを「ブラックドラゴンの涙」だと言って持ってきたんだ」


「ブラックドラゴン? もう絶滅してるんだけどなぁ…」


「そうなのか?」


「うん、私が生まれるよりも前の話らしいんだけどね まぁ石化した涙なら長い事残りはするか… ちょっと見せて?」


 ちなみに絶滅しているからといって価値が高いかと言えばそうでもないらしい。

 それはアカネの扱いの雑さからも見て取れる。


「ところで、ブラックドラゴンってどんなヤツなの?」


「レッドドラゴンの仲間なんだけど、火も吐けないし力も弱いからすぐ姿を消しちゃったんだって 数十年前には一匹もいなくなったんだけどね」


「むしろよくそこまで生き残ってたなソイツ…」


「持ってる魔力だけはすごかったらしいから、魔法で戦ってたのかもしれないね …そろそろかな」


 そう言った直後、アカネの持つ黒い石が淡く紫色に光り始める。


「光ってる… どうなってんだこれ?」


「魔力を通して見たんだー 魔力がよく通るしこれは本物だよ。 ただブラックドラゴンってよりはワイバーンとか中型のモンスターの目玉だねコレ ブラックドラゴンの場合、魔力を通したら雷みたいにすっごく明るくなるから」


「価値的にはどうなる?」


「本人希望価格は?」


「金貨一枚と言っていたな なぜかすごく自信満々で売り付けに来たぞ」


「んー…銀貨1枚にしかならないね 残念」


 鑑定が終わったので次の鑑定品へ。


「では次に行こう 今度はこれだ」


「レッドドラゴンの鱗? まだ若い子…巣立ち前の子供のかな …かわいそうに…」


「流石に見慣れているか 遠方で正気を失い暴れているレッドドラゴンを討伐した時の素材だそうだ」


「そっか… これはレッドドラゴンの鱗で間違いないよ グレードも…はい、分けた」


「はえぇ…」


 片手間で鱗の状態を見極めてグレード別に分けて次の素材へ。

 ドラゴンの素材なのに少し悲しい表情をするのは、これが子供の物だからだろうか。


「今度はこれを」


「……なにこれ?」


「持ってきた者が言うには「人間の生き血を吸うドラゴンの血液」らしい」


「うへぇ…なんじゃそりゃ」


 この世界には多種多様なドラゴンが居る事を知っているリョウマも流石にこのアイテムには顔を顰めるしかない。

 人間の生き血を吸うドラゴンなんて話は聞いた事が無いし見た事もないからだ。

 人を喰うと言われる種類はいくらか居るけれど、


「それ家畜かなんかの血じゃねーの?」


「……」


「なぁ、姉ちゃん」


「……よし、分かった」


 何度も細かく魔力を流してみて反応を見たアカネはやっとの事で答えへとたどり着く。


「ホントか!やっぱ家畜の血だよな?」


「ううん、家畜の血じゃないよ? これはミラージュリザードの血だね」


「ミラージュリザード? ドラゴンじゃねーの?」


「近いけどドラゴンじゃないね。 幻を見せて気を失った相手から血を吸い取っちゃう子だから… 多分幻を見せられて、ドラゴンと思ったまま採取したんじゃないかな」


 ドラゴンの幻を見せられ、戦って倒した後もその幻が残ったままこの血を採取したのだろう。


「価値は? ちなみに本人評価額は金貨10枚と言っていた」


「血だから…銅貨3枚 ミラージュリザードって対策さえ知ってれば倒すのは簡単だからね」


「対策?」


「魔法対処をするのも手なんだけど… 大きな音…そう、大きな声で叫ぶと幻が消えるんだよ それで、幻の居た所に二回り以上小さいミラージュリザードが怯えて丸まってるの」


「つまり… 大きな音にビビったって事?」


「そういうこと」


 またしても評価額を大きく下回る値段になってしまった。

 対策さえしっかりしていれば簡単に討伐できる分、その値段はお安い。


「丸まって怯えてる分には可愛いんだけど、気絶したら死ぬくらい血を吸われちゃうからね」


「それを可愛いの一言で片づける姉ちゃんの恐ろしさよ」


「うん? 何か言った?」


「ひぇ! べ、別に何もっ!」


 こうやってリョウマと話している間も、アカネは続々と素材の鑑定を続けていく。

 気が付けば大半の鑑定は終了していた。


「あともう少しか… リョウマ、鑑定したアイテムをグレード別に分けて荷馬車に積んでくれ」


「分かったぜ、アニキ!」


「慌てる必要はないから、分けたグレードを混ぜないよう注意するんだぞ?」


「おう、バッチリやってやるぜ」


 鑑定室の隅に固められていた布袋に鑑定したアイテムを詰め込み、リョウマはささっと部屋を飛び出していく。


「……もうそろそろ半年か」


「リョウマくん助けた日から?」


「ああ 海の魔物に襲われた移民船にいた唯一の生き残り、それが彼だ アカネが助けたんだろう?」


「うん、板切れに掴まって沈みそうだったのをギリギリで助けたんだよね あの時は散々だったよー 遠くまでドラゴンの観察に行った帰りでまさか海竜に襲われるなんて…すっごくワクワクした!」


「多数の犠牲者が出ていてそれは少し不謹慎な気もするが… 強かったのか、その海竜とやらは?」


「ううん、全然? レベルで言えば50くらいだったんじゃないかな?」


 レベル50がどれくらいかと言えば、国の衛兵が部隊で挑みかかってやっと倒せる程度の物だ。

 少なくとも中途半端なレベルの者が一人で戦いを挑むのは無謀以外の何物でもない。


「因みに、この前アカネが一撃で吹っ飛ばしていたギガントビートルロードがそれくらいだ」


「そうだっけ? 私レベルとか気にしないからなー」


「流石、エンゼリア最強のレベル95は格が違うな」


 補足となるが、レベル95がどの程度かと言うとこの世界の最強格と名高いドラゴンを含めた全ての魔物と戦える実力を持つに等しいとされている。

 というか文字通りの一騎当千、いや、万を超えるような軍勢相手にも涼しい顔をしたまま勝てるだろう。


「最強は言い過ぎだと思うけど…」


「そんな事はない 事実、竜の勇者という立派な役目も持っているじゃないか」


「かなー ……まぁ、役目の意味を知った時から嫌いなんだけどね、この称号」


「それでも、だ アカネ、お前はその嫌いな称号を背負って行かなくてはいけない 他の誰かに譲りたいか?他に任せられる奴が居るか?」


「…ううん、居ないよ 誰にも渡したりしない」


 それは、自分の欲から来る物なんかじゃない。

 竜の勇者の称号が持つ意味による所が大きい。

 アカネの表情が少し暗くなるのもそのせいだ。


「誰よりもドラゴンを知り、誰よりも多くのドラゴンを倒す、最強種の天敵 それが竜の勇者の役目…だったな?」


「正解 私はただドラゴンが好きなだけなのにね」


「それは俺も良く知っている」


「…うん、そうだね ジークくんとは付き合い長いもんね」


「そういうことだ… ところで、気になった事があるんだが」


 アイテムを馬車に積んでリョウマが帰ってきたあたりで、ジークはあることが気になってアカネへ聞いてみる。

 なんてことはない、いつ聞いていてもおかしくなかっただろう話題。

 けれど一度も聞いた事が無かった話題をジークはここで聞く。


「どうしたの?」


「アカネはドラゴンが好きなのは熟知しているんだが、なぜ何万種といる生物の中でドラゴンだけをそんなに好きでいるのか、その理由ときっかけを聞いていないなと思ってな」


「それは俺も気になる!聞かせてよ姉ちゃん!」


「ええー? どうしよっかなぁー」


 別に秘密にしている訳ではないのだが、何故かアカネは話す事を渋っていた。


「うーん…」


「アカネさん、もう鑑定終わったですか?!」


「あ、チビっこ」


「ルイ? アカネに何か依頼でも来たのか?」


「そりゃもうドでかいのが来たですよ! あとチビっこがチビっこ言うなです!」


 その手に持っていたのは、1枚の依頼書。


「どれどれ? あ、お姫様からの依頼?」


「です! クリム姫直々の依頼が届いたですよ。 もうマジでビックリしたです」


「ええと… あ、謁見とかしなくていいからさっさと行ってくれだって」


「はいです 外で高級そうな馬車引いたドラン野郎がお待ちかねですよ」


 チラリと外へ続く扉の方を見てみれば、確かに暇そうに馬を撫でるドランの姿があった。

 アカネが鑑定をしている間に戻ってきたのだろう。


「後の事は任せて貰って大丈夫だ」


「おう! もう積み込むだけだから問題ないぜ」


「ごめんね それじゃ行ってくる」


「ドラゴン印のかわいいパジャマのまま行く気ですか?」


「……そうだった 準備するから待っててって伝えてもらえる?」


「それくらいならお安いご用です 伝える相手があの変態ガキ大将なのが不服ですが、これも仕事の内ですので仕方ありませんです」


 致命的なまでの態度の悪ささえなければ、ルイもここまで毛嫌いする事も無かったかもしれない。

 けれど彼の本質はどうにも変えられない、というか曲げても折っても元に戻る、まるで形状記憶金属のような精神力だった。

 それをルイが思い知ったのはいつのことだっただろうか。

 気付けば、アカネを崇拝するドランの存在が疎ましく感じられるようになってしまっていたのではないだろうか。


「ほら、伝えに行くからさっさと用意しに行くですよ」


「はーい」


「俺たちは俺たちの仕事を片付けるか、リョウマ」


「あいよ!」


 こうしてそれぞれが仕事へと戻って行き、散り散りになる。

 アカネは依頼された仕事の遂行の為に、ジークとリョウマは鑑定を終えたアイテムを馬車へ積みに、ルイはドランへアカネの準備を待つよう伝言へ。


「ええと…? 朱月の湖畔に潜む吸血鬼の討伐? なーんだ、ドラゴンじゃないのか…」


 依頼書の内容に目を通してドラゴンの字がどこにもないことを確認して、意気消沈してしまう。


「……仕方ない、クリム姫のお願いだから断る訳にもいかないもんね…」


こうしてアカネは準備を済ませてドランの待つ馬車へと向かうのだった。

朱月の湖畔という場所で待つ吸血鬼とは一体?


NEXT.【新しい友達】へと続く

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