竈の使い方を見てみよう。
さてさて、サーフィちゃん達はあの竃たちをどういう風に使っているのかな?
・・・うん。驚いた。何が驚いたかって?サーフィちゃんが竃に薪を組んでるなぁって観てたら、突然火が着いた。そう、ぼっと。
火打石や何かの道具類を使っている様子もなかったし、種火を絶やしてないって事もない。だって初使用だし。
そんな様子を「うおっ!」と驚いて、「むむ~?」っと何をしたのか観察していると、
「・・・魔法ですね。」
とのことです。
うん。その発想は無かった。そう言えばそういう世界だったね。
これで魔法を見るのは2回目かな。まぁカビロンちゃんの風魔法は風だから見えなかったけどね。
その後は、まぁ薪に火をつけた後、火にかけるってこと自体には難しい事は無いよね。
問題は火力調整だよ。薪をくべたり脇に寄せたりして調整するみたいだけど、火力を強くするのはまだいいけど、思った通りに弱くするのはなかなか大変そうだね。出来る様になるんだろうか。
「あ、そろそろ出来そうかな?」
サーフィちゃん達が小分けするためのお皿を用意し出したね。
「そう言えば、出来たものってどうやって持ってくるの?やっぱり転移陣?」
「そうなりますね。」
ふむふむ成程。じゃあどこに設置しようかな?
まぁ、やっぱり作業台の一部を転移陣にするのが無難かな。
「ダコアちゃん。ここら辺でいいんじゃないかな?」
「そうですね。良いのではないかと。」
よし!これで設置場所は決まったね。後はちょっとサーフィちゃん達には煮炊き場から出てもらって、設置するだけだね。
「サーフィ、サーフィ。」
〈ひゃっ!?は、はいうさ。ナナさん。〉
「出来上がった様なら、一度全員煮炊き場から出てもらえるか?受け渡し用の転移陣を設置する。」
〈は、はい。分かりましたうさ。〉
そう言うとサーフィちゃんは煮炊き場から人を出していく。
よし、設置可能になったね。さくっと転移陣を設置しちゃいましょう。
転移先はこっちの台所の作業台のおんなじような所でっと。よし、完成。
「サーフィ、もう良いぞ。作業台に転移陣を設置した。食事はそこに置くように。普段は作業台として使って問題ない。」
〈は、はい。分かりましたうさ。〉
サーフィちゃんが他の人達に説明してるね。あ、皆で転移陣を確認してる。
そして食事を分け始めたね。まぁ当然私のとこに一番最初に来るよね。サーフィちゃんが持って来ました。
〈ナナさんのお口に合うかわかりませんが、どうぞうさ。〉
「うむ。転移陣から少し離れているように。」
〈はいうさ。〉
よし、じゃあ台所に行って転移の状況を見てみますか。
ダコアちゃんのお腹にまわしてる腕に力を込めて、よっと立ち上がる。
「・・・・・・。」
ダコアちゃんがいくら軽いと言っても、私の膂力がショボいので、なかなか来るものがある。だが!私はやりきるよ!何があっても!
台所の扉の前まで来る。ううう、僅か数歩の距離だというのに私の両腕は早くも悲鳴を上げている。だが!私は成し遂げてみせる!だとしてもー!
「うぐぐ・・・。あ、ダコアちゃん扉開けてくれる?」
「・・・・・・。」
片手で器用に本体を持ちながら扉を開けてくれるダコアちゃん。
よし、台所に侵入開始!
ふう、ふう、よ、よし、転移、予定、地点の、台所の、作業台、の前に、来まし、たよ・・・。
しかし私の両腕は最早限界だった。
「ご、ごめんね。ダコアちゃん、ちょっと降ろすね。」
「・・・・・・。」
う、腕が・・・。流石に私、貧弱過ぎないか?
幼女をちょっと抱っこしただけで、両腕がぷるぷるしてますよ?
以前の私はいったい何者だったんだか。
「・・・・・・。」
ううう、こういう時にダコアちゃんの半眼で見つめられると、結構来るものがあるね。
ダコアちゃんを抱っこして移動出来る様に、少し鍛えなきゃいけないね!
「・・・マスター。」
「あっはい!少しと言わずしっかり鍛えます!」
「・・・なんの話ですか・・・。そろそろ食事を転移させた方が良いのでは?」
「あ・・・。」
サーフィちゃんに転移させるって言ってから、そこそこ時間が経っちゃってるよ。
結構大がかりな事だと思われちゃうかな?ま、まぁ良いか。
「んじゃ、転移っと。」
ダンジョンメニューから転移陣を発動させる。勿論サーフィちゃんの方にスイッチなんか無い。今はまだ大丈夫だろうけど、今後どういう関係性になるか分からないからね。変なもの送り付けられても困るからね。
こっちにもスイッチが無いのは、私がやらかしそうだからです。
転移陣がパアッと光ってその光が収まると、そこには先程サーフィちゃんが用意してた深皿が。
「おぉ。」
サーフィちゃんの方を確認すると、あっサーフィちゃんびっくりしてる。また、ふぇっ!?とか言ってたのかな?
「う~ん残念、聞き逃した。」
「・・・・・・。」
って今は転移陣だよね!うん!あっちの転移陣に置いてあった深皿は・・・無くなってるね!
「うん。成功だね。」
「・・・そうですね。」
じゃあ、サーフィちゃんに受け取った事を言おう。
「サーフィよ、確かに受け取った。ではまたな。」
〈は、はいうさ。〉
ではでは、サーフィちゃんが作った物はどんな感じなのかな?
ほかほかと湯気が立つそのお皿の中身は・・・スープ、と言うより何とか汁という方が合うような汁ものですね。まぁ鍋で煮てたし、そりゃそうか。
具材はダンジョンに生やした野菜と、肉、まぁ羊でしょう。それとハーブも入っているのかな?そして汁自体は濁っているね。灰汁取りしてなかったし、まぁそうだよね。
そして匂いは・・・うぐ、羊肉臭?がきつい。下処理とか特にしてなかったしね。うん。これ私食べれるのかな?
ま、まぁとりあえず机まで持って行こうか。
はっ、とそこで気付く。私の腕はぷるぷるしていて使用不能だということを!とても机まで無事に持っていく自信はない。
「・・・・・・。」
「あ、あの・・・。」
私が何か言う前に、サッと皿を持つダコアちゃん。
右手に本体、左手に汁皿と、有り難いけど何かが起きそうで怖い。
「ありがとうダコアちゃん。でも、大丈夫?」
「問題有りません。」
と言うと、すたすた歩いていくダコアちゃん。
「そうなんだ・・・。あっ!」
部屋に続く扉が閉まってるよ!開けてあげなっ!?
ダコアちゃんが近付くと勝手に開く扉・・・。・・・え?
「マスター?」
ついてきていない私に向かって、扉を抜けた先から、いつもの半眼で小首を傾げながら訪ねるダコアちゃん。
「ぐふぅ。」
頽れる私。
私を萌え殺す気ですか!?ダコアちゃん!?
「・・・・・・マスター・・・。」
突然頽れた私を心配するどころか、呆れたような反応をするダコアちゃん。ちょっと悲しい。
「・・・マスター。」
「はい、今行きます。」
シュタッと立ち上り部屋に向かう私。
部屋に入ると、既にお皿を机に置いて、椅子を引いて待っているダコアちゃんがいる。
いつもの抱っこスタイルを暗に?拒否して、早く座れと無言の圧力が・・・。
「・・・はい。」
何故か自然と返事が出て座る私。
座るときにちゃんと椅子を合わせてくれるダコアちゃん。
えっ、そんなスキルもあるの?
そして机の横に控えるダコアちゃん。まるで給仕さんの様ですね。
さてさて、初の現地人の料理はどんなものでしょうか?




