初甘味と乙女のピンチ
取り敢えずやらなきゃいけない事はこれで終わったよね。
その前の事件でどっと疲れちゃったし、なんか甘いものが欲しいよねぇ。
「色々あって疲れちゃったし、なんか甘いものが食べたいねぇ。何が良いかなぁ。」
「この世界の高級系統はお勧めしません。」
「え?・・・あぁ、定番の激甘シリーズですか。」
「そうなりますね。」
「なんでこう激甘にするんだろうね。何にでも適量ってものがあるよね。それじゃ美味しいとは思わないと思うんだけど。味覚がそんなに違う訳じゃないんだよね。」
「そうですね。個人差はあるでしょうが、別の要因が主であると。」
「高級品をいっぱい使ってますよってやつ?それで美味しく食べられなかったら意味無いと思うんだけど。」
「マスターとは違う所に価値を持っているのでしょう。」
「そうなんだろうけどねぇ。まあ、いいやそんな事は、早く美味しいの食べよう。」
「そうですね。果実が良いのではないかと。」
「んん?・・・下手に人の手が入ってるより、素材そのものの方が間違いないって事?」
「料理よりも更に余裕が無い事には甘味を追求することは出来ませんので。」
「じゃあ果物にしようか。ううん・・・あっちで品種改良されまくってる系統の野生種って、あんまり美味しく感じなさそうだよね。比較的野生種に近いものって何だろう・・・ベリー系かな。」
ええと・・・良いのあるかな・・・って言うか種類多すぎ、探すの大変だし。安くて甘いのを探索・・・。
「あっこの丸酸塊っていうのが良さげかも。」
小笊1つで5APとお安いですし。
お次は飲み物を・・・あったかいのが良いな・・・ならお茶かな・・・ハーブティーがやっぱり安いか・・・よし、カモミールティーにしよう。これも1カップ5AP。
・・・ううん、5APだから安いと思ってたけど、丸酸塊もカモミールもダンジョンで生やした方が半永久的に生えて来るから絶対お得だよね・・・。
食材系はダンジョンに生やして自分で採った方がいいのかな。まぁそれは後で考えるとして、ともかく一服しますか。
先ずはカモミールティーから、独特の爽やかな香りを楽しみつつ一服。
「はふぅ~。」
そんなに即効性じゃない筈だけど、もうリラックス効果が出てる気がする。
「うん、ハーブティーは美味しい。じゃあ肝心の丸酸塊ちゃんはどうでしょう。」
薄紫色の丸い果実を一口。
「うぅん、甘酸っぱ~い。」
ちょっと酸味があるけど、ちゃんと甘い。果物って大抵そんな感じだよね。おいし~。
そのままパクパク食べ続ける。間にカモミールティーを挟みつつ、パクパク。
「・・・あっ。無くなっちゃった・・・。」
美味しくて夢中で一気に食べてしまった・・・。って、
「一人で全部食べちゃったし!ごめんね、ダコアちゃん・・・。」
「?・・・いえ、マスターのお口に合ったのなら何よりです。」
一人で全部食べちゃうなんて、何ていやしんぼなんだ私は・・・。
「ううう、今度は一緒に食べようね?ダコアちゃん。」
「マスターがそう望むのなら。」
そんなことがありつつ、またダコアちゃんを膝抱っこ状態で愛でつつまったりしていると、
「・・・マスター、白兎がマスターに呼び掛けているようですが。」
「ん?白兎?・・・・・・・・って、もしかしてサーフィちゃんの事?」
コクッ。っと頷くダコアちゃん。
な、なんか凄く悪意の籠った呼び方の様な気が・・・そ、そんな事無いよね?!
白毛白肌のうさ耳族のサーフィちゃんを端的に表した表現だよね?うんうん、さすがダコアちゃん!
「え、えっと・・・それでサーフィちゃんが呼んでるんだっけ?」
「はい。何か焦っているようですね。」
「えっ?!な、何かあったのかな。ダコアちゃん、サーフィちゃんを出して。」
ダコアちゃんがいつものようにてしてし操作をしてサーフィちゃんを画面に出す。
〈・・さん、ナナさん今お時間大丈夫ですかうさ?ナナさん、ナナさん今お時間大丈夫ですかうさ?〉
うん、確かに焦って私を呼んでるみたいだね。
「どうかしたか?」
〈あっ、ナナさんうさ!お仕事中ごめんなさいうさ。お邪魔したうえに図々しいお願いなのですがうさ、出来れは後どれくらいで出来上がるか教えて欲しいうさ。〉
「あっ。」
〈えっ?〉
あちゃー、そういや完成したってサーフィちゃんに言うのすっかり忘れて、かなりのんびりしちゃってたよ。
「あー、今最終確認をしているところだから暫し待て。」
〈あ、はいうさ。〉
まあ、実際には確認なんてないけど、少し待機。
「いや~サーフィちゃんに言うのすっかり忘れてまったりしてたねぇ。ダコアちゃんも言ってくれればいいのに。」
そう言いつつダコアちゃんを撫で繰りする。
「・・・特に重要な案件では無いので。」
「あぁそうなんだ・・・。」
やっぱりサーフィちゃんに対して厳しいような・・・そ、そろそろ良いかな?
「うむ、これで問題は無い筈だが不都合があれば遠慮なく言うがいい。」
〈あ、ありがとうございますうさ。じゃ、じゃあもうあっち側に行ってもいいうさ?〉
「ん?ああ問題ない。」
〈じゃ、じゃあちょっと失礼しますうさ!〉
そう言うとサーフィちゃんはそそくさと微妙な動きで、小走り?で行っちゃった。
あっなんかもう一人の女子にずるいです!って言われてる。
いや~そんなに楽しみにしていてくれたなんて、なんか嬉しくなるねえ。これはサーフィちゃんの反応が気になるから追っていこう。
さぁどんな反応をしてくれるかなぁ。そろそろキッチン入口ですよ~ってありゃ?通り過ぎちゃった・・・。気づかなかったのかな。そのまま女子部屋の扉を開けて奥まで一直線・・・って。あぁ・・・はい、そう言うことですか。勿論この後は乙女の名誉のために画面を切りましたよ。
そして、憂いを解消したサーフィちゃんが改めて完成したキッチンを見ると、とっても嬉しそうにしてた。よかったよかった。