3.異世界でチート三昧したいのでしょう?
基本はこれより少し少ないくらいしか書きません。主人公の初登場回ですからね
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次回は12/1で、それから毎月1日に投稿します。
どうも皆さん、俺の名前は新戸 風太郎。親はどんなことを考えてこの名前をつけたのかが疑問な43歳、独身、童貞、ニート。親どころか俺の名前と生活を知った人はみな、俺のことをプー太郎と呼びます。ご近所さんは私のことを『何もしない×××人』と奇異の視線を送ってきます。わかりきったことを自称するのも癪ですが、親に寄生する金食い虫です。
っと、自己紹介はこの位にして、俺の現状を説明します。
現在俺は、神様を自称する、ちょっとイタい中学生くらいの、しかも美少女を目の前に、体が半透明な状態で、しかも全裸で立っております。美少女に性器を見られるというのも性的興奮を少々覚えますが、それが気にならないくらいこの美少女が気になることをほざいて下さります。もう一度聞いてみますのでみなさんもお聞きください。
「すみません。もう一度、お願いします」
『ですから、貴方様は私のうっかりで死んでしまったので、異世界にて最高位神の私が貴方に所謂チート能力を望むだけ差し上げてから生き返ってもらおうかと』
聞きましたか皆さん。この美少女、目の前で性器をまじまじと見せつけているにもかかわらず、それを無視し、あまつさえ私が死んだと仰りやがりますのよ?……性器を無視された心の傷が痛い。
っと、また話が逸れました。みなさんなら既にお気づきかと思いますが、重要なのは、この美少女のせいで死んだことでも、股間のナニでもなく、『異世界』に『いくらでも能力を引っさげ』て転移やら転生やらさせてもらえるということです。私の心は騒めきました。えぇ、とても騒めきましたとも。なにせ、チートを、テレビショッピングお得意の『お一人様〜個限りとさせていただきます!』ではないのです。これは萌えま……じゃない、燃えます。しかし、一応聞いておきましょう。
「元の世界はダメなのですか?後、転生ですか?転移ですか?」
『転移です。元々の体を行ってもらう世界に適合するために少々いじりはしますが。それと元の世界が良いならそれも出来ますが、異世界でチート三昧したいのでしょう?』
「おや、私の趣味に合わせてくださったのですね」
『えぇ、なにせ私は最高位神ですから、趣味思考程度手に取るようにわかります』
………いまこの美少女はなんと言いました?趣味『思考』程度?と言うことは、先程から性器、性器と連呼していたことも……
『はい、読めていますね』
なんて事だ。卑猥な思考は相手に分からないのに自分はドキドキ出来る犯罪ではない数少ない行為だと思っていたのに、思考が読めてしまっては根底が揺るがされる。仕方がないので精神統一。下ネタ思考を一時封印だ。
『……あっ、本当に卑猥な発想が思考から消えた』
「プロニート、一流オタク、変態紳士、最強の自宅警備員、類稀なる童貞等々数多の二つ名で呼ばれたこの俺が、精神統一ができないとでも思ったんですか?こうでもしないとエロゲ以外のゲームが崩せませんから。それにいつ異世界に行くかも分からないから色々準備していました。筋トレしたり、体力トレーニングしたり、一流の料理人やパティシエに弟子入りしたり、それとは別にお菓子会社のお菓子を自前で再現したり、親のコネで自衛隊のレンジャー訓練受けたり、剣術道場に入門したり、数学やら地質学やら機械工学やら色んな学問に手を出したり、医師免許取得したり、鍛治師や陶芸家に弟子入りしたり、まぁ色々やりました」
『そうですか。異世界のためにそこまで。随分異世界が好きみたいですね』
「えぇ、大好きです。それで、異世界の説明とかはまだですか?」
『そうですね。あまりここにいられるのも拙いのでそろそろお話ししますね。それと、その前にこれを』
そう言って差し出されたのはノートPCだった。これで何をしろと言うのか。
『その中には取得可能な能力のリストがあります。私が説明している間にどんな能力が欲しいか選択しておいてください。先ほど申しました通りこれは私のミスの補償ですので幾つでも選んでいただいても構いません。ただし、スキル保有数には限りがあります。人によっては多く持てないので、よく考えてください』
「そう言うことですか。わかりました、始めてください」
『では、始めます。
まず大まかに説明すると、貴方が行く世界は魔法があり、スキルや耐性があり、魔王や勇者がいて、魔獣や魔物がいて、獣人やエルフなど亜人がいて、ダンジョンがあって、巨大な悪の組織が3つ4つあって、神や悪魔、竜や精霊や天使がいます』
まぁ、ここらはあるあるだな。
『続いて詳細説明に移ります。大まかに魔法といっても3種類存在します。触媒や魔法陣を使い魔法を行使する技術を魔術と言います。召喚や使役に強いですね』
召喚に使役か。近代の流れに乗ってスライムでも育ててみるか。
『次に触媒などの事前準備が必要ない魔法と呼ばれる技法です。これが1番一般的で遠距離からの攻撃が得意です』
魔法使い、か。そういえば、30で魔法使いなら40は賢者で50は大賢者だと言ったナイスガイなスライムがいたなぁ。俺は賢者になって3年か。マジで笑えん。
『次に、自らや他人の体に干渉する物を支援系魔法と呼びます。身体強化や回復などがこれにあたります』
後方支援か。MMOではタンクかヒーラーが好きだったなぁウィザードとか現実でやってんのにゲームでまでやると泣けてくるし、かと言って剣を使うアタッカーはゲーム内だけとか余計笑えない。必然的にヒーラーとタンクしか残らないのだよ……
『………それと、呪術も支援系魔法に分類されますが後にかけた呪術がどんなに弱かろうと、先に掛けた呪術の効果を上書き、削除して効果を発揮するため、使い勝手が非常に悪く、今は巨大な悪の組織、仮にAとしましょう。そのAが研究しているのみとなり、それもまだ実用に足るものではありません』
デバフか。そういえば、俺のやってたMMOはバフは有るのにデバフは、なかったんだよな。なんかこの世界、俺がやってたMMOと似てるな。
『次にスキルや耐性についてです。スキルには7つあり、一般スキル、職業スキル、魔法スキル、種族スキル、特殊スキル、固有スキル、耐性スキルがあります』
『最もよく使われるのが一般スキルです。他のスキルと違って産まれながらに必ずいくつか持っていますし、生活する上で便利ですから。火を起こす火種や、体や物を綺麗にする清潔などです。一日に一回も使わないのは赤ん坊と床に伏せった老人だけだと言われるほどです』
web小説では生活魔法とか言われるやつか。
『次は職業スキルです。職業スキルはその名の通り剣士なら剣術、料理人なら調理、建築家なら建設、など最も多岐に渡るのがこれです』
このスキルリストの中にはどれも無いから前世で経験したものも引き継ぎできるって考えて良さそうだな。前世が無駄にならなくてよかった。
『次に魔法スキルはその名の通り魔法系のスキルです。魔法スキルは先程説明したので省きます』
『次に種族スキルです。その名の通り種族限定のスキルです。種族ごとに5つスキルを持っています。正直、限定なだけで職業スキルよりちょっといいくらいなものです』
人族はどんなのかな。ちょっとワクワクする。
『次は特殊スキルですね。特殊スキルはその名の通り特殊性が強く、他のものに分類されないスキルのことです。一風変わったものからとても強力なものまで幅がとても広いです。知識取得系のスキルや分類が難しいスキルが盛りだくさんです』
なんだかパンドラの箱を思い出すな。少しの希望と沢山の絶望が入ってるんだっけか?あれ、違ったっけ??まぁいい。
『次は固有スキルです。固有スキルは全人類中、1人しか持てません。所有者死亡後は自動で別の誰かの手に渡りますし、数も限られています。七つの大罪や七つの美徳、勇者や魔王、正義なんてのもありますね』
今でこそエドワード・エル○ックやメリ○ダスのお陰で浸透した七つの大罪だけど、異世界でもやっぱり有るのか。
『最後です、耐性スキルは文字通り耐性です。例えば火耐性Ⅰだと火の付いたマッチを素手で握りつぶして消火しても火傷すら負いません。炎熱無効なら太陽に落とされても火や熱さなどでは問題がなくなります。酸欠など、別の要因で死にますが』
無効はやっぱり強いな。表示されている無効系は全て取得しておこう。
『次は魔王と勇者ですね。魔王と勇者は対になる存在ですが、必ずしも争っているわけではありません。と、言うより争った者達の方が少数派です。さらには魔王と勇者が結婚したなんて話まであります。まぁ、戦うよりはずっといいですよね。でも最近は戦わなさすぎて暇で仕方が………』
魔王と勇者の結婚か。子供は絶対美形だな。女性なら嫁に欲しい。歳を召してない限り、だが。それと最後の方よく聞こえなかったけど物騒………
『次は魔物と魔獣です。この二つの違いは、生まれながらか、叩き上げか、の違いです。魔物は生まれながらにして魔物です。しかし、魔獣は生まれた当初は動物でしたが魔素溜まりに長く住み着くことにより魔素を取り込み強力になってしまいます。故に魔獣は魔物より数が少なく、力は強力なのです』
『お次は人類です。人類は大凡、エルフ族、ドワーフ族、鬼族、魔族、人族、獣人族の6つです。それが全てではありませんが代表的なものです』
『エルフは長命で美人が多く耳が少し尖っているのが特徴です。魔法にも長け、長寿故に弓や剣の扱いも達者です。ですが繁殖力の影響で数が少なく、数の暴力に押されて非合法奴隷狩りの餌食となっているようです』
奴隷か。まぁ居るのわかってたけど。スキルリストの中に隷属術って有るもん。
『ドワーフもエルフほどではありませんが長命です。態々説明するまでも無いとは思いますが、男性は鍛治、建築、女性は細工、彫金の分野に秀でていて、高い技術力のため狙われることも屡々、こちらは主に大陸制覇を狙う帝国、それと巨大な悪の組織が3つとも技術力目当てで、それはもう長い間さらい続けた結果、此方も数が少なくなりました。ちなみに見た目は男性は髭もじゃでずんぐりむっくり。女性は人族とさほどの違いはありませんが、酒飲みが多いです』
女性は人族とさほど変わらないのか。珍しい気がする。web小説ではロリか恰幅がいいか髭もじゃが大方だもんな。
『獣人族は魔法系スキルが全く使えない代わりに、物理系ステータスが高い種族です。物理系ステータスが均等に高い犬や狼。素早さ極振りの兎。スピードは兎にやや劣るものの、その代わり兎より攻撃力が強い猫。獣人族の種族スキルで唯一の物理系以外のスキル、幻惑を使いこなす狐と狸、等々、獣人族といっても様々です』
獣人の可愛い女の子を想像しただけで夢が広がるな。
『次は鬼族です。鬼族は額に生えるツノが特徴の種族です。力が強く、魔法にも長けます。赤、青、黄、緑、黒の髪の者がおり、黒が1番強くなりやすい、と云われています。それと、鬼族は体外に魔素吸収器官が有る唯一の種族です。それがツノですね。ツノがある以外は人族と変わりませんね』
鬼族か。そういえば赤青の双子の鬼は可愛かったな。特に青い方はヒロイン顔負けだった。そう考えると俄然やる気が出てきた。世界は無理でも、大陸くらいは支配してみようか。
『魔族は魔王庇護下の種族で、人族に体力や筋力で劣るものの、高い魔法の才や人族と変わらない外見が特徴の種族です。また、魔族と人族は繁殖力が強く、世界の人類総数の約5割をこの2つで締めています』
ふーん。でも正直、人口比率とか興味ない。
『人族は先程も説明したので特に話すことはありませんが、他種族との、ハーフができるのは人族のみです。それと、新戸さんの体はこの人族にあたるものにしておきます。ここは感謝してくれてもいいですよ』
マジか!イヤー感謝感謝だわ。この神様今までの思考を読んでてそれでも異種族と交われる人族にしてくれるとか胆力強すぎ。
『次はダンジョンです。ダンジョンは人々に多大な被害と恩恵を生み出しています。宝箱は自動回復機能をつけるのが大変でした。おっと、この話は余計ですね。ダンジョンは5層毎にボスがいます。ボスはその5層のうちの何れかのモンスターの上位種になります。現在、1番大きな迷宮は1215層で、攻略済みの層は135です』
へぇ、そんなにデカい迷宮あんのか。しかも攻略済みが1割強しか無いとは。
『最後です。神や竜、精霊、天使、悪魔はそれぞれが同格です。あまり知られてはいませんが神は絶対的ではないのです』
そっか〜、神様自身が『神は絶対的ではないのです』だってさ。ちょっとオモシロイ。
『神は謂わば、デスクワークや人事担当です。世界の管理、死者の魂の罪を浄化した後、別の生を与える仕事です。一方、天使や悪魔、精霊に龍は営業部のようなものです。現地に直接赴いてもらっています。天使には超巨大隕石落下や世界規模の人類滅亡の危機に対応してもらい、竜は自然動物の滅亡を阻止してもらい、悪魔は悪意が渦を巻き、溜まってジェイルスポットになっている場所に向かってもらい、ゴーストバ○ターズの様な事をして貰っています。精霊は自然の死んでしまった土地を時間をかけて徐々に修復して貰っています』
会社?………会社。ニートの俺には関係ない………。
『以上で大まかな説明は終了です。貴方様はどうせ知識入手用のスキルを会得されると思いますので、さらに詳細な情報が欲しい場合はそちらをご利用ください』
「あっはい、選択も終わってますので、後は能力をもらって、転移するだけですね」
『少々お待ちください。今、能力を付与いたしますので』
そう言うと神様は俺の頭に手を触れる。すると、何処からともなく光の玉が浮かびあがってきた。いや、輪郭の曖昧な薄黄色いボールか?どっちにしろ俺の体にその玉が触れると吸い込まれていく。全ての玉が吸い込まれると神様は微笑んで、
『さて最後ですが、ステータスと知識系スキルは念じればなんとかなります。必要最低限のお金や衣服は無限収納に入れておきます。では、別の世界ですが人生をお楽しみください』
と言った。その声を聞いた後、体が薄くなっていき、意識も希薄になっていった。
『さて、行きましたね。あそこまで生まれる世界を間違えた人は初めて見ました。魔法がなく文明レベルがそこそこの世界と、魔法があり文明レベルがまだ熟して居ない世界。西暦換算で1000極年以上生きて来て初めてです。珍しすぎてつい世話を焼きたくなってしまいました。それにちょっと面白そうでしたし……』
神の頂点に当たる最高位神、ユラギの独り言は何処へともなく消えていき、聞いている物は何1つとしてなかった。そして、新戸 風太郎の性器は記憶の片隅にすらなかった事を新戸は知る由もない。
作者はちゃんとパンドラの箱の話を知ってますよ!神ゼウスが地上に初めて送った女性にもたせた箱をその女性(パンドーラやパンドラと云われる女性)が好奇心から開けてしまった。その瞬間箱の中に入っていた全ての悪意や災禍が世界中に散らばって行き、慌てて女性は箱を閉めた。そして箱の中に残ったのは希望だったという話ですよね!あれ?違ったっけ?