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睡眠同好会  作者: どん
逢川侑
2/2

これは、いつの記憶や?


木がうっそうと生い茂る森にいた。様々な野草が生えており、種類から季節は夏だろうと推測できる。

森は、山頂まで綺麗に舗装されており、子供だけでも迷わずに登れるようになっていた。


オレは、先頭をきってずんずんと進む。


後ろには、眠そうに目を擦りながら、必死についてくる、双子の兄妹がいた。

やえことかえで、オレの弟と妹である。


そうや、ここは大阪の家(じっか)の裏山や。


ふと、木の間から俯瞰して特徴のある倉庫の屋根が見えて、気がつく。

小学校の時はしょっちゅう走り回っとったから、もしかしたら小学生の頃の記憶かもしれへん。


じっとりとかいた汗を拭いながら後ろを向くと、不満げな声で、「もうどれだけ歩いたん?これ以上、かえちゃんあるけへん……」と言ってくる。これに「やっちゃんもーーー」と付け加えるように続く。


辺りはまだ薄暗く、三人とも髪がボサボサで、起きてすぐ山に来たのだと分かる。子供だけでも登れる山といっても、寝起きで山登りはかなりしんどいことだろう。


それに対してオレは、「もうすこしやで!!かえで、やひこ!そこのてっぺんや!!」と返す。


すかさず「えーーーーー!!」「うそや!!」と抗議がおこるが、ほんまに目と鼻の先が山頂であった。


ずっと細い一本道が続いていたが、山頂はちょうど団地の公園ぐらいに、大きく開けた場所になっている。

入ってすぐに看板が立ててあり、そこには達筆な字で『逢川の山頂』と書いてあった(これは多分じいちゃんの字や)。


オレは走って展望できるところまで行き、転落防止の柵に乗り上げ、大きな声で叫ぶ。


「見てみい!!!!かえで!!やひこ!!」

登った感覚より、かなり高いところや。そこでは町を一望できた。


遅れて追い付いたかえでとやひこは、オレと同じように柵に乗り上げ、そして、目を見開きながら、目の前の絶景に息を飲んだ。


ちょうど、朝日が登るところだった。

燃えるような真っ赤な光に、飲み込まれていく町の様子を見ていると、まるで1秒がずっと引き伸ばされているような感覚に陥る。きっとご先祖様は、この風景を見てここに家を建てたのだろう。


せや、日の出を二人に見せたかったんや。


二人の顔を横目に見ると、さっきまでの疲れが吹っ飛んでいる様子に、笑いが込み上げてくる。

ほんで、連れてきて良かったって、心から思った。







たしか、これは…

「っは!!!!!」


「あ~ら、起きたのねぇ♥」


まるで冷水を浴びたかのように、急激に意識が浮上する。ばっ、と目を開くと、視界いっぱいにある人の顔が映った。


「ぎゃああああああああ!!!化け物!!!!」

「だれが化け物よ!!!」


思わず叫んでしもーたけど、オレは悪くない!!


目の前にいたのは、この海棠学園でも一番の変人の先生、保健室の綾香先生やった。


綾香先生は、187センチという巨体に、かなりの脂肪を持つ。顔は完璧に中年のおっさん。背がかなり高いことを除けば、そこそこ普通にいそうな人なのだが、格好がかなりおかしい。


まず、ピンクのノースリーブのフリフリのブラウス。すでにあかん。

見事な二の腕がさらけ出されとる。その太さは、二リットルのペットボトルを思い起こさせる。


次に、黒のタイトスカート。あかん。ぴったりとラインが分かる。これはセクハラで訴えても生徒側の圧勝や……。

スカートの下は、薄い黒タイツに、ピンヒール。あかん。

ちょっと足がしまっとるのが、かなりやばさを倍増させとる。


髪は、茶色のロングで、毛先が少しカールしている…かつらや。あれ、3日に1回はズレてんねん。ま、気づいたらオレが直しとるからな!あんまりバレとらんはずやで!


そして顔は、バサバサのつけまつげに、真っ赤なルージュ。油もん食ったんかと思うほどてかてかに光っとる。

これ、おっさんの顔やで。想像しただけでもあかんやろ!


この顔が起きたら目の前にあってみ?

化け物やと思うやろ!!!!


「あ、なんや、綾香先生か~」

「そうよ!まったく、失礼な……ぶつぶつ…」


ここは、保健室か。自分がベッドにいることに、今更ながらに気がつく。真っ白なシーツが目に痛い。あれ、なんでオレ保健室に居るんやっけ……

「あっ!!せや!!ヘアピン!」


「ヘアピン?」


綾香先生は片手を頬に当てて、首を傾げる。

あ、かつらが……


って、ちゃう!ヘアピンが無い!!ヤバイ!!!


いつもつけている右側の髪の毛をいじりながら、布団をひっくり替えしてみるも、まったく見つからへん。まさかあの時落ちたままか~!?!?


ベッドの下を見たり、近くの引き出しを開けてみたりするも、全然あらへん。綾香先生の静止の声が聞こえるが、無視や無視!


「ちょっとグラウンド行ってくるわ!!!」


勢いよくベッドから飛び降りると、急いで扉に向かう。急いで取りに行かんと!!!


しかし、扉に手をかけるよりも前に、

「ちょっと、あなた倒れたのよ!」

と言われながら、あっさりと捕まえられる。


じたばた抵抗してみるも、まったく無駄やった。

ぼすんっ!とまたさっきのベッドに返される。

綾香先生めっちゃ力強いやん……


「…あのヘアピン、こっちに引っ越して来るときにおかんに貰ったやつやねん。」


「あら、そうなのね…」


「せや。オレは将来家の仕事継ぐことになっとるんやけどな、ちゃんと人を助けられるようになれ、って。約束の証なんよ。こっちきてから肌身離さず着けとったんやけどなぁ…」


ごろん、とベッドに転がり、目を閉じる。

遠くで、綾香先生がぎぃい、と椅子に座った音が聞こえた。


「元気にしとるかなぁ、やひこ、かえで…」

あかん、思い出して泣きそうや。ぐっ、と眉間にシワを寄せる。


「…ねぇ、君が探してるのってこれ?」


ふ、とベッドが右側に沈む。あれ、先生は向こうに行ったはずや。

誰やと思いながら目を開けてみると、そこにはさっきまではいなかった男子生徒が座っていた。


オレンジ色のヘッドフォンをつけ、男子にしては少し長めの薄茶の髪の毛は、左側が少し上がっている。

にやにやしながらこちらを見る男は、かなり整った顔をしていた。


「ほら」と言って、右手を差し出してくる。そこへ視線を向かわせてみると、その手には、まさにいま自分が探していたヘアピンがあった。


「これや!!!!!!!!!」

「うわっ」


ガバッと勢いよく起き上がり、目の前の両肩をガシリと掴む。

ピンク色の、おおよそ男子用では無いヘアピン。


これやこれ!


「いや~!おおきに!探しとったんよ!」

そう言いながらヘアピンを受けとる。……ん?


「な、なんや?手ぇ握ってきて」

ぐ、ぐ、と離そうとするが、ひょろそうに見えて割と力が強く、離れへん。


「いや、別に。……ねぇ、名前なんて言うの?」

なんか徐々に近づいてきてへん?気のせいか?

さっきよりも強めに抵抗を試みるが、無意味に終わる。うそやろ………


「逢川…逢川侑や」

「へぇ、たすく?珍しい名前だね?」

怖い!!!!ずっとにやにやしとるのがさらに!!


もしかして、こいつ……

「ホモ…」

「違うから」

メリッと顔面にパンチをしてきた。

痛いねんけど!!オレは病人やで!!!!


後ろに倒れ、ボスンと枕に頭が沈む。

そのままの状態でキッと睨むと、真顔で

「ホモはこっち」

と言いながら、綾香先生を指差した。

すると、語尾に被るようなスピードで

「だれがホモだ!!!!」

と、少し遠くから聞こえる。地獄耳や!!!


「あはは、僕は野干紺。3年2組だよ」


真顔から一転、すぐに笑みを取り戻した彼は、そう言いながらベッドから立ち上がり、数歩歩いた先のソファーに座り直した。


こちらと向き合うように設置してあるそれは、綾香先生の趣味であろう、ピンクと白のチェック模様で、所々レースがあしらわれている。

目の前の端正な顔立ちの男にはあまりにも似合わず、少し笑ってしまう。


オレは、またゆっくりと起き上がると、彼に視線をあわせて口を開いた。


「先輩やったんやな。よろしく!にぼし先輩!!オレは、2年5組や…って2組?!?にぼし先輩めっちゃ頭ええんか!!!!」

「ええ…?そんなことないよ…って、にぼしじゃないんだけど!」

「ええやん、にぼし。オレにぼし好きやで」

「なにそれ!理由になってないんだけど……」


にぼし……と微妙な顔をしながらぶつぶつと呟く先輩。

あれ?さっきにぼしって言ってなかったか?


それにしても、2組とは驚いた。オレら5組からしたら、雲上の人々が集うクラスや。

その上には学年のトップ15人で且つ、全教科の平均点が450以上であることが条件となる1組があるんやけど、あれは神々の集いであると5組では畏怖されている。


「優等生のにぼしがなんで保健室におるんや?」

ちらりと時計を見てみると、もう2時間目の途中であった。

「授業始まっとるで?行かんでええの?」


首を傾げながら先輩に問うと、彼は少し困ったように笑いながら、

「いまにぼしって言ったよね…」と少しこぼして、(あっやべっ)

「実は今腹痛で授業抜けて来たんだよね~」と言った。


なるほど確かに、少し顔色が悪そうや。


「そうなんや。先輩か弱そうやしな………」

「そうそう。俺か弱い~」


へらへら笑いながらお腹を擦るにぼし先輩を布団に行かんでええんかな、と思いながら見ていると、

その後ろにいつの間にか移動していた綾香先生が、手に持っていた書類で先輩の頭を軽くペチンと叩いた。


「嘘よ、嘘。この子サボってんのよ。」

「うわっ、せんせ~暴力反対…」

「うそやったんかい!!!」


わざとらしく大袈裟に頭を抱えながら顔を歪ませるにぼし先輩。

確かに、さっきめっちゃ力強かったもんな!

あっさりと騙されたわ!!

もう、この子は………と言いながらぷりぷり怒る先生。唇をつきだして頬を膨らましている様子は、トラウマになりかねない絵面や………

「あっそうだわ」先生はそう言うと、くるっ、とこちらを向いた。いきなりのことでひぇっと小さく悲鳴をあげてしまう。


「逢川クンね。今日は倒れたんだし、帰ったほうがいいわ」

「げぇ…………せやなぁ、今日なんや体調悪かったし」


いや、本当は今日だけやない。最近どうも力が出えへん。さっき先輩の手を振り切れなかったのも、前までではありえへんことや。

うーん、と手を組ながら考え込む。

すると、にぼし先輩がオレの制服をどこからか引っ張ってきて、

「ほら、ずっと練習着じゃん、とりあえず着替えたら?」

と渡してきた。


「おおきに…いや、なんでここにあんねん…部室に置いてある分持ってきてくれたんか?」


ぐいっと汗臭いTシャツを脱ぎながら先輩に問う。


「あはは、うん。荷物も持ってきたから、今日はもう帰りなよ」


そう言いながら、先生の机の方を指差す。着替えながら目だけでそちらを見てみると、ソファーで隠れてよく見えなかったが、先生の机に立て掛けるように荷物が置かれてあるのがわかった。


「うわ、おおきに!大荷物やったろ」

「うん。めっちゃ多かった…何入ってるのあれ…ま、見れば何となく分かるけどさ」


恐らく持ってきてくれたのであろう先輩は、運ぶときに凄い苦労をしたのだろう。

ちらりと荷物をみて、思い出したのかサッと顔色を悪くした。


色々な部活に助っ人にすぐ入れるようにオレの荷物は、常にパンパンの状態になっている。毎日が夏休み前の大荷物を抱える小学生の気分や。


ラケットに数種類のボールに、様々な部着や運動靴。柔道着も入っているそれは、登山部のようなリュックサック入っているが、容量オーバーなのは誰の目にも明らかやった。


「オレ、色々な部活に引っ張りだこやねん…いや、オレはタコや無いんやけど…」

「いや、分かるわよ」

綾香先生の突っ込みが入る


「あれ?じゃあ噂、君のことだったんだね。弱小運動部しかない海棠学園に舞い込んだ救世主ってやつ」

「えっ、噂なん?なんや照れてまうがな…」


にぼし先輩の言葉に、体を少しよじり頭をがしがしと掻いて照れ臭さを紛らわす。

救世主やて、救世主~!

確かにたまにサインを頼まれることがあったんやけど、そんなこと噂になっとったんかぁ…


「救世主さん、疲れがたまってるわよ?助っ人として部活に出ているのって、どのくらいの頻度なのかしら?」


片手を頬に当てながら、心配そうに質問してくる綾香先生。

シャツのボタンを閉めながら、ここ最近のことを思い出す。


「せやなぁ、毎日遅くまでしとるわ…」

「えっ?助っ人でしょ?朝練もそうだけど、助っ人ってそう毎日行くものなの?俺の認識では試合とかに顔を出すだけって感じなんだけど」

「あかんあかん!!試合だけ出るやこ、上手く出きるわけないやん!!」

「そんなもんなの?」

「せやで!それに、練習相手になってくれっていってな?よく誘われるんや」

「ええ……一人にそんな過酷すぎるでしょ…」


そうか?

顔を両手で覆いながら後ろにのけぞり、絶対むり…と呟くにぼし先輩。

この先輩いちいちオーバーリアクションやなぁ…

シャツを着終わり、ズボンに手をかける


「昨日の日曜日はなにしてたのかしら?」

「あぁ!昨日ならバスケ部の練習試合に行っとったわ」

「えっ、あれ県外だったでしょ?!」

「せやで」


綾香先生の質問に答えると、にぼし先輩から驚きの声が上がる。

県外に試合に行くことやったら、ざらにあるのだ。


「先週の土曜日もテニスで遠くに行ったで?」

着替え終わり、練習着を畳みながらそう言うと、

「あらら…それは疲れがたまるのも仕方がないわよ…」

と、綾香先生がまた頬に手を当てて、ふぅ、と息を吐いた。

プリントが宙を舞う。


それを落ちる前ににぼし先輩が拾うと、先生に渡して、

「せんせー、彼、やっぱり…」

「うん…そうねぇ」


と、意味深にこそこそと話始める。なんやなんや?

練習着を隣の棚の上に置くと、ベッドからおり、ソファーに近づく。


「何の話しとるんや?」

「逢川ちゃん…あなたきっと、休みが足りてないのよ。体が悲鳴をあげてるわ。このまま同じ生活を続けてたら、きっとまたすぐ倒れるわよ?」


二人の前まで来てから問うと、綾香先生はオレの両方を掴み、覗き込むようにしてそう言った。

そうやな…綾香先生の言葉に、ぐっと押し黙る。

周りにいらん迷惑をかけるさかい、倒れるのはいやや。


「それに、助っ人なんでしょ?なんで君が部活の人より頑張るのさ?」


心底分からないといった様子のにぼし先輩。

ソファーに腰掛けたまま、上目遣いでこちらの様子を見ている。

いいや、それは違うで!


「オレだけやない、部活の人も同じように頑張っとる!」


自分だけやない。しかも、本気でその競技に挑んどる人らに混じって、半端もんのオレがやらせてもらうんや。

中途半端に練習やこ、出切るわけがない。


「そうなの?」

「せや!それに、さっき話したやろ?」


「?」二人ともきょとんとして、目を見合わせる。


「おかんと約束したんや。人の助けになるって。今、オレに出来る人助けゆーたら、こうする以外に想像つかへん。ほら、助っ人って、助ける人いう意味やろ?」


「たっちゃん…」

「たく…」


はにかみながらそう言うと、

二人が感動したようにこちらを見てきた。

たっちゃん?たく?オレのことか??

突如として変化した呼び名に戸惑っていると、綾香先生はオレの肩に置いていた手を頭にのせ、にぼし先輩はソファーから立ち上がり、同じく頭に手をのせると、わしゃわしゃと勢いよく撫でてきた。


「いや、なんでやねん!!いきなり過ぎて分からんのやけど!」


「うっうっ、たっちゃん…人の助けになりたいって言って、自分が倒れたら本末転倒じゃないのよ~!」


時折鼻を啜りながらそう話す先生。本末転倒ってなんや?


「たく……君ってやつは……!」


にぼし先輩は目をぎゅっとつむり、梅干しみたいな顔になっている。ん………?にぼし……?梅干し………?






頭わしゃわしゃは数分間続いた。

もうボサボサや。少し酔ったんか、ふらふらする。


「それにしても、少し頑張りすぎね。休みの日は一週間に1日でも、とったほうがいいわ」


先生は椅子にドス、と座ると、真剣な顔をしながらそう言ってきた。真剣な顔すら面白いんやけど、それは置いといて、


「せやなぁ、今日みたいなことになるから、オレもそう思うわ。今日から一週間に1日は休むようにするわ!!」

「そうねぇ、そのほうがいいわよ」

「おう!今日はありがとうな!」



きちんと休む!そう意気込んでいると、

突如保健室に、第三者の声が入ってきた。


「坊っちゃん~!」

「ばあや!」


ばあやは、オレの身の回りの世話をしてくれる逢川に遣える元気なおばあちゃんや。いつも綺麗に着物を着ており、白髪を頭のてっぺんでおだんごにしとる。

いつもはオレに厳しく、すました顔をしとるんやけど、今見えたばあやは、珍しく焦っていた。

ん?なんでここにおるんや?


「学校で倒れたとは何事ですか!ああ、あれほど休めと言ったのに朝練に行ったのですね!皆さんに迷惑をかけて!

このばあや、電話が来た時心臓が止まるかと思いましたよ!」


ああ、綾香先生が呼んだんやな、と一人で納得。

ばあやは、焦っていた顔に、どんどんと怒りを滲ませると、ずんずんとオレの前まで来て、こめかみをぐりぐりしてきた。痛い!


「ごめんて!今日はもう休むから!!」

「そう言っていつも休まないでしょうが!ほら、今日は逃がしませんよ。あ、先生。今日は大変お世話になりました。」


オレを見る顔は般若の様なのに、先生の方を向くときは笑顔を忘れへん。プロや。

首根っこを掴み、あの大量の荷物を片手で持ち上げると、(ひえ、とにぼし先輩の悲鳴が聞こえた)ずるずると引きずりながら保健室をあとにする。


「失礼しました。」

「堪忍ーーー!!!」


抵抗するも叶わず、オレはそのまま外に止めてある車に乗せられ、学校を後にした。運転はばあやである。かなりワイルドな運転に、車の中でオレは今日二度目の失神をした。











一方、逢川が去ったあとの保健室にて、残された二人は呆然と立ちすくんでいた。


「嵐のようだったわね……」

と、綾香。早めに電話してしまったけれど、よかったのかしら…とぽつりと呟く。


「あはは、そうだね…それに」

「?」

「あの様子だと、普段から休むように言われてるよね。また、今日のことも忘れて走り回るんじゃないかな…」


「そうじゃないの!!!」


野干の言葉に、綾香はああ、やってしまった、と天を仰ぐ。


きっと野干のいうように、彼は忘れてまたしばらくして倒れるだろう。

無理やりにでも休ませるように、放課後保健室に週1で来るように約束をするべきだったのに!


「まぁ、様子見かなぁ。倒れたの初めてっぽいし。

もしかしたら今回のことで反省して休むようになるかもしれないしね」


「そうね、はぁ…っていうか貴方早く教室に戻りなさいよ」















野干の希望もむなしく、数日後同じように倒れた逢川が保健室に運ばれてきた。

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