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短編集1

作者: 望月月華

 


 華鏡(かきょう)は困っていた。


 トイレに行きたい。



 いつもならば、15分おきには必ず部屋の前の廊下を見廻りで通る筈のこの城の兵士が、今日ばかりは居ないのだ。


「このままじゃ1、いえ2時間程経てば限界に近付いてしまう気がしますね」


 心の中では焦っていたが、一国の姫としておくびにも出さない。


 第三皇女である彼女が、自国の城、姉であり第二皇女でもある人の部屋で監禁状態に陥っている理由を、気をまぎらわす為に探ってみた。


 * * *


 帝国の皇太子として生まれた彼、現レオナルド皇帝陛下──は大人になるにつれてその才覚を惜しみなく発揮し、いつの間にか、『世界の裏側にしか、彼を知らぬ国は無い。』と言われる程に勢力を伸ばし、領土拡大していった。




 しかし、才能に恵まれた彼は与える、と云う事を知らなかった。

 欲しいものは奪い尽くして手に入れようとした。


 その暴虐は、実の親でさえも心労が祟り、早死にしてしまう程だったのだ。



 だが、帝位を継ぎ成人した後に彼は生涯を捧げても良いと思うとても珍しい銀髪のとても美しい女性に出会った。


 だが、彼女は遥か東の巫女であったのだ。


 勿論、彼女を巫女として讃えていた人々は彼女を連れ去ろうとした事を許す筈も無く、争いが起こった。

 彼女の説得も虚しく、沢山の血が流された。

 巫女としての自分と引き換えに、多くの民を救う事を決意した彼女の名は槻匡(ききょう)と云った。


 大勢の民が嘆き悲しんだが、彼女は嫁ぐ迄の準備期間として1ヶ月の暇を貰い多くの人の悩みを解決し、後継者を探す等、巫女の仕事をやり遂げた。


 海を渡り、皇帝のものとなった彼女は、3人の娘を産んだ。



 第一皇女の名は桔梗(ききょう)、母親の銀髪に、父親の黒髪が少し混ざった様な髪色に、父親に似た顔立ち。

 母親に似て親切ではあったが、自由奔放と云う言葉が似合う、悪戯っ子で聡明だった。


 第二皇女の名は鏡華(きょうか)、父親譲りの黒髪に、母親にとてもよく似た顔立ち。

 どちらかと云うと父親に似て、人見知りが激しく余程仲が良くなければ自分の事を進んで話そうとせず、2つ年が離れた妹と行動をともにしようとする。姉妹の中でも、随一の頭脳を誇る。

 時として、父親の様な冷徹な判断を降す為、中途半端に腹が黒い者や、兵士には恐れられている。


 第三皇女の名は華鏡(かきょう)、母親譲りの銀髪に、母親に似た顔立ち。

 母親に似て、争いが苦手で一見おしとやかだが、話してみると意外とフレンドリーで気さくな性格。朗らかで、彼女が居ると場が和やかになる。



 彼女達の待遇は、母の名の下にしか良い様にされなかった。


 妻は夫を愛さず、娘達を愛した。



 夫は実娘を愛さず、妻を愛した。


 そう──、娘達の区別が髪色と顔立ち以外ではつけられない程に。


槻匡は晩年、不治の病によって身体を動かそうとすると深夜も眠れない苦痛に苛まれる事となった。




「一度でも神に仕えた身で、あったのだから」

と、槻匡は嘆かなかった。




「好きでもない(ひと)の処に嫁いで良かった事は三個あったわ」



「一つは、娘の顔を見れた事」

悪戯っぽく微笑んだ。



「もう一つは、娘達が巫女の宿命を背負わなくても良い事」

置いてきた人々を思い出し、哀しみを湛えた目を伏せる。



「最後は、(みな)の記憶から消えてしまったあの人の──白い手足も、柔かな髪も、顔も、表情も、仕草も、流れる様な澄んだ声も、笑い声も思い出せたの!」

パッ、と花が開いたかの様に顔を綻ばせて笑う。




 彼女が閉じ込められているのは、その一国の城の8階の中庭に面した部屋と

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