告白
「それでね~」
「ハハハッ……」
結論から言えば、ウキ江はいた。やはりハトローは上手くやっていたのだ。オイラは彼女を見るや否や、それまでの疑心暗鬼を一切忘れ、未来のガールフレンドの元へと一途駆け寄った。彼女と会えなかったこの一ヶ月、一日たりとも欠かさずに温めてきたこの想いを今ここに伝えようと相対する。
だが一方で、そんな意気込みを以ってしても生まれながらの性は厄介なもので、極度の上がり症は肝心の言葉を胸の内に押し込めてしまい、ここに至るまでの勢いをもすっかり削いでしまった。結局、なかなか踏ん切りのつかぬまま、彼女の話をただ漫然と聞きつつ、その機を窺う他になかった。
「……」「……」
程なくして訪れた話の凪、いつもならば沈黙を埋めようと躍起になるこの場面、今日に限っては好機だった。咄嗟に思う、今この瞬間を逃してはならない。臆病な自分を必死で鼓舞する。きっと大丈夫、なるようになるさ、ケセラセラ――オイラは心の奥底から一つ大きく深呼吸をすると、
「……あのっ!」
「急にどうしたの……?」
声を張り過ぎてしまったため、少し彼女を驚かせてしまったようだ。ハッと目を見開いてこちらをまじまじと見つめる彼女に、オイラは募り積もらせた夏色の恋心を思い切って打ち明けた。
「ウキ江さん……君のことが好きウキ!」
「良かったらその……僕と付き合って下さいウキ!」
「……」
彼女は黙りこくったまま、下を俯く。
(やってしまったウキ……)
何とも言えない微妙な空気に事の不成を悟る。オイラの初恋は儚くも散った。このまま消えてなくなりたい――茫然自失と自暴自棄のハイブリットに失恋の後味を噛み締める。しかし非情な現実は相変わらずオイラの眼前に横たわる。如何ともし難いこの状況を打開するべくあれこれ思案していると、意外にも彼女の方が先に口を開いた。
「気持ちは嬉しいけど―…」
「負債を返すまでそういう気分になれないかも……」
申し訳なさそうに言葉を並べる彼女とは対照的に、オイラは口をつぐんだまま固まっていた。
「その時になってもまだ私を好きでいてくれるなら―…」
「だからしばらくはこのまま仲の良い友達として……」
オイラは静かに頷いた。そうする他に仕様がなかった。その後、改めて話すような事柄も見つけられぬまま、次の約束を取り付けると、今日は解散の運びとなった。
一人裏山を下る帰り道、すっかり早くなった斜陽を眺めながら、生かさず殺さずの我が身をひたすらに憂う。地平線上に続く真っ赤な夕焼け、明日晴れたらいいな――漠然とそう思うにつけ、オイラの初恋は不完全燃焼のまま、一先ずの結末を見たのであった。




