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赤のケッツヒェン~邪神の思惑が絡む世界で~  作者: たきしむ
第二章 自由都市リベルデ・ハイト編
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閑話3 五凶星会議

肩書きがいいわりに、影が薄かったあの人が頑張ります。

 





 これは華雪がルークから力を譲渡され、ベッドの上で寝た直後ぐらいの話である。






「それで、魔王様のお話ってなんだろうね」



 金髪にピアスをしていてヘソ出しルックの女性は隣の女にそう話しかける。


 青がかったくせのないストレートな髪を腰まで伸ばしている、清楚な女性は首を傾げた。



「さぁ?あの城入りした方達のことではありませんの?」



 屍鏡の城の中で最も大きい会議室の円卓に彼女達は着席していた。


 数分前に五凶星全員に会議室に集まるように屍鏡から通知が来たからだ。



 城内に勤めていた二人はすぐにこの場に来れたが、他の五凶星は来るまでにもう少しかかるだろう。



 呼び出した本人である魔王こと屍鏡もまだ来てないので、彼女達は急な呼び出しの内容を考えて暇潰しをしていた。



「えぇー。アタシ、あいつら好きじゃない」


「フラウ!魔王様の決定に逆らうつもりですか?」


「そういうつもりはないけど、個人の感情は別でしょ?

 大体、私なら嫌いって言うだけで済むけど、クリスなら手を出してもおかしくないよ。

 アイリスもそう思うでしょ?」


「それはそうですけど・・・・・・」



 アイリスが答えに困っていると、扉が開いて、更に二人の女性が入ってきた。



 一人は褐色の肌に多数の傷跡をさらけ出すような、ビキニや下着に近い布しか纏ってない野性的な雰囲気を出している。


 もう一人は黒髪を頭の左右で団子にし、魔法使いのようなローブを着込んでいる。



 どちらもタイプこそ違うが、見目の良い女性で、それは先に来て座っていた女性達も一緒だ。


 どの女性も人目を惹く容姿をしている。



「遅かったね。ミューズ」


「仕事が大変でな。

 あーもう!魔王様の命令がなければ、あんな奴らすぐにでも殺すのに!!」



 ミューズと呼ばれたアマゾネスの女戦士のような出で立ちの女性は頭を掻きながら、王座の左隣に座る。



「また"勇者一行"ですか?シャル」


「ええ。お恥ずかしい話ですが、あのような方達の相手をしたのは初めてで、私もミューズも困っているのです」



 残った女性ーーーシャルは入口に一番近い席に着き、長いローブの裾で口元を隠して困ったとばかりの態度を取る。


 ミューズも不機嫌なのを隠そうともしないで腕組みをして、顔を歪めていた。



「勇者ってことは、魔王様を倒そうとする奴らってことだろ?

 なのに、なんで魔王様は殺しもせずに手助けしてるんだ?」


「それはね、彼らにはまだ生きていてもらわないと困るからだよ」



 誰も居なかったはずの玉座にゆったりと腰かけた屍鏡がそう話す。


 いつもと変わらず仮面を被った彼は、慌てて立って臣下の礼を取ろうとする彼女らに、手を振ってそのまま座っているように指示した。



「そのままでいいよ。時間もないからね。

 みんなも揃ってるようだし、早速始めて行こうか」


「魔王様、まだクリスティーナが来てないようですが」



 序列第五位のシャルが申し訳なさそうながらも、そう口を挟んだ。



「ああ。彼女は来ないよ。だって死んじゃったから」


『えっ!?!?』


「白、あの写真を」


「かしこまりました」



 驚く彼女達と対照的に、屍鏡は左斜め後ろにひっそりと立っていた白にそうお願いした。



 白も準備は出来ていたので、慌てることなく、写真をスクリーンの役割を果たす魔法道具に写し出す。


 そこに写し出されたのは、みんながよく知っている人物だった。



 しかし、見慣れた姿ではなく、変わり果てた姿だ。



 全身に直径五センチほどの穴をボコボコと開けて、中身である骨や内臓などがほぼない状態だ。


 穴が空いている場所に例外などなく、下は足の甲から上は顔まで様々な場所に空いている。



 それを見て、それぞれ口元を手で抑えた。


 こんな酷い状態の死体など見たことなかったからだ。



「クリス、ティーナ、ですの?」


「これは酷い・・・・・・」


「クリスがこんなことになってるなんて・・・・・・」


「魔王様、これは誰がやったのですか」



 クリスティーナの突然の死に動揺はしているものの、すぐに敵討ちという行為が頭に浮かんだ。



 魔王である屍鏡なら何か知っているかもしれない。


 そう思ってアイリスは問いかけた。



「言ってもいいけど、敵討ちなんてできないよ」


「どうしてですか!魔王様!!」


「僕達が束になっても敵わないし、僕に苦情が来るからやめて欲しいんだよね」



 原型を残して殺したのも、君達に釘を刺すためだろうし。



 そう言う屍鏡に、すぐに犯人が分かった。



「魔王様がずっと待っていた"先生"がやったんだろ?」


「ミューズ!憶測でそういうことを言っては、魔王様が怒りますよ!」



 末席に座るシャルがミューズを咎める。



 一応彼女達の中には序列はあるが、魔王の前では対等に話し合うことが求められているので、第五位のシャルが第一位のミューズを嗜めても問題ない。



「でも、魔王様に苦情が言えるのなんて、あの人達ぐらいじゃない?」


「確かに、ミューズとフラウの言うことも間違ってませんわ。

 魔王様に苦情を言えるのなんて、他には白様と朱音様ぐらいしかおりませんでしたし」


「魔王様、本当のことを教えてくれよ」



 ミューズが乞うように言うと、別にいいけど、と屍鏡が犯人を話す。



「クリスティーナを殺したのは華雪ちゃんじゃなくて、彼女を守っている番犬たちがやったんだよ」


「番犬、ですか?」


「うん。華雪ちゃんには番犬が二人いるんだ。

 彼女のためなら世界だって滅ぼすし、お茶汲みまでするような奴らがね。

 どちらも華雪ちゃんには忠実なんだけど、その分他の奴には容赦ないんだよね。


 今回は華雪ちゃんに手を出したから怒って怒って。

 君達ごと魔人族を滅ぼそうとしたところを何とか止めたんだよ」



 屍鏡は超大変だったという顔をしているが、そもそも仮面で表情が読めない上に、一回目ということでそこまで過激な復讐をする気は二人にはなかった。


 華雪のことも心配だったので、、手早くあの時あの屋敷内にいたクリスティーナの部下と飼われていた奴隷ぐらいしか殺してない。



 もっとも、クリスティーナ派と呼ばれる者達は大体あの場にいたので、全滅に近いが。



「その二人がクリスティーナを殺したと」


「そうだよ。でも、次は僕と白と朱音ちゃんを含めて本当に皆殺しにされちゃうから、敵討ちは駄目。

 これは命令なんだけど、大人しく聞いてくれるとは僕も思わない」



 素直に殺気を出している彼女達に苦笑しながら、屍鏡は言葉を続ける。



「だから、一回模擬戦をしてみるといいよ。


 その二人には勇者一行の担任になってもらおうと思ってるんだ。

 授業の一環ということでお願いすれば、穏便に倒してくれるだろうし」


「ちょっと待ってください、魔王様!

 敵討ちの件は納得しましたが、そこからどうしてその人達があの勇者達の担任になるという話になるのですか」



 シャルが抗議の声を上げる。


 現在、勇者達の担任はシャルが担当していて、ルーク達が担任をするということは、彼女は用済みと言われているようなものなのだ。



「君が優秀なのは分かっているけど、あいつらの相手もいい加減嫌でしょ?

 ずっと忙しくて仕事漬けなのも知ってるし、ここはあいつらを利用するぐらいの気持ちで担任を譲ればいいと思うよ」


「ですが!」


「これも魔王命令ね。

 あまりに二人が問題があるなら、またシャルを担任に戻すことも考えるけど、まぁ、まずないと思ってて。

 君には引き続き、魔法科主任と魔法研究部顧問をやってもらうから。暇にはならないよ」


「でも、魔王様。流石にそれはシャルが可哀想過ぎないか?

 ぽっと出の奴に、しかもクリスの仇に担任を奪われるんだぜ」



 フラウがシャルに助け船を出す。


 しかし、屍鏡は取り合わない。



「僕は実力で選んでいるだけだよ」


「なら、魔王様。アタイ達がその模擬戦で勝ったら、シャルはそいつらよりも実力があるってことで、担任に戻してくれるってことだよな」



 ミューズは挑発的な笑みを屍鏡に向ける。


 例え、相手が誰であろうと気にくわないことは気にくわないと言うのが、彼女の良さであり、欠点であった。



「勝てたらね。


 言っておくけど、闇討ちとかはやめておいてね。

 それは僕の部下という言い訳があっても殺されちゃうだろうし。


 でも、正々堂々と勝負を挑む分には問題ないはずだ。

 勿論、華雪ちゃんに手を出した時点で、僕も黙ってないから、それを頭に入れて動いてね」



 屍鏡が勝てない前提で話を進めているのが、彼女達にはちょっと気分を悪くさせたが、そこは実力主義の魔人族。


 敵討ちでもある二人を倒して認めてもらおうと考えた。



「模擬戦で彼らが死んでも僕は何も言わないから、そこも覚えておいてね」


「分かりました。


 ミューズ、早速特訓です!

 二人を倒して担任の座をすぐに返してもらいます!」


「ああ。アタイもあいつらの相手をできるのはシャルしかいないと思うし、なによりクリスティーナの仇は討たねぇとな」


「やる気になってくれたようで何よりだよ。

 二人が担任になるのはまだ先の話だから、また近くなったら連絡するよ」



 じゃあ、これで解散。



 屍鏡はそう言って、伸びをする。



 やる気満々のシャルとミューズは早速、訓練するために足早に会議室から出ていく。


 フラウはあの二人なら大丈夫だと思って、屍鏡に手を振って出る。



 残ったのは屍鏡とずっと黙って立っていた白、そして五凶星の中で一番冷静に物事を考えられるアイリスだ。



「それで?アイリスは残っているけど、何か聞きたいこもでもあるのかな?」


「・・・・・・魔王様は先ほど、僕達が束になっても敵わないとおっしゃってましたよね?

 そこまで言わせる彼らとは何者なのですか?」



 アイリスはきちんと屍鏡の発言を覚えていた。



 その上で考えていたのだ。


 真の魔王である屍鏡と一人欠けた五凶星、そして相当な実力者である白を合わせても勝てない存在とは何かを。



 屍鏡がホラを吹いているとは思ってないが、そんな規格外な生命体がこの世界にいるとはアイリスには考えられなかった。



「さっきも言ったけど、愛に狂った狂犬だよ。

 彼らには歪んでいる愛を注ぐ、ただ一人の対象である彼女しか見えてない。


 あとは君が考えている通りだと思うよ、アイリス。

 勇者召喚なんて馬鹿げた儀式があるぐらいだ。

 こことは違う世界にいる、生物が僕達よりも絶対に強くないという保証はないでしょ」


「あの方達とはお知り合いなのですよね?

 魔王様もその強い生物がいる世界にいた、と?」



 ここ数百年魔人族を率いている魔王が加護持ちの転生者なのは、彼女達の中では知らない者はいない。


 この世界でも昔から転生者というのはいて、どの種族でも大切にされる存在である。



 その知識と必ず宿る加護は非常に有益で、屍鏡も例外ではない。


 魔王になる運命は初めから決まっていたが、歴代の魔王よりも知謀に優れ、加護による戦闘力の高さは、彼に仕えることができる全魔人族が誇りに思うほどだ。



 彼の機嫌のいい時には、転生前の友人の話をしてくれて、その中で"先生"の存在も知った。


 しかし、おとぎ話よりも現実味がない平和な世界に、この物騒な世界で発生した生物よりも強いものがいるのは普通に考えておかしい。


 そんなにヤバい生物がいる世界が、この世界よりも平和というのはありえないだろう。



 アイリスは自分の推測がどこまで合っているか分からないが、的外れでもないことは確信していた。



「あいつらはね、その世界で産まれた奴じゃないんだよ。

 いや、二郎に限っては産まれた場所はあそこだけどね。


 僕も詳しいことはよく知らないんだよね。

 でも、二人はそれぞれ自分の愛し方で華雪ちゃんを愛していて、彼女を大切にしていることだけは分かるから。


 あと、敵に回したくないほど強いってこともね」


「そう、ですか。

 よほど、魔王様がおっしゃっている先生という方は魅力的なんですね」


「うん。だから、手を出しちゃ駄目だよ」


「クリスティーナは自業自得な部分がありますから。

 それと、魔人族は実力主義なので、負けた方が悪いという見方もできます」


「それぐらい割りきれる人の方が少ないよ。

 僕としては助かるけどね」



 他に質問は?と屍鏡に聞かれ、ありませんと答えたアイリスは一礼してから退出した。



「お疲れ様でした、医院長」



 誰もいなくなったところで白は屍鏡を労う。


 彼は自分の肩をトントン叩きながら、全くだよと呟く。



「こうでもしておかないと、仕事が滞るからね。

 そうしたら、僕が華雪ちゃんの傍にいれないじゃないか。

 そんなことにならないためにも根回しはしておかないと」



 白は知っている。



 屍鏡は身内である魔人族を大切にしているように見られるが、本当は華雪と朱音の周りの奴ら以外はどうでもいいことを。


 魔王の仕事をしているのはその方が都合がいいだけで、魔人族を大切にしたいなどという気持ちではなく、駒は多い方がいいと考えているだけであることを。



 朱音がバラバラの死体で見つかり、その後に華雪が壊れて帰ってきた時に、耐えきれずに発狂した彼をずっと隣で見てきた白は知っていた。






これで第二章が全て終わりなので、少し休憩頂いてから、第三章に移ります。


休憩の間に主要な登場人物(神話生物)の説明一覧を載せたいと思ってます。

(よくよく考えたら、白さんのステータスがなかった)


何か載せて欲しい項目などがありましたら、気軽に教えてください。

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