表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
76/124

第58話~護衛任務とマッドウルフ掃討作戦~

 神影達4人が門に着くと、其所には既に、アメリア率いる冒険者パーティー"アルディア"の3人が待っていた。

 彼女等に合流すると、先ずエレインは、護衛メンバーに神影達"ジェノサイド"が加わる事を話した。


「ミカゲ達が一緒に?」


 普段は迷宮での訓練や依頼を優先している2人が同行する事が以外に感じられたのか、アメリアが目を丸くして2人を見る。


「ああ、せっかくだから俺等も一緒に行こうと思ってな…………駄目か?」

「ま、まさか!そんな事無いわ!」


 声を張り上げると共に大きな胸の前で両手をわちゃわちゃ振り、必死に否定するアメリア。

 神影に好意を抱く者の1人として、思わぬ形で想い人と一緒に居る時間が出来たのだから、それを無駄にするアメリアではなかった。


「ボクも歓迎だよ。心強いし、何より最近の君達は依頼や訓練に出掛けてばかりで、中々一緒に居られなかったからね」

「ん……寂しかった………」


 そう言って2人が神影に擦り寄り、それに気づいたアメリアも、負けじと参戦する。

 ルージュで神影達に会う事こそあったものの、依頼や訓練に出掛けようとしていた2人は、軽く挨拶すると直ぐに立ち去ってしまうため、彼女等は物足りなさを感じていたのだ。


「おやおや、モテるねぇ」


 既に寄り添っていたエレインも含めて4人の美少女に擦り寄られている神影を眺め、エーリヒはニヤニヤ笑みを浮かべて言った。


「いや、先ず動けねぇんだけど………」


 相変わらずの鈍感ぶりを発揮する神影に、リーネはエーリヒにくっつきながら苦笑を浮かべるのだった。



──────────────



 それから暫くじゃれ合った後、彼等は出発した。

 雲1つ見られない青空の中で、自分が主役だと言わんばかりに太陽が光を放っている。


「嘘……もう、レベル70に………?」

「ああ。それなりに高いレベルになっていたから、其処まで上げるのに苦労したよ。それに今後は、レベルアップのペースが一気に落ちるだろうな」


 村までの街道を進む中、彼等は最近の様子について話していた。

 神影とエーリヒのレベルを聞いたアメリアが、信じられないとばかりに目を見開き、両手で口元を覆う。

 オリヴィアやニコル、エレイン達も同様の反応を見せていた。


 別に、レベル70に到達すると言う事自体は、決して不可能な話ではない。だが、そのレベルに到達するには、本来ならば数ヵ月から数年と言う長い年月を必要とする。

 なのに神影とエーリヒは、それを約1週間と言う短期間で成し遂げてしまったと言うのだから、彼女等が驚くのは当然の事だった。


「でも、どうして其処までレベルを上げようとするのですか?」


 リーネがそう訊ねた。


 神影達は気づいていないが、実は彼等は、この時点で勇者を圧倒出来る程の力を有している。

 神影を除く召喚組の中で一番ステータス値が高いのは勇人で、レベル50でオール2500、レベル100で5000になると予想されている。

 だが神影とエーリヒは、レベル70の時点でそれに届くステータス値を叩き出している上に、その内の幾つかは、既に5000を超えているのだ。

 

「勇者様達が何れ程強いのかは知りませんが…………少なくともミカゲさん達は、もう十分強くなったのではないでしょうか?」


 100が上限であるこの世界で、レベル70と言うのは十分な実力者である事を示している。

 そのため、これ以上無理にレベルを上げようとする必要は無いのではないかと言う疑問から、リーネはそのように続けた。


「まあ、リーネにとっては十分かもしれないが………」


 そう言いかけた神影は、少しの沈黙の後に首を横に振った。


「俺にとっては、未だコレでは不十分なんだ」 


 そう言って、神影はそのように思う理由を説明した。


 現時点で使える最新の戦闘機は第3世代のものだが、今後の事を考えると、高性能の機体を使えるようになっておいても損は無い。

 それに、"航空傭兵"と言う天職によって使えるようになるのは航空兵器であって、戦闘機に限定されるものではない。

 つまり、レベルを上げていけば、より高性能の戦闘機を使えるようになると共に、爆撃機やガンシップ、戦闘ヘリと言った他の航空兵器を使えるようになると、神影は睨んでいたのだ。


「………まあ、こんな感じかな」

「成る程、そう言う事でしたか………」


 説明が終わると、リーネは納得したように頷いた。


「それにしても、君には感服するよ」


 不意に、オリヴィアがそんな事を言い出した。


「ボクの見立てでは、君が欲しがっているような航空兵器を使えるようになるのはレベル90から100ぐらいだ。ただでさえレベル70になるまで苦労するのに、それ以上のレベルを目指そうなんて…………普通なら考えられないよ」

「辛抱強い………やっぱり、ミカゲは凄い人だった………!」


 目を輝かせて言うニコルにアメリアとエレインも賛同するが、神影はそれ程尊敬されるようなものとは思っていなかった。

 これまでの生活でも、より高性能な機体を手に入れるためにレベル上げに励んでいたため、彼にとっては、少し難易度が上がっただけに過ぎないのだ。

 

「(まあ、俺の天職が天職だから、そのように思ってしまうだけなのかもしれないがな………)」


 内心そう呟いて苦笑を浮かべた、次の瞬間………


「ギャルルルッ!」

「うおっ!?」


 突然、奇声を発しながら草むらから飛び出してきた黒い影が、神影に飛び掛かる。

 大慌てで屈むと、先程まで神影の頭があった場所で『ガチン!』と音が鳴った。

 あまりにも唐突な出来事に足を止めた一行は、エレインとリーネを守るような陣形を取った。


「い、いきなり何だ!?」


 立ち上がった神影が、黒い影が通り過ぎた方向へと視線を向ける。

 彼の視線の先には、禍々しい色の毛に覆われた狼のような魔物が、赤い瞳をギラギラさせて睨んでいた。 


「マッドウルフか………」

「ウルフ系の中でも、特に狂暴な魔物ね。厄介だわ………」


 オリヴィアとアメリアが各々の武器を構え、ニコルも杖を握り締めて何時でも魔法を撃てるようにする。


「ギャオオオンッ!」


 マッドウルフと呼ばれた魔物が雄叫びを上げたかと思えば、次々に同じものが草むらから現れ、神影達を取り囲む。

 その数は15匹だった。


「成る程、そう言うやり方をしてきますか………」


 そう呟いた神影は、直ぐ様エーリヒに通信を入れた。


《なあ、エーリヒ。結界とかでエレインとリーネの安全を確保する事って出来るか?》

《勿論!》


 そう答えるや否や、エーリヒは後ろに居るエレインとリーネに向けて右手を翳す。

 すると、彼の手から放たれた光がエレイン達を覆い、次の瞬間にはドーム状になって2人を閉じ込めた。


 当然、何の前触れも無く結界内に閉じ込められたエレイン達は驚くが、神影とエーリヒが顔を合わせて軽く笑みを浮かべたのを見て、それが、護衛対象である自分達の安全だけでも確保するための2人の作戦なのだと悟る。


「ギャオオオン!」


 だが、エーリヒが急に動いた事が引き金になったのか、15匹の中でも特に体格の大きな1匹が吠え、それを合図に残りが一斉に襲い掛かってきた。


「やべっ、今ので連中が動き出しやがった…………仕方ねぇ、行くぞエーリヒ!アメリアとオリヴィアは、ニコルを守りつつマッドウルフを潰せ!」

『『了解!』』


 その言葉を号令に神影とエーリヒが飛び出し、アメリアとオリヴィアがニコルの前に出た。

 現時点で戦える5人の中で唯一の後衛職であるニコルは、アメリアやオリヴィアのような近接戦闘には不向きだ。

 そのため神影は、自分とエーリヒがメインとなってマッドウルフを潰し、アメリア達には、仕留め損ねたマッドウルフの始末をしてもらおうと思っていたのだ。


「ギャウッ!」

「ギャオ!」

 

 だがマッドウルフ達は、8匹と7匹と言う2つのグループに分かれ、8匹グループが神影とエーリヒの方へ、7匹グループが"アルディア"の3人の方へと向かっていった。

 

「何てこった、7匹も向こうに行きやがった………!」


 マッドウルフ達の行動が予想とは違った事に、神影は悪態をつく。


「こりゃ、さっさと片付けてアメリア達の援護に行かねぇとな………うおらぁっ!」


 神影は、顔を噛み砕いてやろうとばかりに飛び掛かってきた1匹を、上体を大きく反らす事で避け、そのまま腹に二段蹴りを喰らわせる。

 爪先がめり込み、マッドウルフは悲鳴を上げて胃液を吐き散らし、空高く吹っ飛ばされると、空中でジタバタもがきながら落下してくる。


「………シッ!」


 そして、落ちてきたマッドウルフが地面に叩きつけられる直前、神影は回し蹴りを叩き込む。

 

「グキャッ!?」


 横向きに吹っ飛ばされたマッドウルフは、背後からエーリヒに飛びかかろうとしていたもう1匹に衝突し、地面に崩れ落ちた。


「エーリヒ、止め!」

「了解!」


 神影の指示を受けたエーリヒは、右手に魔力を集中させて紫色の槍を作り出すと、後ろ向きに飛び出す。

 そのままバク宙に移って槍を構えると、折り重なって倒れている2匹のマッドウルフ目掛けて勢い良く投げた。

 オリンピックの槍投げ選手も顔面蒼白な速度で飛んできた槍は、2匹を纏めて貫き、絶命させた。

 

「彼奴、あんな事も出来るのか………おっと!」


 魔力で武器を作り出すと言うエーリヒの技に、戦闘中でありながら感心してしまう神影だったが、横から体当たりを仕掛けてくるマッドウルフに気づき、真っ正面から、魔力によって威力を大幅に上げた拳を叩き込み、マッドウルフの顔面を文字通りに粉砕した。


 チラリと向こうを見れば、"アルディア"の3人が戦っているのが見える。

 自分達よりレベルもステータスも低い3人だが、彼女等も高ランク冒険者であり、冒険者業界においては、神影やエーリヒの先輩だ。

 各々の特技を活かした立ち回りは、その肩書きに違わぬものだった。


 アメリアは長剣で、オリヴィアは紐付きナイフで攻撃を仕掛けてマッドウルフ達を引き付け、詠唱を終えたニコルの攻撃魔法が発動すると、絶妙なタイミングで離脱する。

 それによって2人が巻き添えを喰らう事無く、ニコルの魔法がマッドウルフ達を葬っていった。


 因みに、このような立ち回りが出来るようになったのは、"黒尾"の一件が解決してから必死に鍛練を重ねていたからである。

 神影達"ジェノサイド"の活躍で、やや霞み気味になっている彼女等だが、それでも立派に、依頼の遂行や魔物を相手にした訓練に励んでいたのだ。


「流石だな、やっぱり先輩冒険者ってのは伊達じゃねぇや」


 今でこそレベルで大幅に上回っている自分達だが、やはり冒険者としての経験値は彼女等が上なんだと、神影は実感する。

 

 だが、その表情は、直ぐに焦燥に染まった。何故なら、1匹のマッドウルフが、オリヴィアの無防備な背中に向かっていたからだ。


「オリヴィアさん!後ろ!!」


 それに気づいたリーネが結界の中から声を張り上げ、オリヴィアが後ろを向く。

 そして、血走った眼差しで睨みながら突進してくるマッドウルフの姿に、彼女は怯んでしまう。


「クソッ!」


 神影は両足に集中させた魔力を一気に放出し、砲弾の如く飛び出して両者の間に割り込むが、既にマッドウルフは口を大きく開けており、後は目標に噛みつくだけの状態になっている。

 オリヴィアと共に回避する事も、カウンターを仕掛ける事も出来ないだろう。


「(それなら………もうコレ以外に方法はねぇな!)」


 神影は、何と顔の前に右腕を持ってくると、そのままマッドウルフの噛みつき攻撃を受け止めたのだ。


「ぐぅうっ………!」


 レベル70で、防御面でも高いステータス値を持つ神影だが、そのダメージは予想以上に大きく、食い縛った歯の間から苦悶の声が漏れ出す。


「ミカゲ!」

「………大丈夫だ、オリヴィア。気にすんな」


 悲痛な声で名を呼ぶオリヴィアに、神影はそう言った。


「グルルルッ………!」


 本来とは別の目標に噛みついてしまったマッドウルフだが、そんなの知った事かとばかりに顎に力を入れて首を左右に振り回し、神影の腕を食いちぎろうとする。

 それにより、腕に突き刺さった歯が腕を抉る。


「ッ!………この、犬っコロが!」


 そう言って、神影は大きく開いた口に魔力を集中させ、ドラゴンのブレスのように魔力を解き放った。


「………ッ!」


 そんな予想外の反撃を受けたマッドウルフは、本能で危険を感じ取り、更に力を入れて首を振る事で神影の腕に突き刺さった己の歯を引き抜いて逃げようとするが、空中で反転しようとしたところで放出された魔力の直撃を受ける。

 それによって、そのマッドウルフは悲鳴を上げる事すら出来ずに顔含む体の前半分を消し飛ばされ、残った部分が地面に崩れ落ちた。

 そして口から放たれた魔力は、残された4匹の内、1匹だけを跡形も無く消滅させて着弾し、砂埃を巻き上げた。


「だぁ~、クソッ!あの犬ッコロ噛む力強すぎだろ。ワニかよ?」


 血が流れ出る右腕を振りながら悪態をつき、崩れ落ちた死体を邪魔臭そうに蹴飛ばす神影。

 そんな彼に恐怖を感じたのか、残された3匹は、キャンキャンと、先程の狂暴な鳴き声からは想像出来ない弱々しい子犬のような声を上げながら街道を逃げていく。


「………!この野郎、逃がさねぇぞゴラァ!」


 それを目にした神影は、ソビエト連邦のミグ設計局によって開発された第1世代ジェット戦闘機、Mig-15こと"ファゴット"を展開してエンジンを全開で噴かし、その後を追う。


「あっ!待ってよミカゲ!」


 それに気づいたエーリヒは、アメリア達にその場を動かないように指示した後、大慌てでF-4を展開すると、"展開『カタパルト』"で勢い良く離陸し、神影を追い掛けた。


 2人が展開した機体は、スペック的に大きな差があるため、エーリヒは直ぐに追い付いた。


《クソッ、彼奴等スゲーすばしっこいぞ。機銃が中々当たらねぇ》


 エーリヒが追い付くと、右腕の装甲に装着された2連装の23㎜機関砲と、左腕の37㎜機関砲を交互に見ながら、神影が《僚機念話》で悪態をつく。


《仕方無いよ。だって彼奴等、ウルフ系の魔物の中では特に狂暴であるのと同時に素早い事でも有名から》

《マジかよ………》


 『音速以上の速さで飛んでくる弾を避けるとかチートだろ』と、神影は内心ツッコミを入れた。


《じゃあミカゲ、僕が彼奴等を怯ませるから、その間に掃討する事は出来るかい?》

《さあ、どうなるかは分からんが………取り敢えず、やるしかねぇだろ!》

《確かにその通りだ!》


 そう言って、エーリヒはアフターバーナーに火を入れて速度を上げ、上空で3匹を追い越すと、急降下して3匹を驚かせる。

 そして、怯んだ拍子に3匹が急ブレーキを掛けて動きを止めた瞬間、低空飛行に入っていた神影が、両腕に装着された3門の機関砲による一斉掃射を喰らわせ、瞬く間に3匹を絶命させた。


目標(Target)殲滅(eliminated)!》

《Good kill!》


 掃討を知らせる神影に、何処で習ってきたのか流暢な英語で返すエーリヒ。 

 何故流暢に言えるのかを問う神影にエーリヒが返した答えは、『寝言で言ってるのを覚えた』と言うものだった。


 それから2人は、一旦着陸して機体を解除し、魔石を回収すると、そのままアメリア達の元へと戻るのだった。

あまり戦闘機の描写出来なかった………orz

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ