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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第53話~急成長と第3世代ジェット戦闘機~

オーバーラップ大賞に落ちてしまった………やっぱ賞を貰うのって簡単じゃないな………

 時刻は朝の6時。未だ多くの住人が夢の世界に居る中、ヴィステリア王国北端の田舎町ルビーンへ入るための門の前に広がる平野では、2人の少年が組手を行っていた。


「相っ変わらず、俺等の決着は、つきそうにねぇな…………シッ!」

「そりゃあ、ずっと訓練してると言っても………教え子に簡単に負ける訳には…………いかないから、ねぇッ!」


 その2人とは言うまでもなく、神影とエーリヒである。


 エーリヒの幼馴染みであるアイシスや、その妹のユリシアとの顔合わせをするためにルージュを発つ際、メモだけ残して置き去りにした事について、帰宅後にアメリア達からの説教を受けた日から数日の間、彼等は欠かさず組手を行っていたのだ。


 因みに、ルージュでなくルビーンに居る理由は大きく分けて2つあり、その内の1つは、金の節約のためである。

 "黒尾"討伐の報酬や残された戦利品から、当面の宿代を払える程の大金を手に入れた2人だが、それらを食事代や回復薬の代金に充てようと考えていたため、なるべく金を節約したかったのだ。


 そしてもう1つは、ステータスの向上に繋げるためである。

 幾ら航空兵器を使う能力を持ち、何もしなくても勝手にステータス値が上がる"自動強化"や、レベルアップや鍛練によるステータス向上を促進する"成長速度向上(極)"と言った強力な特殊能力を獲得したとは言っても、それで鍛練を疎かにして良い理由にはならない。

 普段なら戦闘機で相手を葬って解決するが、時には戦闘機を使わずに敵を倒さなければならない事だってあるのだ。

 そのため、少しでもステータス向上に繋げるために活動拠点をルビーンにあるエーリヒの家に定め、先ずは朝一に組手をして、ルージュへは街道を走っていく事に決めていたのだ。


「そういや俺等、ルージュで朝飯食ったら………どうする予定、だっけ!?」

「さあ、ねぇ…………未だその辺りの予定は、決めてない、よッ!」


 神影が回し蹴りからの切り返しで右ストレートを繰り出し、彼の回し蹴りを避けたエーリヒが、二段蹴りで右ストレートを薙ぎ払う。

 通常なら痛みのあまりに悶絶するだろうが、これまで組手を重ねてきた2人には、組手での痛みに対してはすっかり慣れっこになっていた。


「そろそろ終わらせるか…………はぁッ!」

「クソッ………舐めてんじゃ、ねぇ!!」


 特殊能力の1つ、"魔力応用"による身体強化で威力が上がった回し蹴りを繰り出すエーリヒに、神影も同じやり方で回し蹴りを繰り出す。


 日々の生活で格段に強くなった2人の攻撃がぶつかると軽い衝撃波が起き、彼等が立っていた場所は大きく陥没した。


 暫くそのままの姿勢で固まったまま睨み合う2人だったが、やがてフッと笑みを浮かべて足を引っ込めた。


「やれやれ、また引き分けか………」

「今日まで何回も組手をやってきた訳だけど…………まさか、これ程までに連続で引き分けになるなんて思いもしなかったよ」


 何度組手をしても勝敗が決まらないと言う納得いかない結果に溜め息をつき、2人はそんなやり取りを交わした。


 因みに、各々のステータスは以下の通りである。




名前:古代 神影

種族:ヒューマン族

年齢:17歳

性別:男

称号:異世界人、血塗られた死神、無慈悲な狩人

天職:航空傭兵

レベル:65

体力:4000

筋力:3980

防御:3800

魔力:1700

魔耐:1750

敏捷性:4800

特殊能力:言語理解、僚機勧誘、空中戦闘技能、物理耐性、麻痺耐性、魔力操作、魔力応用、自動強化、僚機念話、成長速度向上(極)、展開『アレスティング・ワイヤー』、展開『カタパルト』




名前:エーリヒ・トヴァルカイン

種族:ヒューマン族

年齢:17歳

性別:男

称号:七光り魔術師、無慈悲な狩人

天職:航空傭兵

レベル:65

体力:3860

筋力:3700

防御:3690

魔力:8000

魔耐:8000

敏捷性:4500

特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、全属性耐性、魔力感知、魔力操作、魔力応用、物理耐性、空中戦闘技能、僚機念話、成長速度向上(極)、展開『アレスティング・ワイヤー』、展開『カタパルト』




 組手や魔物の討伐を毎日行っていた事もあって、2人は相変わらず成長を続けていた。

 各ステータス値も急激な向上を見せており、エーリヒに至っては、元から高かった魔力、魔耐の2つ数値が更に大きくなっており、恐らく現地人の中では最強の座に君臨出来る程になっていた。


 そんなこんなで、晴れて2人のレベルが60を突破した訳だが、それによって第3世代ジェット戦闘機が使用可能となり、その事で大喜びした神影が跳ね回っていたのは余談である。


「それにしても、相変わらずステータス値がスゲー上がり方してるよな」

「そうだね、最初に見た時は何の冗談かと思ったよ」


 2人は、染々とした様子でそんなやり取りを交わした。


 たった10程度のレベルアップで各ステータス値がとんでもない伸び方をしているのは、日頃の鍛練は勿論だが、何より強力な2つの特殊能力による補正の賜物と言えるだろう。

 それに、"自動強化"によって強化される割合が更に増えたのだから、尚更だった。


「さて………ミカゲ。何時までもボーッとしてる訳にはいかないよ?今度はルージュまで全力疾走だ!」

「おう!」


 そうして2人は、砲弾のような勢いでルビーンを飛び出し、ルージュへ向けて走り出すのだった。



──────────────



 ルージュに着いた2人がやる事は、勿論朝食だ。

 ギルドで出される食事はかなりのボリュームがあるのだが、意外にも安価であるために、彼等はギルドでの食事が気に入っていたのだ。

 それに何度も利用しているためか、2人は厨房の者達と顔見知りになり、時折サービスされる程になっていた。


「………ところでエーリヒ、あの2人はどうするつもりなんだ?」

「ん~?」


 自分の食事を終えた神影が訊ねると、大きく膨らませた口をもぐもぐ動かして料理を味わっていたエーリヒが顔を向けた。


「んくっ………あの2人って?」

「そりゃ勿論、アイシスとリーアの事だよ」


 料理を一気に飲み込んで聞き返したエーリヒに、神影はそう言った。


 ルビーンにあるエーリヒの家を活動拠点としている以上、2人は必然的にアイシスやユリシアに会う事になる。

 ルビーンに居る間はよく遊んだのだが、何時かは、この世界の情報収集をするためにルビーンを離れる事になる。

 その際、彼女等2人をどうするのかと、神影は気にしていたのだ。


「……………」


 エーリヒは胸の前で腕を組み、深く凭れ掛かった。


 彼としても、せっかく再会出来た幼馴染みと離れるのは嫌だし、国の事情に彼女等が巻き込まれるのは避けたいのだが、神影と行動を共にする事を決めているため、ずっとルビーンに留まって彼女等を守る事も出来ないだろう。


「いっそ、彼女等2人も一緒に連れていけたら良いんだけどね………」

「そうなったら"僚機勧誘"を使えば良いが、その後のリスクを考えるとなぁ………」


 エーリヒの呟きに、神影が苦々しい表情を浮かべてそう返した。


 知っての通り、この異世界において、戦闘機とは正にオーバーテクノロジーの塊だ。

 それが知られでもしたら、王国がどう動くかは言うまでもない。

 神影とエーリヒを王都へと連れ戻し、種族間戦争の戦力として利用しようとするか、城に居た頃は散々彼等を蔑み、理不尽な扱いをしてきたため、その事で2人に復讐される事を恐れ、危険因子として殺そうとするかのどちらかだろう。


 それが彼等2人だけなら話は別なのだが、アイシスやユリシアは、この件については無関係だ。

 そのため神影とエーリヒは、神影の天職をコピーしてアイシス達仲間に加える事で、彼女等も危険な目に遭わせてしまう事を危惧しているのだ。


「どうしたものかな………?」


 テーブルに頬杖をついたエーリヒがそう呟いた時、ギルドの扉が開いて5人の少女が入ってきた。

 その5人とは、盗賊団"黒尾"に連れ去られた女性達の救出を依頼しにやって来た見習いシスターのリーネや、その先輩であるエレイン。そして、エレインと共に"黒尾"に捕まっていた、アメリア率いる冒険者パーティー"アルディア"の3人だった。


 因みに、本来はルージュ住人ではないリーネとエレインが留まっている理由だが、2人が所属している協会は出張医療院のようなものも行っており、黒尾に連れ去られた日は、偶然にも2人がルージュへ向かう日だったのだ。

 そのため、彼女等は此処に留まって仕事をしていると言う訳である。


「おはよう、2人共。今日も早いのね」


 この5人を代表するかのように言うアメリアに、神影達も挨拶を返した。

 この数日間、ずっと交わし続けているやり取りである。

 

「ミカゲ……おはよ………!」


 すかさずニコルが神影の隣に腰掛けて猫のように体を寄せると、神影の腕を抱き、その小柄な体型に似合わぬ豊満な胸を押し当てる。

 相変わらず積極的なスキンシップを行うニコルに戸惑う神影を見て、エーリヒは苦笑を浮かべた。


「やれやれ、ニコルのスキンシップは相変わらずだね」


 そう言いながら、ニコルとは反対側に腰を下ろすオリヴィア。

 それにより、神影は2人に挟まれるようになっていた。


「なあ、オリヴィア。其所に座られたら出られないんだが…………?」

「別に良いだろう?ボクだって、君と朝のスキンシップが取りたいんだから」


 2人に挟まれた事で席を離れられなくなってしまったため、退くように言う神影を一蹴するオリヴィア。

 更には、背後にアメリアとエレインがやって来ると言う、正にハーレムと呼ぶべき空間が出来上がり、この数日の間に食事等を通じて仲良くなった他の冒険者達からは、冷やかしの言葉や口笛が飛んでくる。


「はぁ………相変わらず見せつけてくれるねぇ、ミカゲは………取り敢えず、F-4Eでクラスター爆弾ぶつけても良いかい?」

「いやいや、駄目に決まってんだろ!お前は俺を爆殺する気か!?」


 目が笑っていない笑みを向けられた神影が、真っ青に染まり上がった顔を左右に振る。


 そんな中、ただ1人蚊帳の外になっているリーネは、その場で繰り広げられる光景に苦笑を浮かべるしかなかったと言う。



──────────────



「さぁ~て、やるぞ!」


 時間は流れ、今は午前10時。

 朝食を終えた神影とエーリヒは、最近使えるようになったアメリカのマクドネル社によって開発され、航空自衛隊やその他の国々でも採用されている戦闘機、F-4こと"ファントムⅡ"を展開してヴィステリア王国上空を飛び回っていた。

 因みに今2人が纏っているのは、航空自衛隊で採用されているEJ改である。


《ミカゲ、今日は随分張り切ってるね》

《そりゃそうさ!何せ初めての空中戦ドッグファイトが出来るんだからな!》


 "僚機念話"を使って話し掛けるエーリヒに、神影から嬉しさに満ちた返事が返された。

 神影は、右腕に装着されたM61バルカン砲を左手に打ち付けたり、エルロンロールを繰り返したりして、楽しみで仕方無い事を体全体でアピールしていた。


「楽しみだなぁ、空中戦………!」


 期待に満ちた眼差しを前方に向け、神影はそう呟いた。



 彼がこんなにも機嫌が良いのは、今から10分前の事だ。

 朝食を終え、今日受ける依頼を探していた神影は、このヴィステリア王国の南端の山岳地帯にやって来ると言う、翼竜のような姿をした魔物、ワイバーンの群れ討伐の依頼書を見つけたのだ。


 普段はゴブリンやオーク、それから単眼で二足歩行をする大型の魔物であるサイクロプス等のような陸上の魔物ばかりを相手にしていたために退屈していた神影にとっては、初めての空中戦を経験出来ると言うのだから、これはまたとない機会だった。

 そんなチャンスを逃す神影ではなく、彼はその依頼書を掲示板から引っ剥がすや否や、エーリヒにその依頼を受ける事を提案し、彼の気迫に怯みつつエーリヒが頷くと、大喜びでギルドを飛び出し、それをエーリヒが慌てて追い掛け、今に至ると言う訳である。


《もう王都上空だが、やっぱ例の山岳地帯まで待てねぇ…………エーリヒ!スピード上げるぞ!マッハ2で山岳地帯まで急行だ!》

《ええっ!?ちょ、ちょっと待ってよミカゲぇ!》


 余程楽しみなのか、言うや否やアフターバーナーを全開にし、脚部を覆う装甲の外側に、水平尾翼と一体化するように装着されているノズルから轟音を撒き散らしながら速度を上げる神影。

 そんな神影に驚いたエーリヒは大急ぎでアフターバーナーを噴かし、彼の後を追うのだった。

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