第2話~ヴィステリア王国~
ヴィステリア王国宰相、カミングス・セルゼンに連れられて大広間を後にした神影達は城へと入り、だだっ広く長い廊下を歩いていた。
幅だけでも10メートル近くありそうな上に、天井も無駄に高い廊下の両脇には、槍を持った衛兵や執事、そして若いメイドが何人も控えており、中央を通る神影達に向かって、角度の揃ったお辞儀をしていた。
美人でスタイルも良く、某オタクの聖地に居る者達がしているようなコスプレとかではなく、正真正銘本物のメイドを目の当たりにした男子生徒達が鼻の下を伸ばしたり、未だに戸惑っている女子生徒達が、携帯を取り出して家族との電話やメールが出来ないかと試しては、そもそも圏外になっているから駄目だと首を横に振っている中、神影は相変わらず周囲を見回しながら考え事をしていた。
「………あの大広間で宰相さんが話してた時から薄々勘づいてはいたが…………やっぱりそうか」
「古代さん、何だか落ち着いていますね…………この状況に驚いていないのですか?」
ブツブツ独り言を溢していると、何時の間にか隣に来ていた桜花が声を掛けてきた。
「あ、ああ。こんな展開は、ネット小説じゃお約束とも言えるようなモンだから、少なくとも他の連中程驚いてはいないかな」
何時の間に横に居たのかと内心呟きながら、神影はそう答えた。
「ほう、それは頼もしい事だな…………そう言えば古代は、戦闘機以外にもファンタジー系の創作物が好きだと言っていたな。休み時間とかにも、スマホで結構読み漁っていたじゃないか」
「ああ、俺様も太助もファンタジーとかはある程度知ってるが、やっぱ知識が豊富な奴が居るってのは心強いぜ!」
話に入ってきた太助と幸雄が、期待に満ちた眼差しを神影に向ける。
確かにこの状況でも驚かず、ある程度の知識がある者が居るとなれば、心強いとも思うだろう。
「まあ、それが全て役に立つのかどうかは別だけどな」
神影は苦笑混じりに返した。
確かに神影は、ファンタジー系の創作物にはかなり詳しいため、クラスメイト達が未だに戸惑っている中でも、何とか冷静さを保っている。
だが、それらはあくまでも、他人が作った物語の中だけでの事であり、それに対して自分達は、実際に体験しているのだ。
そのため、全てが自分の予想通りに進むとは限らない以上、警戒しておくに越した事は無いと考えていたのだ。
「さあ、着きましたぞ。此方が謁見の間でございます」
歩みを止めて振り向いたカミングスが、神影達に向けてそう言った。
彼の背後には、槍を持った4人の衛兵に守られている巨大な両開き扉が聳え立っており、その扉から漂ってくる底知れぬ威圧感が、神影達にのし掛かった。
それを他所に、カミングスは衛兵に声を掛けた。
「勇者様御一行をお連れした。中に入れよ」
「はっ!勇者様御一行が到着されました!!」
廊下に声を響かせた衛兵は、残りの3人と共にいそいそと扉を開けた。
重厚感溢れる音と共に扉が開くと、先に入ったカミングスに続き、シロナや生徒達が恐る恐る足を踏み入れる。
「うっわぁ~………これぞ、正に謁見の間って感じだな」
謁見の間に足を踏み入れた神影は、中を見回しながら素直な感想を述べた。
煌びやかな装飾が壁に施され、床には赤い絨毯が敷かれ、それは奥まで伸びている。
そして奥には5段程度の短い階段があり、その上に玉座が2つ置かれている。
その内一方の玉座は空席で、もう一方には王妃と思わしき女性が座っており、その2つの玉座を挟むかのように、神影達と同い年くらいの美少女が2人控えている。
更に周辺には、衛兵や執事とは違った服に身を包み、何処と無くカミングスと同じような雰囲気を纏っている男性達が何人も立っており、神影達を見ていた。
恐らく2人は王女で、他の男性達は文官なのだろうと、神影は予想を立てた。
そのまま絨毯の上を進む一行は、階段の手前で止まったカミングスに合わせるように足を止めた。
「王妃様、勇者様御一行をお連れしました」
そう言って王妃達に向かって恭しく一礼してから、カミングスは神影達の方へと振り向いた。
「さて…………それでは先程申しましたように、皆様をこの世界に召喚した理由を説明させていただきましょう」
その言葉を受け、先程まで物珍しそうに、装飾や文官らしき人物達を見ていた女性陣や、階段の上に居る3人の美女・美少女に見惚れていた男子生徒達。そして、未だにこの場の状況分析に勤しんでいた神影が、カミングスに視線を向ける。
そして、暫くの沈黙の末、彼は口を開いた。
「皆様には、憎き魔王を打ち倒し、国王陛下に掛けられた呪いを解いていただきたいのです」




