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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第49話~再会と飛び級昇格~

「「……………」」


 イーリスが出ていってから暫く経った支部長室では、神影とエーリヒが呆然とした様子で固まっていた。

 

「な、何と言うか………改めて君の天職がトンでもないものだって事を思い知らされるね」

「………ああ」


 何とも言えない表情を浮かべて言うエーリヒに、神影は頷いた。

 今、2人の手には各々のステータスプレートが握られており、彼等が固まっていた理由が、そのステータスプレートにあると言う事は容易に想像出来る。


 因みに、現在の彼等のステータスは以下の通りだ。




名前:古代 神影

種族:ヒューマン族

年齢:17歳

性別:男

称号:異世界人、血塗られた死神、無慈悲な狩人

天職:航空傭兵

レベル:56

体力:2700

筋力:2650

防御:2600

魔力:1500

魔耐:1500

敏捷性:3500

特殊能力:言語理解、僚機勧誘、空中戦闘技能、物理耐性、麻痺耐性、魔力操作、魔力応用、自動強化、僚機念話、成長速度向上(極)




名前:エーリヒ・トヴァルカイン

種族:ヒューマン族

年齢:17歳

性別:男

称号:七光り魔術師、無慈悲な狩人

天職:航空傭兵

レベル:54

体力:2600

筋力:2590

防御:2530

魔力:6200

魔耐:6200

敏捷性:3000

特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、全属性耐性、魔力感知、魔力操作、魔力応用、物理耐性、空中戦闘技能、僚機念話、成長速度向上(極)




 特殊能力"自動強化"の恩恵もあって、2人は"黒尾"のアジトに居た時と比べると、全てのステータス値が大きく伸びており、既に勇者達と十分渡り合える程の強さを手に入れていた。

 しかも"自動強化"は、"黒尾"との戦闘によるレベルアップで、ステータス値の上昇率が上がっていると言うのだから、尚更だった。


「この能力、他の奴等が知ったら絶対欲しがるよ。この世界の風潮的に、男がね」


 エーリヒの言葉に、神影は頷いた。


 実は、この世界では一夫多妻制が取られており、『強く、恵まれた環境に生まれた男はハーレムを作るべきだ』と言う風潮がある。

 そのため、神影やエーリヒが持つ能力は、そうなる条件を十分満たしている…………いや、満たすどころか、下手をすれば世界最強レベルにまで引き上げてしまうだろう。

 自分自身の力ではないとは言え、強力なアーティファクトと言う事にしておけば、間違いなく多くの女性から言い寄られる。

 そんな力を2人が持っていると言う事が知られるような事が起きれば、国の上層部のみならず、他の欲に走った男共が、それを寄越せと言い募るだろうし、士官学校の卒業生や勇者のように彼等の出自を知る者が相手なら、『お前達のような連中には似合わない』とか言って奪おうとするのは容易に想像出来る。

 それは、神影が未だ城で生活していた頃、初の夜間飛行への期待に胸を膨らませていた神影に突っ掛かってきたブルーム辺りが良い例と言えるだろう。


「やれやれ、世の中不平等に出来たものだよ。ステータスや肩書きみたいな上部だけで評価される連中のための世界だと言っても過言じゃないね」


 エーリヒが肩を竦めてそう言った瞬間、部屋のドアが開いてイーリスが入ってきた。

 それに続き、ギルド職員用の服に身を包んだアメリア達4人も部屋に入ってくる。


「よお、昨夜はよく眠れたか?」

「お陰様で」


 軽く手を挙げて訊ねる神影に、アメリアが答えた。


「……ミカゲ、おはよ」


 そう言って、ポテポテと足音を立てながら神影に歩み寄ってきたニコルが、彼の隣に座った。


「お、おう。おはようさん」


 出会って2、3日一緒に居た程度でこんなにも近づいてくるニコルに内心戸惑いを感じながら、神影も挨拶を返した。

 彼に挨拶を返されたニコルは嬉しそうにすり寄り、残された3人は若干不満げな表情を浮かべているが、当の神影は相変わらず戸惑っている。

 今まで戦闘機一筋に生き、異性との関係は二の次三の次程度にしか考えていなかった神影は、ニコルに一目惚れされている事や、他の3人にもフラグを建てている事など夢にも思っていないだろう。


「全く、ミカゲは鈍感だね」

「何故だろう、お前だけには死んでも言われたくねぇわ。その台詞」


 そんな軽口を叩き合う2人に苦笑を浮かべるイーリスだが、本題に入るべく、手を打ち鳴らして彼等の注意を引いた。

 

「さて、ミカゲ君にはイチャイチャしてるところ悪いけど………そろそろ、今回の話にも決着をつけないといけないからね」

「別にイチャイチャしてる訳じゃないんだけどなぁ。恋人でもないんだし………」


 如何にも鈍感主人公らしい台詞を呟く神影だが、イーリスはそれをまるっと無視して時計に目をやる。


「そろそろ、彼女が来る頃かな……」


 そう呟いた次の瞬間、ドアの向こうからドタドタと足音が聞こえてくる。

 その音は段々大きさを増していき、ドアが勢い良く開け放たれて漸く、それは止んだ。


「先輩!」


 そんな声と共に支部長室に飛び込んできたのは、紫色の修道服に身を包み、エーリヒと同じように、長い金髪を後頭部で1束に纏めたリーネだった。


「リーネ………!」


 エレインが、もう会う事は叶わないと思われていた後輩の名を呟くと、リーネはエメラルドグリーンの目に大粒の涙を浮かべて走り出し、エレインの胸に飛び込んだ。


「先輩………先輩!」


 エレインの存在を確かめるように胸に顔を埋め、その胸の中で泣くリーネ。

 エレインもリーネを抱き締め、その目から涙を溢す。


「感動の再会………ってヤツだな」

「ああ………村に送り届けた時もそうだけど、やはりこう言う光景を見ていると、無事に助け出せて良かったと実感するよ」


 抱き合う2人を微笑ましそうに見ながら、神影とエーリヒは言った。


 それから暫くの間、この支部長室では2人の少女が泣く声が響いていた。



──────────────



 2人が泣き止むと、イーリスは全員を連れて1階に下り今回の一件に終止符を打ちに掛かった。


 先ず行われたのは、神影とエーリヒへの報酬の受け渡しだった。

 今回はリーネが依頼人であるため、報酬を支払う義務は彼女に課せられる。

 内容が内容であるためにかなりの高額になるのだが、意外な事に、報酬を支払えるだけの金は用意されていた。

 どうやらリーネは、神影達がルージュを出発してから一旦村へと戻り、生き残った村民達に神影達の事を報告し、エレインの着替えと報酬を用意して持ってきていたらしいのだ。

 因みにこの世界では、何か罪を置かしたり、報酬や罰金、借金を払えなかったりすると奴隷に落とされると言う制度があり、彼女も、もし払いきれなかった場合は2人の奴隷になる覚悟を決めていたらしい。

 それを聞いた2人が、『ちゃんと払ってもらえて良かった!』と内心安堵していたのは余談である。


 そして次に、神影とエーリヒのCランクへの飛び級昇格の報告が行われた。

 それに驚きを見せる冒険者達だが、国家規模での悩みの種である"黒尾"を壊滅させ、捕まっていた女性達を全員無傷で救出し、各々の村へ無事に送り届けたと言う事を伝えられると納得したのか、異を唱える者は誰1人として居なかった。


「さて…………エスリアさん、ちょっと良いですか?」


 事が一段落すると、神影はギルド受付嬢であるエスリアを呼んだ。

 カウンターから出てきた彼女は、ポニーテールに纏めた茶髪を揺らしながら神影に歩み寄った。


「はい、何でしょう?」

「すみませんが、コレと同じ袋をもう1つ貰いたいんです」


 ジャラジャラと音を立てる袋を見せ、神影はそう言った。


「………はい?」


 そんな彼の要求に、彼女は首を傾げた。

 袋を渡す事自体には何の問題も無いが、そんなものを何に使うつもりなのかと疑問に思っていたのだ。


「いや、何。報酬をコイツと山分けしようと思ってまして………ホラ、"黒尾"を潰したのは俺だけじゃない訳ですし」


 神影が説明すると、彼女は納得してカウンターへと戻っていくが、其処でイーリスが話に入ってきた。


「2人共………パーティー登録はしないのかい?」

「………ああ、確かに」


 その指摘を受けた神影は、ハッとした表情を浮かべた。


 彼女が言うパーティーとは、複数人の冒険者の集まりを意味する単語で、アメリア、ニコル、オリヴィアの3人からなる"アルディア"が、その例に該当する。

 これに登録すると、報酬を態々分ける手間が省ける等の利点があるのだ。


「パーティー登録か…………確かにコレなら、報酬を受け取ってから態々分けなくても済むね………ミカゲ、どうする?」

「勿論、登録するよ。その方が今後、色々やりやすいからな」


 神影は即答した。


「良し、それならパーティー登録用紙を用意しておくから、パーティー名を考えておいてね」

「………あっ!」


 イーリスはそう言ってカウンターへと向かっていくのだが、其処でまた、神影がハッとした表情を浮かべた。


「ど、どうしたの?」

「いや、その…………パーティー名考えてなかった」


 その言葉を受け、エーリヒが盛大にすっ転んだのは余談である。

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