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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第41話~神影と裸の女達~

(祝)!ブックマーク300件&PV10万突破!

お読みいただいた皆さん、ありがとうございます!

「な、何か………一気に静かになったよね………」

「え、ええ……」

「さっきの音、何だったのかな……?」


 神影がエーリヒの"魔力感知"で"黒尾"に捕まった女性達の居場所を突き止め、その穴へと足を踏み入れた頃、その奥にある牢屋の中では、女性達が先程の喧騒について話していた。


 先程まで、"黒尾"のメンバー達の不快な笑い声をBGMに、自分達に訪れる最悪の未来に絶望していた彼女等だが、それを、突如として響いた爆発音が吹き飛ばした。

 何が起こったのか分からず呆然とする彼女等の耳には、爆発音や聞き慣れない轟音、そして、"黒尾"メンバーの怒号や断末魔が絶えず響いてきていたため、何かが起こっていると言う事だけは漠然と理解出来た。


 中には救援が来たのだろうと考える者も居たのだが、個人のレベルも高い上に人数も多く、今まで討伐に乗り出した冒険者達を悉く返り討ちにし、その強さから王国の騎士団ですら手を焼く彼等の根城に乗り込んで喧嘩を吹っ掛けるなど、彼女等からすれば自殺行為も良いところだ。

 

「(それなら、何が起こったと言うの………?)」


 爆発音や断末魔が聞こえなくなってからずっと続いている沈黙に不安を感じながら、アメリアは内心そう呟いた。




 その後に、ちょっとしたハプニングが待ち受けているとは知らずに………



──────────────



「やれやれ。前に入ったのもそうだったが、やっぱり暗いなぁ………」


 穴の中へと足を踏み入れた神影は、真っ暗な一本道を歩きながらそう呟いた。


 壁に沿って歩いていると、時折小型の松明らしきものに触れるのだが、先程の戦闘の影響か、殆んどの松明の炎は消えてしまっている。


 機体を展開して着陸灯を使う事も考えるが、穴の幅からして展開出来そうにないため、壁に沿って進むしかなかったのだ。


「ったく、もう少し広く穴掘っとけよな………」


 そんなどうしようもない事を呟きながら、慎重に歩みを進めていく神影。


「………ん?」


 すると、奥に小さな光の粒が見え、神影は足を止めた。


「(もしかして、彼処に………?)」


 そう思った神影は、手を打ち鳴らして大きな音を響かせた。

 そして奥に向かって呼び掛けようとすると、そうするより前に、向こうの方から呼び掛けてきた。


「誰なの!?」


 警戒心を含んだ女性の声が、細く暗い一本道に響き渡った。


「Fランク冒険者の神影です!依頼を受けて助けに来ました!」

「え、Fランクですって!?」


 神影が名乗ると、奥から驚愕に満ちた声が響いてくる。


「(あ、そう言えばFランクって、冒険者の最低ランクだったな………)」


 どうせなら、嘘でも高ランク冒険者と言っておけば良かったと後悔する神影だが、時既に遅し。

 今言い直したところで、怪しまれるのがオチだ。


「(取り敢えず、直接行って話をした方が良さそうだな)」


 神影は再び歩き出し、奥へと進んでいく。

 すると、どういう訳か女性達が騒ぎ出し、神影は首を傾げる。

 そうしている内に牢屋の前に到着し、神影は格子の隙間から中を覗き込んだ。


「おーい、どうしました?何かあり……ました………?」


 牢屋の中で縛られている女性達を視界に捉えた神影は、言葉を失った。


 彼女等は、胸や腰にボロ布を巻いただけと言う何とも粗末な姿にされており、中には布が足らなかったのか、裸になっている者も居た。

 それに加えて、彼女等は後ろに回した両手や足を縄で縛られている。

 そのため、ボロ布を巻きつけている者は未だしも、巻いていない者は、露になった豊満な胸の先端や、秘部や尻、その全てを神影に見られる形になっているのだ。


「え、えっと…………」


 豊満な体を寄せ合い、顔を真っ赤に染めて此方を見つめる美女、美少女達に、神影は戸惑った。


 目の前で広がる光景は、状況が違えば官能の楽園と呼べるだろうが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 これまで自分の趣味一筋で生きており、性事情については二の次三の次程度にしか考えていなかった神影にとって、このような官能的なものは未知の領域なのだ。

 ラブコメアニメのお約束であるラッキースケベな展開も、神影からすればただのワンシーンに過ぎないため、それ程重大なものとしては見ていなかったのだ。

 つまり神影は、免疫の無い光景を目の前で見せられていると言う事になる。

 これで鼻血を噴き出さず、ただ呆然と突っ立っていられるのは、いきなりの事で頭が混乱しているためだろう。

 戦場なら間違いなく死を招くこの行為だが、意外な使い道があったようだ。


「…………ッ」


 女性達の顔の赤みが増し、羞恥で目尻に涙を浮かべる者も出てくる中、神影の姿が一瞬歪む。

 そして、次の瞬間には……………


「すみませんでした」


 目を見張る程に綺麗な土下座を決めている神影の姿があった。



──────────────



「ふぅ、こんな感じかな」


 時は少し遡り、神影が未だ牢屋に向けて歩いている頃、火属性魔法で"黒尾"メンバーの死体や瓦礫の処理を終えたエーリヒは、もくもくと黒煙を上げている灰の山を見ながらそう呟くと、その場に腰を下ろした。


「それにしても、この魔法は今後使えるな。強力だし、大きなものを焼き尽くすにはうってつけだ」


 灰の山とは反対に、細々と白煙を上げている両手を見ながら、エーリヒは言った。


「全てを焼き尽くす炎………良し、コレを"地獄焔ヘル・フレイム"と名付けよう。さっき考えた"破滅の煉獄(ルイン・フレア)"みたいな感じで」


 呑気に呟いたエーリヒはステータスプレートを取り出し、神影が帰ってくるまでの暇潰しに、自分のステータスを確認する。




名前:エーリヒ・トヴァルカイン

種族:ヒューマン族

年齢:17歳

性別:男

称号:七光り魔術師、無慈悲な狩人

天職:航空傭兵

レベル:54

体力:2190

筋力:2000

防御:1980

魔力:5860

魔耐:5790

敏捷性:2600

特殊能力:詠唱破棄、全属性適性、全属性耐性、魔力感知、魔力操作、魔力応用、物理耐性、空中戦闘技能、僚機念話、成長速度向上(極)




「おお、コレは凄いな………」


 一気に2倍近く跳ね上がったステータスに、エーリヒは感嘆の溜め息をつく。

 それから彼は、先程の神影のように、新しい機体や特殊能力が追加された事が、無機質な女性の声に伝えられ、その内容に目を丸くした。


「"自動強化"って、勝手にステータス値が上がるのか………こんな特殊能力聞いた事も無いよ………」


 そう呟いたエーリヒは、これは"航空傭兵"の天職専用の能力なのだろうと予想を立て、残りの能力にも目を通した。


 そして一通りステータスの確認を終えて辺りを見回すと、神影が放り出した箱が目に留まる。


「そう言えば、他にも2個ぐらい残ってるとか言ってたな………」


 そう呟き、神影が最初に入った穴へと入ろうとしたエーリヒは、ふと、一番奥の穴へと視線を向けた。


「それにしてもミカゲの奴、中々帰ってこないな………穴が奥の方まで続いているのか、それとも何か話してるのか…………まあ、入ったばかりってのもあるだろうけどね」


 そんな独り言を溢しながら、今度こそ、エーリヒは穴の中へと歩みを進めるのだった。



──────────────



「そ、その………ホント、申し訳ありませんでした」


 一方、女性達が閉じ込められている牢屋では、神影が未だに、格子の前で土下座をしていた。


 女性関係についての知識が乏しい神影は、こう言ったものを考えすぎてしまう傾向にある。

 そのため、事故とは言え女性達が好きでもない男に恥ずかしい姿を見られたと言う事への罪悪感も、人一倍大きいのだ。


「い、良いのよ。そんなに謝らなくても………」

「頭……上げて…………?」

「ああ。君に悪気が無いのは分かったから。そんなに気に病まないでくれ。ボク達としても、流石に居心地が悪くなってしまうよ」


 そんな神影にアメリア達がおずおず声を掛けた。


「そ、そうですよ。頭を上げてください」

「わ、私も………もう、気にしていませんから……」

「それに、助けに来てくださったお方を、あの盗賊の男達と一緒の目で見るなんて恩知らずな事はしませんわ」


 それに便乗するように、他の女性達も神影に声を掛ける。


「そ、それより、此方に来て縄を解いてもらえない?此処に連れてこられてから、ずっと縛られてて………」

「あ……はい」


 そう言って、神影は恐る恐る顔を上げる。


「………ッ!」


 その際、ニコルが目を見開くが、神影はそれに気づかず、格子を調べる。


「(壁に埋め込まれてるのか………扉を開ける鍵は無いから、出来れば機銃でブッ壊したいんだけどなぁ………)」


 内心そう呟き、神影は小さく溜め息をついた。


 壁に埋め込まれている部分に向けて機銃掃射を喰らわせて格子を強引に破壊する事も出来るが、流れ弾が女性達の方へ飛んでいくリスクを考えると、機銃は使えそうになかったのだ。


「(強引に格子を引っこ抜いたらどうなるか分からんし、長剣もエーリヒの家に置いてきちまったし………仕方無い、蹴破るか)」


 そうして神影は女性達に視線を向け、牢屋の壁の方に移動するよう指示を出した。

 神影がやろうとしている事を何と無く察した彼女等は、動きにくそうに体を揺すりながら両端に寄った。

 その際、彼女等の豊満な胸がユサユサと揺れるのだが、神影はすかさず顔を逸らし、口笛を吹いてやり過ごしていた。


「さて………もう良いわよ」


 アメリアからの声が掛かり、神影は振り向いた。

 神影の指示通り、彼女等は両端で身を寄せ合っている。


 それを確認した神影は頷き、腰を落として構えた。


「そんじゃ………よっと」


 神影は足に魔力を集中させ、扉の鍵の部分に回し蹴りを喰らわせる。

 鍵を破壊された扉は、そのまま枠ごと外れて奥に飛んでいき、壁にめり込んだ。


『『『『『…………』』』』』


 それを目の当たりにした女性達が呆然とする中、神影は牢屋の中へと足を踏み入れた。

 

「良し………それじゃあ、縄を解きますよ」


 神影はそう言って、彼女等を縛る縄を解いていった。

 解放された女性達は、長時間縛られていた事で失いかけていた手足の感覚が戻るのを確認すると、痛む体を騙しながら、未だ解放されていない女性達の縄を解き始めた。

 それにより、神影が予想したよりも早く、23人全員が縄から解き放たれた。


 それから神影は、エーリヒに女性達を解放した事を報告するため、一旦外に出る事を伝えた。

 本来なら"僚機念話"があるのだが、此処で使うのは何と無く憚られたのだ。


「そ、そう………」


 神影の言葉に頷くアメリアだが、その表情は、何処と無く不安そうだった。

 他の女性達も、彼女と似たような表情を浮かべている。


「……………」


 それを見た神影は、彼女等の前で膝立ちになり、笑みを浮かべて言った。


「大丈夫ですよ、報告を済ませたら直ぐ戻りますし、何かあったら、何時でも助けに来ますので」


 それだけ伝えると、神影は立ち上がって外へ向けて歩き出すのだった。



 その際、数人の女性が顔を赤くしていたのだが、さっさと報告を済ませようと考えていた神影は、それには気づかなかった。

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